【目的】胃の術前造影computed tomography(CT)において,発泡剤を内服することで胃壁を伸展させ,腫瘍の深達度の評価が可能である.しかし,発泡剤が動脈や静脈,門脈,肝静脈の造影効果に与える影響についての報告はない.本研究の目的は腹部造影CTにおいて発泡剤が血管の造影効果に及ぼす影響を明らかにすることである.【方法】対象は発泡剤の内服の有無以外に撮影タイミングや造影剤の注入方法に違いのないプロトコルで造影CTを施行した胃または膵臓の術前の60症例であり,各症例の血管のCT値を計測した.【結果】発泡剤を内服した場合,左胃動脈,左胃大網動脈,右胃大網動脈,左胃静脈,左胃大網静脈,右胃大網静脈と門脈,肝静脈のCT値が有意に高くなった(p<0.01).【結語】腹部造影CTにおいて発泡剤を内服すると,左胃動脈,左胃大網動脈,右胃大網動脈,左胃静脈,左胃大網静脈,右胃大網静脈と門脈,肝静脈のCT値が高くなることが明らかになった.
【目的】EPI with compressed SENSE (EPICS) DWIと従来のEPI-SENSE DWIのreduction factorを増加させたときの画像特性の違いを明らかにし,EPICS DWIの最適なreduction factor設定を検討することである.【方法】Philips社MRI Ingenia Elition 3.0Tとファントムを用い,reduction factorの上昇に伴うEPI-SENSE法とEPICS法のSNR, CNR, ADC値を比較検討した.parallel imaging(PI)の展開不良アーチファクトの有無はdynamic noise scan法にて検証した.P<0.05を有意水準とした.【結果】EPICS法はreduction factor 2~5においてEPI SENSE法と比べSNR 1.1~1.4倍,CNR 1.3~1.8倍とともに有意に高く(P<0.05),PIの展開不良アーチファクトも少ない.EPICS法のADCはreduction factor 3~5で0.03–0.07×10−3 mm2/s低値となった.【結語】EPICS DWIはhigh reduction factorの撮像において画像劣化を抑える効果が高く有用な撮像法である.
Readout-segmented echo planar imagingには体動があった場合に再収集を行う機能を有しており,ファントムを動かして撮像を行うことで再収集機能の特性を明らかにした.連続的な体動における体動回数,体動角度,体動時間帯,断続的な体動における体動時間帯と体動回数を変化させたときの再収集機能OffおよびOnの画像と体動のない画像でピクセルごとの信号強度をSpearmanの相関係数により比較し,画質への影響や再収集機能による改善効果を調査した.体動回数が増加するにつれ相関係数は低下し,体動角度によって相関係数に差はなく,撮像開始直後の体動は高い相関係数を示し,それ以降は低下した.体動時間帯が増加しても体動回数を減少させると相関係数は高値を示した.すべての検討において再収集機能Onにより相関係数の改善がみられた.
本研究では,外部放射線治療装置に搭載されたkV-CBCTの線量評価のために多くの放射線治療施設が保有するファーマ形電離箱線量計と円柱形PMMAを連ねたファントムを用いたときに必要なファントム長を検討し,更に,ファントム長が不足し体軸方向の散乱線寄与が充分でない場合にこれを補うためのファントム長補正係数を提案した.ファーマ形電離箱により測定した円柱形PMMAファントムの中心における空気吸収線量は,ファントム長が300 mm以上になると散乱線の寄与が飽和した.また,ファントム長補正係数は,長さ300 mmと150 mmのファントムを用いて測定した電荷量比とX線ビーム幅との関係を示す近似曲線から算出した.これにより補正を行った150 mm長ファントムで測定した空気吸収線量は,300 mm長ファントムを用いて測定した空気吸収線量と最大で1.61%の線量差で一致した.本方法は,150 mm長の円柱形PMMAファントムによる計測のみで,広いX線ビーム幅におけるファントム中心線量の推定を可能とした.
近年,diffusion-weighted whole-body imaging with background suppression(DWIBS)の利用が広がっており悪性腫瘍の全身検索に有用である.一方,問題点として頭頸部領域では咀嚼等の動きや身体の形状変化に伴う磁場不均一に起因する画質不良がある.これを解決すべくネックカラーと磁場均一性補正材の組み合わせによる固定補助具の有効性を検証した.健常ボランティアにおいて咀嚼運動を行いながら,高速gradient echo連続画像で計測した下顎の移動量,DWIBS画像で計測したsignal-to-noise(SNR),apparent diffusion coefficient(ADC),DWIBS画像の画質視覚評価について,固定補助具あり・なしで比較した.結果として,固定補助具により下顎の動きは大幅に抑制することができ,DWIBS画像でのSNRは上昇,ADCは低下,視覚評価点数は上昇した.いずれの項目も固定補助具の有無で有意差(P<0.001)を認めた.ネックカラーを装着し,その隙間に磁場均一性補正材を配置することで,下顎の動きを抑制しつつ磁場均一性を向上することができる.固定補助具の使用は頭頸部領域のDWIBSの画質改善に寄与する.
【目的】MRIは優れた診断情報を有する反面,患者負担の大きい検査である.当院では,放射線科医によりMRI撮像指示がされているが,すべての検査依頼に撮像指示を行うことは大きな負担である.自然言語処理により撮像指示予測が可能であれば,放射線科医の負担軽減が可能となる.本検討は放射線科医の補助を目的として,自然言語解析によるMRI撮像予測の実現可能性を検討した.【方法】施設のMRI撮像プロトコルの独自性や,検査依頼文の特殊性を考慮し,大規模データセットや事前学習モデルの利用は不向きと考えた.自然言語処理手法として実績のあるLSTMに注目し,独自の形態素解析の前処理を併用した4層の双方向LSTMモデルを用いた.【結果】提案手法はPrecision, Recall, F1-scoreのMacro平均はそれぞれ,70.6%,69.5%,68.9%を示した.先行研究と比較し,日本語の自然言語処理タスクであることを考慮すれば,及第点を得たと考える.提案手法は,語彙の削減と最適化,類似性の学習に直接的・間接的に作用し少数派クラスの予測精度を改善したと考えられる.【結語】提案手法の有効性と,自然言語処理を用いた撮像指示予測の実現可能性が示唆された.