日本放射線技術学会雑誌
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79 巻, 4 号
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巻頭言
臨床技術
  • 森下 猛史, 田邉 頌章, 増尾 修, 橋本 昭宏, 大久保 英, 江崎 琴音, 梅嵜 有砂, 高瀬 香奈, 戸田 博幸
    2023 年 79 巻 4 号 p. 307-312
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    [早期公開] 公開日: 2023/02/14
    ジャーナル フリー

    CT perfusion(CTP)の解析法には,さまざまな解析法がある.ベイズ推定アルゴリズムの利点が示唆されているが,臨床データでの他の解析法との比較はまだ少ない.今回,急性期脳梗塞患者の評価において,ベイズ推定法と特異値分解(singular value decomposition: SVD)法を比較し,その有用性を検討した.急性期脳梗塞患者13例のCTPデータをVitreaに実装されたSVD法とベイズ推定法を用いて解析した.虚血域の明瞭性に関する視覚評価と,画像上に関心領域(region of interest: ROI)を設定し,灌流域ごとに健側患側比を比較した.視覚評価では,CBF,MTT,TTPで多くの症例で有意差があり,SVD法とベイズ推定法の健側患側比は,CBF: 1.19, 1.84,CBV: 1.09, 1.02,MTT: 1.12, 1.79,TTP: 1.48, 1.19となった.CBF,MTTはベイズ推定法のほうが健側患側比が大きく,TTPはSVD法のほうが健側患側比が大きかった.急性期脳梗塞患者のCTP解析において,SVD法と比較してベイズ推定法は,CBF,MTTの評価に有用であると示唆された.

  • 下郷 智弘, 奥平 訓康
    2023 年 79 巻 4 号 p. 313-320
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    [早期公開] 公開日: 2023/02/15
    ジャーナル フリー

    放射線治療装置から出力されるX線半影幅は,検出器のサイズに依存することが報告されている.一般に,照射野サイズに応じた検出器サイズの使用を推奨される.逆にいうと,同一線量分布でも検出器により,線量比形状が異なることを意味している.本研究では,複数の検出器を用いて,検出器の有感領域の大きさのない状況における半影幅を求めることを目的としている.9種の検出器を使用して水中の軸外線量比を計測し,半影幅は複数の検出器で計測された各線量比から直線近似を使用し求めた.照射野は1×1 cm2から10×10 cm2の範囲で検討した.また,3種の有感領域幅の1.2 mm以上異なる組み合わせで半影幅を比較した.9種の検出器から得た半影幅値は,6,10 MV X線でそれぞれ2.51–4.07,2.93–4.70 mmだった.半影幅は,照射野サイズが大きくなるにつれ増加した.3種の検出器での結果は,9種で得た結果と比較し±0.5 mmの差であった.結果の信頼性について,過去の研究およびモンテカルロシミュレーションによる結果との比較で評価した.本手法による半影幅の算出は,検出器サイズに依存せず求めることができ,異なる施設の治療装置と比較することを容易にする.

  • 竹谷 明, 高木 玲, 石田 悟, 戸澤 光行, 稲岡 努, 寺田 一志
    2023 年 79 巻 4 号 p. 321-330
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    [早期公開] 公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    NICUポータブル撮影は看護師の介助が必要となり,看護師とX線管が近接する.そこで放射線防護具を作成(以下,新防護具)し,その有用性について検証した.新防護具は0.13 mmPbで幅38 cm,長さ70 cmとし,移動型X線装置の一体形X線発生装置部に吊り下げた.新防護具の有無における看護師の水晶体,胸部,腹部を想定した位置の空気カーマ(以下,線量)を測定した.撮影条件は保育器に水で満たした2リットルペットボトルを配置し,SID 100 cm,照射野20.3 cm×25.4 cm,管電圧58 kV,管電流時間積10 mAsにて測定を行い,実際の撮影条件の1 mAsに換算した.得られた結果をもとに看護師に新防護具に対する考えをアンケート調査した.新防護具を用いた場合の防護効果は,水晶体の位置で92%,胸部の位置で50%,腹部の位置で3%だった.看護師に対するアンケート調査結果では82%が新防護具に好感をもっていた.水晶体線量の抑制を図り,看護師の不安を軽減するために考案した防護具の有用性が期待できる.

  • 堀江 朋彦, 今田 奈津夫, 榊原 夢太郎, 厚見 秀樹, 丹羽 徹, 松前 光紀
    2023 年 79 巻 4 号 p. 331-341
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    [早期公開] 公開日: 2023/02/14
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,呼吸性運動による脳脊髄液(cerebrospinal fluid: CSF)動態の描出を想定したdynamic improved motion sensitized driven equilibrium steady-state free precessionの最適な空間分解能と時間分解能を調べることである.【方法】健常ボランティア9名の正中矢状断面を対象に三つの撮像条件(A:空間分解能0.49×0.49×5 mm, 時間分解能1000 ms,B:0.49×0.49×5 mm, 430 ms,C:0.78×0.78×5 mm, 200 ms)による描出の違いを調査した.まず,第三,第四脳室のCSFおよび橋のsignal-to-noise ratio(SNR)を算出した.次に,呼吸性運動により10 cm/s以上で流れるCSFと10 cm/s以下で流れるCSFの信号強度比(signal intensity ratio: SIR)を算出した.更に吸気SIRと呼気SIRの差を求めた.更に,①中脳水道を中心とした第三,第四脳室に生じる流れの存在,②呼吸による流れの変化について,7名の技師による3段階の視覚評価により調べた.【結果】SNRは,いずれもAが最も高く次いでBそしてCの順に小さくなった.第三,第四脳室のCSFではAとBおよびAとCの間に有意差があったが,BとCには有意差はなかった.呼吸性運動によりCSFの信号強度は変化した.第三脳室のSIRは吸気で高く呼気に低くなり,逆に第四脳室のSIRは吸気に低く呼気で大きくなった.各SIRはいずれもAとCおよびBとCの間に有意差があった(p<0.05).吸気SIRと呼気SIRの差は,第三,第四脳室ともにBが最も高く次にAそしてCが最も低く,AとCおよびBとCの間に有意差があった(p<0.05).中脳水道を中心とした第三,第四脳室に生じる流れの存在に有意差はなかった(p=0.264).一方,呼吸による流れの変化には撮像条件による有意差がありBが他より高値となった(p<0.001).【結語】最適な空間分解能は0.49×0.49×5 mm, 時間分解能は430 msであった.また本法では,位相分散を利用するため空間分解能と時間分解能の関連に注意した条件設定が重要なことが示唆された.

  • 才賀 治, 猪岡 由行
    2023 年 79 巻 4 号 p. 342-351
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    [早期公開] 公開日: 2023/02/20
    ジャーナル フリー

    国際放射線防護委員会の2011年Statement on Tissue Reactionの声明以降,われわれの施設では放射線診療従事者に放射線防護眼鏡の装着を推奨している.導入を検討している水晶体用線量計は,その特性と装着位置により水晶体部の等価線量管理に影響を与えると推測したため調査して妥当性を検証した.水晶体用線量計を用いたファントム実験では,人体等価ファントムが放射線場に正対した状態では水晶体部の指示値は0.18 mGy,目尻が0.17 mGyと同等の値であった.人体等価ファントムの回転に伴い,その背面向きを除いて放射線場遠位における目尻の指示値は近位の水晶体の指示値を下回った.放射線場近位の目尻の指示値は近位の水晶体の指示値を上回り,最大2.97倍となった.放射線管理は過大評価により安全が担保されるため,水晶体用線量計は放射線場の近位の目尻に装着することの必要性が示唆された.

  • 植原 佑輔, 森 裕一朗, 竹内 和宏, 井手 康裕, 助石 宙志
    2023 年 79 巻 4 号 p. 352-359
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/20
    [早期公開] 公開日: 2023/02/21
    ジャーナル フリー

    【目的】Dual-energy computed tomography(DECT)を用いた仮想単純について,ヨード濃度やヨード直径および溶媒,また再構成条件が異なる場合における仮想単純画像の作成精度を評価した.【方法】Multi-Energy CT Phantom(Gammex Inc., USA)にヨード濃度,ヨード直径の異なるヨードロッドや血液模擬物質とヨードの混合ロッドを挿入し,Revolution(GE Healthcare, USA)を用い撮影した.Raw dataからdeep learningによる画像再構成を用いて仮想単純画像を作成し,仮想単純画像の作成精度を評価した.また,display field of viewおよび再構成アルゴリズムを変化させた仮想単純画像を作成し,再構成条件による作成精度への影響を検証した.【結果】ヨード濃度が低くなるにつれて仮想単純画像の作成精度は低下したが,血液模擬物質とヨードの混合ロッドでは低濃度域においても高い作成精度を示した.ヨード直径が小さくなるにつれて作成精度は大きく低下したが,再構成条件による仮想単純画像の作成精度への影響はほとんどみられなかった.【結語】本システムではヨードの濃度や大きさに影響されて仮想単純画像の作成精度が低下する.一方で,一部の条件下では高い作成精度を有することが明らかとなった.

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