日本放射線技術学会雑誌
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78 巻, 11 号
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巻頭言
Editorial
総説
  • 五十嵐 隆元
    2022 年78 巻11 号 p. 1265-1272
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/22
    ジャーナル フリー

    近年の医療放射線防護分野は,激変の時代を迎えているようである.国際的な動向に加え,2011年3月の福島原発事故によって,国民の放射線および放射線影響に対する意識が高まってきたことも決して無縁ではないと考える.その結果として法令改正も相次ぐことになり,医療放射線安全管理や放射線業務従事者の管理について,大変厳密な管理が求められるようになってきている.本稿では,近年の放射線防護に関する動きの中から,眼の水晶体のしきい線量と線量限度の変更,医療法施行規則の改正に伴う医療放射線安全管理,診断参考レベル,X線撮影時の生殖腺シールドの廃止に関する国内外の動向,ICRPの新勧告,およびリスクコミュニケーションに向けた動きについて,総論的に述べることにする.

原著
  • 脇田 幸延, 山永 隆史, 片山 豊, 永野 琢朗, 小倉 直人, 東山 滋明, 河邉 讓治, 市田 隆雄
    2022 年78 巻11 号 p. 1273-1281
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,核医学領域における,診断参考レベル(Japan Diagnostic Reference Levels 2020: DRLs 2020)に基づいた円滑な線量管理を可能とするソフトウェアを開発することである.【方法】プログラミング言語Visual Basic for Applications(VBA)を用い,実投与量計算機能,自施設とDRLs 2020の比較機能,小児核医学検査の適正投与量計算機能等を実装した.更にソフトウェア導入前,後における実投与量を評価した.【結果】本ソフトウェアにより簡便な実投与量計算や,DRLs 2020との比較が可能となり,円滑な線量管理を実現し得た.また,線量評価の結果より,ソフトウェアを導入することで自施設の投与量を把握し,最適化の参考とすることができた.【結語】核医学領域では自作のソフトウェアを臨床に導入することで,DRLs 2020に則した線量管理が可能である.

  • 大葉 隆, 真船 浩一, 菅野 修一, 長谷川 有史
    2022 年78 巻11 号 p. 1282-1294
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/09/27
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は診療放射線技師(放射線技師)のための原子力災害の人材育成研修プログラム最適化に必要な情報を福島第一原子力発電所事故の経験を踏まえて提供することである.【方法】福島県内の放射線技師を対象として郵送によるアンケート調査により330名(有効回答率:56.5%)の回答を得た.解析項目は,原子力災害対応の1) 「事前学習が必要な技術(4項目)」と2)「基礎知識(4項目)」に対する対象者の属性や原子力災害の経験と研修受講歴との関連性とした.【結果】1)について,空間放射線量測定や体表面汚染測定は対象者の勤務先病床数と有意に関連していた.また,被ばく相談は対象者の原子力災害の経験や研修受講歴の有無と有意に関連していた.2)について,内部被ばくに関する知識は事故当時就業年数や原子力災害経験の有無と有意に関連していた.【結語】本研究結果を考慮することで,放射線技師の背景に合わせた最適な研修プログラムの提供が可能と考える.

  • 菅原 かや, 石川 純也
    2022 年78 巻11 号 p. 1295-1305
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/26
    ジャーナル フリー

    【目的】緊急被ばく医療に対応可能な放射線緩和剤の開発につなげるため,インドール化合物であるDIM, GRM, INMの放射線緩和作用とその機序を調査した.【方法】ヒト正常肺線維芽細胞株へ0–4 GyのX線照射後50–60分に10 µMのインドール化合物または0.1% DMSOを単独投与し,生存細胞数,コロニー形成能,DNA 2本鎖切断頻度,DNA損傷修復活性,いくつかの酸化ストレス応答関連タンパク質発現量を解析した.【結果】DIM投与はDNA 2本鎖切断頻度の有意な低下,Nrf2およびp-GSK3β(Ser9)発現量の増加を伴い,生存細胞数とコロニー形成能の低下を和らげた.【結語】DIMが,一部ではNrf2の活性化やDNA 2本鎖切断頻度の低下を介し生存細胞数とコロニー形成能の低下を和らげるため,放射線緩和剤の候補物質として有望であることを示した.一方,GRMとINMは相応でないことを示した.

  • 増渕 裕介, 千田 浩一, 稲葉 洋平, 景山 倫也, 嶋田 涼香, 山下 明
    2022 年78 巻11 号 p. 1306-1313
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    【目的】経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)では,被ばくによる患者皮膚障害が従来より問題となってきた.PCIでは治療区域ごとに被ばく線量が異なるが,治療区域別の線量を診断参考レベル(diagnostic reference levels: DRLs)2020と比較した報告はわれわれの知る限りではない.【方法】後ろ向き調査の対象は,単一の装置で施行された単一枝病変(single-vessel disease: SVD)かつnon-chronic total occlusion(CTO) PCIで,連続した984症例であった.本調査では治療区域をAmerican Heart Association(AHA)冠動脈セグメント分類に基づいて右冠動脈(right coronary artery: RCA)を#1–#3, #4,左冠動脈(left coronary artery: LCA)主幹部(left main trunk: LMT)から前下行枝(left anterior distal branch: LAD)を#5–#10,左回旋枝(left circunflex artery: LCX)を#11–#15に分類し,それぞれをDRLs 2020のDRL値と比較した.【結果】調査全体での患者照射基準点空気カーマ積算値の中央値は1640.8 mGy,#4は2732.0 mGyであり,#4は他の治療区域に対して有意に高かった(p<0.001).#4では,手技や患者背景に起因した特異な線量増加が起こると考えられた.そのため,他の治療区域と同等の線量での手技完結は難しく,同様に#4と他の治療区域を一律のDRL値で評価するのは困難と考えた.【結語】したがって,次期DRLs策定の際には,手技別・治療部位別での細分化された指標が必要である.

  • 野副 沙季, 寺崎 圭, 中田 学
    2022 年78 巻11 号 p. 1314-1322
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

    【目的】X線撮影における生殖腺防護具(以下,GS)の配置は男性より女性で優位に不備が多いという報告がある.そこで,過去に検査されたX線,CT,MRI画像を用いてGSによる卵巣防護の実態を後方視的に分析し,女性の股関節X線撮影におけるGSの有効性を評価した.【方法】同一個人における過去3回分の骨盤部MRI画像から卵巣を,骨盤部CT画像から骨を抽出し,これら二つのデータを3Dワークステーションにて画像融合して卵巣の生理的な位置変動量を測定した.次に卵巣フュージョン画像をRaySum表示してX線画像と手動位置合わせを行い,GSによる卵巣遮蔽の割合を,(a)完全防護,(b)一部防護,(c)防護不備,(d)再撮影の4項目に分類した.【結果】卵巣の最大変動量の平均値と最大値は頭尾方向でそれぞれ1.1, 3.9 cm,左右方向で0.7, 2.0 cmであった.また,卵巣遮蔽割合は完全防護18.9%,一部防護58.5%,防護不備15.1%,再撮影7.5%となった.【結語】女性の股関節X線撮影の約80%でGSは卵巣全体を覆うことができず,生殖腺防護の有効性は低い.

  • 竹井 泰孝, 森分 良, 赤木 憲明
    2022 年78 巻11 号 p. 1323-1332
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/11/02
    ジャーナル フリー

    【目的】線量管理システムのソフトウェアバージョンが等価線量や実効線量計算値へ与える影響を検証した.【方法】CT寝台上に人体ファントムを配置して胸部CT,肝~骨盤部(以下,腹部)CT撮影を実施した.撮影終了後に装置で作成されたradiation dose structured report(RDSR)をソフトウェアバージョンの異なる複数の線量管理システムに転送し,等価線量や実効線量計算を行った.【結果】同一のRDSRから計算された等価線量,実効線量は,線量管理システムのソフトウェアバージョンによって計算結果が異なり,実効線量は最大で約2倍,等価線量は最大で約50倍の差が生じていた.【結語】線量管理システムのソフトウェアバージョンにより,ボクセルファントムの形状や線量計算アルゴリズムが変更されていることが考えられる.線量管理システムで求めた等価線量や実効線量を用いた被ばく説明やリスク評価は過大評価となる可能性があるため,線量計算値の取り扱いには十分な注意が必要である.

臨床技術
  • 北野 雅子, 所谷 亮太朗, 山田 陽子, 武藤 裕衣
    2022 年78 巻11 号 p. 1333-1340
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/09/13
    ジャーナル フリー

    【目的】2D撮影とDBTのAGDの実測値に対する表示値の誤差を明らかにし,AGDを推測する指標としての表示値の精度を評価する.【方法】20–80 mm厚のPMMAを撮影し,装置に表示される値を表示値とした.入射空気カーマと半価層を測定し,Danceらの式より2D撮影における実測値を算出した.一方,DBTにおける実測値は異なる投影角度を補正し,算出した.表示値が実測値に対してどの程度の誤差があるのかを確認し,PMMA厚に対する相対誤差について評価した.【結果】実測値に対する表示値の相対誤差の最大値は2D撮影で17.3%,STで19.1%,HRでは19.8%であった.【結語】PMMA厚が大きくなるに従い,実測値に対する表示値の相対誤差は大きくなる傾向がみられた.特に,DBTのPMMA厚70, 80 mmで,その傾向が顕著であった.

  • 古宮 瞭汰, 石塚 令奈, 太田 丞二, 東田 玲央那, 川崎 達哉, 桝田 喜正
    2022 年78 巻11 号 p. 1341-1348
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/10/24
    ジャーナル フリー

    【目的】X線CT検査は日常診療のみではなく,救急医療などさまざまな場面で必要とされる.医療従事者は患者介助時に被ばくすることがあるが,CT検査室内におけるCT専用防護板使用時の空気吸収線量分布は明らかにされていない.よって,空気吸収線量を同時に複数点測定し,CT専用防護板を使用時の空気吸収線量分布と空気吸収線量低減効果を明らかにする.【方法】X線CT装置にて人体ファントムを照射し,CT専用防護板の有無における空気吸収線量分布を小型OSL線量計にて測定した.【結果】空気吸収線量は水平方向0 cm,垂直方向120 cm,体軸方向50 cmで4.27 mGyと最も高くなった.CT専用防護板の設置により空気吸収線量低減率は水平方向0 cm,垂直方向150 cm,体軸方向50 cmで91.7%と最も大きくなった.【結語】CT専用防護板の真後ろは,91.7%の空気吸収線量低減効果が得られるが,ガントリとCT専用防護板の隙間が生じる場所は,空気吸収線量低減効果が65.8%低下することがわかった.

  • 瀬川 恵子, 吉川 諒, 能登 公也, 松原 孝祐, 松浦 幸広
    2022 年78 巻11 号 p. 1349-1357
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    [早期公開] 公開日: 2022/11/01
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,X線透視撮影装置の基準空気カーマ(Ka,r)と面積空気カーマ積算値(PKA)の表示値を実測値と比較し,その精度を評価することである.【方法】患者照射基準点に線量計を設置し,Ka,rを測定した.PKAはKa,rに照射面積を乗じて算出し,装置に表示されたKa,rとPKAとの誤差を求めた.【結果】すべての評価項目でKa,rとPKAの実測値に対する装置表示値の誤差はJIS規格の±35%以下であったが,メーカおよび装置により表示値の精度に違いがあった.【結語】JIS規格を上回る誤差はみられなかったが,装置の特性の把握および定期的な線量測定による管理が必要である.

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