2016年に日本輸血・細胞治療学会より「クリオプレシピテート院内作製プロトコール」が発表され,同種クリオプレシピテート(以下クリオ)の標準的調製方法が提示された.品質検討に関して3~6カ月に1回フィブリノゲン(fibrinogen;以下Fib)回収率のチェックが望ましいとの指針も示された.今回,上記プロトコールを参考に,日赤FFP-LR 480(以下FFP)より調製したクリオ51製剤について検討を行った.クリオ容量は,FFPの容量差の影響を受け最大で29.5mlの差が生じた.クリオのFib量はFFPのFib量を反映し(r=0.965),クリオ製剤間では最大で,平均的なクリオ1製剤分に近い655.2mgの差が生じた.Fib回収率は中央値48.2%(33.1~60.5%)であった.上記プロトコールには,FFPのFib量に関係なく回収率は40~50%と記載されているが,今回の検討ではFFPのFib量が回収率に影響する傾向がみられた(r=0.788).回収率40%未満の場合は,調製手順逸脱の可能性だけでなく,FFPのFib量の影響も考慮してクリオの品質評価を行うことが望ましいと考えられた.
<背景>自己抗体保有患者は自己抗体の他に同種抗体を保有する頻度が多いため1)2),共存する同種抗体の検出が重要となる.ポリエチレングリコール(PEG)吸着法は自己抗体吸着法として一般的に用いられているが,低力価の同種抗体も吸着されると指摘する報告がある3)4).海外では低イオン強度溶液(low ionic strength solution;LISS)を用いた自己抗体吸着法(以下LISS吸着法)も短時間での自己抗体吸着において有用であるという報告5)があるが本邦では一般的ではない6).今回我々はLISS吸着法が同種抗体の検出に有用であった3症例を経験したので報告する.<方法>自己抗体を保有する3患者においてLISS吸着法を行った.3カ月以内に輸血歴のない患者は自己赤血球を用い,輸血歴のある患者は患者とRh,Kidd,Diego同型の酵素処理した他家赤血球を用いて自己抗体の吸着を行い,上清で同種抗体の検索を行った.<結果>3例共にLISS吸着法にて同種抗体が検出された.<考察>LISS吸着法は自己抗体の吸着および,共存する同種抗体の検出において有用であると考えられた.
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