日本輸血細胞治療学会誌
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57 巻, 6 号
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第59回日本輸血・細胞治療学会総会教育講演依頼総説
第59回日本輸血・細胞治療学会総会シンポジウム依頼総説
原著
  • 内藤 友紀, 秋野 光明, 田村 暁, 勝又 雅子, 平山 順一, 藤原 満博, 東 寛, 本間 稚広, 加藤 俊明, 池田 久實
    2011 年 57 巻 6 号 p. 458-464
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/06
    ジャーナル フリー
    洗浄・置換血小板(W/R-PC)は,血小板(PC)輸血における非溶血性副作用の防止に有効な手段とされている.当施設では,輸血・細胞治療学会のガイドラインに従い,PCの血漿を洗浄置換液で置換する置換血小板(R-PC)を調製している.しかし,今後はR-PCでは輸血副作用を防止しきれない症例や抗体を有するIgA欠損患者またはハプトグロビン欠損患者に対して,R-PC中の残余血漿を除くため,複数回洗浄したPCが必要とされることも考えられる.
    我々は,洗浄置換液としてM-solを用いて,R-PCを2回洗浄(W2-PC)あるいは3回洗浄(W3-PC)することによる影響を検討するため,得られた各W-PCの血小板機能およびIgA量,ハプトグロビン量を測定した(n=6).
    各W-PCとR-PCを調製後48時間保存し血小板機能を調べたところ,今回実施した試験項目では差が認められず,洗浄を繰り返すことによる影響は確認されなかった.W-PCに残存する血漿蛋白量は,W2-PCで73±20mg,W3-PCが31±7mgであり,R-PCの542±114mgより有意に低値であった.PCに336±56mg含まれていたIgAは,R-PCで14.1±3.1mg,W2-PCで0.7±0.3mg,W3-PCでは0.1mg以下であった.ハプトグロビン量は,W2-PCとW3-PCでそれぞれ0.54±0.62mgと0.07±0.01mgであり,R-PCの12.6±9.5mgに比べると,はるかに低値であった.
    現行のR-PCでも十分に非溶血性の輸血副作用を防止できると考えるが,抗体を有するIgA欠損患者やハプトグロビン欠損患者への輸血など,さらに血漿蛋白量を低減させる必要のある患者には,複数回洗浄したPCを投与すれば副作用を回避しかつ十分に輸血効果が得られると考える.
症例
  • 吉居 真由, 山口 恭子, 池松 陽子, 江頭 貞臣, 豊嶋 崇徳, 赤司 浩一
    2011 年 57 巻 6 号 p. 465-469
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/06
    ジャーナル フリー
    血小板製剤輸血後に不規則抗体が陽転した2症例を経験したので報告する.
    2症例とも輸血前検査では不規則抗体スクリーニングは陰性であったが,血小板製剤輸血後の検査で不規則抗体が陽性となった.症例1では抗Jkb,症例2では抗Eが同定された.輸血した血小板製剤のドナーは,それぞれJk(b+),E(+)であったことから,輸血した血小板製剤中に含まれる微量な赤血球により抗体が産生されたか,あるいは二次免疫応答が生じて再活性化されたことが考えられる.
    通常,不規則抗体陽性患者への血小板製剤輸血については適合血の選択を行っていないが,今回のように抗体を産生,再活性化する場合があるため,今後十分な注意が必要である.
    また,特にKidd式のように抗体価が低下しやすい抗体は,輸血前検査で不規則抗体が見逃されることがあり,輸血前検査で検出感度以下になった場合や,転院した場合であっても適合血が選択できるように,情報が共有化されることが望まれる.
報告
  • 藤原 晴美, 渡邊 弘子, 山田 千亜希, 大友 直樹, 押田 眞知子, 友田 豊, 万木 紀美子, 星 順隆, 高橋 孝喜, 前川 平, ...
    2011 年 57 巻 6 号 p. 470-477
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/06
    ジャーナル フリー
    卒前,卒後における輸血医学教育は将来の安全かつ適正な輸血医療を推進していく上で重要である.しかし,大学病院の輸血部門が行う業務量は増加する一方で,教官数や教育時間には限界がある.これらの現状を明確にするために,平成21年度大学病院輸血部会議において卒前,卒後の輸血医学教育に果たす輸血部門技師の役割が調査された.89施設中70施設より回答があった.
    医学部学生に対して小グループ実習を導入している施設は63施設(90%)で,血液型検査は61施設(97%),交差適合試験は51施設(81%),不規則抗体関連検査は13施設(21%)が実施していた.新卒医師に対しては37施設(53%)が小グループ実習を導入しており,血液型検査は35施設(95%),交差適合試験は26施設(70%),不規則抗体関連検査は6施設(16%)が実施していた.輸血部門技師は卒前,卒後の実習にそれぞれ59%,78%の施設で携わっていた.卒後に交差適合試験の実習が施行されている施設では,未施行の施設に比較して輸血部門技師数が有意に多かった.
    以上から,大学輸血部門技師が輸血医学教育に果たす役割は大きく,教官と協力することで将来の安全かつ適正な輸血医療に貢献するものである.
  • 川畑 絹代, 安田 広康, 土田 秀明, 伊藤 正一, 菊地 正輝, 常山 初江, 内川 誠, 大戸 斉
    2011 年 57 巻 6 号 p. 478-483
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/06
    ジャーナル フリー
    抗KANNOは1991年に福島医大病院で遭遇した高頻度抗原に対する抗体で,既知の抗体にはその反応性が一致するものが無かった.発端者に因み,この抗体を抗KANNO,対応抗原をKANNO抗原と名付けた.KANNO抗原発見に関わった福島医大病院2症例と山形県および宮城県赤十字血液センターで同定した抗KANNO 12例,計14例について反応性,臨床的意義を検討した.
    抗KANNOを保有する14例のうち13例が妊娠歴のある女性であり,輸血よりも妊娠によって産生されやすい抗体であると考えられる.抗KANNOは高力価低親和性(HTLA)抗体の特徴を示し,類似した反応性を持つ抗JMHとは,AET処理赤血球と反応する点で鑑別できる.現在まで,抗KANNOによる溶血性輸血副作用(HTR)や胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)の報告はなく臨床的意義は低いと考えられるが,さらに症例を蓄積する必要がある.
  • 池田 珠世, 押田 眞知子, 帰山 ともみ, 櫻木 美基子, 館農 美香, 中尾 まゆみ, 清川 知子, 青地 寛, 永峰 啓丞, 冨山 佳 ...
    2011 年 57 巻 6 号 p. 484-489
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/06
    ジャーナル フリー
    当院ではT&S・MSBOSの導入や,適正輸血の推進,また在庫量の再検討を行うなど,廃棄血削減に取り組んでいる.本論文では,廃棄理由の詳細を明らかにするため2004年から2009年の6年間の当院での廃棄率,廃棄理由を解析した.2004年と2009年の廃棄率を比較すると,赤血球製剤は1.1%から0.2%に減少し,血小板製剤は0.3%が0.1%に減少.新鮮凍結血漿は0.4%から0.8%と増加した.赤血球製剤の廃棄が著減したのは輸血部における期限切れ廃棄となった製剤の減少が主たる要因であった(2004年75本,2009年6本).新鮮凍結血漿・血小板製剤は診療科に原因があって廃棄となる割合が高く(新鮮凍結血漿97%,血小板製剤92%),患者の容態変化などやむを得ないものも多いが,人為的なミスも多くあった.
    今回の解析にて,製剤種によって傾向の違いはあるものの,有効期限切れや患者容態の変化など以外に,不適切な取り扱いによるものなど人為的なミスによるものが多いことが明らかとなった.安全かつ効果的な輸血療法を実施するためには各血液製剤の特性や取り扱い方法を教育・浸透させていくことが必要であると考えられる.
論文記事
  • 若本 志乃舞, 藤原 満博, 高橋 大輔, 丹羽 光一, 佐藤 進一郎, 加藤 俊明, 東 寛, 池田 久實
    2011 年 57 巻 6 号 p. 490-499
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/06
    ジャーナル フリー
    【背景】輸血関連急性肺障害(transfusion-related acute lung injury:TRALI)の病因に,抗HLA Class II抗体による標的抗原陽性単球の活性化が関与していると考えられる.また,TRALIの特徴的な症状である肺水腫は血管透過性の亢進により誘導される.
    【方法】TRALIにおける肺水腫の形成に抗HLA Class II抗体と単球が関与する可能性を調べるため,TRALIの原因製剤となった抗HLA Class II抗体陽性血漿(抗HLA-DR血漿)存在下で,ヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMNC)とヒト肺微小血管内皮細胞(human lung microvascular endothelial cells:HMVEC)を共培養し,血管透過性亢進の有無を調べた.同様の実験を正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cells:HUVEC)を用いて行った.血管透過性は,共培養に添加した蛍光標識デキストランの透過性を測定することにより評価した.
    【結果】抗HLA-DR血漿存在下でPBMNCsとHMVECsまたはHUVECsを共培養することにより,血管内皮細胞の透過性が亢進した.この作用は抗体の特異性に依存していた.共培養にplatelet activating factor(PAF)のアンタゴニストであるCV-3988を添加することにより,血管透過性亢進作用はほぼ完全に抑制された.抗TNF-α中和抗体単独及び同抗体と抗IL-1β中和抗体の両方を共培養に添加することにより,HMVECsとHUVECの透過性亢進作用はそれぞれ部分的に抑制された.
    【考察】抗HLA Class II抗体の存在下で標的抗原を発現する単球と血管内皮細胞を共培養することにより,血管透過性亢進が誘導された.この反応にPAF,TNF-αまたはIL-1βが関与していると考えられた.従って,抗HLA Class II抗体による単球の活性化は,TRALIにおける肺水腫の病態形成に関与することが示唆された.
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