日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
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ISSN-L : 1881-3011
54 巻, 5 号
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原著
  • 高倉(岩田) 明子, 佐藤 功栄, 吉川 昭, 板橋 正子, 五反田 裕子, 田中 建志, 溝口 秀昭
    2008 年54 巻5 号 p. 587-591
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    【背景】輸血後HBV感染のリスクはHBV-NATの導入により減少したが,HBs抗原陰性で微量のHBV陽性血液を感染源とするオカルトHBV感染が問題として残っている.このような例に対処するためにHBVおよびHBs抗原を濃縮することにより検出感度を上げる簡便な濃縮法を開発したので報告する.
    【対象】HBc抗体価が赤血球凝集阻止法(HI法)により25HI価以上の値を示し,酵素抗体法(EIA法)により,HBs抗原が陰性,20プールNATによりHBV-DNAが検出できないという条件を満たした献血者由来の血漿,計78検体を対象とした.
    【方法】ポリ-L-リジンを表面にコートした磁性粒子を用いて,二価金属イオン存在下で,HBV-DNAを20倍に濃縮,HBs抗原を8倍に濃縮して測定した.HBs抗原はEIA(AxSYM®:Abbott社)にて,HBc抗体はHI(日本赤十字社)にて測定した.
    【成績】対象とした78検体のうち16検体で個別NATによりHBV-DNAが検出された.残りの個別NAT陰性の62検体のうちの25検体からHBV-DNA濃縮後に新たにHBV-DNAが検出された.また,対象とした78検体は,濃縮前の通常検査ではいずれもHBs抗原は陰性であったが,濃縮後には29検体から新たにHBs抗原が検出された.
    【結論】本濃縮法はHBs抗原,HBV-DNAの両者の検出感度を上げることにより,個別NATによってもHBV-DNAが検出できなかった検体からHBV-DNAを,また通常のEIAではHBs抗原が陰性の検体から新たにHBs抗原を検出することが出来た.
  • 花井 慶子, 山本 晃士, 菊地 良介, 成田 友美, 加藤 千秋, 柴山 修司, 梶田 博史, 西脇 公俊, 碓氷 章彦, 上田 裕一, ...
    2008 年54 巻5 号 p. 592-597
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    <背景·目的>胸部大動脈瘤に対する大血管置換術では,人工心肺使用時の血液のヘパリン化,および体外循環にともなう血小板数の減少や血小板機能の低下などによって大量出血をきたし,しばしば多量の輸血を必要とする.しかし大動脈瘤患者における出血傾向の原因のひとつとして重要なのは,瘤局所における凝固·線溶系の活性化により凝固異常が起こっているという点である.当院では大動脈瘤の手術において速やかに止血を図るため,手術室で全身麻酔導入後から人工心肺装置作動までの間に血小板アフェレーシスを実施して患者の自己血小板を採取し,人工心肺離脱後に患者に輸血するという治療を行ってきた.今回,その止血効果についてレトロスペクティブな検討を行った.<対象·方法>胸部大動脈瘤の手術を実施する26名の患者に対して,全身麻酔導入後から人工心肺装置作動までの間に,血液成分分離装置を使用して血小板アフェレーシスを実施した.採取した自己血小板15∼20単位は人工心肺離脱後に患者に輸血した.血小板アフェレーシスを実施しなかった過去の34症例と出血量·同種血液製剤の輸血量を比較,検討した.<成績>自己血小板の採取·輸血を実施しなかった症例での出血量は1,322±1,498ml(平均±標準偏差; 以下同様)であり,同種血液製剤の使用量は赤血球製剤12.8±14.2単位,新鮮凍結血漿17.1±20.8単位,濃厚血小板13.5±12.2単位であった.それに対して自己血小板を採取した症例では,出血量が688±493ml,同種血液製剤の使用量は赤血球製剤5.7±7.3単位,新鮮凍結血漿8.5±10.8単位,濃厚血小板2.7±6.5単位と,いずれも劇的に減少していた.<結論>大動脈瘤手術において患者から自己血小板を採取し,人工心肺離脱直後に輸血して止血を図ることは,出血量·輸血量の大幅な減少に寄与すると考えられた.
報告
  • 陶山 洋二, 野村 努, 池田 和真, 内田 立身
    2008 年54 巻5 号 p. 598-602
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1999年に日本輸血·細胞治療学会輸血療法委員会I&A小委員会の発足後,中国四国支部では,小委員会委員の医師1名のもと,中国地区と四国地区それぞれの技師代表,各県の医師と技師各1名のI&A担当者を決定した.翌年I&Aに対する意識調査目的のアンケートを行うとともに総会時に行われる視察員講習会への積極的参加,中国四国地方会での視察員講習会の開催,現地視察の実施など,輸血·細胞治療学会としてのI&A本稼動までの準備を進めてきた.この間,総会時の講習会に医師13名,技師23名,地方会での講習会に医師16名,技師70名が参加した.また,5施設に対して現地視察を行った.2006年の総会時に医師6名,技師18名が学会から視察員として認定され,現地視察を受けた5施設は,学会からI&Aの基準を満たしていると認定された.I&Aの活動を続けていくためには,視察員の増員,認知度の向上,手続きの効率化などが必要であると考えられた.
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