【背景】輸血後HBV感染のリスクはHBV-NATの導入により減少したが,HBs抗原陰性で微量のHBV陽性血液を感染源とするオカルトHBV感染が問題として残っている.このような例に対処するためにHBVおよびHBs抗原を濃縮することにより検出感度を上げる簡便な濃縮法を開発したので報告する.
【対象】HBc抗体価が赤血球凝集阻止法(HI法)により2
5HI価以上の値を示し,酵素抗体法(EIA法)により,HBs抗原が陰性,20プールNATによりHBV-DNAが検出できないという条件を満たした献血者由来の血漿,計78検体を対象とした.
【方法】ポリ-L-リジンを表面にコートした磁性粒子を用いて,二価金属イオン存在下で,HBV-DNAを20倍に濃縮,HBs抗原を8倍に濃縮して測定した.HBs抗原はEIA(AxSYM
®:Abbott社)にて,HBc抗体はHI(日本赤十字社)にて測定した.
【成績】対象とした78検体のうち16検体で個別NATによりHBV-DNAが検出された.残りの個別NAT陰性の62検体のうちの25検体からHBV-DNA濃縮後に新たにHBV-DNAが検出された.また,対象とした78検体は,濃縮前の通常検査ではいずれもHBs抗原は陰性であったが,濃縮後には29検体から新たにHBs抗原が検出された.
【結論】本濃縮法はHBs抗原,HBV-DNAの両者の検出感度を上げることにより,個別NATによってもHBV-DNAが検出できなかった検体からHBV-DNAを,また通常のEIAではHBs抗原が陰性の検体から新たにHBs抗原を検出することが出来た.
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