日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
58 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
症例
  • 鬼松 幸子, 内田 立身, 氏家 知佳, 山本 直子, 舩本 康申, 小河 敏伸, 本田 豊彦
    2012 年 58 巻 6 号 p. 760-764
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/15
    ジャーナル フリー
    新鮮凍結血漿(Fresh Frozen Plasma:FFP)の投与によりアナフィラキシー様反応を来し,検索の結果,抗C4抗体(IgGクラス)が関与した可能性が示唆された症例を経験した.さらに本例では輸血後にトリプターゼ値上昇,好酸球増多がありIgE値が高く,好酸球・好塩基球・肥満細胞の脱顆粒により生じたmediatorによるアナフィラキシー様反応を起こした可能性も示唆された.
    症例は79歳男性,胃癌と胆石症のため,胃全摘および胆嚢摘出術が施行された.手術中の総出血量が1,282ml,縫合部に出血傾向を認めたため,術後に照射赤血球濃厚液(Red Cell Concentrates:RCC)4単位を輸血し,その後FFP4単位の輸血を施行した.2本目のFFP投与開始30分後に蕁麻疹が出現したため直ちに輸血を中止し,電解質輸液に置換した.さらに頻脈と酸素飽和度(SpO2)の低下を認めたため,酸素マスクを装着し全身管理を行いながら経過観察した.翌朝にはSpO2は96%まで回復し,全身状態も改善した.
    輸血で認められるアナフィラキシーの原因は完全には解明されておらず成因を特定することは困難な場合が多いが,本例は原因の検索を行うことにより発生機序が推定された例と考えられ,ここに報告した.
  • 高杉 淑子, 岡村 奈央子, 徳住 美鈴, 和泉 洋一郎
    2012 年 58 巻 6 号 p. 765-769
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/15
    ジャーナル フリー
    初妊娠の37歳の女性は,10週に実施した妊娠初期検査で不規則抗体検査は陰性であった.40週に前期破水,陣痛が発来し入院となった.分娩進行中に児心拍が70台となり児頭下降不良のため,吸引分娩となった.胎児娩出後に出血性ショックを認め,薬物治療により血圧は小康状態になったが,出血が続いていたため赤血球濃厚液(RCC)16単位,新鮮凍結血漿(FFP)8単位の輸血依頼があった.緊急輸血のため院内在庫から生理食塩液法(生食法)による交差適合試験陰性のRCC 6単位,FFP 4単位輸血した.ところが不足分を取り寄せ,交差適合試験をポリエチレングリコール―間接抗グロブリン試験(PEG-IAT)法で行うと全て陽性であった.抗体同定検査で高頻度抗原Jraに対する抗体を検出したため,以降はJra陰性の血液を輸血した.その後遅延性溶血性副作用もなく順調に回復した.妊娠の経過中に,陰性であった不規則抗体が陽性化することもあり,妊娠後期に再検査を必要とする場合があると考えられる.
報告
  • 山村 亮介, 坂本 恵利奈, 寺田 芳樹, 阪本 親彦, 小坂 さおり, 青山 泰孝, 平井 学, 太田 健介, 日野 雅之
    2012 年 58 巻 6 号 p. 770-773
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/15
    ジャーナル フリー
    <背景>輸血後鉄過剰症は重篤な臓器障害を生じ,予後にも影響することが知られている.Deferasirox(DFX)は,用量依存的に鉄キレート効果を発揮する経口剤であり,鉄過剰症を予防するためには輸血頻度に応じてDFXを継続する必要がある.<目的>輸血後鉄過剰症患者におけるDFXによる除鉄効果について検討する.<方法>6施設においてDFXを処方された患者について後方視的に検討を行った.<成績>骨髄異形成症候群や再生不良性貧血など73例について中央値182日(19~428)の観察を行った.血清フェリチン値(SF)は一月あたり平均103ng/ml減少した.目標であるSF<500となり投与が一時終了されたのは3例,それ以外に継続投与が可能であった36例のうちSFが低下したのは19例であった.副作用によりDFXの投与が中止されたのは17例(23.3%)であり消化器症状,腎機能異常が主な原因であった.<結論>DFXは有効な鉄キレート効果が得られる一方,副作用により継続,増量の困難な症例が問題となる.早期から低用量で用いるなどの工夫が必要と考えられた.
速報
  • 牧野 茂義, 田中 朝志, 紀野 修一, 津野 寛和, 佐川 公矯, 高橋 孝喜
    2012 年 58 巻 6 号 p. 774-781
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/15
    ジャーナル フリー
    2011年調査は,日赤より輸血用血液製剤が供給された10,428施設(東日本大震災の被災地である東北4県を除く)に対し実施され4,322施設(41.4%)から回答が得られた.輸血管理体制の整備は,300床以上の医療施設では,輸血責任医師の任命以外は90%以上の整備率であり,ほぼ達成されていたが,小規模医療施設では50~70%の整備率であり,過去3年間はほとんど変化がなかった.特に輸血責任医師の任命は51.8%と低かった.2011年は病床当たりの各血液製剤使用量は横ばいもしくは微増程度であった.安全な輸血医療の実施のためにコンピューターシステムの導入率は,大規模医療施設では輸血時の携帯端末の使用が69.17%以外は,80%以上の利用率であったが,小規模医療施設ではいずれのステップも20%以下の利用に止まっていた.赤血球輸血を1日10単位以上実施した症例は,詳細調査回答施設の50.8%(382施設)で存在し,そこで使用された赤血球製剤は全体の15.95%,血漿製剤は28.58%を占めていた.国内自給率が2%と低い抗HBs人免疫グロブリンの使用目的は,血液汚染事故後のB型肝炎発症予防や母子感染予防が多かったが,使用量は肝移植後の肝炎発症予防が多く,総投与量の60.83%が使用されていた.
feedback
Top