日本輸血細胞治療学会誌
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ISSN-L : 1881-3011
63 巻, 1 号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
原著
  • 浅野 尚美, 小郷 博昭, 池田 亮, 閘 結稀, 髙木 尚江, 山川 美和, 吉岡 尚徳, 小林 優人, 淺田 騰, 藤井 敬子, 藤井 ...
    2017 年 63 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー

    生後4カ月以内の乳児では,母由来のIgG型抗A,抗B抗体の有無を確認した上で適合血を選択しなければならない.当院では,生後4カ月以内の乳児の外科的手術症例における輸血が比較的多く,限られた検体量の中で輸血用血液製剤の正確で迅速な準備が要求される.今回,母由来のIgG型抗A,抗B抗体が陽性であった生後4カ月以内の乳児に対し,赤血球輸血の際に選択された血液型について後方視的に解析を行った.

    2009年4月から2013年3月の4年間に,輸血検査を行った生後4カ月以内のO型以外の乳児は309人で,間接抗グロブリン試験でW+以上の凝集を認め母由来のIgG型抗A,抗B抗体が検出された症例が44例(14.2%)であった.1+以上を示した31例のうち24例がO型赤血球輸血を選択したが,省略してもよいとされているABO血液型ウラ検査(カラム凝集法)で,児の血液型と同型のウラ血球に凝集を認めた症例が17例あった.

    生後4カ月以内の乳児の輸血前検査として,A1またはB血球との間接抗グロブリン試験で1+以上の凝集を認めた場合に加え,血液型検査のウラ検査も,母由来のIgG型抗A,抗B抗体を検出できる場合があり,O型赤血球輸血の選択基準のひとつになり得ると考えられた.

  • 前川 隆彰, 佐藤 謙, 高野 昂佑, 岡田 陽介, 田地 規朗, 寺本 昌弘, 堀内 俊克, 嵯峨 玲奈, 加藤 章一郎, 山村 武史, ...
    2017 年 63 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー

    自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法は,再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫や多発性骨髄腫などでは標準的治療として実施されている.末梢血幹細胞採取の際,採血用と返血用に2本の末梢静脈カテーテル(PVC)が使用されるが,単一のダブルルーメン中心静脈カテーテル(dCVC)が用いられる場合もある.dCVCを用いた場合,返血された血液が採血側に混入することによる幹細胞採取効率の低下が懸念されるが,十分な検証はなされていない.そこで,我々は当科で行った36症例,計64回の末梢血幹細胞採取を,単一のdCVCから採取された群(dCVC群)と2本のPVCあるいはPVCとCVCを用いて採取された群(PVC群)に分けて後方視的に解析した.解析方法としては,[採取CD34陽性細胞数(個)/(末梢血CD34陽性細胞数(個/ml)×処理血液量(ml))]を推算採取効率と定義し,2群間で比較した.その結果,dCVC群の推算採取効率はPVC群に劣らず,dCVCの有用性が確認された.

  • 森 珠恵, 西田 まゆみ, 小笠原 芳恵, 下村 大樹, 南 睦, 古家 美幸, 中村 文彦
    2017 年 63 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー

    新鮮凍結血漿(FFP)は30~37℃で融解し3時間以内に使用しなければならないとされている.適切な温度で融解するために専用機器や恒温槽が用いられているが,FFPを頻繁に使用しない部署ではバットなどの容器を利用して融解されていることが多い.今回我々は縦型の容器を利用して簡便な手技でFFPを融解する方法を発案し,これを院内統一の融解方法として策定した.恒温槽を用いた方法で融解したFFPと今回策定した方法で融解したFFPの凝固因子活性を測定したところ,これらに有意差はみられなかった.この方法の院内研修を行い,FFPの使用頻度の少ない部署においても確実に適切な温度で融解できる体制を整えることができた.策定した融解方法とその院内研修は,FFP輸血を安全かつ有効に行うために有用と考えられた.

  • 西村 滋子, 高田 裕子, 大竹 千晶, 中原 美千代, 浅香 祐幸, 五十嵐 朋子, 兵藤 博信, 藤田 浩
    2017 年 63 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー

    【目的】産科出血症例において,クリオプレシピテート製剤の臨床効果を検証する.

    【方法】当院への初診形態の違いから3群(1群:他の医療機関からの分娩前母体搬送,2群:他の医療機関からの分娩後母体搬送,3群:院内発症)に分け,患者背景(年齢,ショックインデックス,産科DICスコア,ヘモグロビン値,フィブリノーゲン値,FDP値,AT値),治療成績(輸血量,容量負荷,子宮動脈塞栓術,子宮全摘術,DIC治療薬,入院期間)について,クリオ製剤使用群(CRYO)と非使用群(non-CRYO)の間でそれぞれ比較した.

    【結果】CRYOでは,non-CRYOと比較して,赤血球液輸血量(1,2,3群),新鮮凍結血漿輸血量(1群),容量負荷の発症率(3群),DIC治療薬使用率(2群)が有意に減少し,入院期間が有意に短縮していた(1,3群).

    【結語】産科出血症例を3群に分類し,それぞれの病態におけるクリオ製剤の臨床効果を示すことができた.

症例報告
  • 橋本 ひろみ, 大幡 真也, 冨田 孝子, 小西 和吾, 久保田 義則, 神澤 真紀, 南 陽介, 杉本 健
    2017 年 63 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー

    [緒言]血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma:AITL)の2症例につき輸血対応の特殊性を報告する.[症例1]86歳男性.腹腔内リンパ節腫脹を指摘され,リンパ節生検でAITLと診断した.ヘモグロビン(Hb)8.9g/dl,直接抗グロブリン試験(DAT)陽性,間接抗グロブリン試験(IAT)陽性,抗体同定検査では汎凝集パターンであった.内服化学療法及びステロイド投与が施行され,奏効中はIATの陰性化を認め無輸血で経過した.[症例2]75歳男性.皮疹・発熱を主訴に入院しAITLと診断したが,骨髄に腫瘍細胞の浸潤を認めた.Hb 8.5g/dl,DAT陽性,IAT陽性,抗体同定検査では汎凝集パターンであった.点滴化学療法4コースが施行され,IATは一過性に陰性化した.経過中顕性出血は無かったが,赤血球濃厚液34単位,濃厚血小板80単位の輸血を必要とした.[考察]症例1は治療奏効期間の輸血非依存性が保たれ,症例2は血球減少の原因として骨髄造血機能低下と血球破壊亢進の関与が考えられた.活動性AITL患者では輸血効果の得にくい場合がある.

  • 中桐 逸博, 岡井 美樹, 仲井 富久江, 文屋 涼子, 徳永 博俊, 松橋 佳子, 田坂 大象, 通山 薫, 和田 秀穂
    2017 年 63 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2017/02/28
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー

    輸血後にHIV-1 p24抗原が偽陽性反応を呈した稀な症例を経験した.症例は62歳女性,肺腺癌に対する右肺下葉切除の目的で当院入院.輸血前は第4世代HIVスクリーニング検査陰性.入院後,Ir-RBC-LR 14単位,FFP-LR 6単位が輸血された.3カ月後のHIVスクリーニング検査でp24抗原陽性,抗体陰性であった.HIV確認試験としてTaqMan法によるHIV-1 RNAは検出感度未満.In-houseのPCRでもHIV-1 proviral DNAは陰性であった.また,HIV-1とHIV-2のウエスタンブロット法も陰性であった.これら確認試験の結果からp24抗原は偽陽性反応と判断した.10カ月後,HIVスクリーニングは陰転化し,p24抗原の偽陽性反応もみられなかった.偽陽性反応の成因については明らかではないが,患者血清中にALPに非特異的に反応するIgM抗体様物質が存在したために引き起こされたものと推測された.

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