獣医臨床皮膚科
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16 巻, 3 号
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原著
  • 笠井 智子, 三枝 早苗, 佐々木 崇
    原稿種別: 原著
    2010 年 16 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    人医領域で院内感染菌として重要視されているメチシリン耐性 Staphylococcus aureus(MRSA)が動物から分離される例が近年増加している。一方,犬の常在性ブドウ球菌は S. pseudintermediusであり,メチシリン耐性S. pseudintermedius(MRSP)が問題となっている。 S. pseudintermediusの同定には遺伝子検査が必要なため,臨床検査機関ではその同定に対応できていない。そこで本研究では膿皮症罹患犬のうち過去に臨床検査機関でMRSAの感染が同定された10症例について原因菌を再検討することとした。各症例よりスワブで検体採取し,臨床検査機関2社(A社,B社)への提出と同時に,我々はブドウ球菌を分離しコアグラーゼ陽性ブドウ球菌菌種同定のためのmultiplex-PCR(M-PCR)法を用いた菌種同定を行い,結果を比較検討した。M-PCRの結果,10症例はいずれも S. aureusではなく,8症例はS. pseudintermedius,2症例はS. schleiferiであり,遺伝子検査によって9症例がメチシリン耐性と判定された。一方臨床検査機関2社の検査結果は,A社が9症例をMRSAと同定し,B社は7症例で属レベルの同定(Staphylococcus sp.)にとどまり,全症例でメチシリン耐性判定未実施であった。ブドウ球菌感染症において必須の検査項目であるメチシリン耐性判定の基準は菌種によって異なるため,菌種同定の不備が治療方針に影響を与えることが示唆された。
  • 村山 信雄, 永田 雅彦
    原稿種別: 原著
    2010 年 16 巻 3 号 p. 125-132
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    犬のマラセチア皮膚炎における2%硝酸ミコナゾール・2%グルコン酸クロルヘキシジンシャンプー(Malaseb™, Dermcare-Vet Pty Ltd., Springwood, Australia)の局所療法に関する効果を,対照薬に1%二硫化セレンシャンプーを用いた無作為試験者盲検比較試験により検討した。マラセチア皮膚炎を有する126頭をランダム表に基づき試験薬群および対照薬群に振り分けた。試験者により治療前後の紅斑,鱗屑,脂漏,痒みをスコア化した。また Malassezia spp.およびStaphylococcus spp.の評価として治療前後に培養検査を実施した。両群とも試験終了時の総スコアと各皮疹スコアは,試験開始時より有意に減少した(P≦0.001)。試験終了時の総スコアは,試験薬群が対照薬群より有意に低かった(P≦0.001)。 Malassezia spp.およびStaphylococcus spp.の菌数は,両群とも試験終了時に有意に減少し(P≦0.001),両群間で有意差はなかったが試験薬群が対照薬群よりも低かった。本試験において試験薬群の有害事象は7.1%であったが,いずれも軽度であり対照薬群と有意差を認めなかった(P=0.718)。以上より2%硝酸ミコナゾール・2%グルコン酸クロルヘキシジンシャンプーは,犬のマラセチア皮膚炎の局所外用療法として有効かつ安全であることが示唆された。
症例報告
  • 満田 千賀, 織田 春人, 伊藤 政史, 倉田 朋子, 呰上 大吾, 船津 敏弘, 永田 雅彦
    2010 年 16 巻 3 号 p. 133-136
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/28
    ジャーナル フリー
    若齢で発症した著しい末梢浮腫を呈したミニチュア・ダックスフンド4例を報告した。浮腫は3~5ヵ月齢で耳介と尾に生じ,一部では口吻,眼囲,四肢,包皮にもみられた。3例は身体検査および血液検査で浮腫の原因と考えられる特記すべき異常は認められなかった。症例4では中程度の低アルブミン血症が一過性にみられたが,基礎疾患を示唆する臨床像および検査所見はみられなかった。皮膚病理組織像は真皮全層に広範な浮腫と本来の原線維構造を失った淡い膠原線維がみられた。これら所見より皮膚の先天的血管機能異常が予想され,浮腫はニコチン酸トコフェロールやカルバゾクロムスルホン酸ナトリウムの投与後に軽減した。
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