12歳,去勢雄の雑種猫が突然の腰部皮膚の裂傷を主訴に来院した。腰部の皮膚は不規則に裂開し,シート状に剥離していた。皮膚組織検査で角化亢進を伴う表皮の菲薄化と真皮の膠原線維の粗鬆化が認められ,後天性皮膚脆弱症候群と診断した。本例は下顎膿瘍のための摂食障害により衰弱死したが,剖検で胆管肝炎,膜性増殖性糸球体腎炎に加え,腸絨毛の線維症が合併症として確認された。また臨床的にも,吸収不良に配慮した消化酵素配合剤の内服で皮膚徴候の改善がみられたため,吸収不良が皮膚障害に密接に関連していたものと考えられた。
メルケル細胞癌を含む多発性皮膚腫瘍が発生した15歳齢の猫の臨床転帰および病理所見について報告する。腰背部に皮膚腫瘤を認め,病理組織検査からリンパ節転移を伴うメルケル細胞癌と診断した。背部にも多発性皮膚病変を認め,病理組織学的にボーエン様表皮内癌,基底細胞癌,および皮膚肥満細胞腫と診断した。第154病日に斃死し,病理解剖にて骨盤腔内にメルケル細胞癌の浸潤病変を確認した。本論文では,他の複数の皮膚腫瘍との併発がみられた猫のメルケル細胞癌の病理解剖および組織検査所見の詳細を述べる。
犬ニキビダニ症の6例(汎発性5例,局所性1例)に,アフォキソラネル2.7–5.6 mg/kgを初診時に経口投与し,その後は3–6週間隔で投与して効果を評価した。ニキビダニの陰転に必要な投与回数は,2例が1回,3例が2回,1例が3回だった。皮膚病変は,初診から4–12週間で全症例が回復した。飼育者への聞き取りと再診時の身体検査で,有害事象はなかった。全症例が最終診察から6ヶ月以上経過し,臨床症状の再発は認めていない。アフォキソラネルの投与は,犬ニキビダニ症の治療に有効であることが確認された。