8歳,去勢雄のドメスティック・ショートヘアーの猫が,3ヶ月前からの四肢すべての肉球における瘙痒と皮角に類似する痂皮病変を伴った進行性皮膚炎で来院した。痂皮病変は硬く,部位によっては10 mmに及んでいた。皮膚掻爬により,Sarcoptes scabieiに一致するダニと卵が大量に検出された。4 mm径の皮膚生検では,角質層内の節足動物,細菌性球菌,アカントーシスを伴うびまん性の著しい正常角化および不全角化を認め,血管周囲の肥満細胞性皮膚炎と化膿性皮膚炎はごく軽度であった。この猫は,ミルベマイシンオキシムを併用したアフォキソラネルの単回経口投与で治療された。14日後の再診時には臨床症状が完全に消失していた。この珍しい症状は,ヒトのノルウェー疥癬に類似していた。
落葉状天疱瘡は,表皮細胞間接合部に対する自己抗体の形成を特徴とする免疫介在性疾患である。従来の治療法としては,免疫抑制量のグルココルチコイド投与などがある。本研究の目的は,病理組織学的に落葉状天疱瘡と診断された猫に関して,既存の心臓疾患のため,コルチコステロイドの長期経口投与による副作用を避ける目的で,ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬であるオクラシチニブ(アポキル®,Zoetis,ブエノスアイレス,アルゼンチン)で治療した一例を紹介することである。