本研究はアトピー性皮膚炎の犬に対し,セラミド含有保湿入浴剤とセラミド含有シャンプー剤の有用性を無作為化単盲検比較試験で検討した。症例はオクラシチニブ0.4–0.6 mg/kg,1日1回の全身投与を受けていたアトピー性皮膚炎の犬を対象とし,合計20例を無作為に入浴剤群およびシャンプー群の2群に振り分け,週に2回,4週間入浴あるいはシャンプーの介入を行った。両群で2週毎に犬アトピー性皮膚炎重症度指数(CADESI-04),痒みスコア(PVAS)を評価した。11例において2週後よりオクラシチニブの減薬を行い,試験終了時点での投薬スコア(MS)を評価した。両群のうち各6頭では2週毎に腋窩,内股,耳介における経皮水分蒸散量(TEWL)の測定を行った。試験終了後,両群ともにCADESI-04およびPVASにおいて試験開始前に対して2週後,4週後でそれぞれ有意な改善が認められた(p<0.05)。TEWLにおいて両群の一部部位で試験開始前に比較して試験終了後に有意な改善が認められた(p<0.05)。MSにおいて試験開始から2週後に対して,2週後から4週後のオクラシチニブの投薬総量の有意な減少が認められ(p<0.05),臨床症状の悪化は認められなかった。本研究の結果より,セラミド含有保湿入浴剤とセラミド含有シャンプーは,いずれも犬アトピー性皮膚炎に対する有用な支持療法となる可能性が示された。
32症例の犬の腹部皮膚にて,ヒトで使用される超音波画像撮影装置を用いてコラーゲン密度を可視化し,加齢性変化を調査した。その結果,犬におけるコラーゲンスコアの平均(中央値)は65.925(65.8)であり,年齢ごとに3つのグループ(0~5歳,6~12歳,13~17歳)に分けた場合,それぞれの中央値における群間有意差は認められなかった(p>0.05)。この装置で犬の皮膚のコラーゲン密度を可視化できる可能性が期待され,本研究においては,ヒトの加齢に伴う皮膚のコラーゲンの減少は犬では明らかではなかった。