皮膚感覚過敏を疑う犬2例を報告した。症例1は2歳齢,避妊雌のチワワで,右側の頸部や耳介背側基部に触れると掻破行動が誘導された。症例2は1歳齢,去勢雄のアメリカンコッカースパニエルで,頭部の搔破行動,左耳孔付近に触れると拒否反応が認められた。いずれもMRI検査にて中枢神経に異常なく,末梢神経疼痛治療薬,選択的セロトニン再吸収阻害薬,抗痙攣薬など複合的な神経系治療薬とヤヌスキナーゼ阻害剤の併用により改善した。以上より,末梢神経原性の皮膚感覚過敏を疑うとともに,本症における治療について考察した。
パグ,6歳齢,未去勢雄において,プレドニゾロンの長期全身投与中に大腿部内側に掻痒を伴わない黒色の局面を認めた。組織学的には,犬の色素性ウイルス局面に矛盾のない所見を認めた。皮膚病変部より抽出したDNAを用い,PCRおよびDNAシーケンスを行った結果,イヌパピローマウイルス12型のL1遺伝子配列の一部と99.22%一致する結果を得た。筆者らの知りうる限り,本症例は犬パピローマウイルス12型の感染が関与した色素性ウイルス局面を生じたパグのはじめての報告であると考えられた。
虚血性皮膚障害に合致した両側耳介脱毛の犬3例を報告した。症例1は2歳齢,去勢雄のジャックラッセル・テリア,幼少より耳介に鱗屑や脱毛がみられた。症例2は8歳齢,雄のチワワ,1年前より口吻と駆幹の薄毛,その後耳介に拡大した。症例3は1歳齢,去勢雄のミニチュアダックスフンド,冬に耳介の脱毛が生じた。臨床像や緒検査で感染症,代謝性疾患,また心疾患や血液疾患を示唆する所見はみられなかった。血行改善を目的とした薬物療法により,サーモグラフィや皮膚温度計による皮膚温度の上昇とともに脱毛が改善した。以上より,耳介脱毛の病態として末梢血管機能失調を予想した。
12歳,去勢済雄,雑種猫が顔面の著しい腫脹と脱毛や色素沈着,口唇の糜爛や潰瘍,後肢端の腫脹や脱毛,尾の脱毛や色素沈着を主訴に受診した。顔面および後肢端の皮膚病理検査では,毛包を中心としたマクロファージの結節状浸潤がみられ,アルシアンブルー染色で毛包周囲にムチン沈着がごく軽度に観察された。臨床像および病理組織学的所見から猫の変性性ムチン沈着性毛包上皮炎と診断した。トリアムシノロンアセトニド0.7 mg/kg 1日1回およびシクロスポリン8 mg/kg 1日1回の併用投与を行ったが,4週間後に食欲廃絶し斃死した。