犬の表在性膿皮症は,皮膚表面に常在するブドウ球菌(Staphylococcus pseudintermedius,S. schleiferiなど)が表皮や毛包に存在,あるいは侵入して発症する。近年では薬剤耐性菌が病変部から分離される症例が増加しており,治療に苦慮することも多い。そこで,日本獣医皮膚科学会では犬の表在性膿皮症の治療ガイドラインの作成を試みた。近年,海外では複数のシステマティックレビューや,ガイドラインが報告されていることから,これらを参考にしつつ日本独自のガイドラインの作成を目指したが,エビデンスとなる論文が十分でなく,現時点では困難であることが明らかになった。この中で,現時点で有効であると考えられるいくつかの知見が得られたので治療指針として提示したい。また,現時点での問題点についても述べる。
3頭のウェルシュ・コーギー・ペンブロークがトリミングサロンでシャンプーを実施後に沈うつ,食欲不振,発熱をみとめた。3頭とも体幹を中心とした皮膚に斑状紅斑・丘疹がみられ,検査所見では白血球数増加,C反応性蛋白(CRP)上昇が認められた。プレドニゾロンを用いた対症療法を行い,全身状態の改善とともに皮疹も消失した。3症例の発症までの経過や臨床症状,検査所見,同一のシャンプー剤を使用していたことからシャンプー剤による皮膚薬物有害反応が疑われた。