本症例報告では,3 頭の犬における肉球の角化腫(たこ)による疼痛緩和を目的としたシンプルな外科治療について解説する。肉球の角化腫とは,肉球の角質層の局所的な過角化によって形成される腫瘤であるが,疼痛により跛行を呈することもある。患指の浅指屈筋(うち1 例では深指屈筋も)の腱切除を外科的に実施すると,患肢端の負重バランスが変化し,疼痛のある肉球にかかる負重が減少する。本報告の全ての犬において,速やかな跛行の改善が見られ,術後の回復も早かった。これまでのところ,この3 例の跛行は再発していない。
獣医療において慢性難治性創傷はよく遭遇する問題で,ユニークな治療戦略が発案されている。人医療及び獣医療でも,難治性の創傷が高気圧酸素療法(HBOT)で加療されている。この治療法では,患者を1気圧以上の気圧下で100%の酸素に暴露し,高濃度酸素化組織にする。これにより,種々の機序で治癒が促進される。本報告では,薬剤の血管外漏出から二次的に生じ,1ヶ月以上治癒しなかった創傷が,高気圧酸素療法に反応した臨床例を解説する。