作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
39 巻 , 4 号
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巻頭言
  • 池田 望
    2020 年 39 巻 4 号 p. 391
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築,我が事・丸ごとの地域共生社会の実現,共生と予 防を車の両輪とした認知症施策,これらはすべて政府が「共生」をキーワードに掲げて取り組んでいる施策である. 障害の有無,年齢,性別にかかわらず全ての人が互いを尊重し,支え合って生きる共生社会は疑うべくもない理想 的な社会だと思えるし,それゆえ私たち作業療法士もそのような社会を目指して様々に取り組んでいる.
学術部報告
総説
  • 岸村 厚志, 飛田 伊都子
    2020 年 39 巻 4 号 p. 395-405
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:わが国は超高齢社会を迎え,将来的な介護労働者不足が懸念されるが,その要因には職業性腰痛があげられている.職業性腰痛の予防対策として,海外では福祉用具を活用する抱上げない介助が徹底されている一方,本邦においては福祉用具の普及が進まないのが現状である.これは,介護現場において福祉用具の活用を促進させる環境が未整備である点と,介助技術の習得の困難さが要因と考えられる.これらの要因を解決する方法として,個人の行動と環境の関係を追及する心理学である行動分析学に着目する.本稿では,介護労働者の腰痛に関連する現況を概説し,福祉用具を用いた介助方法の教授法に対する行動分析学の有用性について論じる.
原著論文
  • ─手指運動麻痺の軽度群と重度群の2群間における治療効果の差─
    湯川 喜裕, 中村 一仁, 水口 雅俊, 下村 亮太, 美馬 達哉
    2020 年 39 巻 4 号 p. 406-413
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:脳卒中片麻痺患者の運動麻痺に対する低頻度の反復経頭蓋磁気刺激と作業療法の併用療法効果について,手指運動麻痺の軽度群と重度群の2群に分類し,治療効果の違いをFugl-Meyer Assessment,10秒間テスト,他動的関節可動域(Passive-Range of Motion;以下,P-ROM),Modified Ashworth Scale(以下,MAS),Motor Activity Log(以下,MAL),運動誘発電位を用いて検討した.手指の運動麻痺が軽度な患者群は治療後に全ての項目で有意な改善を認めた.一方,重度な患者群は,MASやP-ROMの改善に伴い,MALが改善した.併用療法は,重症度により,治療効果に差を認めることが示唆された.
  • ─Sense of Coherence(SOC)高・低群の特徴─
    山本 泰雄, 山崎 喜比古
    2020 年 39 巻 4 号 p. 414-425
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究は,高齢者の社会参加に向けた行動・心境を解明し,支援方法を提言することを目的とした.在宅の要支援1・2と要介護1の20名に,ストレス対処能力・健康保持の指標であるSOCスケールと半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.結果,社会参加開始,継続に至った行動・心境のうち【心身・周囲の状況を把握する】,【状況に応じた行動を予測する】,【実体験後のリフレクションにて解決を見出す】がSOC高群のみ,社会参加に結びつかなかった行動・心境のうち【家族・友人に助けを求めない】,【参加することに意味を感じない】がSOC低群のみに出現した.支援においてSOCの視点をもつことの有用性を示唆した.
  • 濱田 洋子, 補永 薫, 武田 さより, 坂田 祥子, 近藤 国嗣
    2020 年 39 巻 4 号 p. 426-432
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究では,回復期リハビリテーション病棟における右利きの初発脳疾患右上肢片麻痺患者を対象とし,麻痺肢における箸の実用性に関与する因子を調査した.患者属性と医学的情報の収集,各種上肢機能評価およびインゲン豆を箸でつまんで移動させる課題を実施した.本課題が実施可能であれば,普通箸を使用した食事評価を行った.その際は,30分以内に8割以上の食事摂取が可能であることを実用性の基準とした.箸の実用性の有無における基本情報・測定項目を単変量解析で比較し,2群間で有意差を認めた項目を用いて判別分析を行った.その結果,実用的な箸の使用におけるSTEFおよびインゲン豆を箸でつまんで移動させる課題の有用性が示された.
  • 池田 公平, 笹田 哲
    2020 年 39 巻 4 号 p. 433-441
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟に入院中の片麻痺患者が,再び作業を獲得していく過程を主観的経験から明らかにすることである.片麻痺患者5名に対し日々の作業遂行について半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.結果,【作業の状態を把握する】,【実生活での作業遂行に階層性が生じる】,【作業を通して自分の可能性を試す】,【作業を通して学習する】,【作業に挑戦する】,【作業を回避する】,【新たな作業を選択する】の7つのカテゴリーが生成された.対象者は,作業を通して自身の可能性を試し,経験に根ざした学習を基に新たな作業を選択する過程を経ていたことが明らかとなった.
  • ─横断研究─
    今岡 泰憲, 廣瀬 桃子, 山口 みさき, 天白 陽介, 塩津 裕康
    2020 年 39 巻 4 号 p. 442-449
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究の目的は,急性期病院において作業療法士が肺炎患者の病棟トイレ自立使用可能・不可能を判断する下肢機能評価のカットオフ値を算出することである.研究デザインは横断研究とした.対象は肺炎患者56名,調査項目は,SPPB,TUG,膝伸展筋力とした.結果,病棟トイレ使用可能・不可能に関連する因子としてTUGが抽出され,カットオフ値:11.8秒,AUC:0.807,感度:69.4%,特異度:89.5%であった.作業療法士は,算出されたTUGのカットオフ値:11.8秒を用いることで,観察による主観的な評価だけでなく,客観的な評価基準に基づいて,病棟トイレ自立使用可能・不可能を判断することが可能となる.
  • ~対人関係機能の障害と陰性症状の重症度に関する探索的研究~
    岡田 宏基, 平野 大輔, 谷口 敬道
    2020 年 39 巻 4 号 p. 450-458
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:長期入院者を精神障害者社会生活評価尺度(LASMI)で評価した対人関係機能の障害とBrief Negative Symptom Scale(BNSS)で評価した陰性症状の重症度との関連を検討し,障害の有無を判別するBNSS得点カットオフ値を探索的に算出した.対象者は1年以上精神科病院に入院する統合失調症者で,分析には順序ロジスティック回帰分析,ROC曲線を使用した.結果,分析対象は53名となりBNSSと関連が認められカットオフ値が20以下であった項目は自主的な付き合い,30~40の範囲内にあった項目は自発性,友人付き合い,40~50にあった項目は主張,応答,発話の明瞭さであった.障害の有無を判別する陰性症状の重症度は,各対人機能によって異なる可能性がある.
  • ─多職種チーム医療における作業療法士の役割─
    村田 雄一, 大橋 秀行, 添田 啓子, 久保田 富夫
    2020 年 39 巻 4 号 p. 459-467
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究は,医療観察法の入院医療における作業療法実践から,介入の焦点や技術と作業療法士の役割について明らかにすることを目的とした.この医療に従事するエキスパートの作業療法士を対象に半構造化面接を行い,質的分析を実施した結果,本人の“守りたい暮らしの安定”を目指す作業療法実践の概念的構造が得られた.この医療における多職種チームの中で作業療法士は,対象者の守りたい暮らしを主眼におき,当たり前の日々の生活の中にある作業(occupation)を安定してできるようにともに取り組むことにより,間接的に再他害行為を防止することを担っている.
  • 吉田 太樹, 伊藤 大将, 渡邉 翔太, 大須 理英子, 大高 洋平
    2020 年 39 巻 4 号 p. 468-477
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:脳卒中患者におけるリハビリテーション(以下,リハ)のモチベーションに関する知見をシステマティックレビューを用いて整理した.PubMed,CENTRAL,医中誌Webのデータベースから1,930文献が検索され,適格基準・除外基準を満たした13論文が抽出された.脳卒中患者のモチベーション評価には,リハのモチベーションに特化していない尺度や医療者による観察評価が用いられていた.モチベーションとリハの相互作用については,モチベーションに影響を与える要因,モチベーションが機能や活動に及ぼす影響について報告されていたが,報告の質・量共に不十分であった.今後は脳卒中患者のリハに対するモチベーションの概念形成や評価尺度開発が必要である.
  • 山本 勝仁, 竹林 崇, 高井 京子, 徳田 和宏, 細見 雅史
    2020 年 39 巻 4 号 p. 478-485
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本試験は,脳卒中急性期脳卒中患者に対し,病棟での自主練習を含むmodified CI療法(以下,病棟実施型CI療法)が麻痺手の機能・行動に与える影響を調べることを目的に実施した.方法は,急性期脳卒中患者に対し,訓練室で行われる通常のmodified CI療法(以下,mCI療法)と病棟実施型CI療法が麻痺手の機能と使用行動に与える影響について,後ろ向きコホート試験で探索的に比較した.その結果,両群とも麻痺手の機能・行動は介入前後に有意に改善した.しかし,群間比較では,麻痺手の使用行動のみ,病棟実施型CI療法が,通常のmCI療法に比べ,有意に改善した.病棟実施型CI療法は,実生活の麻痺手の使用行動に影響を与える可能性がある.
実践報告
  • 髙橋 佑弥, 竹林 崇, 石垣 賢和
    2020 年 39 巻 4 号 p. 486-494
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:Hybrid Assistive Neuromuscular Dynamic Stimulation therapy(以下,HANDS療法)は,脳卒中後上肢麻痺の末梢部の機能改善に効果が示されている.一方で,日常生活における麻痺手の使用行動および中枢部の機能改善は課題であった.今回,回復期の1症例に具体的な課題のスキル向上を目的とした課題指向型訓練,麻痺手の使用行動に有効とされている簡略化したTransfer Package,中枢部の機能改善に有効とされているロボット療法を,HANDS療法と複合して実施した.結果,Fugl-Meyer AssessmentとMotor Active Logが臨床上意味のある最小変化量を超える改善を示し,希望していた食事動作が獲得されたため後方視的に検証し,考察を合わせて報告する.
  • 清水 賢二, 酒井 浩, 木村 匡男, 田後 裕之, 髙橋 守正
    2020 年 39 巻 4 号 p. 495-502
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:聴覚失認とは,聴覚による言語や環境音の認知が困難になる状態であり,横側頭回や聴放線の損傷によって生じるとされている.今回,聴覚失認を呈した60歳代の症例を経験した.もともと社交的な本症例であったが,聞き取りの困難さから周囲との交流を避けるようになっていった.作業療法において読話を用いた視覚的代償戦略を用いることで,聴覚失認の症状自体は変化を得られないなかでもコミュニケーションの困難さを克服しだし,周囲との交流を取り戻し始めた.コミュニケーションの障害を言語機能障害ととらえず,生活障害としてとらえて,作業療法士も積極的に介入していく必要がある.
  • ─適応障害を呈する対象者への関わりから─
    南 庄一郎
    2020 年 39 巻 4 号 p. 503-510
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:今回,精神科デイケアで復職を希望する適応障害の対象者にリワーク支援を行う機会を得た.対象者は残りの休職期間内に復職できなければ解雇になるという状況であったため,リハビリテーションチームは対象者と達成期間を掲げた合意目標を設定し,その実現に向けて多職種支援を行う生活行為向上マネジメントに着目して,これに基づく関わりを行った.この結果,期限内に対象者の復職に繋げることができた.本介入から,限られた期間で目標達成が必要な対象者のリワーク支援において,生活行為向上マネジメントを用いることで対象者と家族,勤務先,リハビリテーションチームの連携が推進され,効率的で効果的な介入が可能になることが示唆された.
  • 稲田 雅也, 山岸 誠, 水落 和也, 中村 健
    2020 年 39 巻 4 号 p. 511-518
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/08/15
    ジャーナル フリー
    要旨:今回,我々は仕事中の挫傷事故により,Spaghetti wristを呈した症例に対して,術後早期から段階的なスプリント療法と独立屈曲運動を行った.また長期にわたって知覚再教育,機能訓練を実践した.術後19ヵ月まで把持能力と正中神経領域の感覚機能の改善を認めたが,尺骨神経領域の改善は乏しかった.Spaghetti wrist症例では,血管や神経,腱断裂が多数あるため縫合腱の緊張度を確認し,単独指の独立運動は術後4週以降に開始することが望ましいが,神経や動脈損傷の程度を見極めて実践することが重要である.
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