作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
40 巻, 2 号
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巻頭言
  • 窪田 正大
    原稿種別: 巻頭言
    2021 年 40 巻 2 号 p. 137
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    世界中で新型コロナウイルスが猛威を奮っており,第1波・第2波が過ぎ去ったと思うまもなく,第3波による感染拡大および患者増加が続いている.私がこの巻頭言を執筆している2020年12月は,イギリスに次いでアメリカで,新型コロナウイルスのワクチン接種が世界で先駆けて実施された.ワクチンの効果に期待する一方で,日々医療の最前線で患者さんの治療に尽力されている医療従事者の皆様に,深く感謝申し上げる.また,罹患された全ての人々が1日も早く通常の生活にもどれることを祈っている.さらに,この原稿が掲載される春には,感染拡大が終息していることを心から願っている.
第54回日本作業療法学会基調講演〔日本語対訳付〕
  • ─作業療法士のための研究例─
    マイク・D・ フェターズ
    原稿種別: 第54回日本作業療法学会基調講演〔日本語対訳付〕
    2021 年 40 巻 2 号 p. 139-157
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    序論:混合研究法を用いる研究者が世界で増えている中,作業療法研究者も,この調査アプローチの本質と力を知る必要がある.本稿の目的は:1)質的,量的,および混合研究法アプローチの基本的特性を確認し,2)混合研究法デザインの3つの基本型について特徴を説明する作業療法分野の研究例を用いて各デザインを示し,3)それら混合研究法を用いた作業療法研究に共通する統合の特性をレビューすることである.結果:ここで取り上げた3つの作業療法の研究例では,統合の特性が多く見られる.まず,タイトルに,混合研究法のデザイン手続きを用いた研究であることが示されている.また,統合の目的を示し,両タイプのデータ収集を意図したことを明示あるいは暗示している.各研究には,それぞれ特定の混合研究法デザインの名称が使われている.これらの論文には,主にデータの連結,積み上げ,マッチング,比較といった,データ収集段階における統合の意図の好例が見られる.さらに,結合,データ変換,およびジョイント・ディスプレイの作成といった,分析作業における,統合の意図とデザイン手続きも取り上げられている.考察:ここで取り上げた研究例は,作業療法研究者が混合研究法における最新の統合戦略の数々をどのように用いているかを示している.本レビューは,作業療法研究者が,他の研究者による混合研究法を用いた作業療法研究を解釈する上で,また,自身の研究で混合研究法を活用する上での参考となるであろう.
原著論文
  • 湯川 喜裕, 水口 茉理菜, 内藤 栄一
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 2 号 p. 158-167
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    振動誘発運動感覚錯覚(Vibration-induced Illusory Movement;以下,VIM)課題が脳卒中片麻痺患者の上肢運動麻痺に対する効果について,回復期脳卒中片麻痺患者14名を対象に検討した.介入前,作業療法後,振動刺激で惹起される麻痺側の運動錯覚を用いたVIM療法後,VIM療法終了から1ヵ月後に,各介入前後で運動機能面の評価を行った.作業療法後と比較して,VIM療法後に運動イメージの想起能力や上肢機能に有意な改善を認めた.さらに,VIM療法の終了から1ヵ月後も効果が持続した.VIM療法を実施することで,運動イメージの想起能力を促進させ,上肢機能を改善させる可能性が示唆された.
  • 遠藤 通哉, 野田 和恵
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 2 号 p. 168-177
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(RA)患者が,携帯電話,スマートフォンの操作で情報通信技術社会に適応できているか確認することを目的に調査を行った.日本RA友の会兵庫支部会員530名を対象に無記名の質問紙郵送調査を行い,有効な回答252名分を手部変形の重症度別に3群に分類し分析した.携帯電話等の利用において一般データと比較の結果,RA患者の中高年は通話・メールの利用が多く,若者はSNSを使っている傾向にあった.RA患者のメール利用率はどの年代でも低く,手指変形が少なからず携帯電話等の操作に影響し,通話利用が増える一因となった可能性もある.RA患者にとって携帯電話等は重要であり,今後はICT機器を利用した介入が作業療法には求められる.
  • ─システマティックレビュー・メタアナリシス─
    大野 勘太, 川俣 祐李菜, 友利 幸之介, 澤田 辰徳
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 2 号 p. 178-185
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    上肢整形外科疾患患者に対する作業を基盤とした実践(Occupation-based practice)の有効性を検証することを目的に,システマティックレビューとメタアナリシスを実施した.PubMed,Web of Scienceを使用し全335編を精読し,4編が適合論文となった.機能障害を測定する効果指標においては,対照群との有意な改善は認められなかった.一方で,Disability of the Arm, Shoulder, and Handやカナダ作業遂行測定など,活動・参加を測定する効果指標において有効性が認められた.本研究から,上肢整形外科疾患患者に対する作業に焦点を当てた介入の効果が示唆された.
  • ~社会参加プログラムの開発を目的としたニーズの解明~
    野村 健太, 小林 法一
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 2 号 p. 186-194
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,一人暮らしをしている男性高齢者を対象とした社会参加プログラムを開発するために,人との交流に関する構造を明らかにし,ニーズを解明することである.A地区に在住の65歳以上の一人暮らし男性高齢者10名を対象とし,半構造化面接を行った.逐語録をKJ法にて構造化・図解化・叙述化した.その結果,一人暮らし男性高齢者は,人と【自然な関係の維持】をしたり,【自分のコミュニティ狭小化】を食い止め【つながりの保全】を得ることが課題と思われた.この課題を解決するために,人との交流に関する方略である【支援を受けるハードル】と【暮らし再建の保留】に,潜在的な支援のニーズがあると考えられる.
  • 池田 晋平, 西村 恭介, 鈴木 武志, 佐藤 美喜, 野尻 裕一, 芳賀 博
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 2 号 p. 195-203
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    地域在住高齢者の余暇的生活行為と社会関係の関連を明らかにすることを目的に,神奈川県綾瀬市在住の高齢者に質問紙調査を実施した.回答の不備を除いた1,587名の分析から,結束型ソーシャル・キャピタルは鑑賞活動,音楽活動,観光活動の実施ならびに娯楽活動の非実施に,橋渡し型ソーシャル・キャピタルは文化的活動,観光活動の非実施に関連があり,近隣住民との交流頻度はスポーツ活動,文化的活動,自然と触れ合う活動の実施に関連していた.以上の結果から,社会関係と余暇的生活行為の関係性は異なる様相を呈しており,作業療法士が地域在住高齢者の余暇的生活行為を促進するためには,対象地域での高齢者の社会関係の特徴に着目する必要がある.
  • 庵本 直矢, 竹林 崇, 池場 奈菜
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 2 号 p. 204-213
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    我々は回復期の脳卒中後中等度から重度上肢麻痺患者5名に対し,ReoGo®-Jを用いた自主練習(以下,ロボット療法)とCI療法に準じた介入(以下,修正CI療法)を提供後,自宅退院1ヵ月後の麻痺手の機能と使用行動を観察した.その結果,介入前後では上肢機能と麻痺手の使用行動の改善が得られ,退院後の経過では,上肢機能や麻痺手の使用行動が維持されていた.これらの結果より,回復期脳卒中後の中等度から重度上肢麻痺に対しては,ロボット療法を活用しつつ修正CI療法を実施することで,効率的に機能改善や麻痺手の使用行動の改善が得られるだけでなく,退院後も麻痺手の機能や使用行動を維持できる可能性が示唆された.
  • 東 泰弘, 高畑 進一, 兼田 敏克, 中岡 和代, 石原 充
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 2 号 p. 214-224
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    日本版ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(A-ONE)の信頼性と妥当性を古典的テスト理論に基づいて検討した.日本版A-ONEは,5領域22項目の日常生活活動(ADL)観察を通して,ADLを妨げている神経行動学的障害を同定する評価法である.20名の脳血管障害(CVA)患者に対して,評価者内信頼性および評価者間信頼性を検討し高いkappa係数を認めた.36名のCVA患者に日本版A-ONEと既存のADL評価および各種神経心理学的検査を実施し,併存的妥当性を検討し両者間に中等度以上の相関を認めた.これらにより,日本版A-ONEの信頼性と妥当性が確認できたと考える.今後は,CVA患者以外の対象者も含め検討していく.
実践報告
短報
  • ─自記式作業遂行指標(SOPI)と心拍変動解析を用いて─
    石川 真太郎, 木村 大介, 今井 あい子
    原稿種別: 短報
    2021 年 40 巻 2 号 p. 262-266
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
    後遺症が残存しつつ在宅復帰した通所リハビリテーション利用者26名を対象に自記式作業遂行指標(SOPI)で評価した作業参加状況と,自律神経活動で評価した現下のストレスとの関連を明らかにするため,相関係数確認後ストレス指標を従属変数,SOPIの3領域を説明変数とした重回帰分析を行い,SOPIの作業遂行の3側面を説明変数とした重回帰分析を行った.ストレス指標とSOPIに有意な相関を認め(r=−0.495[p=0.010]),ストレス軽減の関連要因として「余暇活動」(R2=0.224,β=−0.473,p=0.015)と「作業統制」が抽出された(R2=0.262,β=−0.511,p=0.008).3領域からみた「余暇活動」と3側面からみた「作業統制」が,ストレス回避の要因と解釈された.
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