作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
40 巻 , 1 号
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巻頭言
  • 小山内 隆生
    原稿種別: 巻頭言
    2021 年 40 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    令和2(2020)年4月に,新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言が発令された.不要不急の外出の自粛,人との接触の8割制限,大学のキャンパスの閉鎖などが実施されるとともに,「正しく恐れる」という言葉をよく耳にするようになった.この言葉は,寺田寅彦の「ものをこわがらな過ぎたり,こわがり過ぎたりするのはやさしいが,正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた.」(「小爆発二件」『寺田寅彦随筆集 第五巻』岩波文庫)から派生したものと思われる.浅間山の噴火を知って現地に行った寺田が,浅間山のふもとで山から下りてきた学生と駅員の会話から,状況を正しく評価して判断することの重要性を説いたものである.
学術部報告
第54回日本作業療法学会学会長講演
  • 石川 隆志
    原稿種別: 第54回日本作業療法学会学会長講演
    2021 年 40 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:日本作業療法士協会(以下,協会)が設立され55年が経った.協会の学術活動は,その時々の作業療法士の先輩たちの尽力により着実に発展してきた.日本作業療法学会は54回を数え,学術誌『作業療法』の発行,『作業療法ガイドライン』や『作業療法マニュアル』の発行などにつながっている.それらをふまえて協会は2018年に協会の「作業療法の定義」を改定し,作業療法士が,より作業に焦点を当てた治療,指導,援助を行う専門職であることを明示したが,今後は今まで以上に作業療法の学術的根拠を蓄積していくことが求められている.本稿では,筆者のこれまでの経験から,作業の魅力や作業の力について感じ考えたこと,その活用,作業療法の役割について述べた.
原著論文
  • 野村 めぐみ, 八重田 淳
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究の目的は,入院前と退院後のIADLの実施頻度と,退院時に予測した退院後のIADLの実施頻度を,縦断的に調査することである.回復期リハビリテーション病棟入院患者104名を対象とし,入院前,退院時,退院後のFrenchay Activities Index(FAI)でIADL実施頻度を測定した.結果,入院前と退院後では,ADLに大きな変化は見られなかったが,IADLの実施頻度は低くなることが判明した.また,対象者は退院時に「屋内家事」のみ入院前と同様の頻度で実施できると予測していたが,FAIの全項目で退院時の予測と比べて退院後のIADLの実施頻度は低かった.ADLが自立している対象者に対しても,入院中からIADLを支援する必要性が示唆された.
  • ─混合研究法を用いた包括的検討─
    宮本 礼子, 石橋 裕, 土居 義典
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 1 号 p. 21-33
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究は,学内クリニカルクラークシップ(以下,学内CCS)が作業療法学生にもたらす影響を混合研究法を用いて検証することを目的とした.結果,量的には学内CCSを通し「指導者からの学び」に適応する能力は有意に上昇した.一方,不安と自尊感情に有意差はなかった.質的側面では,学生はクライエントや指導者との三者関係で学び取れる臨場感を感じ,臨床実習や将来に対する前向きな展望を抱く一方で,長所や短所,想定外の自分の特徴や現在の能力に関する気づきによって不安が募った.今後は,学生に強い影響を与える臨床教育者との協力体制を検討する他,学生がストレスを跳ね返す能力にも着目し,実習準備性を高める取り組みを提案していく必要がある.
  • 木下 亮平, 長城 晃一, 石附 智奈美, 宮口 英樹
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:地域在住高齢者298名を対象に主観的幸福感(Satisfaction with Life Scale;SWLS)と活動の参加状況(Self-completed Occupational Performance Index;SOPI),基本属性(年齢,性別,慢性疾患,婚姻状況,同居者)の関連性を検討した.SWLSへの関連は,SOPI(β=0.415)と年齢(β=0.187)であった(p<0.05).年齢階級別のSWLSとSOPIの関連性は,前期高齢者群(R=0.477),後期高齢者群(R=0.426)に正の関連を認め(p<0.05),超高齢者群に認めなかった(p>0.05).活動の参加状況が主観的幸福感の充足に寄与しており,作業療法の疫学的根拠を拡大する可能性が示唆されたが,超高齢者群には,主観的幸福感促進の活動参加状況に関する調査課題が示された.
  • ─介護支援専門員と訪問リハビリテーション職の意識調査から─
    伴野 里恵, 川間 健之介
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 1 号 p. 42-51
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の利用頻度を減らす際に重要視する要因に関して,介護支援専門員(以下,ケアマネ)と訪問リハ職に対して意識調査を実施した.因子分析を行い,訪問リハを減らす際に重要視する因子として,「介護力と他者との交流」,「ADL動作の自立」,「個々のQOL」,「移動能力の自立と身体機能の維持向上」,「IADL動作の実施」の5因子を得た.因子平均の比較から,訪問リハを減らす際に,ケアマネは「ADL動作の自立」を重視し,訪問リハ職は「個々のQOL」を重視していることが分かった.このような違いから,訪問リハの利用頻度を減らす際には,職種間で意見の相違が生じる可能性がある.
  • ─構造方程式モデリングを用いた検討─
    中原 啓太, 籔脇 健司
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究の目的は,地域在住高齢者の健康関連QOLに対して,作業参加,環境因子,運動量がどのように影響するか統計学的に検証することである.対象は,地域活動などに参加している高齢者105名とした.横断研究デザインを用い,先行研究に基づいて作成した仮説モデルを構造方程式モデリングで検討した.結果,最終モデルの適合度は基準を満たし,標準化係数は環境因子から作業参加が0.574,作業参加から健康関連QOLが0.574,運動量から健康関連QOLが0.312となり,全て有意となった.地域在住高齢者の健康関連QOLに対して,環境因子と因果関係にある作業参加を促進することが,運動量のみに焦点を当てるよりも強い影響を与えることが明らかとなった.
  • 宮寺 寛子, 川又 寛徳, 谷村 厚子, 小林 法一
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 1 号 p. 61-71
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究の目的は,東日本大震災後の応急仮設住宅に入居する高齢者が認識する生活課題を分析し,生活課題の特徴および健康関連QOLとの関連を明らかにすることである.生活課題の聴取には,作業に関する自己評価改訂版を用いた.その結果,余暇に関わる生活課題と健康関連QOLの精神的側面は相関関係が認められること,性別によって認識する生活課題は異なることが明らかになった.男性では余暇に関する生活課題を認識する者が多く,女性では作業における自己の有効感に関する生活課題を認識する者が多かった.本研究の結果より,作業療法の視点から支援すべき仮設住宅入居高齢者の生活課題が示された.
実践報告
  • 塩津 裕康, 奥津 光佳, 倉澤 茂樹
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 40 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の影響により,クライエントに対面で作業療法を提供することが難しい状況に陥った.そこで,我々はCognitive Orientation to daily Occupational Performance(CO-OP)を基盤とした遠隔作業療法を実施した.実践形態が遠隔であっても,読み書きが苦手な子どもたち,および保護者からポジティブな反応が確認できた.この実践を報告することによって,COVID-19の第二波やその他の理由で対面での作業療法が困難になった際の一助となることを期待している.
  • 真下 いずみ
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 40 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:約20年間ひきこもっていた緘黙症状を呈する40歳代の女性に,主に自宅で10ヵ月間作業療法を行った.介入中のLiebowitz Social Anxiety Scale日本語版は社交不安の徴候を示した.作業療法では手芸をしながら,非言語的に交流し,次にClosedからOpen-questionへ段階づけて質問した.また材料の買い物やバザーでの作品販売を行った.結果,事例は自発的に発語し,電車を利用して単独外出可能となった.言語を要さない活動を用い,作品を介して他者と交流するといった作業療法の治療的要素は,対人場面への暴露による不安を緩和させつつ,発語や外出行動を促す上で有用であった.緘黙症状とひきこもりに対する作業療法の有効性が示唆された.
  • 池知 良昭, 井上 桂子, 小野 健一, 金山 祐里
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 40 巻 1 号 p. 87-98
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:終末期がん患者に関わる作業療法士は,自らの役割が不明瞭であり自信がない.本研究の目的は,当該領域の作業療法士の役割を明確にし,実践自己評価尺度の内容的妥当性を検討することである.文献検索と専門家会議にて項目を抽出し,当該領域の作業療法士にアンケートを実施した.その後,天井効果・フロア効果,最頻値,度数分布,非該当数を検討した.結果,グリーフケアの設問にフロア効果を認め,復職・セクシャリティは非該当が多かった.予後未告知の患者と,死に関して話さないとの意見があった.最終的に77項目が採用され,本尺度の内容的妥当性が確保されたが,今後さらに,項目相関係数やCronbach α係数等の内容的妥当性の検討が必要である.
  • ─急性期病棟における短期的介入の一事例─
    米嶋 一善, 岡山 友哉, 井口 知也
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 40 巻 1 号 p. 99-106
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:心不全症状による倦怠感のため,離床を進めることが困難な認知症高齢者を担当した.そこで,認知症高齢者の絵カード評価法を用いてクライエントの意味のある作業を評価し,作業を基盤に介入すると離床につながった.さらにその後,離床時間の延長や耐久性が向上し,短期的介入で退院に至った.急性期における認知症高齢者への心臓リハビリテーションでは,徹底したリスク管理下で,意味のある作業を基盤にした介入が早期離床を促進し,デコンディショニングの予防や,日常生活活動,認知機能の向上といった効果を短期的に示せる可能性を認めた.
  • 梅地 篤史, 天野 暁, 橋本 幸久, 内山 侑紀, 道免 和久
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 40 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:欧米では,脳性麻痺や脳卒中の小児症例に対してCI療法を実施し,その効果が報告されている.今回,脳梗塞後片麻痺を呈した8歳の女児に2度のmodified CI療法を実施した.小児症例にCI療法を実施するにあたり,長時間の訓練へ集中と麻痺手に対するモニタリングが困難であることが予想された.それに対して,訓練環境や時間,方法を工夫,修正した.1度目の介入後に上肢機能の改善を認めたが,日常生活での麻痺手の使用は不十分であったため,実生活での使用に着目し2度目のmodified CI療法を実施した.その結果,さらなる上肢機能の改善と,麻痺手の使用方法に変化を認め,介入1年後まで改善が維持された.
  • 野口 貴弘, 戸嶋 和也, 中西 千江, 今井 志保, 竹林 崇
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 40 巻 1 号 p. 114-119
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:麻痺手の実使用を増やすためにCI療法のTransfer package(以下,TP)を修正し,病棟と協業することを目的とした.修正TPは以下の手順で実施した(①TPの対象となる活動の映像を撮影,②看護師に動画を用いて伝達,③ADLで病棟看護師が動画を参考に実動作を指導).対象者は回復期病棟入院中の4名とした.4症例の変化量の結果を以下に示す.4症例ともにMotor Activity Log(以下,MAL)のQuality of Movement(以下,QOM)が向上した.本研究では,2症例が先行研究のMAL(QOM)の臨床上重要な最小変化量を超えた.病棟での看護師によるTPは,麻痺手の使用行動に良い影響を与える可能性がある.
  • 早川 貴行, 岡 春奈, 中村 純子, 山下 惣平, 岡 達二郎
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 40 巻 1 号 p. 120-125
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本研究は,低緊張の発達障害児に傾斜板を用いることで,目と手の協応性が求められる描写課題において,施行時間と正確性にどのような影響を及ぼすか検証することである.対象は発達障害群8名,対照群7名とした.フロスティッグ視知覚発達検査の目と手の協応評価点が,傾斜板を用いることで発達障害群では改善した.描写課題において,傾斜なしでの施行では描写時間は両群間で差を認めなかったが,正確性は発達障害群で有意に低かった.角度20度の傾斜板を用いた場合,描写時間に違いを認めなかったが,正確性は両群とも改善を認めた.低緊張の発達障害児では描写の正確性に困難さを認め,傾斜板を用いることでその困難さを軽減できることが示唆された.
  • ~CBRプロジェクト前後比較での検討~
    元廣 惇, 久野 真矢, 仲田 奈生, 山本 真理子, 藤井 寛幸
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 40 巻 1 号 p. 126-132
    発行日: 2021/02/15
    公開日: 2021/02/15
    ジャーナル フリー
    要旨:本報告は,多職種連携・地域課題解決型授業である「CBRプロジェクト」を紹介すると共に,授業に参加した学生の変化を予備的に検討することを目的とした.CBRプロジェクトに参加した作業療法,および理学療法学生22名を対象として,授業実施前後の課題価値,職業的アイデンティティ,自己効力感,チームプロセスを比較した.その結果,課題価値の総得点,および下位因子の興味獲得価値,私的獲得価値,職業的アイデンティティ下位因子の必要とされることへの自負,チームプロセス尺度の総得点,および下位因子の相互援助,相互調整,活動の分析といった項目で有意差を認めた.作業療法教育にてCBR概念を導入した学外実習を行うことの有効性が示唆された.
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