作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
42 巻, 3 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
巻頭言
原著論文
  • 宮内 貴之, 佐々木 祥太郎, 佐々木 洋子, 最上谷 拓磨
    2023 年 42 巻 3 号 p. 263-269
    発行日: 2023/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究はBox and Block Test(以下,BBT)が,急性期脳損傷患者に対して評価可能な食事動作に関連する評価指標となりうるかを明らかにすることを目的とした.対象は78名(食事動作自立群:54名,非自立群:24名)であった.その結果,2群間でBBTに有意な差があり,その効果量も大きいことが確認された.また,BBTは食事動作の自立度と高い相関関係を示し,Receiver Operating Characteristic曲線のArea Under the Curveでは良好な判別能を示した.そのため,BBTは急性期脳損傷患者の食事動作の自立度に関連する上肢パフォーマンスの評価指標となることが示唆された.

  • 備前 宏紀, 木村 大介, 村松 歩, 山本 祐輔, 原地 絢斗, 水野(松本) 由子
    2023 年 42 巻 3 号 p. 270-278
    発行日: 2023/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    単一脳領域と脳内ネットワークの2つの視点から,運動学習過程における脳機能変化と運動学習の遅速の違いによる脳機能変化の差異を解明し,運動学習を作業療法に応用するための基礎資料を得ることを目的に,賦活量と媒介中心性を運動学習前後で比較検討した.その結果,運動学習後に右背外側前頭前野,左前頭眼窩,左右前頭極の賦活量は減少し,左背外側前頭前野の媒介中心性は上昇した.また,運動学習の遅速による脳機能変化の差異では,右背外側前頭前野の媒介中心性の変化に違いを認めた.これらの領域をモニタリングすることは,作業療法の実践歴に加え脳機能の観点からも,対象者に合わせた作業療法介入を検討する上での基礎資料になりうる.

  • ─ケースコントロール研究─
    小渕 浩平, 務台 均, 矢口 優夏, 小宮山 貴也, 中村 裕一
    2023 年 42 巻 3 号 p. 279-288
    発行日: 2023/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    急性期病床入院中の脳損傷者に対して,ドライビングシミュレーター(以下,DS)を用いた評価と,自動車運転再開・非再開の関係性を調査し,急性期病床におけるDSの下位検査項目のカットオフ値と予測精度を検討した.対象は,当院に入院した脳損傷者のうち,評価を完遂した88名であった.分析の結果,誤反応合計,発信停止合計,全般合計,判定得点合計でカットオフ値が算出され,3つ以上カットオフ値を上回った症例は,非再開となる精度が77%であった.また,決定木分析の結果から,神経心理学的検査を含めた複合的な判断が必要である一方,DS評価は急性期病床においても運転再開可否の判定に有用な可能性が示唆された.

  • 宮本 礼子, 藤本 泰成, 井上 薫, 伊藤 祐子
    2023 年 42 巻 3 号 p. 289-298
    発行日: 2023/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究は右利き者の筆順に着目した際の左右手の運筆機能の相違を解明することを目的とした.20名の健常右利き男女を対象に,日本語の字体的特徴を含む図形4種に筆順条件を付加した課題を実施した.収集したデータは 図形を要素に分解し,描画時間・筆圧・仰角・方位角・筆跡躍度・筆跡一致率に関する左右手データを比較した.結果,多くの要素で右手での筆圧が高く,仰角と方位角は要素毎に特徴的な左右差を示した.一方筆跡躍度と筆跡一致率に左右の有意差はなかった.今回筆順条件を加えたことで左右手の運筆機能の違いを示すことができた.非利き手では筆順の影響に伴う不自然な運動方向となり,筆圧がかかりにくいことが明らかとなった.

  • ─フォーカスグループインタビューとノミナルグループテクニックを用いた質的研究─
    本田 拓也, 谷村 厚子
    2023 年 42 巻 3 号 p. 299-308
    発行日: 2023/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,作業療法効果の測定に適切と考えられるアウトカム指標とその選択理由を,グループインタビュー技法を用いて検討し,合意形成されたものを高齢者の急性期作業療法発展の資料として提示することである.対象は急性期病院に従事した経験のある作業療法士8名で,分析はノミナルグループテクニックと質的統合法を用いた.結果,30項目のアウトカム指標が採択された.定量的なものからは握力など,定性的なものからは生活行為に関わる質的な改善などが採択された.高齢者を対象とした急性期作業療法では,対象や環境の特性を踏まえた上で生活行為に焦点を当てた支援の効果を測定することができるアウトカム指標が重要と考えられた.

  • 川口 悠子, 西川 可奈子, 齋藤 佑樹, 友利 幸之介
    2023 年 42 巻 3 号 p. 309-318
    発行日: 2023/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC)に関する既存の研究や実践報告をマッピングし,今後必要な研究領域の特定を目的に,スコーピングレビューを行った.4つの文献データベースと2学会の抄録集からADOCに関する報告を検索し,最終的に178編(論文49編,学会129編)を特定した.詳細は,量的研究38編(論文19編,学会19編),事例報告140編(論文30編,学会110編)であった.これらの研究および事例報告にて,ADOCの適用範囲が多岐にわたることが示唆された.一方,今後異文化妥当性ならびに介入研究の拡充,そして事例報告(特に脊椎・脊髄疾患,悪性腫瘍,認知症)の論文化の必要性が明らかとなった.

  • ─構造方程式モデリングを用いた検討─
    青柳 翔太, 泉 良太
    2023 年 42 巻 3 号 p. 319-327
    発行日: 2023/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,認知機能障害者のQOLに対して,ADL,作業適応,性格特性がどのように影響するのかを検証することである.対象者は回復期リハビリテーション病棟に入棟している87名とした.横断研究デザインを用い,先行研究に基づいて作成した仮説モデルを構造方程式モデリングで検討した.結果,最終モデルの適合度はCFI=0.927,RMSEA=0.051となった.標準化係数はADLからQOLが0.56,作業適応からQOLが0.54となり,有意となった.認知機能障害者のQOLに対して,作業適応の向上を図ることが,ADLの向上と同程度の影響を与えることが明らかとなった.

  • 大東 真紀, 森本 美智子
    2023 年 42 巻 3 号 p. 328-336
    発行日: 2023/06/15
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中右片麻痺者の左手書字練習初期の習熟に対する主観的評価の様相を明らかにするため,半構造化インタビューを実施した.15名(男性6名,女性9名,平均年齢69.7(SD9.3)歳)の内容分析の結果,【文字イメージの復活・文字を整斉する能力の向上・文字を整列する能力の向上・筆記具の操作性の向上・書字の実用性の向上・左手特有の書きにくさへの対処・筆記具の持ち方の工夫・紙の固定方法の工夫・書字に対する肯定的な気持ちへの変化】の9カテゴリ,《認知機能の改善・能力の向上・対処方略の獲得・気持ちの変化》の4分類に集約された.本結果は当該書字練習における支援方法や評価指標の開発に有益な示唆を与えると考える.

実践報告
feedback
Top