作業療法
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38 巻 , 5 号
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巻頭言
研究論文
  • ─ケーススタディ─
    豊栄 峻, 岩澤 詩織, 甲斐 惇平, 重信 恵三, 川平 和美
    2019 年 38 巻 5 号 p. 517-523
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    成人脳性麻痺者の頸髄症後の上肢運動麻痺に対する効果的なリハビリテーションは確立されていない.本研究では,頸髄症により両上肢の運動麻痺を呈した成人脳性麻痺者1例に対し,近位上肢への持続的神経筋電気刺激併用下の促通反復療法(以下,持続的電気刺激下RFE)(2週間)と,電気刺激と振動刺激を用いた促通機能を有する上肢リハビリ装置CoCoroe AR2を用いたリーチングロボット訓練(2週間)を2回ずつ行うクロスオーバーデザイン(8週間)で治療効果を検討した.結果,簡易上肢機能検査で右近位上肢のリーチングロボット訓練の期間に,持続的電気刺激下RFEよりも大きな変化が得られたが,その他の項目では両訓練で類似した変化がみられた.
  • 坂下 竜也, 原 麻理子, 原口 健三
    2019 年 38 巻 5 号 p. 524-531
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    急性期脳神経疾患に生じる過活動型せん妄の一要因として,オムツ内への排泄といった排泄方法の変更がある.今回,過活動型せん妄を伴う急性期脳神経疾患患者26名に対し,トイレへの排泄誘導を行い,その前後でのせん妄の有無と,せん妄の持続期間との関連性を調査した.その結果,排泄誘導後に,せん妄は有意に改善し即時効果を認めた.しかし,その後,せん妄は再燃し改善は一時的であった.また早期に排泄誘導を行うと,せん妄の持続期間は,短くなる傾向にあった.排泄行為への介入は,過活動型せん妄の改善に寄与する可能性が示唆された.
  • 吉田 裕紀, 向 文緒
    2019 年 38 巻 5 号 p. 532-540
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,若年層作業療法士の職業的アイデンティティ(Occupational Identity;以下,OI)に影響を与える因子を検討した.愛知県,岐阜県,三重県で勤務する35歳未満の作業療法士に郵送調査をし,アンケートは,回答者の個人属性,環境属性,OI測定尺度で構成した.その結果,有効回答率は36%となった.統計解析の結果,年齢,臨床経験年数と,OI得点間に弱い相関が認められ,後輩指導経験の有無,取り扱い件数目標の有無,多職種カンファレンスへの参加の有無による,OI得点に有意差が認められた.また,重回帰分析では,臨床経験年数,取り扱い件数目標の有無,多職種カンファレンスへの参加の有無の3因子に対する影響が示唆された.
  • 〜役割チェックリストを用いた検討〜
    竹原 敦, 石井 良和, 繁田 雅弘, 山田 孝
    2019 年 38 巻 5 号 p. 541-549
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究では農村地帯の高齢者708名を対象に,うつ状態の有無は社会的役割の変化とどのように関連するか調査・検討した.ロジスティック回帰分析の結果(オッズ比;OR,信頼区間;CI),役割は,「学生」 減少 (OR:6.25,95%CI:2.43〜7.42),「趣味」 なし (OR:5.54,95%CI:3.02〜10.18),「家族」 減少 (OR:4.23,95%CI:2.82〜6.35),「趣味」 維持 (OR:2.77,95%CI:1.40〜5.49),「宗教」減少 (OR:2.75,95%CI:1.06〜7.09),「勤労者」 減少 (OR:2.32,95%CI:1.43〜3.75),また,「性別」(OR:3.41,95%CI:2.10〜5.53),「年齢階級」(OR:2.11,95%CI:1.34〜3.34)」は,うつ状態と強い関連があった.役割変化の評価により,高齢者のうつ状態を読み解く可能性が示唆された.
  • ─3点計測法の妥当性の検討─
    花田 恵介, 竹林 崇, 河野 正志, 市村 幸盛, 平山 和美
    2019 年 38 巻 5 号 p. 550-558
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者を対象に加速度計(ActiGraph Link GT9X)を用いた上肢活動量計測を行い,本邦においてもこの評価が妥当であるか否か,および2点計測法と3点計測法のどちらが,より妥当な手法であるかを検証した.本研究は単一施設の横断研究で,37名を対象とした.3点計測法は,各手の測定値を体幹部の測定値で減じた上で,左右手の活動量比や活動時間比を算出した.その結果,2点計測法と3点計測法のどちらであっても,麻痺側上肢の活動量と上肢機能評価の間に中程度から強い相関関係が示された.3点計測法の優位性は示されなかった.脳卒中患者の上肢活動量評価において,どのような計測方法や分析方法がより適切であるかは,引き続き検討を重ねる必要がある.
  • ─干渉刺激が与える影響─
    佐藤 飛友悟, 大柳 俊夫, 中島 そのみ, 金谷 匡紘, 仙石 泰仁
    2019 年 38 巻 5 号 p. 559-566
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,健常者とパーキンソン病(Parkinson’s Disease;以下,PD)患者の短期的なリズム記憶・再生に干渉刺激が及ぼす影響について,1.0 Hzのリズム再生課題を用いて検討した.干渉刺激は,無意味刺激と有意味刺激の2種類とし,干渉刺激のない場合との比較を行った.リズム再生課題の結果,干渉刺激のない場合にPD患者で有意にリズム再生の正確性が低下した.また,干渉刺激の影響においては,無意味刺激のある場合は,すべての群で差は認められなかったが,有意味刺激のある場合は,PD患者で有意に干渉刺激の影響をうける結果となった.この結果より,PD患者は,有意味刺激が多い日常生活場面では,正確なリズム再生が困難となることが示唆された.
  • ─自宅退院後の住環境に対する認識が及ぼす影響─
    太田 智之, 榎 宏朗, 橋本 美芽
    2019 年 38 巻 5 号 p. 567-574
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,リハビリテーションを受療し,自宅退院した障害高齢者の居住継続が,心身機能・社会経済的要因・住宅性能などの客観的条件や,住まいに対する主観的な認識と,どう関係するのかを明らかにすることである.都市部病院から自宅退院し,6ヵ月以上経過した障害高齢者を対象に自記式記名式の郵送調査を実施した.回答が得られた214名を居住継続期間で群分けし比較検討した結果,住まいの障壁に対する認識や,住まいや地域への愛着が居住継続に影響することが示唆された.障害高齢者の居住継続を支援する住環境整備の視点として,物理的側面だけでなく,本人の住まいや地域に対する認識にも着目する必要性が示された.
  • 〜傾向スコアマッチングを利用した探索的比較研究〜
    石垣 賢和, 竹林 崇, 前田 尚賜, 久保木 康人, 高橋 佑弥
    2019 年 38 巻 5 号 p. 575-584
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    回復期の脳卒中後上肢片麻痺者に対し,15日間のロボット療法の効果検証を行った.対象は,2015年6月から2018年8月の期間に当院に入院した,初発の脳卒中後上肢片麻痺者のうち,15日間のロボット療法を実施した群(介入群)と,1ヵ月間の通常訓練を実施した群(対照群)とした.方法は,介入群と対照群で傾向スコアマッチングを実施し,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA)肩・肘・前腕の変化量を比較した.結果は,介入群36名,対照群62名で,22ペアがマッチングされた.FMA肩・肘・前腕の変化量は,介入群が対照群に比べ有意に改善を示した.ロボット療法を用いた介入は,効率的に回復期の脳卒中患者の上肢機能を改善させる可能性がある.
  • ─呼吸器リハビリテーション料への職名追記からの10年間─
    藤本 侑大, 島崎 寛将, 納冨 敦子, 谷口 小百合, 髙島 千敬
    2019 年 38 巻 5 号 p. 585-592
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    わが国では,2008年度に作業療法士による呼吸器リハビリテーション料の算定が認められた.それから10年間における呼吸器疾患患者に対する作業療法の現状について,システマティック・レビューを行った.MEDLINEや医学中央雑誌など8つのデータベースとハンドサーチから,呼吸器疾患患者に対し実施されている作業療法についての論文を抽出した.その結果,日本語5論文を採用した.論文の対象はCOPDや間質性肺炎が中心で,主な実践内容・研究目的は,高次脳機能障害の検討(2件),ADL・IADLトレーニングの検討(2件),社会生活状況調査(1件)であった.今後は,わが国における呼吸器疾患患者への作業療法報告数の増加や有用性の検証が課題である.
実践報告
  • 堀 翔平, 竹林 崇
    2019 年 38 巻 5 号 p. 593-600
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    前頭葉機能障害を合併しセルフモニタリングが困難であった脳卒中患者に対して,課題指向型アプローチによる麻痺手の集中訓練にあわせて,家族参加型の自主練習とTransfer package(12週,1日30分,週5〜7回)を取り入れた結果,麻痺手のセルフモニタリングが促進し使用行動が変化した.先行研究では,主介護者が課題指向型アプローチやTransfer packageについて深く理解し,治療に参加することが重要と述べられている.本報告では,Transfer packageの場面に家族の参加を促すことで,事例の麻痺手に対する意識と実生活における使用に変化が生じた.本事例においては,事例と家族による介入が麻痺手の行動学習を促進させる要因となった可能性がある.
  • 廣瀬 卓哉, 竹林 崇, 児玉 三彦, 高橋 真須美
    2019 年 38 巻 5 号 p. 601-608
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    急性期脳卒中患者に対して,上肢課題指向型訓練(shapingとtask practiceの各アプローチ)を,通常のOT(主担当OT)と病棟配置OTで分担して実施した.病棟配置OTは病室の実際の生活環境にてtask practiceを行い,主担当OTは訓練室にて麻痺手に不足している関節運動を含んだshapingを集中的に実施した.再評価で,上肢機能の改善および日常生活における麻痺手の使用頻度の向上を認めた.本報告は,主担当OTと病棟配置OTで適切な役割を担うことで,症例の実際の生活環境における麻痺手の問題点が明確となった可能性がある.さらに,訓練室における訓練効果が,実際の生活環境に効率的に反映される可能性が示唆された.
  • 廣瀬 卓哉, 竹林 崇, 児玉 三彦, 高橋 真須美
    2019 年 38 巻 5 号 p. 609-616
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    急性期脳梗塞患者に,麻痺手の機能改善に合わせた様々な治療法を,段階的に移行および併用した上肢機能訓練を行った.発症初期より,麻痺手の随意性を積極的に引き出すことを目的に,電気刺激を併用した反復促通訓練,電気刺激併用下の促通反復療法,神経筋電気刺激療法を実施した.次に麻痺手の状況に合わせて,電気刺激や装具を併用した修正CI療法へと移行した.結果,麻痺手の機能改善と生活内使用頻度が向上した.加えて,介入終了から2ヵ月後の評価では,麻痺手機能がさらに改善した.本事例報告において,発症早期より行うエビデンスの示された複合的なアプローチは,急性期でも上肢機能を改善する可能性が示された.
  • ─手記を通して重度失語症者の意味のある作業が見えた一例─
    田中 克一
    2019 年 38 巻 5 号 p. 617-622
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    作業療法の介入では,人生観や生活観をふまえた興味・価値に基づく作業の提供の重要性が強調される.特に,自らがどうあることに価値をおいているのかという信念を反映する「自分らしい作業」への支援は,活き活きとした生活の再構築には重要な視点である.しかし重度失語症者の場合,それらをインタビューにて捉えることが難しい.今回,重度失語症のある事例A氏の訪問作業療法で,A氏から「手記(手帳)」を手渡された.そして「手記(手帳)」を分析することにより,A氏の人生観・生活観を理解し,「A氏らしい作業」への支援を行うことができた.
  • ─復職に至った軽度記憶障害を呈した頭蓋咽頭腫術後の1症例─
    櫻井 美沙樹, 佐々木 秀一, 村尾 千華子, 正木 瑶子, 福田 倫也
    2019 年 38 巻 5 号 p. 623-630
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    頭蓋咽頭腫術後に生活行為向上マネジメント(MTDLP)を活用し復職に至った1例において,回復期リハビリテーション(リハビリ)病棟でのMTDLP活用の利点と作業療法士(OTR)の役割を検討した.MTDLPの使用により徹底した環境設定のもと適切なプログラムを立て,多職種の役割を具体化でき,意味のある作業の選択により症例の積極的な訓練参加が可能となった.結果,QOLは向上し生活期のリハビリを経て復職を果たした.日々変化する機能をよく観察し,適切な合意目標を立て,介入することが重要と考える.また,回復期のOTRとして十分な介入を行いきれない場合,症例の最終目標とその予後予測を,生活期のリハビリに繋ぐ重要な役割を担っていると考えられた.
  • 足立 一, 上原 央, 川口 眞由, 森川 孝子
    2019 年 38 巻 5 号 p. 631-638
    発行日: 2019/10/15
    公開日: 2019/10/15
    ジャーナル フリー
    刑務所入所当初から幻覚や妄想,病識欠如により,処遇が困難であった統合失調症の受刑者(以下,A氏)に対して,作業療法を実施した.介入初期は,刑務所職員とA氏に合わせた工場の開設と対応方法について検討し,信頼関係を築くために傾聴を重視した.A氏の病状の悪化に伴い,刑務所職員と薬物治療の重要性に対する共通認識が育まれ,A氏の薬物治療を開始することができた.その後も,病状に合わせた介入により,A氏は工場へ継続的に参加し,特別改善指導も受講でき,出所後の通院服薬の継続へ至った.今回は,これまで作業療法士が関わる機会の少なかった刑務所という特殊な環境の特性をいかし,刑務所職員との連携を重視した介入であった.
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