作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
42 巻, 6 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
巻頭言
  • ─「動物の作業療法」は存在すべきか?─
    今井 忠則
    2023 年 42 巻 6 号 p. 699
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    数年前,学会場の書店で「動物理学療法」と題された書籍を見かけた.少し気になり,パラパラとめくってみた.整形外科や神経疾患などの術後の動物(犬や競走馬など)に対する水治療法や運動訓練などが紹介されており,その内容に納得し,同時に理学療法士たちの職域拡大への意欲に感銘を受けた.その後,動物に対する作業療法の存在意義について考え始めた.最初は疑念があったが,時間が経つにつれ,場合によっては「あり」かもしれないという結論に至った.読者の皆さんはどのように考えられるだろうか.

原著論文
  • ─フォーカス・グループ・インタビューによる質的研究─
    南 庄一郎, 髙 登樹恵
    2023 年 42 巻 6 号 p. 701-708
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究では児童思春期精神科医療に従事する作業療法士にフォーカス・グループ・インタビューを行い,テーマ分析によって児童思春期精神科医療における作業療法士の役割を明らかにした.本研究の結果,子どもとの関わりに作業(遊び)を活かすことは作業療法士の専門性であり,子どもの自己肯定感と自己効力感を向上させ,生きる力を育むことが作業療法士の役割と考えられた.一方,現行の診療報酬に作業療法士が明記されておらず収益に繋がらないことなどが課題として挙げられた.こうした現状を打開するべく,作業療法士同士のネットワークを構築して研鑽を図ることや児童思春期精神科作業療法の効果研究などを積み重ねていく必要がある.

  • 池田 公平, 笹田 哲
    2023 年 42 巻 6 号 p. 709-717
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, セラピスト連携実践尺度(TCPS)の信頼性と妥当性の検証である.対象は回復期リハビリテーション病棟のセラピストとした.信頼性の検証(n=53)ではTCPSを2週間の間隔で2回実施し,ICC=0.97(95%CI;0.95~0.98,p<0.01),Bland-Altman plotのプロットがLimits of agreement内に収束した.妥当性の検証(n=210)では,多職種連携を評価する2種類の既存の尺度と中等度の相関(r>0.60)があった.これらの結果から,TCPSはセラピストの多職種連携実践を評価する尺度として良好な信頼性と妥当性が示唆された.

  • 丸山 祥, 廣瀬 卓哉, 宮本 礼子, ボンジェ ペイター
    2023 年 42 巻 6 号 p. 718-725
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,作業療法士の卒前・卒後教育におけるクリニカルリーズニング学習の現在の知見の整理および先行研究で解決されていない課題であるリサーチギャップの特定を目的とし,スコーピングレビューを実施した.結果,30編が抽出され,8編が実験的・介入研究,22編が記述的・観察研究だった.有効な学習方略としては,臨床実習とケース基盤型学習,サービス学習が検討されていた.学習成果としては量的成果に加えて質的成果も利用されていた.今後のクリニカルリーズニング学習の研究では,多面的な学習成果を捉えた実証研究,ケース基盤型学習の検証,指導者や環境要因に焦点を当てた国際的な比較研究が必要である.

  • ─デルファイ法を用いた調査から─
    赤堀 将孝, 小西 美智子, 今磯 純子
    2023 年 42 巻 6 号 p. 726-735
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は地域での生活支援に必要な作業療法学生の卒業時コンピテンシー項目を明らかにすることである.デルファイ法を3回実施し,地域実践作業療法士87名から51項目を作成した.必要度が75%以上の項目は,自己の健康管理,対象者のリスク管理,対象者と家族を含む支援者との信頼関係構築に関する項目など19項目,51~75%未満の項目は,家族や他職種との協働や作業療法過程,住環境や地域環境に関する項目など22項目,50%以下の項目は,近隣住民を含む連携,地域資源の情報収集に関する項目など10項目であった.卒業時に地域で生活支援を行うためには,これらの修得に向けた教育内容を取り入れる必要性が示唆された.

  • ─医療機関に対する協働支援の期待と遂行状況─
    大熊 諒, 八重田 淳
    2023 年 42 巻 6 号 p. 736-744
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,就労支援機関が医療機関に求める連携・協力に関する実態を明らかにすることを目的とした.対象は東京都内の特例子会社・就労支援機関の責任者385名で「医療機関に対する協働支援の期待」「地域連携」に関する質問紙を作成し調査を行った(有効回答数136件,回収率35.3%).結果,「継続的な診療を行い,必要な時に連携を取れる相談窓口や担当者を定める」「退院後の支援に関する情報の説明・提供」「自身の障害に対する理解を促す支援」が特に期待される割合が高いことが明らかになった.また,退院後,就労支援を開始した後に医療機関と連携が必要だとする回答が多く,長期的な協働支援体制を整える必要性が示唆された.

  • ─作業療法士の行動変容促進に着目して─
    四條 敦史, 泉 良太
    2023 年 42 巻 6 号 p. 745-754
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は作業療法士(以下,OT)を対象とした肩の機能改善のための卒後研修プログラムについてインストラクショナルデザイン(以下,ID)を参考に作成し,その有用性を確認することである.OT45人に対しオンライン研修を実施した.研修前後にアンケートを用い対象者の反応・学習・行動変容指数を比較検討した結果,肩甲胸郭関節運動に関する知識・技術の臨床活用項目を始め,Problem-Based Learning(以下,PBL)にて用いた文献の調べ方・見方の活用項目が有意に向上しOT業務の自信との間に有意な正の相関がみられた.本研究によりID・PBLを用いて研修設計・実施を行うことの有用性が明らかとなった.

  • ─複線径路等至性アプローチによる分析─
    中村 恵理子, 小林 隆司
    2023 年 42 巻 6 号 p. 755-762
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    作業療法士養成校にとって,学生の学習意欲を高め主体的な学習へ導くことは重要な課題である.本研究では,作業療法士を目指す学生が,主体的な学習へと学習意欲を変化させる過程について複線径路等至性アプローチを用い,変化の時期や内容を分析した.その結果,学習意欲の変化の時期は8つの区分に分かれ,早期からの学習意欲の向上には関係志向と自尊志向を利用した学習支援や早期体験型学習などで実用志向,充実志向を促すような学習の重要性が示唆された.

  • 稲垣 慶之, 飯塚 照史, 車谷 洋, 太田 英之, 長谷川 龍一
    2023 年 42 巻 6 号 p. 763-771
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    橈骨遠位端骨折受傷後1ヵ月間は大腿骨近位部骨折の発生リスクが急増するとされる.この一因として,外固定がバランス機能に影響するとされるが,近年では外固定を必要としない早期運動療法の報告がなされている.本研究では,早期運動療法例を対象に,バランス機能の継時的変化について検討した.その結果,動的・包括的バランス機能において術後1週間で低下することが明らかとなった.ただし,転倒を招くとされるカットオフ値を下回っていなかった.このことから,早期運動療法例の動的バランス機能の低下は転倒を誘発する“きっかけ”となり,その他の要因と重なることで術後に転倒リスクを増加させる可能性が示唆された.

実践報告
短報
第42巻総目次
第42巻著者別索引(五十音順)
feedback
Top