作業療法
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40 巻, 6 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
  • 大野 宏明
    原稿種別: 巻頭言
    2021 年 40 巻 6 号 p. 711
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    コロナ禍において,国内外のニュースや政治的な判断に疑心暗鬼になることがよくある.イギリスでは7月末にすべての規制を緩和し,経済回復に舵をきるというニュースに驚かされた.その背景には,イギリスでは人口の約7割がワクチン接種を完了しており,感染拡大期に見られたような死者数の増加は起きていないことが根拠にあるという.コロナ禍の国の政策は非常に難しい判断である.わが国ではどうであろうか.この原稿を執筆中の9月時点では,緊急事態宣言が繰り返され,安定した日常が戻らない状況に,国民は疲弊しつつある.ネットやメディアは,ワクチンの効果,副反応,発症データ,諸外国の情報など,こぞって注目を集める話題を取り上げ,受け手がどの情報を信じてよいのか悩まされる.心理学に,利用可能性ヒューリスティック(想起しやすい事柄や事項を優先する意思決定プロセス)という物事の判断に関する心理的メカニズムがある.人はメディアから注目すべき情報を受けとると,先入観を確信しやすくなるという.曖昧で偏った情報は,人々の不安をあおり,疑心暗鬼になりやすい.ネット上に様々な情報があふれている現在社会において,情報に基づく判断や行動の責任は,以前にも増して個人に委ねられている.また,世間では,人流を抑えるために自粛が要請され,リモートワークが推奨されている.世の中の人との関係が希薄になると同調行動の強要が起こるなど,偏見や差別的な言動が増える傾向にある.確かな情報が不足し安心が脅かされた状況は,人の冷静な意思決定を鈍らせるようである.
総説
  • 渡部 喬之, 鈴木 久義
    原稿種別: 総説
    2021 年 40 巻 6 号 p. 713-720
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    脳損傷による眼球運動障害に苦しむ患者は多いが,そのリハビリテーションの方法は確立されていない.本稿では,眼球運動の神経機構,脳画像所見と予後予測,一般的な評価や治療を概説したのち,国内外の脳損傷者に対する眼球運動障害改善のためのリハビリテーションの報告を俯瞰し,臨床での活用をテーマに再考した.過去の研究では,追視,固視,サッケード,輻輳を促通する訓練が眼球運動を改善させると報告されており,訓練時間や頻度も通常診療のなかで実施可能な範囲であった.眼球運動障害は,生活に大きな影響を与えるものである.作業療法士が,積極的な眼球運動障害への評価,介入とその効果検証を行っていく必要があると考える.
原著論文
  • ─後方視的な症例対照研究による有効性の検証─
    椛島 敬行, 猪狩 圭介, 原口 健三, 堤 一樹, 進 健司, 光安 博志
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 6 号 p. 721-729
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    当院ではリエゾンチーム介入患者への精神科作業療法(以下,リエゾンOT)という新たな取り組みを行っている.本研究は,せん妄患者に対するリエゾンOTの有効性を検証することを目的とし,介入群と非介入群の1週間経過時の状態変化を機能の全体的評定尺度(以下,GAF),せん妄の重症度評価(以下,MDAS)を用いて後方視的に比較した.その結果,介入群においてGAF,MDAS合計点および下位項目の「注意の集中と注意の転換の障害」,「精神運動抑制もしくは精神運動興奮」,「睡眠覚醒リズムの障害」が有意に改善した.このことから,リエゾンOTはせん妄の改善に寄与する可能性が示唆された.
  • 田中 龍太郎, 吉村 芳弘, 嶋津 さゆり, 北原 浩生
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 6 号 p. 730-737
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,回復期から自宅退院した脳卒中患者の退院後のIADLとサルコペニアとの関連性を検証した後ろ向きコホート研究である.対象は2015~2019年に当院を退院した脳卒中患者69名で,方法は退院1~1.5ヵ月後に自宅訪問による追跡調査を行った.IADLの評価はFAIを,サルコペニアの評価はAWGSを用いた.退院時のサルコペニア有群は無群と比較し退院後FAIが有意に低かった. 交絡因子を調整した多変量解析の結果,自宅退院した脳卒中患者のFAIにはサルコペニアが独立して関連していた.脳卒中患者のFAIの改善のために,サルコペニアの予防や改善を念頭に入れた作業療法が必要であると考えられた.
  • ─ロコモティブシンドロームと作業遂行の関連に着目して─
    栗田 洋平, 泉 良太, 鈴木 達也
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 6 号 p. 738-746
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)と作業遂行の関連を明らかにすることである.地域在住高齢者58名に対し集団的特性,ロコモ25,立ち上がりテストとSOPI,重要活動項目数を測定した.対象者を2群(ロコモ群,非ロコモ群)に分け集団的特性,作業遂行の状況を比較した結果,非ロコモ群に比べロコモ群は年齢が有意に高く,SOPI余暇活動,重要活動項目数で有意に低い値を示した.ロコモ25と作業遂行の関連を分析した結果,ロコモ25とSOPI満足,SOPI余暇活動で中等度の負の相関,SOPIセルフケア,SOPI総得点で弱い負の相関を認めた.本研究によりロコモの方の作業遂行の状況が明らかとなった.
  • ─5症例からの検証─
    佐藤 淳矢, 落合 卓, 久保田 富夫, 石岡 俊之
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 6 号 p. 747-755
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病(Parkinson’s Disease;以下,PD)患者の脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation;以下,DBS)周術期の非運動症状の特徴を検証するために視床下核と淡蒼球内節への試験的刺激を経て標的部位を決定するDBSを施行されたPD患者5例の周術期の認知機能と行動精神症状を調査した.結果,外科的処置前と比較して視床下核刺激時にのみ前頭葉機能の習慣的反応抑制と関連する語頭音の語流暢性課題成績の低下を示し,外科的処置後にせん妄様の行動精神症状が5例中4例に観察された.この結果は,DBS周術期PD患者への作業療法の実践には,運動症状だけでなく病棟の行動管理を含めた非運動症状も考慮する必要性を提案している.
  • 武田 さより, 宮本 礼子
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 6 号 p. 756-764
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究では,短時間の非利き手箸操作運動学習中の脳活動変化を明らかにすることを目的とした.対象は右利き健常成人34名とした.左右手の箸操作練習前後の運動技能評価と,練習中の左右半球の前頭極(FP),背外側前頭前野(DLPFC),前頭眼野(FEF),運動前野(PMC),一次運動野(M1)のΔOxy-Hb測定を行った.結果は,左右手とも練習後に運動技能が向上した.左手練習中の脳活動は,左右FP,DLPFC,FEF,PMCが賦活し,経時的には左右FP,左DLPFC活動が有意に減少した.運動学習初期の試行錯誤過程では,感覚情報を用いた運動制御や認知活動が行われることが示唆された.
  • 川端 敦史, 石橋 裕, 小林 法一, 小林 隆司, 石橋 仁美
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 6 号 p. 765-773
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    地域在住の高齢者に対し,タブレットを通した生活スタイル向上プログラムを実施し,プログラム実施前後で成果指標を比較した.対象は東京都A区に在住する65歳以上の高齢者34名であり,講義と演習からなる全8回のプログラムを実施した.結果,ICT機器使用に関する質問項目のすべて,WHO-QOL26における心理的領域,環境領域,FAIで有意差が認められた.本研究により,健康高齢者に対する介護予防プログラムとしてタブレットを用いた介入は,ICT機器使用に関する主観的評価に肯定的な効果がある可能性が示された.
  • 黒崎 真樹
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 6 号 p. 774-783
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,鍵ピンチ力,Ⅱ~Ⅴ指の指腹ピンチ力測定値とその信頼性,ピンチ力の予測方法,測定値の臨床的判断基準を明らかにすることである.健常若年成人男女各15名を対象に3回測定を2日間に分け実施した.3回測定の平均値を用い,測定の信頼性,利き手・非利き手および握力やピンチ力間での相関,系統誤差の有無,Minimal Detectable Change(MDC)を検討した.日間信頼性はすべてのピンチ力測定で0.8以上となり再現性は高い.ピンチ力を予測する際,利き手・非利き手からの予測が最も信頼性が高く,利き手は非利き手の105~110%を目安とする.鍵ピンチ力は測定値の13%,指腹ピンチ力は25%を真の変化とすることが有用と考える.
  • ─内容妥当性の検討─
    丸山 祥, 神保 洋平, 笹田 哲, 宮本 礼子, ボンジェ ペイター
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 40 巻 6 号 p. 784-792
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,作業療法士の卒前卒後教育のためのクリニカルリーズニングの評価尺度の開発である.開発方法は,Boatengらの尺度開発の推奨段階およびCOSMINの内容妥当性評価の方法論を参考に,1)暫定項目群の収集,2)項目の内容妥当性の検討,3)尺度の内容妥当性の検討を実施した.研究対象者には作業療法教育者に加え,評価対象者である作業療法学生と作業療法士を含んだ.結果,作業療法のクリニカルリーズニングの4つの思考プロセスに基づく40項目と5段階の評定段階から成る評価尺度を作成し,その内容妥当性を確認した.今後,本尺度の信頼性や妥当性を検討する予定である.
実践報告
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