都市計画論文集
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55 巻, 1 号
都市計画論文集
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 国際比較からみたわが国の都市計画家(学)を考えるための準備的調査
    太田 尚孝
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、都市計画家及び都市計画教育の本格的な国際比較研究の準備的調査として、ドイツに注目する。ドイツ建築家協会(Federal Chamber of German Architects)や各大学のデータを用いた現況分析と文献調査を行った結果は以下にまとめられる。ドイツでは都市計画家・都市計画教育とも、伝統的分野である建築家(学)とは異なり、独立した存在としてはわが国と類似し、いまだ少数派で発展途上段階にある。学際性と専門性のバランスなどの共通点や資格制度等の相違点を明確化した上でのドイツの都市計画家及び都市計画教育の全体像と個別事例に関わる動向把握は、わが国にも示唆が多いと思われ、今後も継続的な調査が期待される。

  • 鈴木 美緒
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    高齢ドライバーによる事故の甚大化を受け,2017 年の道路交通法改正により,高齢ドライバーの免許更新の際に認知機能検査を実施する仕組みを導入した.そこで本研究は,65 歳以上の認知症,軽度認知障害(MCI),健常の高齢ドライバーを教習所内で走行させ,特にMCI の状態で発現する危険挙動を観測する他,運転挙動と認知機能,さらには免許返納を含む自動車運転への意識の関連性を調査した.その結果,MCI あるいは認知症の疑いのある高齢ドライバー独特の危険挙動はウィンカー操作や安全確認で発現しやすいが,一方で,健常ドライバーにも危険挙動が見られることがわかった.また,アルツハイマー型認知症の特徴である単語記憶の衰えが,運転技能よりも他者とのコミュニケーションに関するルール遵守の欠落と関連する可能性があること,運転を続けたい意向は認知機能そのものや運転技能より自身の性格やライフスタイルと関連していることがわかった.

  • 蕭 閎偉, 岩﨑 暖
    原稿種別: 論説・報告
    2020 年 55 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿は都心回帰に伴う人口増加が著しい大阪市都心6区の中の西区に着目して、489件のマンション物件データから、西区の現状におけるマンションの集合住宅としての特徴を解明した。更に、都心回帰前後でのマンション物件の特徴の変化を10年単位で分析した。最後に、西区での周辺駅へのアクセスに着目した時に読み取れるマンション物件の分布状況および都心回帰前後の変化を解明した。その結果、分布状況から見たときに西区の「中心エリア」や「西側エリア」では大規模の物件が殆どなく、一方で「水辺エリア」では木津川の東側沿岸、道頓堀川、土佐堀川沿岸などに大規模・メガマンションの供給が多くみられる。以上の分析から、都心回帰に伴うマンション物件の供給の多様化や、水辺エリアのマンション建設の集中傾向が解明された。一方、西区内の地域間での交通網の格差などもみられるため、こうした集中傾向との因果関係を慎重に解明することが今後の課題である。

  • 照本 清峰
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 1 号 p. 30-40
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    観光地の地震・津波の対応体制を検討するためには、観光客の認識を踏まえておく必要がある。そこで本研究では、観光客の地震・津波の危険性と津波避難行動の認識を示すとともに、それらの関係性を明らかにすることを目的とする。調査対象地域は、和歌山県白浜町における白良浜周辺地域であり、来訪している観光客グループを対象としている。分析結果より、観光客の属性別において認識の差異がみられる項目があること、自動車避難の選択の規定要因として、来訪手段が自動車であることとともに、想定する避難場所やまちなかにいることが規定要因になっていること、観光客の地震・津波の危険性の認識と津波避難行動の認識の関連性は低いこと、等が明らかになった。分析結果をもとにして、観光地の津波避難時の課題と対策のあり方について、情報提供と避難誘導体制に着目して検討した。

  • 町丁目単位とメッシュ単位での結果の比較を通じて
    相 尚寿
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、様々な住環境指標を複合的に考慮して人口動態に与える影響を数値化した「住環境得点」の概念に着目する。従来手法の算出単位である町丁目は、一つの空間的範囲として認識されやすい反面、時系列的に町丁目の領域が変化しうる点や面積と形状が不ぞろいである点が課題であった。一方メッシュは時系列的に変化せず、かつ各メッシュの形状や面積がほぼ等しい。そこで本研究では、住環境得点の算出単位を2分の1地域メッシュ(約500m)に変更した場合に、人口動態の再現性が保てるかを検証する。結果、町丁目単位からメッシュ単位に変更したとしても、住環境得点の高低が人口動態を再現する程度は維持され、もしくは向上しており、これをさらに改善するための検討事項も町丁目単位とメッシュ単位とで概ね共通することが明らかになった。

  • 中央線高架下プロジェクトを事例として
    籾山 真人, 十代田 朗
    原稿種別: 論説・報告
    2020 年 55 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    事例として取り上げる、JR 中央線高架下での一連の取り組み(以降「中央線高架下プロジェクト」)は、地域住民を巻き込んだ「メディア運営」と、高架下遊休スペースの活用による「拠点開発」を連携させたもので、民間鉄道会社が地域を巻き込みながら、自らコミ ュニティスペースの設置、維持管理を行うなど、先駆的だったといえる。そこで本研究では、「中央線高架下プロジェクト」の事例分析を通じ、地域コミュニティの巻き込み及び、拠点開発を通じた地域コミュニティづくりの過程を明らかにした上で、マーケティング理論などを援用することで、地域コミュニティづくりにおける方法論及び有効な知見を得ることを目指した。その結果、地域コミュニティづくりにおいては、ターゲットに応じた段階的かつ、戦術的なアプローチが効果的であることが明らかとなった。

  • 鈴木 雅智
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 1 号 p. 58-66
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、20年近くにわたる、首都圏新築マンション購入者へのアンケート調査データを用い、①様々な地域を比較検討している広域からの転入者が、郊外において、近年一層重視し決め手とするようになっている住環境要素や、②それら住環境要素の首都圏内での空間分布、住環境価値の安定性を分析した。まず、近年首都圏全体で、生活環境・教育環境・周辺環境・最寄り駅からの時間が重視される傾向が明らかとなった。とりわけ、商業・公共・医療施設等の生活環境は、郊外部(都心から20km圏外)への広域からの転入者が重視する傾向、重視項目から決め手に至る傾向が強まっており、一貫して妥協されにくい構造を有する。また、各距離帯の中でも駅毎に各住環境項目の比較優位の程度は異なっており、教育環境・周辺環境としての魅力は一度ブランドを確立したら長く持続するが、相対的に、生活環境や最寄り駅からの時間としての魅力は次第に評価が低減しうる傾向が明らかとなった。

  • 1918年9月の都市計画法案要項を端緒とした検討経緯の通観
    岡辺 重雄
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 1 号 p. 67-78
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    今日、都市計画法は用途地域を規定し(第8条)、地域指定を行い(第9条)、建築物の規制を建築基準法に委ね(第10条)ており、建築基準法は各用途地域の用途制限等を規定し(第48条)、建築確認制度によって建築物の制限を実施している。ところが、1919年の市街地建築物法(以降、市街地物法)は地域制の全般を担っており、旧都市計画法(以降、旧都計法)は市街地物法が地域を決める際に確認する役割しかなかった。しかしながら、今回発見された法案初期段階の都市計画法案要項には旧都計法が地域を定め、市街地物法が建築物の制限を行うとされていた。本研究は、用途地域制についての揺らぎについて、両法案の検討過程を紐解くものである。両法案の検討を主導した池田宏は旧都計法第10条の規定を地域制の構築のために設けたと説くが、後世の定説は彼の考えとは異なるものであった。

  • 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2020/04/25
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,犯罪企図者と警備員による警備ゲーム問題を連続モデルとして分布をパラメトリックに表現することによって,両者の関係や警備戦略の分岐点を理論的に明らかにすることを目的とする.まず,被害抑制のための警備員の最適な資源配分の基本的性質を明らかにすることにより,警備の存在が犯罪の空間分布の多様性をもたらす可能性があることを示す.次に,犯罪分布の違いや警備員・犯罪者の人数を考慮した分析を行い,被害量をできる限り減らす観点から警備戦略の評価を行うことによって,適切な警備計画策定のための基本的知見を得る.そして,被害に遭う潜在的な可能性を持つターゲットの分布をコントロールすることが可能な場合に,被害を抑制するターゲットの分布の特徴を明らかにする.

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