都市計画論文集
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49 巻, 2 号
都市計画論文集
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 石川 美澄, 山村 高淑
    2014 年 49 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    近年、国内の観光地や都市部においてゲストハウスやホステル等と称する素泊まりを基本とした比較的低廉な宿泊施設型ゲストハウスの開業が相次いでいる。こうした施設の一部は、その場所を旅行者に限らず、住民や通勤者も含めた多様な属性の人びとが集い、交流できる場所として経営している。宿泊機能と交流機能を併せ持つゲストハウスは、観光まちづくりや地域における交流人口も含めたコミュニケーションの場のあり方を検討する上で示唆に富む。しかし、国内のゲストハウスに関する基礎的な知見の整理は進んでいない。そこで本稿では、国内におけるゲストハウスの経営と利用の実態について整理するために質問紙調査を実施した。その結果、国内におけるゲストハウスは沖縄県や京都府に集中して立地している点、空き家や商業ビルを改修・改築して営業しているものが多くみられる点、主な利用者は若年層である点などがゲストハウスの特徴として示された。
  • 横浜市地域まちづくり推進条例に基くルールを対象に
    高見沢 実, 尹 荘植
    2014 年 49 巻 2 号 p. 146-156
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、横浜市地域まちづくり推進条例に基づき認定されたまちづくりルールを運用している12地区の分析により、運用実態と効果、課題等を総合的・実証的に明らかにすることと、日本の都市計画制度改革の観点から地域まちづくり推進条例の進化の可能性について考察することを目的とする。それまでの任意の協定が公的ルールとして認定される際の条文の見直しや地域住民への周知活動、認定を審議する推進委員会での議論といったプロセス自体のもつ意義が大きいことが明らかになったほか、地元における事前協議を必ず経ること、それらが条例にもとづき行われることにより、実際の効果も高まったことが実証された。さらに、運用のなかでより合理的な基準に変更された地区や、事後に地区計画に発展した地区があるなど、認定後の進化についても明らかにすることができた。
  • 出雲大社・神門通りを対象として
    吉城 秀治, 橋本 成仁
    2014 年 49 巻 2 号 p. 157-167
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    近年、街路空間整備を通じた交通安全対策が注目されつつあり、欧州においてはShared Spaceをはじめとしてその適用が進められるとともに,評価もなされてきている。しかしながら我が国においては、このような整備による交通安全への適用はほとんど見られず、対策に関する地域住民の意識は十分には明らかにされていない。そこで本研究では、実際に街路空間整備が行われた神門通りを対象として、自動車走行速度調査並びにアンケート調査を実施し、街路空間整備を通じた交通安全対策に関する地域住民の意識構造について検討した。その結果、ドライバーや歩行者の意識行動変化に関するメカニズムが明らかになるとともに、心理的評価に基づく整備効果を高める上で重要となってくる整備対象や領域が明らかになっている。
  • 松中 亮治, 大庭 哲治, 中川 大, 小林 和志
    2014 年 49 巻 2 号 p. 168-175
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    新たに都市内交通を整備する際、その区間と経路が重複する既存交通は、運行経路の短縮や変更などの路線再編がなされることが多い。しかし、計画評価段階においては、既存交通の再編が十分に考慮されず、新しい交通施策の導入による利用者の便益が正しく評価されていない可能性がある。本研究では、新規交通施策の事例として京都市におけるLRTの導入を考え、その際の既存交通再編の有無による社会的便益の違いを比較した。なお、分析をする際には、時々刻々と変化する、自動車、公共交通機関、公共交通利用者の動きを逐次再現したシミュレーションモデルを構築することにより、乗り換え回数の増加が利便性に与える影響などについても詳細に考慮した。分析の結果,新規交通施策の導入に合わせて、新たな運賃制度の導入を含めた既存路線の再編を行う場合において、最も大きな社会的便益が得られることを明らかにした。
  • 増山 篤
    2014 年 49 巻 2 号 p. 176-185
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    この論文では、青森県を研究対象として、人々の自家用車を利用した買い物行動を分析し、商業活動の最適な空間的配分について検討する。まず第一に、青森県における人々の買い物行動と商業活動の空間的配分の現状を概観する。第二に、自家用車を利用する消費者の買い物行動が発生制約型の空間的相互作用モデルにしたがうものとして、そのパラメータを推定する。第三に、その推定結果を踏まえ、これら消費者にとっての消費者余剰を最大化する問題と総移動距離を最小化する問題を定式化する。最後に、これら最適化問題の解を求め、その結果をもとに、青森県の各市町村に対してどのように商業活動が配分されるべきかを議論する。
  • 福島第一原子力発電所事故から2年半後の記録
    川崎 興太
    2014 年 49 巻 2 号 p. 186-197
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、行政区域の全域が除染特別地域に指定されている7市町村を除く福島県内の52市町村を対象として、福島第一原子力発電所事故が発生してから約1年半が経過した平成24年9月末現在における市町村主体の除染の実態と課題を明らかにした前稿の続稿として、約2年半が経過した平成25年9月末現在における市町村主体の除染の実態と課題について、詳細かつ体系的に明らかにすることを目的とするものである。本研究を通じて、(1)既に除染が終了した市町村も見られるが、多くの市町村では学校等の公共施設の除染を終え、現在は住宅の除染を本格的に実施している状況にあること、(2)今なお半分の市町村では必要な面積・容量の仮置き場を確保できる見通しが立っていないこと、(3)多くの市町村は、中間貯蔵施設の早期決定、仮置き場の確保、森林の除染、除染技術・方法の見直し・改善、再除染などが除染を進める上での課題であると認識していること、(4)多くの市町村は国の除染に対する取り組みを不適切であると認識しており、少なからぬ市町村は福島県の除染に対する取り組みを不適切であると認識していること、(5)多くの市町村は、除染などによって0.23microSv/hになったとしても、空間線量率が原発事故前と同程度にならなければ住民は安全に安心して生活することができないと認識しており、また、除染は安全・安心な生活環境を回復させる上で効果があり、除染計画などに基づいて除染を実施すれば住民は安全に安心して生活することができるようになると認識していることなどを明らかにしている。
  • 「都市計画助成制度Städtebauförderung」に注目して
    太田 尚孝, 大村 謙二郎
    2014 年 49 巻 2 号 p. 198-206
    発行日: 2014/10/25
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、都市計画助成制度Städtebauförderungを具体例に再統一後のドイツにおける都市再生プログラム推進のための支援制度の実態と課題を明らかにすることである。調査方法は、文献調査とヒアリング調査に基づき、個別プログラムを含めた都市計画助成制度の制度体系等の基本的特徴や時系列的発展の理解と同制度のあり方を巡る近年の議論の整理と旧東西諸州における実態把握を行った。本研究の結果としては、(1)特に再統一後の旧東独地域の都市再生に関して都市計画助成制度は重要な役割を果たしたこと、(2)一方で旧東西間への連邦政府の財政負担の均等化の流れの中で旧東独地域の支援策としては新たな転機を迎えていること、(3)今や旧東西間だけでなく各地域の固有の都市再生ニーズに合わせた制度設計が求められていること、(4)拠点強化だけでなく社会的公平性を含めた総合的な都市再生が必要となっていること、の4点があげられる。
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