土木計画学研究・論文集
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21 巻
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  • 桑原 雅夫
    2004 年 21 巻 p. 1-9
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿では, まず多くの社会問題を作り出している交通渋滞の特徴を概説するとともに, ネットワークに車両が滞留するという渋滞現象を適切に考慮するためには, 動的な解析が必要であることを主張する. 次に, 需要解析に重要な役割を演じる私的費用と限界費用について渋滞を考慮した動的評価を行い, ある時刻の動的限界費用はそれ以降の渋滞継続時間に依存することを示している. 最後に, それらを応用してネットワーク交通量配分のシステム最適制御および混雑課金について考察している.
  • 松島 格也
    2004 年 21 巻 p. 11-22
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
  • 伊東 裕晃, 松本 幸正, 松井 寛
    2004 年 21 巻 p. 23-32
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 第10回から第13回における豊田市市民意識調査結果を用いて, 住民の生活環境に対する満足の大きさと, 生活環境が暮らしやすさに及ぼす影響を同時に考慮することにより, ニーズ充足度, 改善必要度を算出し, 経年的に分析を行った. ニーズ充足度・改善必要度の経年的な変化の傾向から, 生活環境要因を, ニーズ充足度が高い状態で変化しているもの, 改善必要度が高い状態で変化しているもの, などに分類した. 各地区において比較した結果, 「病院」は, 猿投や松平地区などの都市化の進んでいない地区において, 整備が望まれつつあり, 高橋高岡, 上郷地区では過去からずっと整備が望まれていることなどがわかった.
  • 杉浦 伸, 木下 栄蔵
    2004 年 21 巻 p. 33-40
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿では母Pの新しいモデルである評価値一斉法を提案する. 木下・中西らによって, 従来のAHPとは違う視点を持つ支配代替案法, さらに支配代替案法の発展系である一斉法が提案されている. 本論文では従来の一斉法を重み一斉法・と命名し, さらに新たなモデルである “瓢値一斉法” と区別している. そして, これら一斉法を説明するとともに一斉法が羅価比一定・の法則に基づいていることを説明する.
  • オルレアン都市圏を例に
    板谷 和也, 原田 昇
    2004 年 21 巻 p. 41-50
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文は、フランスにおける都市圏総合交通計画が高い実効性を持つ要因を明らかにするために、具体的な都市圏を対象にして計画策定と財源・組織・合意形成過程との関係を調査し、意思決定に関与する主体の構成とその手順に関する実例を示した。これによるわが国に対する示唆として、都市交通の計画・運営に関する権限の一括化、多くの関係主体が意思決定に関与する仕組みの構築、財源制度と計画制度の連携、そしてこれらを国全体におけるシステムとして政策決定における前提条件とすることが、計画の実効性を高める上で必要であるということを明らかにした。
  • 木俣 昇, 中村 彰彦
    2004 年 21 巻 p. 51-62
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 著者等が開発してきたミクロ・視覚型の交通流ペトリネットシミュレータを, 既存道路の有効活用計画の展開的支援システムとして位置付けて, まず, 背景画の挿入により, 交通流ペトリネットの実道路空間との対応性を改善し, 参加者の経験の活性化支援を強化することを試みている. 次に, 既開発交通流ペトリネットをそのSdataのコメントを活用してデータベース化し, ネット構築支援を強化することを試みている. 最後に, 道路工事に伴う交通対策計画を事例に, データベース検索による問題認識から代替案発想と評価までの展開的支援の模擬試行を行い, 背景画像上でのデータベース化と活用に関するヒントを考察し, 今後の方向を考察している.
  • 長谷川 専, 織田澤 利守, 小林 潔司
    2004 年 21 巻 p. 63-74
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 事業便益に関するリスクと事業遅延のリスクを同時に考慮した事前・再評価モデルを構築する.具体的には, 意思決定者が事業価値と進捗率という2つの状態変数に関する情報に基づいて, 事前評価における事業の採択, 再評価時点における事業の継続・中止を合理的かつ整合的に決定できる事前・再評価モデルを構築する. また, 再評価時点における休止オプションを追加した事前・再評価モデルを定式化する. さらに, 数値計算事例により, 事業をとりまくリスクが事前評価における事業採択基準, および再評価における事業継続基準に及ぼす影響を分析するとともに, 休止オプションの経済価値を計測し, 制度設計への適用可能性を示す.
  • 滑川 達, 山中 英生, 吉田 健
    2004 年 21 巻 p. 75-82
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は、従来法以上に計画目的を追求したスケジュールを求めるための手法を開発することを目的に研究を行った。資源制約付きプロジェクトスケジューリング問題における複雑な組合せ問題に対してカット理論を用いて、限定的な最適化問題のセットに分解する方法と、そこで発生する複雑な離散型組合せ最適化問題の解決策として遺伝的アルゴリズム (GA) を応用するアプローチを行った。性能評価として工期最小化問題、資源の有効利用を目的とした問題、複数計画目標を総合的に検討した多目的問題それぞれに適用し、従来法である山崩し法から求められるスケジュールとの比較により有効性を確認することができた
  • 炉元 淳平, 奥村 誠, 塚井 誠人
    2004 年 21 巻 p. 83-89
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    幹線旅客の流動データには純流動データと総流動データがある。純流動データは真の出発地・目的地をとらえたデータであり、交通需要分析を行うのに有効であるが、アンケートデータを要するため調査コストが高額でサンプリング誤差が大きい。一方、総流動データは販売チケット情報を利用して機械的に集計される上、サンプリング誤差は小さい。本研究では都市間交通の総流動のデータから、都道府県間の純流動を逆推定する手法を提案した。経路選択パラメータを先決値として与え、純流動の分布交通量モデルとして重力モデルを仮定して総流動と純流動の関係を定式化した上で、総流動の観灘直と推定値の誤差が最小になるように純流動の重力モデルのパラメータを推定した。1995年のデータを用いて逆推定したところ、再現性の高いモデルが構築されたまた、同モデルを1970年に適用したところ、北日本一西日本のような遠距離の純流動は極めて少なかったという結果が得られた。
  • 谷口 守
    2004 年 21 巻 p. 91-94
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    NIMBYは合意形成における問題として既に広く認識されているが, 近年では自分が直接計画実施による不利益を被らなくとも計画テーゼ自体を否定しようとする動き (アンチ・プランニング・ムーブメント: APM) が米国で体系化されつつある. 本研究ではAPMを合意形成における新たな障害ととらえ, その実態を独自のネット調査と文献調査を通じて初めて明らかにした. 分析の結果, 計画に反対することで利益が発生する社会構造がAPMを支えていることや, 論拠が定量的に示せていない部分においてAPMが発生しやすい事を具体的に明らかにすることができた.
  • 榊原 弘之, 木寺 和司
    2004 年 21 巻 p. 95-102
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    社会基盤整備や地域計画を巡る意思決定プロセスにおいて, 事業者以外の団体が, 市民の一部の選好を代表して, 事業内容や事業の実施方法の変更を要求した場合, 利害対立 (コンフリクト) が発生することがある. 本論文では, 社会基盤整備を巡るコンフリクトに関して, 人々が認知したコンフリクトの構造に関する調査を実施し, 調査回答者が認知しているコンフリクトの構造と, 非協力ゲームモデルとの整合性について, 統計的手段により検証した. その結果, 非協力ゲームモデルの基本要件である戦略的相互作用について, 一部戦略プロファイルにおける認知の不完全性が示された.
  • 鈴木 温, 青木 俊明, 山口 真司, 八田 武俊
    2004 年 21 巻 p. 103-107
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, 社会資本整備では, 事業の上流の段階からの市民参加が行われるようになってきたが, 方法論については, まだ手探りの状態である. 本研究では, 市民参加の出発点である情報の共有に関して, インターネットを利用し, 利害関係の異なる複数のシナリオを持つ仮想の公共事業に関する情報提示を行う実験を実施することにより, 多様な利害を持つ市民の理解を促進し, 満足度を高める情報共有のあり方を検討することを目的としている. その結果, いずれの利害を有するグループも事業に関するより詳しい情報を共有することにより信頼度や事業の賛同度を高めることなどが確かめられた.
  • 盛 亜也子, 鈴木 聡士, 加賀屋 誠一
    2004 年 21 巻 p. 109-114
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    札幌市は平成11年度から14年度までに、通過交通量が比較的少ない生活道路においてフラット型生活道路整備を試行的に行った。これは歩車道の高低差がなく、白線により分離するという従来の整備とは異なるものである。そこで本研究では、相対位置評価法を用いてフラット型とマウントアップ型の総合的評価を行った。その結果、(1) 自宅前がマウントアップ型の場合は、フラット型の安全性に不安があること、(2) 自宅前がフラット型の場合には、両タイプの安全性の評価はほぼ同じ値であること等がわかった。さらに、その評価結果を用いる費用対効果指標モデルを新たに提案し、効果分析をおこなった。そして、フラット型の整備効果が高いことを明らかとした。
  • 吉田 禎雄, 原田 昇
    2004 年 21 巻 p. 115-125
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    確率的利用者均衡配分による期待最小コストを用いた整備効果の計測が不安定となるという実務上の問題がある. 本研究では, この原因の1つが経路集合の問題であることを実証的に示した. その上で, 経路集合を明示的に扱うSD法おいて, 経路集合の抽出方法の改良と, 整備前後の経路集合を固定する方法を提案し, これらの方法を適用することにより整備効果の計測が安定して可能となることを示した.
  • 鳥取県智頭町を対象として
    畑山 満則, 岡田 憲夫, 河野 俊樹
    2004 年 21 巻 p. 127-135
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    鳥取県智頭町において「地域生活空間創造情報システム整備事業」の成果である「ひまわり (智) 情報システム」の導入過程を事例として, 情報技術のインプリメンテーション (システム供用から利用までの) プロセスに関する考察を行う. 本研究は, システムが導入後1年を経た時点で開発時の目的を果たすことなく, 放置されていたことに端を発している. 普及阻害原因が導入時における利用者と開発者の間に存在する認知のずれによるところが大きいことを確認し, 地域における利用者ニーズの再点検・再発掘を試みた. その上で既に導入済みのシステムの機能と使いやすさを検証し, 利用者の受容性を考慮した補正的・簡便的な導入方法を考案した.
  • 経 景, 山中 英生, 田村 英嗣
    2004 年 21 巻 p. 137-144
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では交通事故による人的費用を支払意思額に基づく統計的生命価値によって計測する方法を導入して、非死亡時の損傷度別の人的費用を計測した。具体的にはイギリスで開発されたSG (標準ギャンブル) 法とCV (仮想市場) 法を組み合わせた調査をアンケート方式で適用し、非死亡事故を含めた生命価値を計測した。その結果、死亡時の人的損失は中央値で2億6600万円と従来の8倍以上となることがわかり、非死亡時の人的損失についても死亡時との比率においても、従来の算定より高い値を示すことが明らかになった。ただし、被験者による変動は相当に大きく、属性の影響も統計的には明らかになっていない。今後、調査方法の改良とデータ集積が必要と言える。
  • 松村 暢彦, 松井 克之, 片岡 法子
    2004 年 21 巻 p. 145-154
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 自動車公害などの環境問題を題材とした学習教材の開発するときの視点を整理し, その視点を考慮したSCPブロックとダイヤモンドランキングを組み合わせたプログラムを交通計画の専門家と現場の教師, 地元のNPOが協力して開発した. そして, 大阪府立西淀川高等学校での実践により, 本プログラムは, 大気汚染の主原因が工場から自動車に推移してきている事実を生徒たちに伝えることができたのを確認するとともに, 環境問題に対して一人一人の取り組みの必要性について特に認識を高めることが明らかになった. また, 今回の教材開発を通じて, 道路交通センサスのデータの教育面への新たな活用方法を示すことができた.
  • 横松 宗太, 江尻 良, 小林 潔司
    2004 年 21 巻 p. 155-166
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    インフラストラクチャ (以下, インフラと略す) を効率的に管理するためには, 時間軸に沿ってインフラの新設・除却, 維持補修を適切に実施していく必要がある. そのためにはインフラの経済価値とその変動を記述する経済会計 (インフラ会計) の整備が不可欠である. 本研究では伝統的なラムゼイ型開放経済成長モデルの枠組みを拡張し, インフラの質的・量的な管理施策を分析するための動学的インフラ投資モデルを定式化する. その上で, 国民経済の最適成長経路上で定義されたインフラの経済価値を体系的に記述するための経済会計について考察し, インフラ管理のための経済会計の基本的な枠組みを提案する.
  • 猪井 博登, 新田 保次, 中村 陽子
    2004 年 21 巻 p. 167-174
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿では, Amartya Senの主張するCapability Approachを参考として, コミュニティバスの効果を福祉の視点から評価する手法を提案した. この手法は, Capabdity (生き方の幅) に着目し, 人がさまざまなFunctioning (機能) を達成できる状態の広がりを情報基礎として, コミュニティバスの貢献を評価する手法である. ここでは, Functioningとして, 外出行動を取り上げ, 吹田市の福祉巡回バスの利用者に調査を行い, 評価を行った. その結果, 福祉巡回バスがFunctioningの達成についての不均等の改善に役立っていることがわかった.
  • 金子 雄一郎, 福田 敦, 香田 淳一, 千脇 康信
    2004 年 21 巻 p. 175-181
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は首都圏の大手私鉄8社の代表的路線を対象に, 路線別・券種別の需要の運賃弾力性を計測したものである. 具体的には運賃や沿線人口, 景気指標など需要に影響を与えると想定される要因を説明変数とした需要関数を設定し, 時系列データを用いてパラメータを推定しその妥当性を検討した. その結果, 対象路線の運賃弾力性については定期が-0.14--0.41, 定期外が-0.31--0.42となり, 全般的に定期外の方が高い値となった. ただしいずれの券種についても運賃弾力性は-1以上 (絶対値で表現する場合1以下) となり, 単純な運賃値下げは収入を減少させる可能性があることが示唆された.
  • Dalve A. S. ALVES, 山本 幸司, Yaeko YAMASHITA, 秀島 栄三
    2004 年 21 巻 p. 183-190
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    都市と交通の持続的発展を目的とする戦略的都市交通計画策定システムの一部である診断とシナリオ構築プロセスにおいて、自動車公害を予測するためにNeural Geo-Spatialなアプローチを試みた。そして名古屋市域へのケーススタディを通してモデルの有効性を検証し、今後の発展性を明らかにした。
  • 谷口 守, 阿部 宏史, 松原 学
    2004 年 21 巻 p. 191-196
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    事業所統計等の既存統計を用いた都市分析では, データ特性上その「加工性」, 「実態性」, 「更新性」, 「識別性」, 「新規性」に限界がある. 本研究では, このような既存統計の限界を補完するため, 近年その整備が急速に進んでいる電子電話帳の活用を検討した. 各種電子電話帳の特性に留意した分析を行った結果, 現時アまで不可能であった検討も含めて, 強力な都市分析データベースとなり得ることを示した. また各電子電話帳の特徴や限界から, 目的に応じた電子電話帳を使い分ける必要があることを明らかにした.
  • 高木 一成, 森本 章倫, 古池 弘隆
    2004 年 21 巻 p. 197-202
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    交通施設整備の計画策定を行う場合、将来人口や土地利用の変化を把握することは、その効果分析や検討、評価を行う上で重要な指標となる。しかし、立地行動のメカニズムは複雑であり、いまだわからないことが多い。本研究では、都市における地価の変動や交通環境の変化といった現実のデータを反映させ、交通施設整備の住宅立地行動に与える影響の実証分析を行う。また分析の際には、居住地決定を通勤費用と住宅地費用の負担額という点からを捉え、住宅立地行動の変化を分析する。分析の結果、世帯は立地効用最大化行動より、住宅地費用と通勤費用の負担額が低い地域に立地行動を起こす傾向があることがわかった。
  • 前田 敬, 福井 賢一郎, 北村 隆一
    2004 年 21 巻 p. 203-208
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 規模, 立地条件の異なる鉄道駅近辺の繁華街を選定し, 繁華街特性や歩行者流率の差異を検討するとともに集客力を説明する要因を探るため, 選定した6つの繁華街について歩行者通行量調査及び, 施設属性調査を行った.
    分析の結果,(1) 当然のことながら集客力は駅規模に比例すること,(2) 大規模ターミナルでは定番, 絢燗繁華街が展開すること,(3) 立地条件が劣る場合でも多様性を持つことにより集客力が得られること,(4) 今まで見過ごされてきた〈ケ〉の街が大切であることが示された.
  • 塚井 誠人, 奥村 誠
    2004 年 21 巻 p. 209-215
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 平成3年と13年の事業所・企業統計調査から得られる本所支所間の管轄/被管轄関係のデータを用いて企業の業務ネットワークの空間構造を明らかにした. さらに, 得られた業務ネットワークと各管轄関係の下で雇用されている従業者数について分析を行い, 全国企業の従業者の顧客管理能力について経年比較を行った. その結果, 全国企業の本社は東京周辺の都市では減少する一方で, 東京都内に回帰する傾向にあることが明らかとなった. さらに全国企業の従業者の顧客管理能力については, 同一の支社機能水準で比較した場合, 平成13年の方が全国企業の従業者1人当たりの顧客管理能力が高くなる傾向にあることが明らかとなった.
  • 小池 淳司, 佐藤 啓輔, 右近 崇
    2004 年 21 巻 p. 217-224
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    地方都市にとって, 産業の衰退化は様々な社会問題を引き起こしているとされている. そのような中, 地方政府は地域産業の活性化政策に取り組んでいるが, その際の政策評価手法は経済波及効果をアウトプットとする産業連関分析に終始しているため, 政策実施による便益を計測することが難しく他の政策評価と比較することが不可能である. そのため本稿では, 応用一般均衡分析を用いることにより, 政策実施の効果を各種経済指標と同時に便益で評価することを目的としている. なお基本的なモデルについては, 小池他により報告済である. そこで, 本稿では産業誘致および育成政策実施による効果を算出できるようモデルの拡張を行うとともに, 鳥取県を対象とした実証分析を行う.
  • 冨田 安夫, 寺嶋 大輔
    2004 年 21 巻 p. 225-232
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    わが国の都市は, 経済停滞, 人口減少, 少子高齢化, 政府の財源不足, 中心市街地の衰退, 地球環境問題の深刻化, 自動車の過度な利用による環境問題など様々な問題に直面している. このような問題を緩和するために, 長期的にはコンパクトな都市構造を実現することが求められている. しかしながら, どの程度のコンパクトさが望ましいのか, いかなる政策によって実現可能かについては, その分析手法は開発されていない. そこで, 本研究では, 武藤・上田ら (2000) の開発したCUEモデルを用いて, 最適な都市内人口分布及びその実現政策を求めるための手法を開発した. また, その計算方法として戦略交通モデルの計算アルゴリズムとして開発されたFowkesesらによる方法を一部変更して用いた. 最後に, この手法を名古屋都市圏に適用し, 所得補助政策によって実現することが可能な最適な都市内人口分布を求め, モデルの適用可能性を確認した.
  • 谷本 圭志
    2004 年 21 巻 p. 233-238
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    公共事業に関する内容などに関して住民の間で集団意思決定を行う場面では, 周囲の住民による態度に留意して各住民が態度を表明することがある. 本研究では, その状況を説明するモデルに立脚し, 集団意思における決定ルールに着目して意思決定の過程およびそのもとでの態度の表明のメカニズムを分析する. その結果, 決定ルールによっては, 集団意思決定に参加する住民が選好に関して同質であったとしても態度の保留を選択することが明らかになり, 同質な住民から構成されているかを判断できない実際の集団意思決定において, 住民以外の者が保留している住民の態度を解釈することが不可能であることが示された.
  • 姫野 智至, 近藤 光男, 周 葵, 和田 録樹
    2004 年 21 巻 p. 239-246
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 住民の生活基盤施設に対する満足距離に基づく施設の配置評価モデルを構築し, 施設利用時の心理的な空間抵抗を考慮した評価方法を提案した. 従来の施設配置計画においては, 空間的な最適立地点を求める際の立地要因としては, 施設と住民間の距離や時間のみが用いられるに留まることが多く, 実際のサービス利用者である都市住民の意志はほとんど反映されることがないそこで住民の立場を考慮することにより, 今日の多様化した社会により適応した施設配置が行えると考え, 施設に対する満足度意識をモデルに導入することにより, 住民の視点にたった地域全体における施設の整備水準を明らかにした.
  • 奥田 隆明, 種蔵 史典, 幡野 貴之, 斉 舒暢
    2004 年 21 巻 p. 247-254
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では、中国各省市区の統計局が推計した地域産業連関表 (1997年) を用いて中国省市区レベルの地域間産業連関表を推計する方法を提案し、これを用いて中国省市区レベルの地域間産業連関表の推計を行ったものである。また、この地域間産業連関表を用いて地域間産業連関分析を行い、1) 沿海部の経済成長はその多くの外需に依存していたこと、2) 沿海部の経済成長は中国全土の経済発展に寄与していたこと、3) 沿海部に比べ、内陸部では地域間分業が進展していないこと等が明らかにされる。
  • 大森 貴仁, 高木 朗義, 秋山 孝正
    2004 年 21 巻 p. 255-264
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    都市計画におけるさまざまな場面で土地利用を予測することは重要であり, これまでにも数多くの土地利用予測モデルが開発されてきた. その中でもロジットモデルを用いた立地均衡モデルは, プロジェクト評価を整合的に行えることから現在広く活用されている. しかし, 人は同じ状況でも異なる行動をとることがあり, 立地選択行動においてもこのような曖昧さがあると思われる. そこで本研究では, 従来の立地均衡モデルに曖昧性を考慮することのできるファジィ推論を組み入れ, その適用性について検討した. その結果, 推計精度の高い人間的な立地行動を表現することが可能になり, 構築したモデルが都市政策を評価する方法の一つになることが示された.
  • ミッシェル パルモグ, 溝上 章志, 柿本 竜治
    2004 年 21 巻 p. 265-275
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    フィリピンのセブ南海岸道路プロジェクトでは, 歴史的遺産がある地域を保全することの経済的価値を計測するために, 複数の道路整備代替案に対してCVM調査を行った. 本研究では, 1) 実施された複数代替案に対するダブルバウンドの二項選択方式の調査データには, 同一回答者による回答に起因する相関と下方修正バイアスが含まれており, 2) これらを明示的に支払い意志額モデルに導入すること, 3) 支払い意志額を代替案ごとに個別に推定するのでなく, 同時推定することによって, 支払い意志額の推定値の統計的信頼性を向上させた.
  • 中川 大, 村田 洋介, 青山 吉隆, 松中 亮治
    2004 年 21 巻 p. 277-282
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    従来から、自動車交通によるCO2排出量の算出は多くなされているが、実際にはその算出方法は多数あり、それぞれから算出される排出量の値は一般に一致しない。自動車交通によるCO2排出量の算出方法は、大きく分けて燃料消費量に基づく方法と自動車走行キロ数に基づく方法があり、精度が高いのは燃料消費量に基づく方法であるが、個別の社会問題や公共政策との関連を論じるたあには、個々の自動車の走行状態を反映している走行キロ数に基づく算出方法を用いることが必要となることが多い。そこで本研究では、自動車走行キロ数に基づく方法によりCO2排出量を算出し、それをより精度の高い燃料消費量に基づく方法によるものと比較を行い、走行キロ数に基づくCO2排出量算出方法の有効性と限界を検証した。
  • 今村 麻希, 森本 章倫, 古池 弘隆, 中井 秀信
    2004 年 21 巻 p. 283-288
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では、家庭部門の電力消費量と自動車のエネルギー消費量に着目している。宇都宮市を対象地域とし、都市内でのエネルギー消費量の実態を把握し、都市形態やライフスタイルとエネルギー消費との関係を考察する。分析の結果、家庭部門の電力消費量については1人当たりで見ると都心で高く、郊外で低い値をとる。これは都心に単身世帯が多く、床面積当たりの家電製品の密度が高くなることが原因として考えられる。一方、自動車エネルギー消費量については、居住地から発生するエネルギー消費量を考えると、都心で低く、郊外で高い値をとることが示せた。しかし、両方を合わせて考えると、都心と郊外において消費量の大きな差は見られなかった。
  • 宮田 譲, 渋澤 博幸, 張 鍵
    2004 年 21 巻 p. 289-300
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    現在, 世界人口の約半数は都市に居住し, 社会経済活動, エネルギー利用の地理的な集中が都市における大量生産, 大量消費, 大量廃棄型社会をもたらしてきた。省エネ・省資源を徹底した循環型社会の構築のためには, 物質循環や環境共生を考慮した都市への変革が急務の課題となっている。
    本研究の目的は, 欧米で再検討がなされているコンパクト・シティの概念を考慮しながら, 省エネ・省資源を徹底した環境共生型都市の在り方を描き出すモデルを開発することにある。
    本研究では, 都市のコンパクト性と持続可能性について検討を行うことを試みる。そのためプロトタイプのシミュレーションモデルを開発し, 持続可能なコンパクトシティの在り方をシナリオ分析により検討する。都市のコンパクト化政策の有効性を示すために、3ケースのシミュレーションが実施さる。その結果、都市部への集積を促進したほうが、家計効用水準がより高くなるなど、興味深い結論が得られる。
  • 谷本 圭志, 岩倉 幸司
    2004 年 21 巻 p. 301-308
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ダムの撤去は今後避けて通れない課題である. ダムを撤去した場合にはダムに堆積した汚濁物質が放出されることがあり, 河川環境を損なうリスクをダムの管理者が負う. よって管理者は, 他の管理者の撤去による環境への影響を観測・学習し, それを踏まえて撤去すべきかを決定することを選好しうるため, 遅々として撤去が効率的に進まない事態が生じる. そこで本研究では, 撤去事業を効率的に実施するための管理者の間での費用配分手法をゲーム理論を用いて検討するとともに, 得られた理論的な知見を踏まえつつ簡便で容易な運用を行いうるための方法について検討する.
  • 河合 俊介, 高木 朗義
    2004 年 21 巻 p. 309-316
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    わが国の将来人口は近年における少子化の影響を受け, 2006年以降減少していくと見込まれている. 水環境保全計画を立案する場合には, このような人口減少の問題を考慮するとともに施設整備や自然浄化による時間遅れも勘案しなければならない. そこで本研究では, 長良川を対象とし, 以上の点を踏まえて排水処理施設の整備タイミングを検討するとともに, 人口減少が水質や生産量, 生涯効用に与える影響を分析した. また人口減少の不確実性に対する影響を見極めるため, 人口減少率や利子率, 生産効率等に対する生涯効用の変化について感度分析も行った. その結果, 排水処理施設の早期建設の必要性や将来の不確実な要因が水環境保全計画に及ぼす影響を確認することができた.
  • 新田 博之, 秀島 栄三, 山本 幸司
    2004 年 21 巻 p. 317-324
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年都市圏において発生している都市水害に対し、地下空間の浸水に対する脆弱性が指摘されている。本研究では、特に浸水発生時において地下鉄列車を安全に退避させるための具体的な列車退避方策を導き出すことを目的として、地下空間への浸水プロセスと列車退避プロセスを結合したモデルを構築する。名古屋市交通局鶴舞線に本モデルを適用した上で、浸水に対する合理的な防災計画の策定について考察する。
  • 山田 知寛, 高木 朗義
    2004 年 21 巻 p. 325-334
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年の水災害は, 従来型の施設整備によるハード中心の対策だけでは対応しきれない現状にあり, 多くの地方自治体は様々なソフト対策に取り組んでいる. そこで本研究では, 避難所の配置計画を策定するための支援システムを構築した. 本システムは, 住民の選好に基づいて避難所を選択する構造になっており, 住民の視点から見た避難所配置計画を策定できるものである. また, いくつかの分析を通して, 高齢者世帯の避難行動を考慮して配置計画を立案することが重要であることが明らかとなった.
  • 照本 清峰, 佐藤 照子, 福囿 輝旗, 池田 三郎
    2004 年 21 巻 p. 335-340
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、地方自治体の行政職員を対象に行ったアンケート調査をもとに、洪水対策に関連する意識構造について分析することである。調査は日本全国の市区町村自治体の河川行政担当者と防災担当者を対象として実施している。また洪水被害の危険性や対策に関する意識は、被害の危険性の高い自治体と比較的低い自治体で異なることが予測される。そのため、属性として洪水危険自治体と洪水低危険自治体に区別して分析している。
    分析の結果、いずれの属性においても「洪水危機意識」では外水より内水の危険性を重視していること、「対策促進意識」に対して「洪水危機意識」とともに「住民需要意識」も同程度重視していること、「氾濫受容意識」と「対策促進意識」の相関性は低いことが明らかとなった。
  • 二神 透, 木俣 昇
    2004 年 21 巻 p. 341-348
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, デジタル測量データによる建物情報を用いた火災延焼シミュレーション・システムを開発し, 倒壊建物を考慮した車両火災と延焼リスク分析の枠組みを整理した. 火災リスク分析システムを適用した結果, 倒壊建物のパターンと車両の炎上に伴うリスクを定量的かつ視覚的に提示することができた.
  • 柴崎 隆一
    2004 年 21 巻 p. 349-357
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 港湾施設の耐震設計における設計震度選択問題を対象に, その実績から, 港湾施設の地震被災リスクにおける, 被害額や生起頻度に関する評価特性を計測することを目的に, はじめに, 貨物輸送における経済損失も考慮した港湾施設の設計震度選択の枠組を独自に構築し, 全国の重力式岸壁のコンテナバースにおける設計震度選択問題を対象としてリスク評価特性を計測した. その結果, 年生起確率については, 筆者らの従来の結果とも概ね一致するいっぽう, 被害額については, 額の小さい領域では最大10倍程度大きく評価されるものの, 額の大きい領域では実際の被害額より評価値が小さくなる結果となった.
  • 麻生 哲男, 外井 哲志, 梶田 佳孝, 吉武 哲信, 辰巳 浩
    2004 年 21 巻 p. 359-366
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、カーシェアリング会員に対する意識調査結果及び利用状況データをもとに、会員の属性や意識を分析した。利用者属性は若い学生や会社員・退職後の老人が多く、大多数が自家用車非保有者であり、自家用車を手放してまで利用する会員はほとんどいない。利用目的はレジャーや買い物が多く、利用時間は平均で約3時間である。利用前後の会員の意識変化は利用料金や乗りたい車種などシステム面に対する意識変化が見られた。
  • 空間的応用一般均衡モデルによる計量厚生分析
    小池 淳司, 上田 孝行, 秋吉 盛司
    2004 年 21 巻 p. 367-374
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    社会資本ストックの効果を正確に計測するには, 社会資本ストックによる便益の空間的帰着構造を把握する必要がある. 一方, わが国は自然災害の危険にさらされており, 特定の地域への災害が目本経済全体あるいは全国の各地域にどの程度影響するのかを事前に評価するためにも, 社会資本ストックによる便益の空間的帰着構造を知ることは重要な課題である. そのため, 本研究では社会資本ストックを生産要素の一部として扱うことが可能な空間的応用一般均衡モデルを構築し, 社会資本ストックの間接スピルオーバー効果を様々な経済変数および社会的厚生の観点から評価する. また, 実証分析を通じて, 関東地方での災害により経済的被害を全国レベルだけでなく各地域別経済的被害を明らかにした.
  • 岡 徹, 高木 朗義
    2004 年 21 巻 p. 375-384
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    わが国には地震や洪水と並んで渇水という災害が存在するが, 近年, 施設整備によるリスク軽減策は実行し難くなっている. 一方, 渇水リスクは地理的条件や歴史的背景によって地域間, 主体間に格差があり, 調整の余地が残されている. そこで本研究では, 施設整備に依らない方策として節水と地域間の水融通に着目し, 効率性のみならず公平性も考慮した渇水リスク分散方法について検討した. 数値シミュレーションでは, 効率性の指標として社会的便益を, 公平性の指標として地域間所得格差を用いて様々なケースを比較検討することにより, ある水融通の価格において良好な渇水リスク分散となり得ることを示す.
  • 田中 尚人, 川崎 雅史, 亀山 泰典
    2004 年 21 巻 p. 385-391
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 明治初期から昭和戦前期までの近代化プロセスにおいて, 鉄道及び電気軌道によって支えられた都市形成の過程を実証的に分析した. 都市骨格を形成する鉄道・軌道網と, 都市活動の触媒装置として機能する都市施設の発達プロセスに焦点を当て, これらの関連性について考察を行った. 都市施設配置の変遷を分析し都市活動を考慮することにより, 近代京都の都市計画では, 郊外部が「風致」のための空間として認識されていたこと, また直接的な都市部への鉄道の乗り入れは見られず電気軌道網が人々の足となり都市施設立地が進んだことが特徴的であり, 郊外部における「観光」という都市活動を含む都市文化の形成に役立ったことが分かった.
  • 出村 嘉史, 川崎 雅史
    2004 年 21 巻 p. 393-398
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 京都の東山と洛中の中間に位置した近世の祇園社とその周辺において, 名所図会などの絵画史料や紀行文などの文献史料から, 近世を通して培われた境内と境外の景域の構成と, その接続関係を示した. 近世祇園社の領域は, 概ね境内, 二つの門前, 林地の各部分から構成され, 南側と西側にそれぞれ門前町を有した. これらの領域では, 二つの門に対応する日本の交わる軸を持ち, これらに従って構成されていた. それぞれの場に応じて, 庶民的な遊興と参詣の行為とが混合した独自の利用法が確立されていた. このようにして, 洛中から東山に至る間の段階的な境界領域を, 広い山辺の中に形成していたことが明らかになった.
  • 金田一 淳司, 岸 邦宏, 佐藤 馨一
    2004 年 21 巻 p. 399-406
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    都市の交通渋滞対策として, 環状道路の整備が推進されているが, ほとんどの都市で建設が進んでいないこのような中, 札幌では約70年の歳月を要したが, 日本初の一般道路による環状道路が実現した.
    研究成果は, 札幌環状通完成までの札幌の都市建設や都市・道路計画などを対象に, 歴史的背景, 史実, 計画の変遷を計画史の視点より研究した.
    その結果, 戦時体制下の国防, 防空と防火の思想を背景とした火防線を理想型の環状系広路として計画し, 実現性を踏まえた「アーク (環状系) 道路」を配置し, その思想を今日まで持続した点にあったとともに, 計画史的評価による新たな事業評価も可能であることを明らかにした.
  • 明治期から震災復興期の東京を対象として
    神宮字 良太, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2004 年 21 巻 p. 407-414
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ウォーターフロントを都市にとってより有益な地域として位置づけるためには、都市におけるウォーターフロントの役割を歴史的に明確にし、都市とウォーターフロントの関係性を理解し、その関係性を損ねないようにウォーターフロント計画を行うべきであろう。そこで本研究では、ウォーターフロントが都市形成の中で担った機能や役割を歴史的変遷から明らかにするため、明治期から震災復興期における東京の水辺空間を対象とし、ウォーターフロントの土地利用の変遷を通じて、この期間のウォーターフロントの形成過程を捉えた。その結果、対象期間全63年間のウォーターフロントを4期に区分し、それらの空間的特徴を明らかにした。
  • 川村 公一, 清水 浩志郎, 木村 一裕
    2004 年 21 巻 p. 415-424
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文は、江戸時代初期の米代川水系の地域開発について河道変遷から史的考察を行った。米代川水系には、現在まで8カ所の埋没建物が確認されている。埋没建物は泥流堆積物が洪水によって運搬・堆積したものである。建物の建築年代や十和田火山最新噴火活動から、埋没年代は平安時代前期と考えられる。埋没建物の存在から、盆地内での河道が強く蛇行していた。埋没建物があった最低位段丘面から約6m低位に現在の沖積面があり、新田開発の時期などから1600年代に河道が安定したものと考えられる。沖積面の新田開発には、治水利水の土木技術が大きく貢献し、地域開発が行われた。
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