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五十嵐 学, 増田 龍哉, 矢北 孝一, 倉原 義之介, 田中 ゆう子, 滝川 清
2015 年71 巻2 号 p.
I_898-I_903
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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人工干潟の造成後約2年を経た現況を整理した上で,既往の底生生物調査地点の設定手法の精度を検証した.さらに,含泥率と地盤高による干潟の区分に応じて底生生物の定量調査を実施し,出現生物種の特徴を考察した.その結果,(1)人工干潟では造成後約2年を経ても出現生物種数は増加傾向にあること,(2)確認される生物種の割合は,調査枠を干潟の区分に応じて抽出した場合が77%であったのに対し,調査枠を任意に抽出した場合が72%となり,既往の調査地点の設定手法は有効であること,(3)造成した人工干潟が多様な地盤高や底質環境を有するため,自然干潟で確認されなかった生物種が人工干潟に加入・定着したことが示された.
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大谷 壮介, 倉田 健悟, 東 和之, 山中 亮一, 上月 康則
2015 年71 巻2 号 p.
I_904-I_909
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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本研究はシルト・クレイ率と地盤高さという2つの物理的な底質環境の変化から生物群集を予測する底質環境・生物群集対応関係の洪水直後の適用性について検証を行った.50地点を対象に洪水直後において干潟全体のシルト・クレイ率は増加傾向にあり,地盤高さは干潟下流部で大きく変化している地点が確認された.底生生物の個体数および種数は洪水直後に減少し,翌年には洪水前と同程度に回復していたことから,底質環境および底生生物に及ぼす洪水の影響が伺えた.底質環境・生物群集対応関係の洪水直後の適用性について,平水時の予測と比べると洪水後の一致率は大きく減少し,洪水のようなイベントに対する底質環境・生物群集対応関係を用いた底質環境の変化から生物群集を予測することが可能な地点および生物群集の特徴を抽出することができた.
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日比野 忠史, 金城 信隆, TOUCH NARONG , 福岡 捷二
2015 年71 巻2 号 p.
I_910-I_915
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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過剰な有機物の流入により底棲生物(マクロベントス)が棲息できなくなった海底から堆積有機泥を採取して生態系の再生実験を現地で行った.還元化した土壌での生態系の再生は,SiO
2,Al
2O
3,CaOを主な成分とするアルカリ剤を用いた.アルカリ剤を用いることで生態系が崩された土壌を底棲生物が棲息できる土壌に再生することができた.生態系の再生ができた土壌の有機泥性状を分析することで有機泥土壌の再生法について検討した.この結果,アルカリ剤からの陽イオンの溶出は有機物の分解により泥層内に蓄積された電子,水素イオンを処理すること(電子伝達機構の促進)により,COD,硫化物の低下等を生起させて生態系の再生を促進させていることが明らかにされた.
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渡辺 雅子, 山本 龍兵, 采女 尚寛, 上月 康則, 岡田 直也, 玉井 勇佑, 野上 文子, 河井 崇
2015 年71 巻2 号 p.
I_916-I_920
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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希少種ルイスハンミョウの生息地消失に対する代償措置として創出された海浜において,ルイスハンミョウ幼虫の生息可能な場所の面積を増やすための手法検討が本研究の目的である.そのため,幼虫の生息環境について,生息標高や植生被度,地盤の安定性を調査した.その結果,(1)標高0.7~1.0m,(2)植生被度25%以下,(3)地盤の変動係数6.7%以下の場所に生息していた.幼虫の生息場所を増やすためには,標高を調節する,植生を除去する,地盤を安定するなどの方法が考えられる.幼虫生息場創出実験により,調節した標高を維持することは難しいが,植生除去により創出した生息地を1年以上維持できることが分かった.以上のことから,維持管理や得られる面積の広さを考慮した結果,ルイスハンミョウ幼虫の生息場の創出方法として海浜植生除去が効果的であると考えられた.
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増田 龍哉, 鳥居 洋, 飯尾 昌和, 矢北 孝一, 上久保 祐志, 滝川 清
2015 年71 巻2 号 p.
I_921-I_926
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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八代海は九州西部に位置する大型閉鎖性内湾で,水産資源の減少等に代表される環境悪化に伴う諸現象が顕在化し,早急な海域環境の再生・改善策の実施が社会的に強く求められている.八代海における環境変化の原因は様々な事象が考えられるが,沿岸域の開発等による干潟や藻場の減少も原因の一つとして挙げられる.
本研究では八代海東岸中部に位置する野坂の浦において,アマモの生育環境を明らかにして減少した分布域を拡大させる方法を検討するため,野坂の浦においてアマモの生育条件調査の行い,HSIモデルを用いてアマモの生育環境評価を行った.その結果,八代海特有の大きな潮位差により生育場所が限られていることや,アマモの生育を制限している要因が明らかとなり,底質改善や適正な標高を確保することで分布面積が広がることが示された.
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森口 朗彦, 南部 亮元, 吉田 吾郎, 山田 智, 蒲原 聡
2015 年71 巻2 号 p.
I_927-I_932
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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三河湾東奥部の天然アマモ場において,約3年間,冬季衰退から夏季繁茂に至る過程を観察するとともに,形成阻害要因と考えられる波浪と水中光量子密度を適時観測し,指標となるシールズ数および飽和光量子量以上照射日数を求めた.初年度は冬季に残存した栄養株が繁茂に寄与していた.翌冬季には栄養株は完全に消失したが,実生株による再生産が図られ,一部は冬季まで残存した.最大シールズ数は0.23とアマモ場形成の適値を上回っており,また夏季に必要飽和光量子密度照射時間が確保された日数の割合は50%未満とアマモ場形成に厳しい環境であった.当該海域のアマモ場再生には安定化基質を用いた播種が有効であるが,底質安定のための波浪減衰,光量確保のための海水交換,種子散逸防止のための循環流発生機構が必要と推察された.
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佐藤 仁, 瀬戸 岳史, 渡辺 航希, 山下 俊彦
2015 年71 巻2 号 p.
I_933-I_938
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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北海道南西部日本海沿岸では,ウニの食害による磯焼けが進行している.磯焼けは海藻の成長量とウニの摂餌量の大小関係で決定され,それらには水温,波浪,日射量,栄養塩等の環境因子が影響するが,各データが調査されている海域はほとんどないのが現状である.本研究では必要なデータが調査されている北海道寿都海域を対象とし,まず,現地調査結果より種々の海藻の現存量と物理環境の変動特性を明らかにする.次に,種々の環境データを用いた海藻現存量予測法により,定量的な現存量の推定を検討した.その結果,環境データに10日平均値を用いることにより,現地調査とよく一致する推定値が得られることが分かった.特に,海藻(コンブ)幼芽期の1月から2月では,コンブの成長量は少なく,ウニの摂餌量変化の影響が大きいため,10日間でも低波浪でウニの摂餌が多い期間があると磯焼けになることが確認された.
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後藤 益滋
2015 年71 巻2 号 p.
I_939-I_944
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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本研究は,近年各地で確認されている海藻群落が消失する磯やけ現象によって衰退している沿岸生態系の保全及び再生を目標に簡易的でかつ浅海域においても設置可能な小型漁礁を開発することを目的とした.格子状に設計した鋳鉄製の枠を組み立てて,既存の藻場への影響を考慮して,L.W.L‐2.0mの砂地に設置した.設置方法の検討として,非固定,鉄筋棒による固定の条件を検討した.
設置後の海藻の繁茂状況や,生物の蝟集状況の変遷についてモニタリングを行った結果,試験中にホンダワラ類といった大型海藻の繁茂は確認されなかったが,小型海藻の繁茂は確認された.また,貝類,甲殻類,魚類の幼魚または底魚が確認され,周辺の藻場群落とほとんど遜色の無い効果が認められた.
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中山 恵介, 伊藤 権吾, 若菜 勇, 北村 武文, 佐藤 之信, 駒井 克昭, 竹内 友彦
2015 年71 巻2 号 p.
I_945-I_950
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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北海道北東部に位置する阿寒湖に存在するマリモは,北半球の高緯度地方の湖沼や河川に広く分布する淡水緑藻の一種であり,糸状体と呼ばれる糸状の藻体が多数集まって球状の集合体を形成することでよく知られ,わが国では北海道阿寒湖の集団が国の特別天然記念物に指定されている.この回転運動を発生させる外力として,適度な波浪の関与が想定されているものの,その実態は十分に分かっていない.本研究の成果として,マリモが水中で回転する様子を湖底に設置したビデオカメラによって記録するとともに,波高計と風向風速計による風波の観測を同時に行い,数値計算モデルも利用することで,マリモを回転させる風波の条件を明らかにすることが出来た.
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村上 智一, 河野 裕美, 玉本 満, 水谷 晃, 下川 信也
2015 年71 巻2 号 p.
I_951-I_956
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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本研究では,西表島北西部のウミショウブ群落における種子を対象として,観察・実験データに基づいた数値シミュレーションを実施した.そして,群落の分布や規模を決定付けるだけでなく,衰退・消失した群落の自然回復力に関わる種子の分散力を評価した.
その結果,種子の平均浮遊時間2.4時間の平均移動距離は,261 mに留まることが明らかとなった.これは,東西約10 km,南北約15 kmの西表島北西部のスケールに対して極めて小さいものである.移動距離の小ささの主因は,種子の浮遊時間の短さにあり,さらに群落形成場所の弱い流速にも一因があることがわかった.また,群落間の種子の交流数を調べ,消失した群落には,他群落からの種子の加入がほぼないことなどが示された.これらのことから,ウミショウブ種子の分散力は極めて弱いと結論付けられた.
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中瀬 浩太, 村上 智一, 鵜飼 亮行, 水谷 晃, 下川 信也, 河野 裕美
2015 年71 巻2 号 p.
I_957-I_962
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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八重山諸島周辺海域を分布北限とする熱帯性海草ウミショウブは環境省RDBに絶滅危惧II類として掲載されているが,本種の分布・群落状態および生育環境の定量的条件に関する情報は乏しい.そこで西表島北西部のウミショウブ分布範囲について当該海域の通常の高波浪条件を用いた外力分布再現計算を行い,この結果と,同海域のウミショウブ分布の調査結果とを直接比較し,ウミショウブの密生かつ草丈の長い群落は,D.L. -0.76mまでの水深で, 通常の冬季高波浪時の平均有義波高25~32cm,平均底面流速11~19cm/s,大潮時平均残差流速0.1~0.3cm/sを中心とする範囲に分布していることが明らかになった. この条件を物理環境の再現計算結果に当てはめると,おおむね現状の群落分布が再現され,ウミショウブの群落分布には物理条件が大きく影響することが明らかになった.
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鵜飼 亮行, 村上 智一, 水谷 晃, 中瀬 浩太, 下川 信也, 河野 裕美
2015 年71 巻2 号 p.
I_963-I_968
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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西表島北西部に位置する網取湾は,小さな湾ながら地形や波高,流れなどの物理環境が変化に富んでおり,それに対応するようにサンゴ礁の分布も多様である.数値解析により得られる物理環境は,実測値との誤差を含むものの,空間的に補間されることで得られる情報量は多く,現象の理解に役立っている.一方,サンゴの被度は,サンゴの生態自体に不明な点が多く生態系モデルによる平面分布の評価は難しい.
本研究では,サンゴ被度と物理環境との関連性を基にサンゴ被度の空間分布を推定する新しい手法を提案することで,網取湾内のサンゴ被度の平面分布を示すとともに,被度分布に関わる各要因の寄与量を示した.被度を推定する上で,被度と物理環境の関係を設定の自由度が高い折れ線関数で表すことで現地の特徴をより良く再現する平面分布を得ることができた.
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下川 信也, 河野 裕美, 村上 智一, 水谷 晃, 柴山 拓実, 山本 結子, 鵜飼 亮行, 中瀬 浩太
2015 年71 巻2 号 p.
I_969-I_974
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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西表島網取湾におけるサンゴ分布調査と海洋大気河川観測および海洋波浪モデルを用いた数値計算により,塊状サンゴ分布と物理環境の関係を調べた.結論は以下の通りである.i. 塊状サンゴ被度と水深は反比例する.ii. 塊状サンゴ被度と他形態サンゴ被度は反比例する.iii. 塊状サンゴ被度と平均波高は弱い比例関係にある iv. 塊状サンゴ属数・被度と土粒子量はそれぞれ反比例・比例する.iiiについては,塊状サンゴはその形状と頑丈な骨格から波に強く,かつ両岸の平均波高差が小さいため,弱い比例関係となり,ivについては,少土粒子量の西側では多様なサンゴ属が生息可能であるが,多土粒子量の東側では粘液による土粒子除去能力に優れるハマサンゴ属が生残しやすいため,上記のような関係になったと考えられる.
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三上 康光, 小林 昭男, 宇多 高明, 東原 浩志, 野志 保仁
2015 年71 巻2 号 p.
I_975-I_980
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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盤洲干潟を対象として干潟外縁部の砂州地形(変化)と,そこに繁茂する植生との関係を現地観測により調べた.観測では,砂州の縦断形,砂州構成土砂の粒度分布,および植生分布を詳しく調べた.砂州が沿岸漂砂により削り取られた場所では汀線が凹状に,堆積域では凸状の汀線となり,侵食域では浜崖が形成される.侵食が進行すると植物生育適地が狭まることから,海浜植生の保全には植生群落と砂州(barrier)の変形の関係について十分理解することが求められる.
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青木 勇介, 岡辺 拓巳, 黒澤 愛子, 加藤 茂
2015 年71 巻2 号 p.
I_981-I_986
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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土砂移動を直接的に追跡する有効な手法として,着色砂を用いた調査が多く行われている.従来は採泥土砂から目視により着色砂を検出していたが,膨大なコストが必要であり,近年では画像解析を用いた検出手法が用いられつつある.本研究では,画像解析による自動的な着色砂検出に加え,人的に誤検出を確認する手順を設けることで,それぞれの利点を活かした着色砂検出手法を構築した.この手法では,土砂を紙に貼り付けてスキャニングすることで安定した砂面画像を取得する.また,画像解析における着色砂検出では,意図的に誤検出を生じさせて検出漏れを防ぐとともに,切り出された着色砂画像を目視により判断して検出精度を確保した.本手法は,多数の土砂サンプルを分析する調査に対して有効であることを明らかにした.
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黒崎 弘司, 由比 政年
2015 年71 巻2 号 p.
I_987-I_992
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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波浪災害軽減のためには,広範囲で長期継続的な海浜地形変動モニタリングによる情報取得と解析が不可欠であるが,そのコストと解析時間は膨大となる.既往の画像解析研究では汀線位置を特定する手法として画像輝度値の閾値による画像二値化解析やデジタイザーの援用による目視マニュアル処理が多く行われているが,前者は現地での汎用性(信頼性)に欠け,後者は効率性と客観性に難があることから,本研究では処理の自動化,高速化および汎用性(信頼性)の向上に視点を置き,コンピューターにより自動的に汀線を抽出可能な画像解析法を提案し,さらに,波・流れ解析への応用可能性を検証した.その結果,様々な海浜状態での汀線を効率良く客観的に抽出することが可能であり,波・流れ解析への応用も可能であることを確認した.
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児島 正典, 武若 聡
2015 年71 巻2 号 p.
I_993-I_998
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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Xバンドレーダで砕波帯を観測し,離岸流の非定常な発達過程を遠隔から観測する手法について検討した.レーダ画像には,離岸流の発生と共に沖側に移動する流れの先端部(リップヘッド)が捉えられる.これを追跡する画像解析プログラムを開発し,その妥当性を検証した.6ヶ月にわたる観測結果を分析し,離岸流の諸元(発達早さ,発生数等)と,海況(波浪,潮汐)の関連性を調べた.離岸流の発生条件については既存の報告と整合する結果が得られた.
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羽柴 秀樹, 杉村 俊郎, 青山 定敬, 朝香 智仁
2015 年71 巻2 号 p.
I_999-I_1004
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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2011年3月に発生した東日本大震災による津波によって,東日本の沿岸域は甚大な被害を受けた.特に宮城県仙台平野沿岸域のクロマツを主体とした海岸林は,広い範囲で被害を受けた.高い空間分解能を有し土地被覆の変化現象を詳細に調査することができる高分解能衛星リモートセンシングの被災地への長期モニタリングはまだ十分になされていない.ここでは,高分解能衛星リモートセンシングによる詳細な画像判読と高い空間分解能を有する植生指標値分布の解析および現地観測から宮城県仙台平野沿岸域の海岸林の被災前後および2年経過後の変化過程を調査した.対象海岸林の被災前から被災直後,被災から2年後の時系列変化過程が詳細に示された.また,時系列的な正規化植生指標値により海岸林の変化プロセスを評価することができた.
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鈴木 崇之, 金子 洋樹, 太田 篤史, 中村 由行
2015 年71 巻2 号 p.
I_1005-I_1010
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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神奈川県相模灘に位置する小田原海岸,大磯海岸,藤沢海岸にて海岸環境音を計測した.これらの収録音に対して音質評価を実施すると共に,官能試験による主観評価を行い快適感との関係を検討した.その結果,音質評価指標は風の影響が特徴づけられており,ラウドネスについては風速4 m/s以下では汀線からの距離による相関が見られたが,それ以上の風速では風の影響が支配的であった.また,シャープネスについては風速の増加と共に減少する傾向が見られた.さらに,官能試験の結果,海岸環境音に関する2因子,迫力因子と明瞭感因子が得られた.これらと物理量との関連性を検討した結果,海岸環境音の快適性はラウドネスをパラメータとした迫力因子,シャープネスと砕波指標をパラメータとした明瞭感因子を用いて評価できることが示唆された.
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水谷 将, 三好 俊康
2015 年71 巻2 号 p.
I_1011-I_1016
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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擁壁等において広く使われるジオグリッドを用いた補強土壁工法は耐震性に優れており,港湾構造物(例えば矢板式岸壁)へ適用することは有効であると考えられる.ジオグリッドを港湾構造物に適用する場合,水中での裏込石締固め作業は困難であることから,ジオグリッド敷設箇所の不陸が大きくなり補強効果が十分に発揮されないことが予想される.ジオグリッドは目合い部分と土のかみ合わせにより補強効果を発揮するため,その摩擦特性を把握することは重要となるが,岸壁背後に用いられる裏込石とジオグリッド間の摩擦特性については不明な点が多い.本報告ではジオグリッドと間詰石の相互作用による摩擦特性を把握するため,異なる間詰石や上載荷重に対しジオグリッドの引抜き試験を実施した.その結果,粒径が小さい間詰石を使用するほどジオグリッドとの間に摩擦効果が大きくなることが確認できた.
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河村 裕之, 浅田 潤一郎, 平山 隆幸, 中村 孝幸
2015 年71 巻2 号 p.
I_1017-I_1022
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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2011年の東日本大震災により直立消波ブロック式岸壁や物揚場の施設についても津波による被災が多く報告されている.このような構造では,利用上および安定性を高めるため直立消波ブロックの上に上部工を設けるのが一般的である.しかし,船接岸時の利便性と消波機能を発揮するためその厚さは最小となることが多い.このため,津波作用時を想定すると,上部工は最も被災を受けやすい状況にある.岸壁の被災報告では特に上部工および直立消波ブロック最上段の被災が顕著であると報告されている.本研究では,直立消波ブロック式の岸壁や物揚場を対象とし,津波越流時の上部工並びに直立消波ブロックの安定性を実験的に明らかにする.この際,上部工の移動メカニズムについても考察できるように,その移動時刻歴に着目すると共に耐津波設計に必要となる流体力係数の実態について究明する.
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森本 真司, 重松 孝昌, 加藤 健司, 脇本 辰郎, 吉岡 真弥
2015 年71 巻2 号 p.
I_1023-I_1028
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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著者らは,これまでに,縦スリット消波工の遊水室内に水車を設置する波力発電システムを提案しており,遊水室内に水車を設置することによって幅広い周期帯で消波性能が向上することを明らかにしてきた.消波メカニズムは波浪エネルギーの散逸によるものであることから,本波力発電システムは設置海域の曝気能の向上にも有効であることが期待される.本研究では,水理実験と既往の海岸構造物による曝気能に関する既往研究の知見に基づいて,波力発電システムの曝気能について検討した.
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和田 明浩, 辻本 剛三, Sungmo AHN, Hochan LEE, 園田 泰敏, 高垣 清和, 園田 勝敏
2015 年71 巻2 号 p.
I_1029-I_1034
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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港内の静穏確保や海浜保全のために消波ブロックが利用されているが,近年の合理的設計や工期短縮,工事費節減などの要請の高まりを受け,従来の多層積消波ブロックにかわる1層積消波ブロック開発が進められている.本研究では1層積消波ブロックとして開発された3脚構造の消波ブロックを対象とし,実物落下試験とFEM構造解析に基づいて消波特性と構造強度を両立させたブロック形状の設計法について検討した.ブロックの主要破壊形態として落下脚上部の割れ損傷があり,角加速度負荷による静的FEM解析によりその再現が可能である.V字脚の開き角度を変更することで耐落下衝撃性の改善が可能であるが,消波特性と関連の深い空隙率の低下を伴うため,適切なV字脚の開き角度が存在する.
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小竹 康夫, 後藤 潤也, 小倉 勝利, 阿部 覚, 山口 陽介, 加藤 直幸
2015 年71 巻2 号 p.
I_1035-I_1040
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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建設現場では,技術者の確保や若い世代への技術の継承が課題となっている.本研究では,防波堤築造工事において,新設するケーソンを安全かつ高精度に据え付けるための係留ワイヤの取り付け方法やウィンチ操作技術に着目し,技術者の経験値を数値化する試みの第一歩として,実施工を対象とした現地計測を実施した.具体的には,防波堤ケーソンの据付作業において係留ワイヤに作用する張力を測定し,ウィンチ操作者および据付状況を撮影したビデオ映像から函の動揺を読み取って,ウィンチ操作と係留ワイヤに作用する張力および函の動揺の関係を調べた.その結果,本研究で対象とした施工方法および波浪条件では,引き寄せ時と着底時で大きな張力が作用するワイヤが異なること,引き寄せ時により大きな張力が作用していた.
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高橋 英紀, 佐々 真志, 森川 嘉之, 高野 大樹, 松原 宗伸, 遠山 憲二, 平田 昭博, 丸山 憲治
2015 年71 巻2 号 p.
I_1041-I_1046
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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ケーソン式防波堤に津波が来襲する場合,防波堤の港内外で水位差が生じ,防波堤マウンドに浸透力が作用する.浸透力はマウンドの支持力を低下させるが,どの程度の低下率か不明である.また,浸透力を加味した防波堤マウンドの安定性評価手法も確立されていない.本研究では,実験方法を工夫し,載荷実験と載荷・浸透複合実験の2種類の実験を比較することで,浸透力が支持力に及ぼす影響を調べた.さらに,有限要素解析によって遠心模型実験の再現を試みた.実験の結果,2種類の実験における破壊モードは一般的に言われる防波堤マウンドの破壊モードであった.また,浸透力はマウンドの支持力を10~16%低減させていた.解析の結果,動水勾配や支持力の発現メカニズムは実験のものと共通していた.また,限界荷重に関しても,精度良く再現できた.
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高橋 英紀, 佐々 真志, 森川 嘉之, 高野 大樹, 橋爪 秀夫, 丸山 憲治
2015 年71 巻2 号 p.
I_1047-I_1052
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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ケーソン式防波堤に津波が来襲する場合,ケーソン側面に大きな波力が,底面に揚圧力が作用する.現在,ケーソン直背後に石材による腹付工を設置する補強方法が検討されているが,マウンドと腹付工が複合した地盤の抵抗メカニズムは明らかになっていない.そこで本研究では,実物スケールの応力を再現できる遠心力場で防波堤模型に対して水平載荷実験を行い,その変形・破壊特性を調べた.破壊モードを可視化するために細砂を用いた載荷実験を実施し,2種類のすべりを伴う破壊モードの観察に成功した.砕石を用いたケースでも,載荷に対して同様の抵抗メカニズムであると考えられた.また,円弧すべり計算によって,実験結果の再現を試みた.すべり面の位置に関しては課題が残ったが,限界荷重については精度よく再現できた.
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高橋 英紀, 佐々 真志, 森川 嘉之, 高野 大樹, 丸山 憲治
2015 年71 巻2 号 p.
I_1053-I_1058
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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ケーソン式防波堤に津波が来襲する場合,防波堤の港内外で水位差が生じ,防波堤マウンドに浸透力が作用し,ボイリング現象が発生する可能性がある.本研究では,動水勾配と流速の非線形性を考慮して浸透力場を解析的に調べるとともに,遠心模型実験によって防波堤マウンドへの浸透実験を実施し,ボイリングの発現の有無を実験的に調べた.浸透流解析の結果,ケーソン下部よりも後趾付近の浸透力は大きく,ボイリングが生じやすい条件にあることが分かった.また,非線形性を考慮することで,ケーソン後趾付近の浸透力が多少大きくなる傾向にあった.遠心模型実験の結果,非線形浸透流解析と模型実験の結果に整合性があった.また,マウンド材の粒径が大きい場合,ケーソン後趾付近の局所的な浸透力ではボイリングが発生しにくいことが確認された.
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井上 翔太, 笠間 清伸, 平澤 充成, 善 功企, 古川 全太郎, 八尋 裕一
2015 年71 巻2 号 p.
I_1059-I_1064
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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平成23年東北地方太平洋沖地震による津波により,東北地方各地の防波堤が被災し甚大な被害が生じた.津波による防波堤の被災要因は大きく分けて3つあり,越流による捨石マウンドの洗掘,防波堤の背面と前面の水位差と津波波力によるケーソンへの水平力,捨石マウンド内に発生する浸透流による支持力低下が挙げられる.これらを複合的に考慮した防波堤の安定性評価は研究が進んでいない.本文では,防波堤の越流ならびに捨石マウンド内に発生する浸透流に着目し,理論的な捨石の安定重量算出式を提案する.この式は,越流・浸透流を考慮することにより,より精度の高い結果を求めることができ,実際の防波堤の設計や改良の際に用いることができると考えられる.また,その妥当性を釜石港湾港防波堤を対象とする水理模型実験により検証した.
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Akhmad Adi SULIANTO, Keisuke MURAKAMI
2015 年71 巻2 号 p.
I_1065-I_1070
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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After the field survey of structural damages in Tohoku earthquake disaster, coastal engineers recognized the importance of persistent coastal structure to reduce tsunami inundation on coastal area. In order to realize the persistent structure, it is important to understand the mechanism of structural damage under tsunami actions. This study focuses on the failure of breakwater caused by the local scouring on a rubble mound due to tsunami overflow. The problem of the local scouring due to tsunami overflow includes complex interactions between vortex flow and rubble mound. This study employs a numerical simulation method based on SPH model to reveal the characteristic of rubble mound deformation under several tsunami overflow conditions. Furthermore, this study proposes a countermeasure that consists of a horizontal plate to check the rubble mound scouring. Efficiencies of this countermeasure are also investigated in this research.
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高橋 源貴, 土田 孝, 村上 博紀
2015 年71 巻2 号 p.
I_1071-I_1076
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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2011年3月の福島第一原発事故に伴い発生した放射性セシウムで汚染された廃棄物の処理が問題となっている.そこで本研究では,大量の廃棄物処理が可能な海面処分場に着目し,処分場に用いる遮水材料の開発を行った.遮水材料には海成粘土とゼオライト及びベントナイトを混合し,遮水材料の遮水性能,セシウムに対する吸着性能について室内試験により検討を行った.遮水性能については,海成粘土にベントナイトを加えることで向上し,ゼオライトを添加しても遮水性は保持されることが分かった.また,セシウムに対する吸着性については,ベントナイトの添加によって低下したが,ゼオライトを添加することによってセシウムの吸着性は大幅に向上するという結果となった.
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髙橋 克則, 金山 進, 肴倉 宏史, 水谷 聡, 津田 宗男, 木曽 英滋
2015 年71 巻2 号 p.
I_1077-I_1082
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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鉄鋼生産の副産物である製鋼スラグは,海域環境改善などの資材としての有効利用が進みつつある.製鋼スラグは石灰分を多く含むためpH上昇に留意が必要で,主に施工中は管理されているが,実供用段階のpH影響や経時変化については十分な知見がない.本研究では,粒度調整製鋼スラグの施工直後から1ヶ月にわたり直上部の海水のpHおよび周辺への影響を調査した.また,積層状スラグからのアルカリ影響を数値シミュレートして実海域のpHと比較し,アルカリ影響について検討した.施工後初期は施工エリアの海底面に近いほどpHが上昇し,安定下では0.05程度高かったが,1ヵ月後にはほとんど差が認められなくなった.実海域から回収したスラグのアルカリ溶出能は施工前に比べて大幅に低下しており,その値で数値シミュレートした結果,実海域のpHを良好に再現できた.
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秋本 哲平, 熊谷 隆宏, 米谷 宏史, 安藤 有司
2015 年71 巻2 号 p.
I_1083-I_1088
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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2011年に発生した東日本大震災から,我が国の電力供給源は大きく変化しており,火力発電にかかる負担が大きくなっている.火力発電の主燃料である石炭は,発電のために利用された後,灰として排出される.排出された石炭灰のうち,セメントの原料等に有効利用されるものがある一方で,非常に多くの量が管理型処分場に埋立処分されている.本研究は,処分場の延命化のため,石炭灰を効果的に減容化する方法について検討した.粒度分類上,「シルト」に区分される石炭灰の特性を踏まえ,室内実験および机上検討により,効果的な減容化方法として,吸水しながら振動締固めを行う方法,および地下水位の低下により地盤を不飽和化させた後に,フライアッシュを振動圧入する方法を提案する.
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中下 慎也, 中本 健二, 中澤 泉, 福嶋 正博, 日比野 忠史
2015 年71 巻2 号 p.
I_1089-I_1094
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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広島デルタの河口域の河川干潟では生活排水の増加によりヘドロ化が進み,アナジャコ等が優占する泥干潟が形成されている.泥化が進み,かつ護岸堤内側との地下水流動が遮断された河川干潟の底質環境改善を図るため,2011年には石炭灰造粒物を用いた透水層が設置された.本研究では石炭灰造粒物層内における地下水流動性を把握するために,施工から2年後の2013年から2014年にかけて造粒物層内の流動性,地下水の性状の測定,地下水の連続測定を実施した.石炭灰造粒物層内では施工から2年後においても十分に地下水の流動が生じており,地下水流動に伴って酸素を含む地下水とクロロフィルaを含む濁質が造粒物層内へ輸送されていることが明らかとなった.
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新舎 博, 堤 彩人, 北詰 昌樹
2015 年71 巻2 号 p.
I_1095-I_1100
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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軟弱な粘土地盤にPVDを打設して圧密改良を行うと,PVDは沈下にともなって曲がり,曲がりが大きくなると,PVDの通水性能が大きく低下する可能性がある.そこで,高含水比に調整した粘土の真空圧密土槽実験(直径 30 cmあるいは76 cm×高さ5 m)の圧密終了後にPVDの曲がり形状を測定した.次にPVDの通水実験を実施した.通水実験は直線状のPVD,圧密土槽実験とほぼ同様に曲げたPVD,および強制的に大きく曲げたPVDを対象とし,PVDの面内方向の漏水を防止するために遮水シートを巻きつけたPVDに水頭差を与えて曲がり形状と通水量の関係を求めた.これらの結果を考察すると,現場で使用されているPVDは十分な通水性能を保持していると考えられる.
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小林 孝彰, 佐々 真志, 渡辺 啓太, 山崎 浩之
2015 年71 巻2 号 p.
I_1101-I_1106
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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本研究では,本震によって間隙水圧が上昇した地盤が余震を受けて液状化に至る状況を想定し,メカニズムの解明と定量的な評価を目的として振動台実験と数値解析を行った.砂層地盤の密度,余震の規模,静穏期の長さを変化させた9ケースの実験を行い,結果を比較した.実験結果に対し,過剰間隙水圧の残留・消散を考慮した有限要素解析を行った.また,既存の液状化判定指標である最大せん断応力比を実験結果から算定し,連続した地震動作用下の液状化判定指標の適用性を検証した.本研究で対象とした条件においては,余震の最大せん断応力比を指標とすることで,余震中の液状化をある程度予測可能なことを示した.
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渡辺 啓太, 佐々 真志, 小林 孝彰, 山﨑 浩之
2015 年71 巻2 号 p.
I_1107-I_1112
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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本研究では,液状化層が粘土・シルトなどの透水性の低い非液状化層に挟まれた互層地盤を対象とした振動台実験を実施し,互層地盤の液状化特性を体系的に明らかにした.余震外力を変化させた一連の振動台実験を実施し,互層地盤の液状化特性におよぼす断続的な地震動の影響について評価した.さらに,異なる締固め工法を適用した一連の振動台実験を実施し,CPGではモルタル杭打設に伴う砂層の密実化と水平有効応力の増加が互層地盤の液状化抑制に寄与すること,一方,SCPでは密実化と水平有効応力の増加に加え粘土層を貫く砂杭の排水効果が液状化抑制に有効に機能することを明らかにした.
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津田 和夏希, 森川 嘉之, 高橋 英紀, 高橋 直樹, 東畑 郁生
2015 年71 巻2 号 p.
I_1113-I_1118
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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過去の大規模地震の際に,液状化した地盤が側方に大きく流動する側方流動現象が発生し被害をもたらしている.側方流動は広範囲に及ぶため,低コストな対策工法が求められている.筆者らは,深層混合処理工法による低改良率の杭式改良を用いた側方流動対策に関する検討を行い,側方流動を効果的に抑制できる新たな配置方法である流動閉塞杭配置を提案している.この配置方法は,どの方向から見ても改良杭が地盤中に存在するため,広範囲にわたる様々な方向への側方流動に対して効果的である.しかしながら,側方流動する液状化地盤から改良杭が受ける流動力については未解明な点が多く,現状では改良杭の設計が難しい.本研究では,遠心模型実験を行って側方流動地盤中の杭模型のひずみを計測し,改良杭に作用する流動力の発現特性を検討した.
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高橋 直樹, 高橋 英紀, 森川 嘉之, 東畑 郁生, 高野 大樹, 津田 和夏希
2015 年71 巻2 号 p.
I_1119-I_1124
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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液状化に伴う側方流動を防止する根本的な方法は,液状化の発生を抑制することである.しかし,対象範囲が広域に及ぶ場合には大きな費用が必要となるため,側方流動を抑制する合理的な対策が必要であると考える.著者らは,低改良率の杭式改良による側方流動対策に関する検討を行い,効果の最大化を目指してその配置についても検討を深めてきた.本報は,改良杭およびその配置形状の違いが側方流動抑制効果に与える影響ついて,遠心模型実験と流体解析により検討した結果を述べたものである.遠心模型実験および流体解析の結果から,杭により側方流動量が大幅に低減されること,ならびに著者らの提案する流動閉塞杭配置は整列配置よりも側方流動抑制効果が高いことが明らかとなった.
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中道 正人, 河野 正文, 梅山 崇, 山本 修司, 川原 修, 片桐 雅明, 大石 幹太
2015 年71 巻2 号 p.
I_1125-I_1130
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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稼働中の浚渫土砂処分場において鉛直排水材を打ち込む地盤改良工法では, 鉛直排水材を打設した地盤の上に浚渫土砂が堆積していくため水平方向排水システムの確保が重要となる.本論文では,鉛直排水材を打設した地盤の沈下,堆積していく浚渫土砂の厚さ,地盤内の間隙水圧,ならびに鉛直・水平排水材内の水圧を,鉛直排水材の打設から14か月間測定した結果を報告し,それらの観測結果について評価した.
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河村 直哉, 森川 嘉之, 加藤 絵万, 坪川 将丈
2015 年71 巻2 号 p.
I_1131-I_1136
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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本研究では,コンクリート版下に模擬空洞を有する無筋コンクリート舗装において,繰返し走行荷重に伴う舗装の力学的挙動の変化をFWD (Falling Weight Deflectometer)を用いて把握した.その結果,新設のコンクリート舗装では,空洞の存在によるたわみや版下面の最大引張ひずみの増加比率は,目地縁部の方が版中央部よりも大きいこと,繰返し走行により空洞を設けたコンクリート版の目地縁部下面にひび割れが生じること等を示した.これらの結果に基づくと,目地縁部の空洞は,版中央部の空洞よりも舗装の健全性に及ぼす影響が大きい可能性が示唆された.
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田中 智宏, 堤 彩人, 三好 俊康, 吉田 誠, 上野 一彦, 永尾 直也, 葛 拓造, 渡部 要一
2015 年71 巻2 号 p.
I_1137-I_1142
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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管理型海面廃棄物処分場に適用される鉛直壁は,廃棄物と海洋とを隔てる遮水工として重要な役割を担っている.この鉛直壁には遮水性能が要求されることはもとより,遮水工の損傷または欠陥等の万が一の事態に備えたフェイルセーフ(安全装置)を付加することが関係法令や技術マニュアルにおいて要求されている.筆者らのグループは土質系遮水材を充填した箱形鋼矢板壁工法を開発し,廃棄物処分場の鉛直遮水壁として適用し施工している.箱形鋼矢板は二重の継手を有し,これらに遮水処理を施すことで基本遮水性能を確保するとともに,継手部の遮水室内に土質系遮水材を充填することでフェイルセーフを付加している.本研究では開発した鉛直遮水壁の施工性や遮水性能およびその評価手法について,実現場における施工を通じて得られた知見について述べ考察した.
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片山 遥平, 許 博晧, 土田 孝, 村上 博紀
2015 年71 巻2 号 p.
I_1143-I_1148
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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廃棄物を海面の管理型処分場で処分することを想定し,処分場の底面および側面の遮水地盤材料として海成粘土及びベントナイトを混合した遮水材について検討を行った.海面処分場は波浪,地震動などの外力や地盤沈下等を受けた場合,遮水層に大きな変形を生じ,遮水層の遮水性が低下することが懸念される.本研究は中空ねじりせん断試験機を用い,粘土試料をK
0圧密後およびせん断変形を与えた後に水平方向に透水を行い,せん断変形が水平方向透水係数に及ぼす影響について調べた.今回の実験の範囲では,変形に追従しやすい海成粘土およびベントナイトとの混合土は,せん断変形によって水平方向透水係数が上昇する可能性は少ないという結論が得られた.また,せん断変形を考慮した水平方向透水係数を測定する新たな手法として本試験法が提案できると考えられる.
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倉科 孝, 菊池 喜昭, Kumara Janaka J., 兵動 太一, 矢島 貴大
2015 年71 巻2 号 p.
I_1149-I_1154
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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港湾における杭基礎を用いた構造物では,施設の大型化や構造形式の変化に伴い,杭に大きな支持力が期待されるようになっているため,杭の長尺,大径化が進んでいる.ところが,開端杭の閉塞の問題と深度に依存する杭の支持力評価の問題が複雑に絡み合っているため,長尺,大径化した開端杭の支持力評価方法は定まっていない.本研究では開端杭の閉塞問題に着目し,特に,杭先端部の内周面摩擦力に着目し,杭先端部の肉厚とその長さを変えた模型杭を用いて貫入実験を行った.実験結果から,杭内部の土圧係数
Khを推定し,内周面摩擦力分布を推定した.その結果,杭先端付近の内周面摩擦力は杭先端付近ほど大きく,杭軸に沿って上方に行くほど急速に小さくなることがわかった.
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亀山 武士, 土田 孝, 本田 秀樹, 谷敷 多穂, 林 正宏, 熊谷 隆宏, 山田 耕一, 杉原 広晃
2015 年71 巻2 号 p.
I_1155-I_1160
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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あらかじめ造成した人工干潟基盤において,後からスラリー化した浚渫土を圧入して干潟を順次拡幅造成する工法を提案している.1箇所の圧入口からより多くの浚渫土を圧入するため覆砂層の下に厚さ70~100cmのカルシア改質土による固化層を造成する構造について,圧入量を求めるため数値解析と室内圧入実験を行った.数値解析では固化層を弾完全塑性体と仮定したが,固化層に補強が無い場合,室内試験では計算の約6割の圧入にとどまった.これは引張によって固化層に亀裂が発生したためである.しかし,ロープネットを固化層と一体化する補強を行うことにより,計算結果と同様かそれ以上の圧入が可能となった.これは,補強によって圧入した粘土は固化層の下部で均質に拡がること,圧入中に固化層に亀裂が生じた後も補強により亀裂が拡大せず圧入が継続できたこと,によると考えられる.
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片山 遥平, 土田 孝
2015 年71 巻2 号 p.
I_1161-I_1166
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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加水調整した粘土スラリーは,固化材を添加して傾斜護岸の裏込めに打設したり,砂質土地盤上に造成される海面処分場の遮水層として敷設されるなど,港湾・海洋事業における人工地盤材料として様々な用途に使用されている.用途によっては大きい単位体積重量が求められる場合があり,重量調整材としてレキや製鋼スラグを混合することが考えられる.レキ粒子が粘土スラリー内で安定する力学条件を調べ材料分離現象との関係を明らかにすることを目的として,単粒子が粘土スラリー内で安定する力学条件を実験的に調べ,材料分離現象との関連を検討した.
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大林 沙紀, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 武藤 昌己, 齋藤 駿介
2015 年71 巻2 号 p.
I_1167-I_1172
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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鉄鋼を精錬する際に生じる製鋼スラグには水硬性があり,さらに製鋼スラグをミルで砕いて細粒化することで水硬性が高まることが期待される.これを砂等と混合した時に十分な強度を発揮できれば,臨海部のかさ上げ材料や沿岸部の築堤材料として有益に用いることができる.そこで臨海部で製鋼スラグを利用する場合を想定して,スラグと砂を混合してスラグ微粉末を添加した地盤材料の強度特性を調べた.本論文では,製鋼スラグ微粉末を添加した地盤材料の硬化特性にエージング処理がどのような影響を与えるか,また地盤材料や間隙水の種類が製鋼スラグの硬化促進にどう影響するかについて検討を行った.その結果,細粒化した製鋼スラグを混合することで硬化が促進されることがわかった.ただし,硬化の程度には,砂との混合率やエージング処理の有無が影響することがわかった.
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辻 匠, 田中 裕一, 中川 雅夫, 野中 宗一郎, 長尾 喬平, 赤司 有三, 木曽 英滋, 田崎 智晶
2015 年71 巻2 号 p.
I_1173-I_1178
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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浚渫土人工石は,港湾より発生する浚渫土と鉄鋼生産の副産物である転炉系製鋼スラグおよび高炉スラグ微粉末等を混合して強度を増進し,固化後に破砕して作成した石材代替品である.海域での利用を推進することを目的として,藻場造成材等に使用する標準的な浚渫土人工石と,裏込材等に使用する軽量化のためフライアッシュを多く用いた浚渫土人工石について,配合の検討を行うとともに,実規模の製造実験を行った.配合試験では,製造実験の配合を選定するとともに目標強度や目標スランプを得る配合を推定することができる関係式を決定した.製造実験では,用途が異なる2種類の浚渫土人工石の製造可能なスランプや混合時間,発現強度や密度等の特性を確認した.
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森田 浩史, 宮根 正和, 審良 善和, 竹中 寛, 末岡 英二, 佐野 清史, 福手 勤
2015 年71 巻2 号 p.
I_1179-I_1184
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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銅スラグおよび電気炉酸化スラグを骨材とした水中不分離性コンクリートの配合,品質および施工性能について検討した.その結果,懸濁物質量が増加する傾向にあるが,流動性やポンプ圧送性は良好であった.強度設計は,スラグによる圧縮強度の増減を考慮する必要があるが,その管理は一般的な水中作製供試体で可能であった.単位容積質量の設計は,配合計算により可能であり,最大3.0t/m
3程度まで得ることができた.また,5m水中流動させた場合においても所要の圧縮強度や単位容積質量を確保することが可能であった.
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中村 友昭, 鈴木 愛美, 水谷 法美
2015 年71 巻2 号 p.
I_1185-I_1190
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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濁水状態の津波・海岸保全施設本体の挙動・基礎地盤の洗掘等の地形変化・基礎地盤の支持力の4者間の相互作用を解析できる数値計算モデルの構築に向けた基礎的な研究として,本研究では浮遊砂を含むことによる粘度の変化を取り扱い,その評価式のパラメータの同定を,粘度計を用いた実験により行った.その結果,浮遊砂を含まない清水状態のときは,粘度がせん断応力によらないニュートン流体であった一方で,浮遊砂を含んだ濁水状態のときには,粘度はせん断応力の増加とともに減少し,非ニュートン流体となることを確認した.また,浮遊砂濃度が与えられれば第1ニュートン領域での低せん断ニュートン粘度が推定でき,さらにその低せん断ニュートン粘度を用いることでせん断応力が与えられれば浮遊砂を含む流体の粘度が推定できることを示した.
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犬飼 直之, 江尻 義史, 大竹 剛史, 山本 浩, 細山田 得三
2015 年71 巻2 号 p.
I_1191-I_1196
発行日: 2015年
公開日: 2015/09/04
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新潟県では毎年夏季において突堤近くの海水浴場での水難事故が発生している.そこで本研究では,カスプ地形を有する砂浜海岸の近くに突堤が設置されている海岸を対象に,カスプ地形および突堤の2つの地形の要因の影響を受ける海浜流の流況を把握し,水難事故防止の技術向上に資する事を目的とした.本研究では,突堤近くの海水浴場で,海面着色剤で離岸流を可視化しUAVを用いて上空から撮影することにより離岸流の流速や大きさなどを把握した後に,地形や海象条件にあわせた数値実験で調査時の離岸流を再現するとともに,突堤やカスプの有無の条件で離岸流を含めた海浜流の数値実験をおこない,現場付近の離岸流発生機構を考察した.これにより,数値実験との組み合わせで様々な条件下での離岸流場を可視化することが可能であり,今後の水難事故防止対策のための技術向上に資せる可能性を示した.
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