土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
71 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.31
  • 中村 友昭, 峯浦 亮, 水谷 法美
    2015 年71 巻2 号 p. I_599-I_604
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     津波の越流による海岸堤防の被覆ブロックの被災機構を水理実験と3次元流体・構造・地形変化・地盤連成数値計算モデルによる数値解析により考究した.その結果,海岸堤防の裏法尻に生じる洗掘に関して,洗掘過程で生じる最大洗掘深と津波作用後の最終洗掘深は異なっており,洗掘に起因する海岸堤防の安定性を評価する際の最大洗掘深の把握の重要性を示した.また,裏法尻の被覆ブロックの下面側への圧力の伝播状況が異なるために,めくれが生じやすい状況にある被覆ブロックの位置は津波の条件により異なることを示した.さらに,水位変動,最終洗掘形状,被覆ブロック上面の圧力変動,めくれが生じやすい状況にある被覆ブロックの位置とその時刻に関して水理実験と数値解析の対応は良好であり,本現象を検討する際の数値計算モデルの有用性を示した.
  • 辻本 剛三, 三宅 雅靖, 山岡 采加, 柿木 哲哉, 宇野 宏司
    2015 年71 巻2 号 p. I_605-I_610
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     粘り強い海岸構造物を目指して構造物背後の陸側を強化する方法として,被覆ブロックによるマウンドの補強を検討した.被覆ブロックの被災形状は法肩部の剥離,法面での滑落,吸い出しの3タイプとなった.構造物の天端幅の増加により越流直前の水深が減少し,水平方向に飛び出す流速が増大するために,流脈の先端がマウンドの法面に到達し易くなり,安定性が低下する.対策として連結ブロックのように被覆ブロックを流れ方向に連結させることで安定性が極めて高くなる.数値モデルでは被覆ブロックやマウンドの透水性を考慮する必要があり,不透過として扱うと法面での負圧が過大に評価される.
  • 森安 俊介, 菊池 喜昭, 田中 隆太, 妙中 真治
    2015 年71 巻2 号 p. I_611-I_616
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     重力式混成堤の港内側のやや離れた位置に鋼杭を配置し,裏込めとして砕石で間詰めした補強工法について,数値解析を用いて抵抗機構の解明に取り組んだ.気中条件の水平載荷模型実験を対象に,数値解析を実施した結果,ケーソンの受ける水平荷重は,裏込めとその直下地盤を介して鋼杭に伝達され,根入れされた鋼杭の地盤抵抗を利用して抵抗力を発揮していることが示された.ケーソンの底面摩擦が上限に達すると変形剛性が低下するものの,裏込めを介した荷重伝達は継続し,変形の増大とともに抵抗力が増す粘り強さが生じていることを明らかにした.また,鋼杭の剛性が高い場合に裏込めの拘束効果が高まることや,地表面から一定高さの裏込めが荷重をよく伝達し,補強効果を発揮していることが推察された.
  • 勝呂 基弘, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 喜古 真次, 長澤 宗一郎, 森安 俊介, 及川 森
    2015 年71 巻2 号 p. I_617-I_622
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     ケーソン式防波堤を鋼管杭と裏込め材で補強した構造形式が提案されている.この構造形式の抵抗特性を検証するために,実物の1/60のスケールで,模型気中載荷実験を行った.本研究では,鋼管杭と裏込めによる補強効果について,ケーソンと鋼板の離隔距離,鋼杭の根入れ長さ,ケーソン背後地盤の洗掘の有無をパラメータとして載荷実験によって検討した.その結果,ケーソンと鋼杭は適切な離隔距離が必要なこと,鋼杭の根入れ長さは杭下端が固定されているほどには必要ないものの,根入れ長さが短すぎると抵抗特性が低下すること,ケーソン背面地盤が洗掘されても補強効果はあるものの抵抗特性を低下させることが分かった.
  • 有川 太郎, 及川 森, 森安 俊介, 岡田 克寛, 水谷 崇亮, 菊池 喜昭, 八尋 明彦, 下迫 健一郎
    2015 年71 巻2 号 p. I_623-I_628
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震における教訓から,防波堤には,越流時も完全に倒壊せず,粘り強く防護機能が確保される構造が求められる.本論では,ケーソン・中詰・鋼杭による防波堤構造について,津波越流時の安定性を確認するため,水理模型実験で倒壊状況を検討した.その結果,越流で港内側に洗掘が生じる場合でも,鋼杭・中詰によりケーソン直下の基礎マウンドが健全に保たれケーソンは安定した.さらに大規模な洗掘が生じる場合では,洗掘拡大に伴い杭が次第に傾斜しケーソンも徐々に傾斜するが,ケーソンは完全には倒壊せずマウンド内に留まった.終局状態では,ケーソン天端が比較的高くケーソン前背面の水位差が大きく保たれ,防波堤の防護機能が粘り強く確保されることが期待できる.
  • 飯村 耕介, 池田 裕一, 内海 翔太, 青木 貴志
    2015 年71 巻2 号 p. I_629-I_634
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     津波の減災対策を考えるうえで,複数の構造物を適切に配置することが非常に重要となる.本研究では防潮堤と海岸林を組み合わせて配置したときの配置方法や配置間隔による構造物周辺の流況や減勢効果に与える影響について水理模型実験により検討した.防潮堤よりも海岸林を下流側に配置したときに,模型背後の流速が緩和され,さらに防潮堤と海岸林を離して配置することで海岸林への作用力が大きくなり,模型背後におけるエネルギーをさらに低減させることができる.一方で,防潮堤よりも海岸林を上流側に配置したときには,防潮堤背後に抵抗となる構造物が何もないため,防潮堤を越流するときに流れが加速し非常に速い流れとなる.また,海岸林への作用力は,海岸林背後の防潮堤による堰き止め効果により海岸林内の流速が遅くなり,作用力も小さくなる.
  • Vo Cong HOANG, Hitoshi TANAKA, Yuta MITOBE
    2015 年71 巻2 号 p. I_635-I_640
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     The 2011 tsunami formed concave shoreline around the Nanakita River mouth and Akaiko breaching areas, Sendai Coast, Miyagi Prefecture, Japan. The recovery process of morphology in these areas is much depended on the longshore sediment which is transported from adjacent sandy coasts. Coastal structures on both sides of the concave portion are considered as rigid boundaries. Analytical solutions of one-line model, which describe the evolution of shoreline around the concave portion in cases without and with rigid boundaries, have been discussed. When the dimensionless of concave width to the length of bounded area is getting smaller, the dimensionless recovery time obtained from solution for the case with rigid boundaries is getting larger and asymptotic the one for case without rigid boundaries. An analytical solution for estimating the proportion of backfilling of sediment deposition in the concave portion for case with rigid boundaries is introduced. It is asymptotic to the one without rigid boundaries when the dimensionless of concave width to the length of bounded area is getting smaller. The comparison between theoretical results and measured data of cases of the Nanakita River mouth and the Akaiko breaching areas are presented.
  • 片山 裕之, 前田 勇司, 安野 浩一朗, 吉河 秀郎, 阪口 秀, 西浦 泰介
    2015 年71 巻2 号 p. I_641-I_646
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     2011年度東北地方太平洋沖地震津波の際,海底の堆積物が陸上部の建屋内まで輸送され,建屋内上層階に行く程堆積した土砂の粒径が細かくなっていたという報告がある.津波による土砂輸送については地形変化や巻上げ量などに着目した研究は数多くあるものの,輸送中や堆積時の粒度分布に着目した報告は少ない.本研究では陸上建屋内に堆積した土砂の粒度偏析メカニズムの解明を目的に,水理模型実験を実施した.実験では輸送中の砂をプランクトンネットにより捕捉し,建屋を再現した模型により砂の堆積状況を把握した.その結果,細粒砂は巻上げ直後の濃度・粒度の鉛直分布が比較的長時間に渡り維持されたまま輸送されるものの,粗粒砂は乱れ場の中でも比較的早く沈降・堆積することがわかった.また,建屋に堆積した土砂の粒度偏析は、細粒分の含有量が階層にかかわらずほぼ一定であり,粗粒分の含有量が下層階になるほど多く含まれることに起因することが示唆された.この現象は遡上距離が短いほど顕著であり,併せて本実験条件では建屋前面に津波が到達した際の再浮上はほとんどないことがわかった.
  • 森 文章, 三戸部 佑太, 田中 仁
    2015 年71 巻2 号 p. I_647-I_652
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     東日本大震災津波により仙台海岸において漂砂環境が変化している.同海岸における津波発生後の漂砂環境の実態を明らかにするために空中写真を用いた解析を行った.津波発生後,汀線は大きく後退しており離岸堤背後のトンボロが消失した.2009年から現在に至る空中写真から汀線を抽出し,経験的固有関数法による解析を行った.第一成分と第二成分の寄与率の合計は70%を超えており,支配的な成分であるといえる.第一成分は岸沖漂砂,第二成分は沿岸漂砂に起因すると考えられる.岸沖漂砂に起因する成分は津波発生前後で大きな汀線変動の変化はみられなかったが,沿岸漂砂に起因する成分は離岸堤周辺で変化がみられた.この変化があった沿岸漂砂について,汀線変動を抽出することで津波発生前後において沿岸漂砂の変化について評価した.
  • 有働 恵子, 武田 百合子, 田中 仁, 真野 明
    2015 年71 巻2 号 p. I_653-I_658
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本研究は,人工リーフ整備事業に関連して,2011年東北地方太平洋沖地震津波以前より深浅測量データが取得されていた岩手県陸前高田市の高田海岸における震災前後の地形変化について解析を行い,また,岩手県警察により撮影された津波時の空撮映像を解析することにより,津波による砂浜地形変化とこれに及ぼす人工リーフの効果について検討した.津波前後の地形変化特性および津波の流況特性を総合的に判断すると,砂浜の侵食土砂の少なくとも半分程度は海域に輸送され,人工リーフにより捕捉されたことが明らかとなった.津波時の海域の地形変化や津波の流況特性に及ぼす海岸堤防や人工リーフなどの海岸構造物の影響について,現地データをもとに明らかにした例は少なく,本研究で得られた知見は極めて貴重なものである.
  • 二階堂 竜司, 渡辺 国広, 伊藤 幸義, 諏訪 義雄, 青木 伸一
    2015 年71 巻2 号 p. I_659-I_664
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本研究は,津波減災効果が期待できる自然・地域インフラ事例を幅広に収集・分類するとともに,自然・地域インフラの種類と津波減災効果の存続期間の関係を明らかにするものである.
     津波減災効果を期待できる自然・地域インフラは40種類に分類され,そのうちハード面の減災効果を期待できるものが8種類であり,ソフト面の減災効果を期待できるものが32種類と多かった.また,津波災害に直接の起源を持たないインフラは20種類もあり,これらの存在価値の認識が重要と考えられた.
     減災効果存続期間の実績が確認できたインフラの多くは,L1超過津波の発生頻度相当以上の継承期間の実績を有していた.生活に密着しているインフラは減災効果の存続期間が長い傾向にあり,加えて,有形のものは無形のものよりも長い効果存続期間であった.
  • 島田 広昭, 米倉 翔, 川中 龍児, 石垣 泰輔, 武藤 裕則, 馬場 康之
    2015 年71 巻2 号 p. I_665-I_670
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     中央防災会議では早期避難により津波被災者を最大で90%減らすことができると試算しているが,人的被害が最小とされている夏季の日中は海水浴シーズンの最盛期であり,海岸には地元以外からの来訪者が多く利用しており,その地域に土地勘のない利用者の津波避難対策が課題となる.
     そこで本研究では,南海トラフ地震によって津波来襲の可能性がある海水浴場を選定し,その管理を担当する地方自治体や管理組合等の団体を対象に海水浴場における津波防災対策や管理体制の現状を把握するためのアンケート調査を行った.その結果,管理体制では責任者だけでなく管理者全員の津波防災に関する知識や意識の向上を計る必要があること.また多くの海水浴場では避難マニュアルやハザードマップの作成など津波避難計画を確立させる必要のあることがわかった.
  • 秦 吉弥, 湊 文博, 常田 賢一, 小山 真紀, 鍬田 泰子, 山田 雅行
    2015 年71 巻2 号 p. I_671-I_676
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     和歌山県串本町では,南海トラフ巨大地震の発生によって,強震動の作用のみならず,本震発生数分後に巨大津波の来襲が予想されている.本稿では,串本町の津波来襲予想地域における強震動予測地点(525地点)から指定避難場所までの歩行所要時間に関する計測実験を行うことで避難歩行時間を評価した.そして,避難余裕時間もしくは避難困難度に基づく二つの手法を用いて津波避難困難区域の評価を行った.両手法を津波来襲予想地域に適用した結果,北東部の埋立地が津波避難困難区域として抽出された.さらに両手法を用いて,津波避難施設が北東部の埋立地に今後新設された場合の減災効果についても言及した.
  • 宇野 宏司, 高田 知紀, 辻本 剛三, 柿木 哲哉
    2015 年71 巻2 号 p. I_677-I_682
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     国生み伝説で知られる淡路島の海岸から1km圏内には多くの神社が鎮座している.本島沿岸は2012年に公表された内閣府による南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)で兵庫県下最大の津波被害が出ると予想されており,避難場所の確保が重要な課題のひとつになっている.本研究では,本島沿岸1km圏内に鎮座する神社の空間配置の諸情報(緯度経度・標高)と内閣府による津波被害の想定結果を用いて,将来の南海トラフ地震時における淡路島沿岸域の神社の津波被災リスクについて検証した.その結果,多くの神社が直接の津波被害を免れ,長い歴史をもつ神社の現在の空間分布は過去の大規模災害によって淘汰された結果を示しているという仮説を裏付ける結果が得られた.また,祭神による津波被災リスクの違いがあることも明らかにされた.
  • 櫻庭 郁巳, 永家 忠司, 宮武 誠, 川村 怜音
    2015 年71 巻2 号 p. I_683-I_688
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     東日本大震災以来,災害発生時の防災に対する認識が高まりつつある中,国土強靭化としてハード面・ソフト面における様々な研究や取り組みがなされている.しかし,地域住民に対する防災対策は十分に行われていても,その地を訪れる観光客への対策は未だ不十分である.函館市は北海道有数の観光都市であるのと同時に主要な観光地が津波浸水区域に位置している状況にある.本研究は,「観光防災」に着目し,過去に浸水被害を受けた西部地区を対象としたGISによる各種情報(地理情報,施設属性,標高など)を用いた観光防災用のDIG(災害図上訓練)を開発し,試行的に実施した.その結果,明らかになった避難所想定混雑状況を,GISおよびSpace Syntax理論を用いて詳細に分析を行うことで,横方向の仕組みづくりの重要性を提案した.
  • 赤倉 康寛, 小野 憲司, 渡部 富博, 川村 浩
    2015 年71 巻2 号 p. I_689-I_694
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     大規模地震・津波後に,国民生活を維持し,産業を継続させるためには,被災港湾の機能代替が不可欠である.東日本大震災では東京湾や日本海側の港湾が,阪神・淡路大震災では大阪港を始めとする主要港湾が,代替港湾として機能した.これらの代替港湾では,取扱能力が限界に達した例が見られた.以上の状況を踏まえ,本研究では,i) 外貿コンテナ輸送を対象に,港湾の取扱能力制約を考慮した大規模地震・津波後の代替港湾の推計手法を構築し,ii) 東北広域港湾BCPにおいて,シナリオ地震・津波後の代替港湾を推計した.その結果,多くの代替港湾にて能力が限界に達し,他の港湾を使用せざるを得なくなる可能性が危惧された.今後,各港湾にて,代替港湾としての能力・体制の拡充を進めていく.
  • 後藤 浩, 石野 和男, 玉井 信行, 竹澤 三雄
    2015 年71 巻2 号 p. I_695-I_700
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震津波では,津波によって甚大な人的損失を生じた.今後,津波の規模によっては,海岸保全施設による防護だけでなく,住民の積極的な避難行動により減災を促進させようという提案が散見される.
     本研究では,地域に密着した存在である寺院に注目し,その寺院の避難場所としての機能について,東北地方太平洋沖地震津波の浸水域およびその近傍に存在する寺院を中心にアンケート調査を行い,津波時の状況を調査した.また,この調査を踏まえて,今後,南海トラフ巨大地震に伴う津波の想定浸水域に存在する寺院へアンケート調査を行い,寺院の避難場所としての機能について二,三の考察を行った.
  • 渡辺 一也, 金子 祐一
    2015 年71 巻2 号 p. I_701-I_706
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     東日本大震災の発生から全国的に津波に対して従来の想定よりもかなり巨大な津波が来襲することが予測されている.特に南海地震の予測では以前よりも高い津波の来襲が予測されている.
     現在では,津波に対する避難として,低地では津波避難タワーの設置や鉄筋造などの強固な建物への鉛直避難が行われることがある.現状では,これらを越す津波が来襲した場合には,それ以降についての方策がなく,避難所である津波避難タワーやビルに到達できたとしても,被害を受ける可能性がある.
     そこで,本研究では従来の高所避難のみではなく,浮体式津波避難シェルターと併用したハイブリッドな避難手法に注目した.その結果,シェルターの挙動は大きく3種類に分けることができた.また,流速と自由落下から計算された衝撃力に津波避難シェルターは耐えうるという結論を得た.
  • 村上 啓介, 前原 翔太, 椎葉 倫久
    2015 年71 巻2 号 p. I_707-I_712
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波被害を教訓に,南海トラフ域を中心とした地震による被害想定と防災・減災対策の見直しが西日本の沿岸地域で進められつつある.宮崎県の沿岸自治体においてもマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震による甚大な人的・物的被害が想定された.人口と経済活動が集中する宮崎市では,低平地に市街地が広がることや沿岸域に住宅地や商業施設が展開する傾向にあることから,想定される津波に対して確実な被害軽減策を講じることが喫緊の課題となっている.本研究は,現実に即した津波避難対策を合理的に講じることを目的に,津波浸水域の時間的広がりと地盤の液状化を考慮した津波避難困難エリアの抽出法と具体的な適用例を示す.
  • 野島 和也, 桜庭 雅明
    2015 年71 巻2 号 p. I_713-I_717
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本研究では,比較的広域かつ多種の漂流物の移動・滞留状況を把握する実務的な漂流物シミュレーションに対して,近年開発・施工が進められている津波バリアなどの漂流物捕捉工の影響を考慮した手法を開発した.津波バリア位置での漂流物が停止するのみでなく,漂流物の津波バリアの支柱間の通過や,水位が津波バリアを超過する場合の流出を扱うものとした.また,津波バリア前面において漂流物が流れをせき止めることに起因する水位上昇による漂流物の流出メカニズムも考慮した.実験に基づくコンテナの漂流捕捉効果の比較検討,各種漂流物と津波バリアの諸元の違いによる検討を行った.
  • 山田 雅行, 伊藤 佳洋, 野津 厚, 長尾 毅
    2015 年71 巻2 号 p. I_718-I_723
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     「港湾の施設の技術上の基準・同解説」に震源モデルの設定方法が示されていない,沈み込んだ海洋プレートの内部で発生するプレート内地震(スラブ内地震)のうち,首都圏直下のMw7.3プレート内地震と安芸灘プレート内地震について,震源のモデル化手法を提案した.震源のモデル化は,(1)想定地震の地震モーメントの設定,(2)アスペリティ総面積の算定,(3)短周期レベルの算定,(4)技術基準に基づいてその他のパラメータの算定,(5)疑似点震源モデルを適用,(6)震源位置は対象施設直下に設定,(7)断層上端深さを海洋プレート上面深度に設定,(8)歴史地震の震度や内閣府による予測震度との整合性を確認,の手順で行うことを提案した.この手順をMw7.3プレート内地震と安芸灘プレート内地震に適用し,妥当性の確認を行った.
  • 小濱 英司, 菅野 高弘
    2015 年71 巻2 号 p. I_724-I_729
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     船舶とのコンテナ荷役に供するコンテナクレーンは1995年兵庫県南部地震において多大な被害を受けたことから,免震クレーンの技術開発がなされ,耐震強化岸壁上に導入が進められている.一部の免震コンテナクレーンにおいては,実際の地震時挙動把握を目的としてクレーンでの強震観測が行われつつある.その結果,2011年東北地方太平洋沖地震においてコンテナクレーン及びその下部岸壁において強震観測データが取得され,それらの地震時挙動および振動特性が検討された.免震コンテナクレーンの耐震照査においては三次元有限要素法による動的解析が用いられることが多いが,そのモデル化,結果の信頼性について実際の地震時挙動により検証された例は無い.本研究では,免震機構のモデル化を考慮して,観測された地震時挙動を数値解析により再現することを試みた.
  • 水田 洋司, 伊井 洋和, 浅田 潤一郎, 河村 裕之, 佐々木 公彦, 奥村 宏敬, 牟田 充希
    2015 年71 巻2 号 p. I_730-I_735
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     前報1)では直方体ブロック模型を使用し,ブロック多段積み構造のブロック間にゴムマットを設置することで,その耐震性を向上させる方法を提案し,振動台模型実験によりゴムマットの効果を確認した.本研究ではホゾの付いた直立消波ブロック模型においても,ゴムマットに同様な効果が期待できるか,またホゾの効果について,振動台模型実験で検証した.ゴムマットは2種類の硬さと2種類の厚さの4種類を使用した.この実験から,ゴムマットを設置することで直立消波ブロック模型も,直方体ブロック模型と同様に,振動数を下げる効果が確認された.またホゾの有効性についても確認することができた.
  • Ramrav HEM, Tadashi ASAI
    2015 年71 巻2 号 p. I_736-I_741
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     This research aimed to develop official port design standards for Cambodia by modifying and harmonizing that of Japan to be suitable for Cambodia's conditions. At this stage, we focused mainly on natural disaster conditions that may affect port structure design. Thus, in this paper, (1)the differences of natural disaster conditions between Japan and Cambodia: earthquake, typhoon, and flood, were evaluated to estimate the conditions for port structure design. (2)The effects on port structure design from the differences of the above conditions were evaluated. The evaluation was carried out by applying the Japanese Technical Standards for the selection of suitable structural types of quaywall among concrete block, concrete caisson, steel pipe pile, and steel sheet pile. Three criteria were used for the selection of suitable structural types: applicability against natural disaster conditions, construction cost, and constructability of each structure.
  • 宇多 高明, 五十嵐 竜行, 大谷 靖郎, 大木 康弘
    2015 年71 巻2 号 p. I_742-I_747
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     ヘッドランド(HL)は沿岸漂砂の阻止を目的として造られてきた.しかし細砂海岸での事例によれば,HLの先端水深を波による地形変化の限界水深より大きくできないことが多いため沿岸漂砂の一部がHLの下手側へと流出し,当初のHLを伸ばせば安定海浜が形成されるとの説明との乖離が大きくなっている.また,HLの最終建設段階で横堤が伸ばされた結果,HL間の中央部で侵食をもたらす事例が多い.本研究ではこのような侵食対策としてのHLの効用と限界について論じ,今後の方策について考察した.
  • 宇多 高明, 芹沢 真澄, 宮原 志帆, 大木 康弘
    2015 年71 巻2 号 p. I_748-I_753
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     鹿島灘に面した神向寺海岸では,ヘッドランド(HL)間において粗粒材養浜が行われてきた.この結果HL間にかなり広い前浜が復元されたが,2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,約20cmの地盤沈下が生じるとともに,襲来した津波の戻り流れにより侵食が進み,とくにHL間の中央部で前浜が狭まった.そこで砂捕捉のための補助施設としてHL間に2基の突堤を伸ばした上で,新たに養浜を行って前浜を広げる手法についてBGモデルによる数値計算によって検討した.
  • 宇多 高明, 宮原 志帆, 三波 俊郎, 芹沢 真澄
    2015 年71 巻2 号 p. I_754-I_759
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     周防灘に流入する長峡川と今川河口周辺の干潟上では,多数の縦方向砂州とともに,それらの融合により形成された孤立沿岸砂州(以下,孤立砂州)が発達している.また,孤立砂州の発達に伴って波の遮蔽効果が増したために,孤立砂州背後の陸岸では著しい地形変化が起きている.本研究では,こうした孤立砂州の発達と変形を衛星画像を基に調べるとともに,2009年12月27日には砂州の形成状況を現地踏査により調べた.最後にこれらの観察結果を基に砂の塊の移動機構を説明する模式図を作成した.
  • 宇多 高明, 小林 昭男, 芹沢 真澄, 伊達 文美, 野志 保仁, 宮原 志帆
    2015 年71 巻2 号 p. I_760-I_765
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     Vietnam南部Vung Tauの東北東29 kmに位置するSong Ray Riverの河口砂州と,Vung Tau近郊の海岸を衛星画像に基づく解析と現地踏査により調べた.この付近の海岸では,地形的に見て南西方向の沿岸漂砂が卓越しているために,Song Ray Riverでは左岸河口砂州の伸長が著しく,またVung Tau近郊の海岸では南西方向へ大きく歪んだrhythmic patternの海浜形成が観察された.これらの特徴的な地形形成機構について考察した.
  • 宇多 高明, 野志 保仁, 小林 昭男, 芹沢 真澄, 宮原 志帆, 伊達 文美
    2015 年71 巻2 号 p. I_766-I_771
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     VietnamのVung Tauの東9 kmに流入するCo May川河口における砂州の変動状況を調べた.この河口では,河口を取り囲む浅瀬の外縁線が東西非対称形であることから,南西向きの沿岸漂砂が卓越していることが分かった.また,河口右岸砂州の付け根付近では高波浪時の波の遡上により後背湿地に生育するマングローブ林まで砂が打ち込まれ,その後澪筋に沿って上流方向へと向かう沿岸漂砂により侵食され,上流部に砂嘴の発達を促した.現況汀線に粘性土層と枯れた樹木が残されている点より,河口右岸砂州は砂の打ち込みと波による侵食という変動を繰り返しながら徐々に侵食されつつあると見られた.
  • 西 隆一郎, 鶴成 悦久, 細谷 和範, Mario de Leon, 松元 勇, 佐々木 秀勝
    2015 年71 巻2 号 p. I_772-I_777
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本土海域とは異なり鹿児島県や沖縄県の南西諸島沿岸域では,十分な量の陸砂や河口浚渫砂を確保しにくいために,建設骨材や養浜材料として,サンゴ礁沖合海域海底の砂を採取し利用している.一方,サンゴ礁内の砂浜や砂丘は海岸・海洋災害に対するバッファ-ゾ-ンとして重要なだけでなく,生物の生息領域や観光資源としても重要である.現在,鹿児島県においてはサンゴ礁内の砂浜や砂地から砂を採取することはないので,砂浜や砂丘に対する海砂採取の直接的な被害は生じていないが,建設用骨材目的で実施しているサンゴ礁沖合海域での海砂採取が,サンゴ礁内の海浜侵食を生じさせないか定量的な検討を行う必要はある.そこで,本研究では,サンゴ礁沖合海域で海砂採取を行っている徳之島喜念浜海域を対象に,現地調査及び数値計算を行い,海砂採取領域の妥当性に関する検討を行った.
  • 宇多 高明, 岩崎 伸昭, 野志 保仁, 伊達 文美
    2015 年71 巻2 号 p. I_778-I_783
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     富士山が世界文化遺産に指定された結果,三保松原がその景観を構成する重要な要素となり,景観に悪影響を及ぼさない侵食対策が求められている.対策としてはL型突堤が考えられているが,この種の施設が汀線を横断して伸ばされると,汀線およびその沖では施設が水面上に突出し,景観が失われる恐れがある.本研究では,沼津牛臥海岸を実例として,空中写真や深浅測量図,および現地踏査によりヘッドランドと突堤の漂砂制御効果と視認性について調べた.
  • 宇多 高明, 市川 真吾, 大中 晋, 遠藤 秀文
    2015 年71 巻2 号 p. I_784-I_789
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     海外における海岸侵食問題に着目し,PhillipineのPanay島の北端部にあるKalibo近郊での侵食実態を現地調査により調べた.また,この地域の南部では砂嘴の発達が著しいことから,その変化についても調べた.調査区域は,New Washington近郊から南東端にある砂嘴に至る長さ7.7 kmの区域であり,台風30号襲来後の2014年1月16日に調査を行った.Aklan川からの流出土砂量の減少により河口南側では侵食が著しいが,護岸を用いた局所的対応が取られているため問題の解決には結びついていなかった.
  • Ngoc Thanh NGUYEN, Sota NAKAJO, Toshifumi MUKUNOKI
    2015 年71 巻2 号 p. I_790-I_795
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     Deposition at semi-diurnal tide estuaries is tremendously complicated due to the competition of river discharge and ocean tide. The difficulty in assessing deposition on estuarine bed is we have limited information about characteristics of river and tidal current. This study investigates current distribution and the relationship between current and sediment transport at Dinh An estuary, Mekong river, Vietnam. An Acoustic Doppler Current Profiler (ADCP) was used to measure river discharge and vertical current at Dinh An estuary in high-flow season in September 2009, then three-dimensional model was employed to figure out the effects of current on sediment transport. It was found that currents were stratified at the estuary in reversal period corresponding to certain range of discharge in ebb tide and in flood tide. Besides, suspended sediment concentration at the estuary strongly depends on magnitude and direction of current. Our study suggests that current distribution is the most important factor contributing to the serious accretion at the estuary.
  • 宇野 宏司, 岸本 周平, 辻本 剛三, 柿木 哲哉
    2015 年71 巻2 号 p. I_796-I_801
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     都市河川河口及びその沿岸の環境を改善するためには,砂州の動態を把握し,これを適切に管理することが必要である.本研究では,明石川河口で地形測量と水環境の連続モニタリングを行うとともに,気象・海象データを詳細に整理することで,河口砂州の地形と周辺水環境の動態を短・長期時間スケールで把握した.直近の短期間の時間スケールでの検討では右岸砂州が卓越する機会が多くみられた.一方,長期間の時間スケールでは左岸砂州が卓越する機会の方が多かった.これらのことから,人為的な影響を受けやすい都市河川河口の動態を考えるにあたっては,直近の短期間の時間スケールのみではなく,長期間的な時間スケールで捉えておくことが特に重要であるといえる.
  • 東 和之, 大田 直友, 橋本 温, 大谷 壮介, 山中 亮一, 上月 康則
    2015 年71 巻2 号 p. I_802-I_807
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     徳島市沖洲地区にある人工干潟は,埋め立てられる既存干潟の代償措置として造成されたが,既存干潟の底生生物相を再現できていなかった.底生生物個体数密度(特に表在性)が極端に少なく,決定的な違いはホソウミニナBatillaria cumingiの有無であり,その原因は沖洲人工干潟で確認されている「沈み込み現象」によるものと推察された.筆者らは「沈み込み現象」の発生要因として,底質中のシルト・クレイ率に着目した.その結果,沖洲人工干潟では底質中のシルト・クレイが時間経過と共に減少すること,底質中のシルト・クレイ率が少ないと地盤密度が小さくなり,沈み込み率が上昇することなどが確認された.また,シルト・クレイ率が高い地点ほど底生生物の個体数密度が多くなっており,沖洲人工干潟生態系において底質中のシルト・クレイが生物相に与える影響が大きいことが示された.
  • 中本 健二, 廣中 伸孝, 樋野 和俊, 日比野 忠史
    2015 年71 巻2 号 p. I_808-I_813
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     広島デルタ太田川派川河岸には有機泥が厚く堆積し,景観,親水性が低下している.へドロ(還元有機泥)が堆積した干潟再生を目的に,石炭灰造粒物を用いた底質改善実証試験事業(産官学プロジェクト)が進められている.ヘドロ堆積干潟において底質環境を改善するために,石炭灰造粒物による底質浄化能力を持つ作業通路構築技術が開発され,小規模実証試験により事業化に向けた基本的な施工技術が確立されている.本研究の目的は,本技術を実事業で活用するための大規模底質改善施工技術を確立することである.大規模(7,296m2)実証試験により施工性能・事業コストを評価し,支持力0 kN/m2のヘドロ堆積干潟においてB/C向上が望め,安全な重機作業を可能とする石炭灰造粒物の敷設厚を評価できる設計用データの蓄積を図るとともに,干潟再生材としての底質DOの供給機能および,その生物親和性を検証した.
  • 本田 秀樹, 横手 武聡, 林 正宏, 吉武 英樹, 御手洗 義夫, 武田 将英, 田中 洋輔, 五十嵐 ひろ子
    2015 年71 巻2 号 p. I_814-I_819
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     護岸補強と細粒分が多く軟弱な浚渫土の有効利用として,既設護岸の前面に,浚渫土と転炉系製鋼スラグの混合土(カルシア改質土)を中詰材とした人工浅場造成を行った.事前検討として,波浪条件から人工浅場の断面構造を策定して,カルシア改質土の必要強度の設計を行い,配合試験からカルシア改質土の配合条件を決定した.次に,人工浅場による護岸の補強効果を把握するため,L2地震動での耐震解析を行い,耐震性が向上することを確認した.さらに,浅場造成による護岸の越波影響が懸念されたため,越波解析を行い,既設護岸よりも越波流量が低減することを明らかにした.本研究では,事前検討内容と施工時に行ったカルシア改質土の品質試験結果,および施工前後,施工中の水質モニタリング調査結果について述べる.
  • 熊谷 隆宏, 高 将真, 本田 秀樹, 谷敷 多穂, 林 正宏, 土田 孝
    2015 年71 巻2 号 p. I_820-I_825
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     既往の研究において,スラリー状にした浚渫粘土を圧入することにより,沈下した干潟地盤を隆起させ,修復する方法が提案されている.また,浚渫粘土の圧入量を増加させる方法として,覆砂と干潟地盤の間に固化層であるカルシア改質土を配置する構造が提案されている.提案する干潟の修復方法を現地に適用するにあたり,地表に噴出するまでに圧入できる浚渫土の限界圧入量と,そのときの地表面隆起量を予測する手法が必要とされる.本研究では,干潟地盤を被覆する覆砂層とカルシア改質土層のせん断による降伏状態や引張状態に着目して,限界圧入量を評価する方法を提案するとともに,提案する解析手法を用いて,適切なカルシア改質土層厚の検討を実施した.
  • 渡部 要一, 佐々 真志, 金子 崇, 上野 一彦, 山田 耕一, 橋本 裕司
    2015 年71 巻2 号 p. I_826-I_831
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     各地で試みられている人工干潟の造成事業では,航路・泊地の整備で発生した浚渫土砂が埋立材として有効活用されているが,ヘドロのような超軟弱な状態のまま干潟内部に閉じ込められた浚渫土砂の時間変化についての知見はきわめて少ない.本研究では,2008年に造成された徳山下松港人工干潟を対象として,造成直後から数年間にわたりMASWによる継続的な調査により物性の変化をモニタリングした結果を報告する.せん断波速度が25m/sしかないような超軟弱な地層においても,MASWは十分な精度でせん断波速度構造を把握できることをサイスミックコーンによる直接測定で検証した.時間の経過とともに緩やかに生じる強度増加は,圧密による含水比の減少(間隙比の減少)のみならず,シキソトロピーによる強度回復の影響が強く現れている.
  • 入江 政安, 山中 敦史, 田渕 貴久, 多部田 茂
    2015 年71 巻2 号 p. I_832-I_837
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     内湾環境の俯瞰的評価のために三大湾流域圏における人間活動の定量的評価を行い,漁業の域内物質循環への影響評価を行った.本研究で用いたエコロジカル・フットプリント(EF)分析は,ある地域における人間活動による消費と自然界のもつ環境容量を土地面積に置き換え,両者を比較することによってその地域の持続可能性を評価する分析法である.東京湾,伊勢湾,大阪湾の各流域圏のEFを算出したところそれぞれ,36.6×106gha,24.7×106gha,22.3×106ghaであった.さらに,この手法を援用して各流域圏のリンフットプリント(PF)を算出した.また,波及効果分析を用いて検討した結果,漁業生産額が50%増加した場合に,各流域圏のEFはそれぞれ0.45%,1.46%,1.42%減少した.最後に今回の計算結果から読み取れる各流域圏の特徴や環境改善の方向性を述べた.
  • 岡田 知也, 井芹 絵里奈, 三戸 勇吾, 高橋 俊之, 秋山 吉寛, 渡辺 謙太, 吉田 稔, 桑江 朝比呂
    2015 年71 巻2 号 p. I_838-I_843
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     沿岸域の生態系サービスの中でも定量化が困難である文化的サービスについて,定量化評価手法を考案し,東京湾内の4つの干潟域に適用し,各干潟の特徴の抽出を試みた.評価手法は海洋健全度指数の手法を参考とし,現況の状態のみではなく,持続可能性についても評価できる構造とした.干潟域における文化的サービスとして5つのサービスを定義し,それぞれのサービスの状態を評価するための指標を設定した.その後,東京湾内の4つの干潟域で評価に必要なデータの収集やアンケート調査等を実施した.
     評価の結果,成因や規模,構造,利用状況等の異なる干潟では提供される文化的サービスの種類や持続可能性の状態が異なっていることが明らかとなった.本手法により,これまで実態の把握が困難であった干潟域の文化的サービスの特徴を抽出できることが示された.
  • 村上 和仁, 小浜 暁子
    2015 年71 巻2 号 p. I_844-I_849
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     谷津干潟(千葉県習志野市)と東京湾を連絡する谷津川・高瀬川を対象として,生物指標としての付着珪藻(一次生産者)と大型底生動物(高次消費者)による水環境評価を実施した.付着珪藻は季節変遷がみられ,NitzschiaNaviculaCymbellaFrustuliaAmphipleuraGyrosigmaAmphoraが優占種であり,DAIpoとRPIdより,両河川ともやや清水(α-os)~やや汚濁(α-os~β-ms)と評価された.大型底生動物も季節変遷がみられ,ニホンドロソコエビ,カサネカンザシ,オイワケゴカイ,アサリ,ヨコエビ,ウスカラシオツガイ,ホソウミニナなどが優占種であり、九都県市の方法より,両河川とも夏季(やや汚濁)以外はおおむね良好に保全された環境と評価された.
  • 鶴成 悦久, 西 隆一郎, 加茂 崇, 渡辺 卓也, 間世田 未来, 浜本 麦, 峯 俊介, 石川 和雄
    2015 年71 巻2 号 p. I_850-I_855
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     鹿児島湾奥北部に位置する重富干潟を対象に行った水質観測の結果,干潟北東部海岸線付近において塩分が沖合海域よりも低いことから,地下水が海岸線付近で湧出し海水と混合している可能性が示された.そこで,干潟に直接影響する河川流域を対象に,水収支を巨視的に求めた結果,流域降水量17,556万m3に対して,河川8,697万m3(50 %),地下水6,771万m3(39 %),蒸発散2,088万m3(11 %)程度となった.下流域の地下水位は河川水位と同程度の水位であり,現地観測の結果,干潟海岸線では常時D.L.+1.5 mを超える地下水位が確認された.またリン酸態リン(PO4-P)は河川と同程度の濃度であることが分かり,海岸線から湧出する地下水は,干潟の栄養塩供給に大きく寄与する可能性があると示唆された.
  • 竹内 友彦, 駒井 克昭, 中山 恵介, 渡辺 謙太, 一見 和彦, 佐藤 之信, 桑江 朝比呂
    2015 年71 巻2 号 p. I_856-I_861
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     北海道北東部に位置するコムケ湖において,融雪期~夏期における干潟域での塩分や水位,干潟近辺の陸域地下水位のモニタリングと干潟域における浸透流の数値解析を行った. 現地観測の結果,陸域地下水位と干潟における水位は,融雪期において相対的に陸側の地下水位が高いことが明らかになった.さらに数値解析の結果から,陸域地下水位が高い場合では地下水位が低い場合と比べ,より広範囲にわたり塩分の上昇が妨げられていることが示された.また,地下水位が高い場合にはわずかに湧出が強く,干潟域で低塩分化していることが示された.春季において干潟域付近の塩分濃度が低く保たれることで低塩分帯に生息する水生生物が生息できる環境が生まれ,これらを餌とする多くの鳥類が春季にこの干潟域付近で観測される要因となっていることが示唆された.
  • 竹山 佳奈, 佐々 真志, 牧野 武人
    2015 年71 巻2 号 p. I_862-I_867
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     浚渫土を活用して造成した徳山下松港大島人工干潟は,アサリに適した成育場機能の維持・管理を整備目標の一つとしてあげており,造成後も定期的な調査を継続している.調査の結果,食害によりアサリ資源量が減少する事が明らかとなり,食害防止対策として干潟上に被覆網を設置している.その結果,魚類に対する食害防止対策として効果は発揮したものの,低地盤高では潜砂性巻貝の一種であるツメタガイによる食害が続いていた.そこで,ツメタガイの食害防止対策として,地盤環境に着目した水槽実験を実施した.その結果,10~20 mmの礫を覆礫厚100 mm以上覆礫することにより,食害を抑えられることが明らかとなった.今後,実海域において食害防止対策として実証実験を実施し,アサリ生息場環境の効果的な維持・管理方法の一つとして提案していきたい.
  • 金田 拓也, 山本 潤, 上野 康弘, 里見 正隆
    2015 年71 巻2 号 p. I_868-I_873
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     魚体表面の細菌の増殖過程を数値モデル化し,漁港における様々な衛生管理対策による生物的(細菌)リスク低減効果の定量的な評価手法を提案した.水産物の漁獲から荷捌きを通じて出荷に至るまでの動線上の魚体表面の生菌数の増減を定量化し,外部汚染との接触や洗浄効果も含む複数の取り扱い方法の違いによるリスクの比較を行い,漁港における衛生管理上の問題点について考察した.
     その結果,魚体の外部接触により汚染源以上の菌数に達する危険があること,滅菌海水等での洗浄効果が限定的であること,さらに,温度上昇により生菌数の増殖速度が増大し,条件により出荷前に危険な菌数に達すること等が明らかとなり,汚染の混入防止と低温維持,時間短縮の効果が定量的に示された.
  • 小林 薫, 森井 俊広, 松元 和伸
    2015 年71 巻2 号 p. I_874-I_879
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     地下水からの供給に由来する塩類集積における「塩害→砂漠化」の地球環境問題は,世界の農業生産を減少させる主要因の1つで,世界の水・食料問題にもつながる大きな課題である.筆者らは,砂礫材で構成されるキャピラリーバリアの礫代替材として,塩害地域でも比較的に入手が容易な貝殻を利用できることを見出した.自然材料で主成分がカルシウムである貝殻は,貝塚などで数多く実証されているように,長期的な劣化がほとんどない利点も合わせ持っている.
     本研究は,貝殻を用いたキャピラリーバリアの塩類集積防止の効果と性能を確認するために,円筒実験装置を用いて毛管上昇の遮断効果を貝殻層の厚さをパラメータにして実施した.その結果,貝殻層は薄くても,地下水の毛管上昇を遮断し塩類集積防止策として有効であることを実験的に明らかにした.
  • 正田 武, 卜部 憲登, 平田 正浩, 三戸 勇吾, 中本 健二, 日比野 忠史
    2015 年71 巻2 号 p. I_880-I_885
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     スカムの発生や悪臭問題のある過栄養な内港域において,石炭灰造粒物による底質改善の有効性に関する実証試験を実施した.実証試験開始後,スカムの大量発生は認められず,一定の改善効果があることが確認された.一方で,経時的に石炭灰造粒物層の沈下が生じ,散布区境界外から堆積泥の流入が生じた.これに伴い被覆層上へ最大80cm程度の厚みで浮泥が堆積していた.水槽実験により,グラブバケット工法では,大粒径の石炭造粒物ほど早く沈降するため,間隙率の低い造粒物層が形成されることが示された.また,室内溶出試験により,20cm以上の浮泥の堆積があると浮泥に対する改善効果が明確に現れないことが示された.過栄養な内港域で有効な底質改善手法として,1層目に細粒分,2層目に粗粒分を散布し,圧密沈下が生じた後に3層目を散布する粒度調整 3度撒き工法を提案した.
  • A.A.W.R.R.M.K. AMUNUGAMA, Jun SASAKI, Yoshiyuki NAKAMURA, Takayuki SU ...
    2015 年71 巻2 号 p. I_886-I_891
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     The appearance of hypoxia in water is mainly related with the characteristics of the sediment and hence the accurate sediment model is an important component to predict water quality and to propose measures against hypoxia. The objective of this study is to develop an integrated, benthic-pelagic coupled, layer-resolved and process based ecosystem model which can be used to reproduce seasonal hypoxia and anoxia in Tokyo Bay. The model was confirmed to be robust for long term computations. Steady state results through long-term computation were found to be significant to improve the reproducibility and reliability of the model. After the validation of long term results, this model can be adopted to predict long term conditions of the bay and to propose measures against hypoxia.
  • 山本 和司, 佐藤 高広, 小田桐 勝則, 川村 昌弘, 東 信行
    2015 年71 巻2 号 p. I_892-I_897
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     七里長浜港では,北東側の沿岸域において砂浜の侵食が著しく,その要因の一つとして,港湾建設による漂砂の遮断が考えられている.そこで,砂浜の侵食が著しい七里長浜港の北東側沿岸域約3kmを対象にA~Cの3領域に区分し調査を行った.平成23~26年度にかけての深浅測量及び平成26年度の生物調査の結果,港湾に最も近いA領域では,著しい堆積(最大4.23m)が確認され,サクラガイやヒラメ科等が多く確認されたことから安定した砂地が形成されていると考えられた.汀線が海食崖のB領域は,平成23年度からの変化量が少ないことから,近年では砂浜の侵食は止まりつつあり安定化してきていると考えられた.一方で,港湾から最も離れているC領域は,著しい侵食は見られないものの,生物の確認数が少ないことから不安定な環境であると考えられた.
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