日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
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選択された号の論文の1051件中951~1000を表示しています
  • 村川 雅人, 下嶋 美恵, 増田 真二, 太田 啓之
    p. 0954
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)は葉緑体チラコイド膜を構成する脂質の約50%を占める主要な糖脂質である。シロイヌナズナにはType AとB、2種類のMGDG合成酵素が存在している。Type B MGDG合成酵素であるMGD2/3はリン欠乏時において発現が上昇する。これはリン脂質の減少に伴う糖脂質合成の促進で、膜脂質転換と呼ばれる機構の一環である。一方、Type A MGDG合成酵素と呼ばれるMGD1は、通常生育条件下におけるMGDG合成の大部分を担っており、チラコイド膜の発達などに必須の酵素であることは既に明らかにされている。しかしMGD1の環境ストレス応答における役割はまだよく分かっていない。
    MGD1が塩、乾燥、傷害ストレスにおいてその発現が上昇するというアレイデータが、AtGenExpress (http://jsp.weigelworld.org/expviz/expviz.jsp) に示されている。そこでこれらのストレスと、アブシジン酸処理を施した植物体について、リアルタイムPCRによるMGD1の発現解析を行った。その結果、塩ストレス条件において経時的な発現上昇が、また傷害ストレスにおいて一過的な発現上昇がそれぞれ見られた。本発表においては、ストレス応答におけるType A MGDG合成酵素の機能について議論したい。
  • 佐藤 輝, 溝井 順哉, 田中 秀典, 秦 峰, 刑部 祐里子, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
    p. 0955
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    シロイヌナズナの転写因子であるDREB2Aは、植物の熱ストレス・水ストレス応答において重要な役割を担っている。DREB2Aタンパク質は、非ストレス条件下ではユビキチン-プロテオソーム系によって分解されているが、ストレス時には安定化され、種々のストレス誘導性遺伝子を発現させることで植物の環境ストレス耐性に寄与している。また、DREB2Aタンパク質の安定化には「負の活性調節領域」が関与しており、その領域を構成する30アミノ酸を欠失した活性型DREB2A(DREB2A CA)タンパク質は、恒常的な安定性と下流遺伝子の発現誘導を示すことが知られている。一方、ストレス時におけるDREB2Aタンパク質の安定化・活性化や下流遺伝子発現機構の詳細については、未解明な部分も多く存在している。
    今回、我々はDREB2Aタンパク質の翻訳後調節機構を明らかにするために、DREB2Aタンパク質をベイトとする酵母のツーハイブリッドスクリーニングを行い、転写調節因子であるNF-YCファミリー遺伝子の一つを単離した。また、シロイヌナズナの葉肉細胞由来のプロトプラストにおけるBiFC試験を行い、 植物細胞内でDREB2AとこのNF-YCタンパク質が相互作用することを確認した。現在は、この遺伝子の過剰発現体、T-DNA挿入変異体を用いて、DREB2Aタンパク質の転写活性能との関連性を解析している。
  • 田原 寛子, 深井 佐智子, 吉原 利一, 内山 純爾, 太田 尚孝
    p. 0956
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    ABC輸送体は植物の膜輸送において大きなファミリーを形成している。ラン色細菌において、50以上のABC輸送体が報告されているが、その機能が分かっているものは少ない。酸性ストレスは植物にとって生存に関わる重大なストレスであるが、その応答メカニズムは未知な部分がある。我々はラン色細菌Synechocystis sp.PCC6803において、酸性ストレス応答に関する研究を行ってきたところ、slr1045欠損株が酸性に高い感受性を示した。
    slr1045遺伝子はABC輸送体をコードしているとされているが、その機能は分かっていない。そこで、リアルタイムRT-PCRを行ったところ、酸性条件下でslr1045遺伝子の発現量が増加していることが分かった。また、slr1045欠損株に関して、酸性以外のストレスへの応答を検討するために、マグネシウム、銅、コバルトなどの金属イオン、浸透圧/塩といったストレスに対する表現型解析を行った。その結果、slr1045欠損株は野生株と比較して、高浸透圧ストレスで耐性を示した。以上のことから、slr1045は酸性ストレス耐性に関わる遺伝子であり、酸性以外のストレスに関しても応答を示していると考えられる。現在ABC輸送体としての機能を詳細に検討するため、ICP-MSによる分析を行っており、その結果も併せて報告する予定である。
  • 渡邊 俊介, 杉本 高文, 前田 智美, 島田 裕士, 坂本 敦
    p. 0957
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    格段に窒素に富むプリン塩基の分解は,植物の窒素代謝の一翼を担う普遍的な異化代謝とされるが,その生理機能は必ずしも分明ではない。私たちは,シロイヌナズナにおいて当該代謝の初発酵素キサンチン脱水素酵素(XDH)の遺伝子発現がストレス応答する事実に着目し,その逆遺伝学的解析からプリン分解が健常な発生と生育に必要なだけでなく,乾燥ストレスへの適応にも重要な役割を担うことを明らかにした。XDHの発現抑制に起因してプリン分解が破綻した植物では,乾燥処理によって成長阻害や活性酸素の蓄積,細胞死が顕著に促進されるが,今回新たに乾燥に応答した適合溶質プロリンの一過的な蓄積が起こらないことを見出した。このとき,野生株と比較してプロリン合成の律速酵素 (P5CS) のmRNAレベルが有意に低下していたことから,その原因はプロリン合成系遺伝子の発現誘導不全にあると推定された。そこで,野生株を用いてプリン分解物がプロリン代謝関連酵素の遺伝子発現に与える影響を薬理学的に調査したところ,一部の化合物によってP5CSの遺伝子発現が惹起された。以上の結果から,ストレス適応におけるプリン分解とプロリン代謝の生理学的関連性が示唆された。本発表では,特定のプリン分解物を選択的に蓄積する変異株を用いて行っている実験の結果も併せて報告し,ストレス適応におけるプリン分解の生理学的役割について議論する。
  • 殷 俐娜, 王 仕穏, 高谷 美和, 名嶋 凛太郎, 辻 渉, 板井 章浩, 藤原 伸介, 田中 浄
    p. 0958
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    塩障害は世界の穀物生産を制限する主要要因であり、植物の塩耐性を改善することは重要かつ緊急を要する。ケイ素は地球の表面において2番目に多い元素であり、ストレス耐性の他に、植物の成長と発達にとっても有益な効果があるという多くの研究がなされてきた。塩ストレスにおけるケイ素の機能を調べるために、水耕条件下でケイ素をソルガムに施与した。ケイ素は塩ストレス下で、有意に、茎と根の成長を維持することが見出された。ケイ素により誘起される塩耐性機構をさらに明らかにするためにケイ酸のポリアミンとACC(1-aminocyclopropane-1-carboxylate)集積への影響、SbSAMDC (S-adenosylmethionine decarboxylase)遺伝子の発現について調べた。塩処理下時のケイ素施与により、ポリアミンレベル、特にプトレシンとスペルミンが2-4倍増加した。一方、ACC含量が減少した。さらにSbSAMDCの発現はケイ素により上方調節された。ケイ素によって誘起される塩ストレス耐性の改善はポリアミンとエチレン合成の制御と関連し、植物の成長と生存に必須なポリアミンはケイ酸誘起の塩耐性に重要な役割を果たしている。
  • Zhang Xue, Shimizu Katsuyoshi, Nomura Koji
    p. 0959
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    Alkali grass (Puccinellia tenuiflora) is an expected prominent plant to achieve crop production and phytoremediation in saline-alkaline environment because of its high tolerance to saline-alkali soil. However, little is known on its behavior during initial growth process under high pH conditions. In this work, we compared germination rates and initial growth under different pH conditions. The germination rates of alkali grass at pH 5.5, 8 and 10 were 6.7%, 10% and 20.7%, respectively. It was striking that the highest germination rate was obtained when the seeds were sawn at the highest pH condition. To observe initial growth, the length of seedlings transplanted and grown on media prepared at pH 5.5,8 and 10 were measured. The fasted growth was recorded on the medium of pH 10. Since acidification of the media by alkali grass was expected, we traced the pH of the media for 15 days. Alkali grass decreased the pH of the media to 5.73 during the first 5 days. After the fifth day, the pH increased slowly to 6.95. The results suggested that alkali grass expresses a high adaptation ability to alkali soil from germination, and remediates its rhizospare.
  • 横正 健剛, 山地 直樹, 馬 建鋒
    p. 0960
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    ソバはアルミニウム(Al)耐性が強いだけではなく、地上部に高濃度のAlを集積する。生理学的な解析から、ソバはAlに応答し根からシュウ酸を分泌し、地上部ではAlをシュウ酸との錯体で液胞に隔離することが明らかとなっている。これらの過程には多くのトランスポーターの関与が考えられるが未だ同定されていない。私たちはソバのAl耐性及び集積の分子機構を網羅的に解析するために、Alで処理したソバの根からRNAを抽出し次世代シークエンサーを用いてEST解析を行った。均一化したcDNAライブラリーから遺伝子配列の決定を行い約10万のコンティグを作成した。また、均一化していないcDNAライブラリーを用いたショートリード解析から発現量の測定を行った。本研究では、トランスポーター候補遺伝子の中で発現上位にあるFeIREG2についてその全長の単離と機能解析を行った。RACE法を用いて完全長cDNAを単離したところ、FeIREG2はシロイヌナズナのFeとCo、Niの排出トランスポーターAtIREG2とアミノ酸レベルで約60%の相同性を示した。FeIREG2は根で発現し、Al処理6時間後には約20倍に増加していた。この遺伝子とGFPの融合遺伝子をタマネギ表皮細胞に発現させたところ、液胞膜に局在していた。これらのことからFeIREG2はAlの液胞への隔離に関与している可能性が考えられ、更なる解析を進めている。
  • 野田 祐作, 玉置 雅紀, 中嶋 信美, 塚原 啓太
    p. 0961
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    前回の年会で、我々はCol-0 (セレン耐性)とWs-2(セレン感受性)との掛け合わせにより作出したRILを用いたQTL解析から、Col-0のセレン耐性遺伝子座が4番染色体に存在することを報告した。今回はその遺伝子座について解析結果について報告する。詳細なQTL解析を行ったところ、G3883-1.4から1H1L-1.4マーカー間の199個の遺伝子がセレン耐性に関与している可能性が示唆された。これらの遺伝子の機能から耐性関連遺伝子を選抜する事は困難だったため、シロイヌナズナESTデータを利用し、Col-0で発現し、Ws-2で発現していない遺伝子を選抜した。その結果、4つの遺伝子の発現がCol-0特異的である可能性が示唆された。これらの遺伝子についてCol-0、Ws-2のゲノムPCRを行ったところ、Ws-2においてAt4G19780とAt4G19790を含む領域が欠失していた。また、Ws-2では2つの遺伝子の隣にあるAt4G19770のプロモーター領域の650bp以降が置き換わっている事が明らかになった。以上の結果、Ws-2ではこれら3つの遺伝子発現が変化していると考えられたため、これらの遺伝子発現をCol-0とWs-2で比較した。その結果、At4G19780の発現はCol-0の地上部で確認できたが、Ws-2では見られなかった。一方、他の2つの遺伝子発現はいずれも確認できなかった。
  • 村岡 瑠香, 田中 喜之, 大西 美輪, 七條 千津子, 高相 徳志郎, 深城 英弘, 三村 徹郎
    p. 0962
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    陸上高等植物の多くは、塩ストレスにより成長阻害を受けたり、枯死する。塩害を受けた農耕地では作物の成長が低下することから、塩ストレス下における植物の反応を調べることは基礎研究のみならず、応用面でも重要な課題である。
    本研究は、植物の耐塩性機構を細胞,分子レベルで明らかにすることを目的として行った。実験材料として、高塩環境下でも生育できるマングローブ植物 (Bruguiera sexangula) の培養細胞を用いた。まず、塩ストレスによる培養細胞の液胞の形態や細胞内イオン量の変化を調べた。細胞内への塩蓄積に伴い液胞体積は増大していくが、高塩条件下での長期の培養ではイオン濃度が下がることを再確認した。さらに、塩ストレス下における培養細胞のイオン輸送機構を明らかにするため、耐塩性に関与している遺伝子に注目し、細胞膜局在型 Na+/H+ (BsSOS1) 遺伝子および二種の液胞膜局在型 Na+/H+ antipoter (BsNHX2, BsNHX14) 遺伝子についてリアルタイムPCRを用いて、様々な塩ストレス条件下における発現様式を調べた。さらに、培養細胞で得られた結果がマングローブの植物個体においても当てはまるのかを検討するため、個体レベルにおける遺伝子発現量の解析を予定している。
  • 丸山 隼人, 佐々木 孝行, 岡崎 圭毅, 信濃 卓郎, 和崎 淳
    p. 0963
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    リン欠乏条件やアルミニウム障害において植物は根から様々な代謝産物を分泌し、その環境に適応していることが知られている。特に有機酸は土壌中の難利用性リンの可溶化及びアルミニウムの無毒化に関与している。しかしながら、これまでにそれぞれのストレス、またこれらのストレスの相互関係での浸出物を網羅的に解析した報告はない。そこで本研究では、リン欠乏条件とアルミニウム障害におけるシロイヌナズナの根浸出物のプロファイルを明らかにすることを目的として実験を行った。
    シロイヌナズナ(Col-0)を1/2MS通常培地とリンを含まない培地で19日間無菌的に栽培した。その後、アルミニウムを含む溶液および含まない溶液で3時間根浸出物を回収し、その回収液に含まれる低分子量有機物をGC/MSを用いて網羅的に解析した。リン欠乏、アルミニウム障害両方において浸出物中のアミノ酸、有機酸、糖類の多くは増加する傾向を示した。有機酸に着目すると、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸についてはリン欠乏とアルミニウム障害両方で増加が確認された。一方でクエン酸、乳酸はアルミニウム障害には応答せず、リン欠乏でのみ増加していた。これらの結果から根からの浸出物のプロファイルはリン欠乏とアルミニウム障害において異なっており、双方のストレスが相互に関係していることが示唆された。
  • 坂本 卓也, 深尾 陽一朗, 藤原 正幸, 藤原 徹
    p. 0964
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまでに、プロテアソームの19SサブユニットRPT5aがシロイヌナズナの根におけるホウ素過剰耐性に必須であることを報告してきた。プロテアソームは、基質の認識と展開を担う19Sとプロテアーゼ活性を有する20Sの2つの複合体から成り、能動的なタンパク質分解を通じて様々な細胞内プロセスを制御する。RPT5aに加えて、19SサブユニットRPN8a、RPN2a及びRPT2aもホウ素過剰耐性に必須であった。ホウ素感過剰における必須性が特定の19Sサブニットにのみ認められたことから、ホウ素過剰に応答し、かつサブユニット特異的に認識される基質が存在する可能性がある。本研究では、rpt5a変異株を用いてそのような基質の探索を試みたので報告する。
    異なるホウ素条件で生育した野生株及びrpt5a変異株の根から精製したポリユビキチン化タンパク質群を、iTRAQ法を用いたLC-MS/MSにより解析した。結果、ホウ素過剰によって誘導され、rpt5a変異株でより蓄積するタンパク質が28種同定された。うち17種はプロテアソームの標的となりうるモチーフを有し、我々の方法がプロテアソームの基質探索に有効であることが示唆された。他に、ホウ素過剰に非感受性を示すrpt5aの復帰変異体を少なくとも2株単離した。これらの変異株ではホウ素過剰に応答してRPT5aに認識されるタンパク質を欠損している可能性が期待される。
  • 古谷 あゆ美, 丸山 隼人, 小島 創一, 岡崎 圭毅, 信濃 卓郎, 和崎 淳
    p. 0965
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    土壌中のリンの多くは、植物が直接利用できない難溶性リンや有機態リンとして存在しており、植物は根の形態を変化させたり、有機酸やホスファターゼを分泌したりすることで、リンを可溶化し、吸収している。
    シロイヌナズナは世界各地に分布していることから、各系統は異なる低リン応答、リン獲得戦略を持ち、それぞれの土壌に適応していると考えられる。しかし、土で育てた場合の各系統のリン欠乏応答はまだ知られていない。そこで本研究では、土耕栽培試験を行い、自然系統間の土での難利用性リン吸収能を比較解析した。さらに無菌栽培試験を行い、各系統のリン欠乏への適応戦略を明らかにすることを目的とした。
    32のシロイヌナズナ自然系統を、リン欠如区、標準リン区、3倍リン区を設け、土耕栽培した各自然系統の地上部の生育量、リン吸収量を測定したところ、リン吸収特性が異なっていた。多くの系統はリン施肥を増やすと、生育量、吸収量は上がるが、Enkheim系統のように、3倍リン区で標準リン区よりも生育、リン吸収が減少する系統が認められた。リンが少ないときのリン吸収のばらつきを考察するため、実験に用いた32系統を、吸収量・生育量が低く、リン欠乏に弱いグループ、吸収量は少ないが、要求量が少なく、利用能が高いグループ、吸収量は高いが生育量が低いグループ、吸収量・生育量がともに高いグループに分けて、比較解析を進めている。
  • 濱田 一成, 佐伯 千香, 武田 幸太, 鈴木 石根, 五十嵐 一衛, 古川 壮一, 森永 康, 赤井 政郎, 七谷 圭, 魚住 信之
    p. 0966
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Synechocystis sp. strain PCC6803は比較的高い塩濃度で成育し、環境変化の大きな環境でも生育が可能である。したがって、様々なストレス耐性機構を有していると考えられている。動植物においては、塩ストレスと細胞内ポリアミン含量の関連が報告されている。私たちは、塩ストレスに関わる膜輸送系に関する解析をすすめる中で、Synechocystis は塩ストレスにさらされると細胞外に多糖で構成されるバイオフィルムを形成することを見いだした。この時、バイオフィルム形成と同時に細胞の増殖の減衰が観察されたことから、耐塩性および細胞増殖の両方に深く関与すると考えられているポリアミン生合成系に注目することとした。野生株では、塩ストレスより菌体内ポリアミン(スペルミジン)濃度の低下が観察されるのと同時に、ポリアミン生合成関連酵素の一つであるアルギニン脱炭酸酵素破壊株ではバイオフィルム形成が促進された。また、外界の塩ストレスを感知して、バイオフィルム形成を誘導する情報伝達関連遺伝子のスクーリングを行い、バイオフィルム誘導センサーの同定を試みることとした。ヒスチジンキナーゼ破壊株ライブラリーを用いて、塩ストレス下におけるバイオフィルム形成を観察し、バイオフィルム誘導センサーのスクリーニングをすすめており、二成分系の関与の有無に関しても報告する。
  • 上野山 美沙, 于 翔, 大谷 美沙都, 井原 あゆみ, 西窪 伸之, 加藤 晃, 山口 雅利, 出村 拓
    p. 0967
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    樹木は持続的供給が可能な地上最大のバイオマスとして有用であることから、遺伝子組換え技術を用いた樹木への環境ストレス耐性形質の付与による収量の増大に期待がもたれている。しかしながら、そのような遺伝子組換え樹木の作出例は少なく、また、それらの環境ストレス耐性の評価方法についても十分な検討が行われていない。そこで本研究では、シロイヌナズナにおいて塩や乾燥へのストレス耐性が示されているGolS2SRK2C遺伝子を過剰発現する形質転換ポプラ(Populus tremula x tremuloides)を作出し、それらの環境ストレス耐性について解析を行った。まずは、作出した形質転換ポプラにおける導入遺伝子の発現解析を行い、発現が高い系統を各5つずつ選抜した。また、後の実験に必要な形質転換ポプラの増殖方法を検討し、市販のジフィーセブンを用いての馴化が有効であることなどを見出した。さらに、環境ストレス耐性評価については塩ストレス条件の検討を行い、無菌状態で生育させたポプラの30 mMのNaClを含む固形培地での発根率を測定すること、ジフィーセブンを用いて馴化したポプラを100~150 mMのNaCl条件で2~3週間処理後、生育状態を観察することとした。加えて、マイクロアレイにより形質転換ポプラの網羅的な遺伝子発現解析を行っており、これらの結果についても報告したい。
  • 小田 紘士郎, 神谷 岳洋, 藤原 徹
    p. 0968
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マグネシウム(Mg)は植物の必須元素のひとつである。クロロフィルを構成する成分の一つであり、多様な酵素反応を助ける役割も持つ。我々はMgに対する植物の応答機構を理解する目的で、EMS処理した約2万株のシロイヌナズナM2個体から、通常(1.5 mM)の7~10倍高い濃度のMgを含む培地で通常培地に比べて極端に根の伸長が阻害される変異体を6系統単離した。これらのうち、特に表現型が顕著である2系統においてマッピングを行ったところ、どちらも1番染色体の19.95Mbpから22.05Mbpの間に原因遺伝子があることが判明した。Mg供給源として用いたMgCl2またはMgSO4において表現型に差がなかったことから、表現型はMgによるものである可能性が示唆された。また、カルシウム(Ca)欠乏培地(0.15~0.2 mM Ca)においても野生型に比べて顕著な根の生育阻害を示したことからMgとCaの比が高まると表現型が現れる可能性が考えられる。地上部の元素濃度を測定したところ、Mg、Caとも変異体における濃度が野生型と比べ低かった。今後はさらに詳細なマッピングを行い遺伝子座を特定するとともに、生理実験等を行うことで原因遺伝子の機能を追究していく予定である。
  • 大野 美佐緒, 裏地 美杉, 森 泉, 中村 宜督, 村田 芳行
    p. 0969
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    セレン(Se)は、ヒトを含む動物にとって微量必須元素の1つである。しかし、その過剰摂取は中毒を引き起こす。その毒性のために環境中のセレン汚染は問題となる。セレン汚染土壌からセレンを除去する有効な方法の1つとして、植物を利用したセレン汚染環境浄化が注目されている。本研究では、すでにセレン酸耐性が報告されている硫酸輸送体SULTR1;2ノックアウト変異体であるsultr1;2とその野生株WSを材料として用い、セレン酸に対する耐性、セレン蓄積能、Se代謝関連遺伝子の発現等を精査した。
    sultr1;2はWSよりもセレン酸に対して耐性であった。セレン酸存在下においてsultr1;2の総セレン量は、WSと同程度あり、また、有機セレン量の割合が増加する傾向が見られた。また、遺伝子発現解析の結果より、ジメチルセレナイド(Me2Se)への代謝を触媒する酵素の遺伝子発現が増加している傾向が見られた。それらの結果より、sultr1;2のセレン酸耐性機構は、Kassisらが結論する硫酸輸送体の欠損によるセレン酸の取り込みの減少よりも、植物体内でのセレン酸からジメチルセレナイドへの変換が早められたことによる無毒化と大気中への放出が原因である可能性が示唆された。
  • 光嵜 克敏, 三屋 史朗, 高倍 鉄子
    p. 0970
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    オカヒジキは、日本各地の海岸砂地に自生しているヒユ科NADP-ME型C4植物である。グリシンベタイン(ベタイン)は、ヒユ科やイネ科などの一部の植物で塩や乾燥に応答して合成され、細胞内の浸透圧調節や酵素・膜の保護の機能をもつ適合溶質である。塩存在下のオカヒジキは、葉において貯水組織を発達させて塩を隔離する他、高濃度のベタインを合成・蓄積するため、耐塩性が高いと考えられる。本研究では、オカヒジキの耐塩性機構におけるベタインの生理的役割を調べることを目的とし、塩存在下のオカヒジキにおけるベタイン合成酵素の組織局在性を調べた。
    ベタイン合成の最終段階を触媒する酵素はベタインアルデヒド脱水素酵素(BADH)であり、BADHがベタイン合成の組織局在性を決定している。ウエスタンブロット解析の結果、オカヒジキの葉におけるBADHタンパク質発現量は塩処理により増加した。次に免疫組織染色によりオカヒジキの葉におけるBADHタンパク質の組織局在性を調べた結果、通常時では維管束、塩処理後では維管束および維管束鞘組織で強いシグナルが見られた。したがって、維管束および維管束鞘組織でのベタインの蓄積が、オカヒジキの耐塩性機構において重要であることが示唆された。
  • 竹久 妃奈子, 五十嵐 元子, 佐藤 豊, 安彦 友美, 山内 卓樹, Antonio Baltazar, 本山 立子, 犬飼 義明, 中園 ...
    p. 0971
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    我々はイネの根における遺伝子発現情報の整備を目的とし、Laser Capture Microdissectionとマイクロアレイ解析を用いた根の網羅的遺伝子発現プロファイリングを実施した。水耕装置で10日間育成した日本型イネ品種日本晴の冠根を、根冠、分裂帯、伸長帯、根毛帯、成熟帯に分割し、さらに伸長帯/根毛帯と成熟帯の表層、皮層、中心柱部位をそれぞれ分割し採取した。採取したサンプルからRNAを抽出し、イネ4×44K マイクロアレイRAP-DB(Agilent)を用いた1色法によりマイクロアレイ解析を行った。得られた遺伝子発現パターンの類似性をもとに遺伝子を分類し、各部位で特異的に高い発現を示す遺伝子群を抽出した。根冠ではムシゲルの合成を制御すると考えられる炭素代謝関連遺伝子が、分裂帯では細胞分裂・分化に関与するDNA複製・翻訳関連遺伝子が、伸長帯・根毛帯では水や無機栄養分の輸送関連遺伝子が多く含まれていた。また、根毛が形成される伸長帯/根毛帯の表層部位、側根形成が開始される中心柱部位で特異的に高い発現を示す遺伝子群を見出した。以上の結果から得られた根の詳細な遺伝子発現情報は、根の各部位における特異的遺伝子発現やその機能を明らかにするための有用な情報基盤になると考えられた。得られた発現情報は、遺伝子発現データベース「RiceXPro」から公開していく予定である。
  • 木本 剛彰, 柴 博史, 岩野 恵, 高橋 宏和, 中園 幹生, 藤田 雅丈, 倉田 のり, 磯貝 彰, 高山 誠司
    p. 0972
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    葯タペート組織は葯壁の最も内側に存在する組織であり、花粉の形成や稔生に重要な役割を果たすとされているが、その機能は不明な点が多い。また、タペート組織は花粉の成熟に伴い、プログラム細胞死を起こして消失することが知られているが、この細胞死のメカニズムについてもほとんど明らかでない。このようなタペート組織の働きを解明するためには、タペート組織で発現する遺伝子群を詳細に明らかにすることが重要である。
    本研究では、タペート組織における遺伝子発現様態を網羅的に解析するために、レーザーマイクロダイセクションを用いて、シロイヌナズナの蕾からタペート組織を単離した。そして、当該組織からtotal RNAを抽出し、マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。また、同じ葯サンプルから小胞子および葯壁細胞を同様に回収し、遺伝子発現解析を行った後、タペート組織の遺伝子発現プロファイルと比較した。本発表では、上記のマイクロアレイ解析を通じて、タペート組織における遺伝子発現様態に関する最新の知見を示す。
  • 解良 康太, 高橋 征司, Baerenfaller Katja, Gruissem Wilhelm, 中山 亨
    p. 0973
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    タンパク質プレニル化は,原生生物,糸状菌,哺乳類,高等植物など真核生物で幅広く確認されている翻訳後脂質修飾の一つであり,標的タンパク質の細胞内局在,タンパク質間相互作用,活性などに影響を与えることが知られている.プレニル化反応では,ファルネシル二リン酸やゲラニルゲラニル二リン酸に由来するプレニル基が,タンパク質プレニル基転移酵素(PPTases)によって標的タンパク質のC末端に存在する特徴的なモチーフのシステイン残基に転移される.高等植物におけるPPTaseのノックアウト変異体は,アブシジン酸やオーキシンに対する高感受性,メリステムの肥大化,花の形態異常などの表現型を示すことから,タンパク質プレニル化が植物の環境適応戦略や細胞増殖,細胞分化において重要な働きを担っていることが示唆されてきた.しかし,肝心の標的タンパク質群についてはその一部が同定されているのみで,大部分がC末端のモチーフ配列からの推定に留まっており,プレニル化を介したタンパク質機能の制御についてもほとんど明らかにされていない.
    本発表では,これらの課題を解決する第一歩として,哺乳類の系で確立されているアザイド基質(アザイドファルネソール,アザイドゲラニルゲラニオール)を用いた手法を応用して,nano-LC-MS/MSによるシロイヌナズナ培養細胞からのプレニル化タンパクの網羅的質同定を試みた結果を報告する.
  • Nakamura Yuki, Teo Norman Z.W., Shui Guanghou, Cheong Wei-Fun, Chua Ch ...
    p. 0974
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    Well-coordinated flower development is crucial for successful fertility and prosperity of their species. Lipid is an emerging multifunctional component which plays pivotal roles in various aspects of plant development. However, the involvement of lipids in flower development is yet to be characterized comprehensively. By exploiting the novel system to synchronize flower development in Arabidopsis, a global stage-specific profiling of polar glycerolipids and phosphoinositides was carried out together with transcriptomic analyses on relevant lipid biosynthetic genes. The result showed that each lipid class showed dynamic changes, and gene expression pattern was clearly categorized into several groups. On the basis of global analyses, functional link between glycerolipids and flower development will be presented.
  • 岩佐 万実, 草野 都, 林 尚美, 小林 誠, 岡咲 洋三, 中林 亮, 鈴木 実, 斉藤 和季
    p. 0975
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    近年メタボロミクスは、動植物の代謝を網羅的に解析するだけでなく、遺伝子機能を解明する上で重要な役割を担っている。本研究は、すでに代謝物変動が報告されているシロイヌナズナ変異株50ラインから、サイレントフェノタイプを選定し、ストレスと代謝の変動および遺伝子機能との相関を行うことを目的とした。サイレントフェノタイプとは、遺伝子に変異があるが、形態や色など見かけ上の表現型に変化が認められない変異体であるが、これら変異体の代謝物総体(メタボローム)に変化が起きている可能性がある。本研究ではサイレントフェノタイプの選定に、形態観察とこれまでに築いたGC-TOF/MSメタボロミクスパイプラインを用いた。MS培地上でシロイヌナズナ野生型(Col-0)と変異株50ラインを生育させ、形態観察から、50ラインのうち64%(32検体)をサイレントフェノタイプと判定した。またシロイヌナズナ地上部抽出物をGC-TOF/MSし、多変量解析から64%のサイレントフェノタイプのうち、19%にメタボロームの変動が見られた。我々はこの中から、γ-グルタミルシステインリガーゼ遺伝子の変異体であるpad2-1を選定した。本変異体は野生株と比較してグルタチオンの減少が報告されている。現在、酸化ストレス下でのメタボロームをGC-TOF/MS、LC-TOF/MS、LC-IT-TOF/MSの3つのパイプラインで解析している。
  • 太田 優子, 孫 立倉, 本山 直樹, 菊地 淳, 渡辺 正巳
    p. 0976
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    近年、農作物の安全性・味・栄養分への関心が高まっている。かつて、農作物の収量を増やすために大量の化成肥料や農薬を使用した栽培が行われてきた。しかし、現在では消費者の安全・安心志向の高まりや、環境保全の観点から無農薬・減農薬の作物や化成肥料の量を減らした作物の生産が奨励されている。また、消費の現場では、有機作物が無機栽培で生産されたものに比べて、味や香りさらには健康にも良いとされている。しかし、栽培方法によって代謝成分に違いがあるのかについて、科学的根拠は今までに示されていない。本研究では、有機肥料と化成肥料、またそれぞれに農薬を使用したものの4区に分けてミニトマトの栽培を行った。可食部から可溶性画分を抽出し、一次元プロトンNMRスペクトルを観測した。それらの成分の違いを、主成分分析することによって考察した。プロトンNMRでは成分を分離することなく、プロトンを有する全ての物質を測定することができる。このため、どの代謝成分によって味・栄養分などの差が生じるかわからない際に、主成分分析と組み合わせて要因を推察することが可能である。主成分分析の結果、有機無農薬区と化成無農薬区では、二つの区の要素の間には違う傾向が見られた。ローディングの値から、糖がこの傾向に関与していると推察された。今後は二次元NMRを用い、違いに関与している物質の同定を行う予定である。
  • 小林 誠, 岡咲 洋三, 福島 敦史, 中林 亮, 鈴木 実, 西澤 具子, 淨閑 正史, 庄子 和博, 斉藤 和季, 後藤 英司, 草野 ...
    p. 0977
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    人類の人口は年々増加の一途をたどり、2050年までには90億人に達すると予測されている。植物工場のような屋内生産型の食糧供給法は耕作地としての土地の有効利用の観点からその発展が期待されている。現在、葉菜類はその栽培の容易さや無農薬で生育できるという利点から、すでに植物工場での生産が盛んに行われている。我々は葉菜類に対し、光質と光強度の制御が容易なLEDを照射し商品価値の高い形質を付加することを目的として本研究を行った。特に収量増大および有用二次代謝産物生産に着目し、有効な光質と代謝物群変動との関係を調べた。サニーレタスを対照区、UV-B、赤色LEDおよび青色LED照射下で生育した。その結果、赤色LEDを照射した植物体は葉の色が薄く徒長していたが、他の光質では顕著な差は認められなかった。次に、収穫した葉について光照射により生産される一次代謝物および極性脂質を中心に代謝プロファイリングを行った。得られたデータは多変量解析に供し、各光質条件下での代謝プロファイルを視覚化した。その結果、対照区と比較して赤色LED下で生育したサニーレタスの葉が最も異なる代謝プロファイルを示すことが判明した。続いて統計的に有意に変化する代謝物群を調べたところ、糖類およびリン脂質の増加、アミノ酸や有機酸の減少が認められた。現在、カロテノイド類および極性二次代謝産物の挙動について調査を行っている。
  • 福島 敦史, 西澤 具子, 小林 誠, 早雲 まり子, 彦坂 晶子, 斉藤 和季, 後藤 英司, 草野 都
    p. 0978
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    21世紀に突入し人類の人口増大はとどまるところを知らず、2050年までには90億人に達すると予測されている。しかしながら耕作地面積は限られており、植物工場のような屋内生産型の食糧供給法の発展が期待される。屋内生産型、特に閉鎖系温室での植物栽培では、照明装置が作物の収量に大きく関わる。そこで本研究では光質と光強度の制御が容易なLEDを利用しトマト果実の転流機構に関する知見を得るため、次世代シークエンサも取り入れた包括的転写・代謝プロファイリングによる統合アプローチを行った。具体的には栽培種トマト(麗容)に予備実験で最適な光質と判断した赤色LEDを2段階の光強度(弱光および強光)で照射し、1週間および2週間生育した。生育後、各時刻点における葉サンプルを収穫した。なお、LEDを全く照射しない植物体も生育し葉サンプルを収穫した。果房については、収穫が可能であった2週間目の植物体を中心に収穫した。果実の湿重量と光強度の関係を調べたところ、光強度が強い条件下で生育したトマトの果実は弱光条件下で収穫したものを比較して、重量が増大した。次世代シークエンサおよびマイクロアレイによる転写プロファイリングは葉4点、果房2点の合計6実験区からのサンプルを使用した。マイクロアレイによる転写プロファイルに関しては現在解析中である。代謝物プロファイリングに関しては、収穫したサンプル全点について行う予定である。
  • 大宮 泰徳, 半田 孝俊, 星 比呂志
    p. 0979
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    東北育種場では、東北各地より成長・形質の優れたブナを選抜し、育種への応用をめざしてつぎ木増殖による保存を進めてきた。しかし、豊凶という特性のため台木用種子の安定確保が困難である。その上、未保存個体の多くが林道の奥深くにあって採穂は落葉後かつ降雪前の11月中旬に限られる。しかし、春まで4ヶ月以上の穂の長期保存は技術的に容易ではなく、台木を温室で芽吹かせればその短縮が可能だが、その稼働には多大なコストがかかり標準的な手法とは言い難い。
    そこで、本研究では、上記の諸問題を解消するため、9月から11月までの降雪前でも材料の確保が可能なブナ冬芽を用い、組織培養による増殖を試みた。冬芽は70%エタノール、1%次亜塩素酸ナトリウム溶液で激しく撹拌滅菌後、クリーンベンチ内で滅菌水でよく洗浄し、キムタオル上で芽鱗を剥ぎ、27℃、16hr日長で培養した。1/2 WPM、0.2%gelrite培地を用い、IBAとBAPの組み合わせで多芽体の増殖に良好な条件が得られた。シュートは約1ヶ月ごとに新鮮な培地にさし木移植することにより、少なくとも3年以上、成長状態を維持している。さらに、この増殖培地により濃度の高いIBAを添加することによって発根が誘導され、植物体の増殖に成功した。この技術により、ブナ苗木の安定的生産・供給、および成長・形質の優れたブナクローンの早期増殖保存への応用が期待される。
  • 黒澤 翔太, 田村 綾香, 原 涼日, 杉山 健二郎
    p. 0980
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    苗条原基は、植物の茎頂ドームを光照射下で回転培養した際に生じる金平糖状の細胞集塊のことで、その増殖能や再分化能が高いことから、高等植物の大量クローン増殖やウイルスフリー苗の作出に利用されている。本研究では、近年ナス科のモデル植物として注目されているトマト品種Micro-Tomにおいて苗条原基を作出することを目的として、Micro-Tom苗条原基の誘導および再分化のための最適培養条件を検討した。20または30 g/lショ糖、0, 0.02, 0.2, 2.0または4.0 mg/l NAA、および0, 0.02, 0.2, 2.0または4.0 mg/l BAPを添加したMS液体培地を用いて、22℃、10,000 luxの光照射下で、茎頂ドームを回転培養して苗条原基の作出を試みた。その結果、苗条原基の誘導には、20 g/lショ糖、0.2 mg/l NAAおよび2.0 mg/l BAPを添加した培地が最適であった。同条件下で2~3週間毎に培地を交換して継代培養を続けることで安定的に増殖することが確認できた。また、苗条原基からの発芽には1.0 mg/l zeatinを添加したMS培地がよく、発根にはホルモン無添加の1/2MS培地でよい結果が得られた。
  • 樫村 友子, 于 翔, 小口 太一, 松永 悦子, 南藤 和也, 大石 正淳, 菊池 彰, 渡邉 和男
    p. 0981
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    地球規模の環境問題に対する解決策の一つとして、遺伝子組換え技術により環境ストレス耐性を付与した植物の作出・実用化が試みられている。我々はこれまでに適合溶質として知られるベタインを高蓄積する土壌微生物 Arthrobacter globiformis 由来のコリンオキシダーゼ遺伝子 (codA) を導入した遺伝子組換えユーカリ (Eucalyptus globulus) を作出し、かつ、高い耐塩性を示すことを確認している。そこで、本耐塩性遺伝子組換えユーカリの屋外における実用化に向けた周辺植生や周辺土壌微生物相への影響に関する科学的評価を目的とし、2008年3月より隔離ほ場に植栽し、生育調査および生物多様性影響評価を実施している。周辺植生への影響評価としては、サンドウィッチ法、鋤込み法による葉のアレロパシー (他感作用) 活性の検定を行った。また、周辺土壌微生物相への影響評価としては、根圏付近の土壌を用いた平板培養法、土壌酵素活性測定法による土壌微生物試験を行った。これらの結果を総合し、本耐塩性遺伝子組換えユーカリの生物多様性影響について議論するとともに、遺伝子組換え植物の長期間にわたる周辺の生態系への影響について検討を加える。
  • 今西 俊介, 鈴木 孝征, 野口 有里紗, 横谷 尚起, 永田 雅靖, 松尾 哲, 辻 顕光, 本多 一郎
    p. 0982
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    野菜などの作物では、環境適性・病虫害耐性などを求める生産ニーズおよび急速に多様化する消費ニーズに対応するため、“より良い”品種を“より早く”育成することが求められている。形質の異なる多様な遺伝資源を作出・整備しておくことは、育種上重要であるとともに、変異系統のゲノム・分子生物学的な解析結果の蓄積によって新たなニーズへの迅速な対応に応用できると考える。我々は、ゲノム機能研究のための独自のツールの整備を目指し、重イオンビーム照射によるトマト変異誘発系統の整備を進めている。
    窒素イオンもしくは炭素イオンビームについて、異なる線エネルギー付与(LET)と吸収線量の照射を行い、子葉展開率および生存率を調査した。その結果、炭素イオンビーム照射では、LET 50-60 keV/mm、吸収線量100Gyにおいて本葉展開率の減少が見られはじめた。また外観異常を調査した結果、同条件の照射において外観異常のピークが見られた。今後、100Gy付近で詳細に条件を検討することによって、より至適な変異誘発条件を明らかにできる可能性がある。
    本研究は、文部科学省原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブおよび野菜茶業研究所所内プロジェクトとして実施された。
  • 福田 裕穂
    p. A0001
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物は分化の柔軟性に代表されるユニークな組織構築のしくみをもつ。この植物の組織構築を明らかにするために、優れたモデル系として維管束形成に着目し、一貫して維管束形成機構の研究を進めてきた。特に、組織構築のベースにある細胞分化と細胞間の相互作用に着目して解析を行った。細胞分化に関しては、できるだけシンプルな実験系を求め、ヒャクニチソウ葉肉単細胞を用いた道管細胞分化誘導培養系、さらにはシロイヌナズナ培養細胞を用いた道管細胞分化誘導系を開発した。これらの培養系を用いて、トランスクリプトーム解析、細胞学的解析、生化学的解析を行うことで、維管束形成に関する多くの鍵因子を見いだした。この中には、1遺伝子の導入により原生木部道管、後生木部道管を誘導できるVND7/VND6マスター遺伝子や、道管分化の促進因子ザイロジェン、前形成層の維持を支配する篩部分泌CLEペプチドTDIFが含まれる。これらの培養系で得られた鍵因子の生体内での働きを、シロイヌナズナを用いて遺伝学的、組織化学的に解析することにより、篩部と木部のクロストークなど、新たな維管束組織構築の分子機構が明らかになってきた。本発表では、その主な成果を話すとともに、維管束形成の解析から見えてきた植物の組織構築のしくみについて考えたい。
  • 澤 進一郎
    p. A0002
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物は、器官を切除して培養することや、分化全能性をひきだすことが容易であることから、いかにも各器官、組織、細胞が自律分散的に生きているように見える。しかし、中枢神経系を持つ動物のような中央管理型の生命形態ではないにもかかわらず、各器官(細胞)の間では確実に情報のやりとりを行っていて、個体としての統一性を保ち、複雑な体を形作ることができる。植物における形態形成機構の基本原理を解明する上で、私は空間認識機構の解析は大きな命題となると考え、細胞間情報伝達機構の全体的な理解を得るために、CLAVATA (CLV)シグナル伝達系を材料系として利用している。シロイヌナズナではCLEファミリーに属するCLV3はペプチドリガンドとして、CLV1及びCLV2がその受容体として機能することが示唆されていた。私たちは、CLV3がペプチドとして機能することを示し、合成ペプチドが植物体内で機能的であることを示した。この合成ペプチドを用いて、下流因子の探索を行っている。解析の結果、SOL2がCLV2とヘテロダイマーを形成し、CLV1に続く第二の受容体として機能すること、第三の受容体としてRPK2が機能することを明らかにした。また、リン酸化がCLV3シグナル伝達系において重要な機能を果たすことも示した。今後、CLV3シグナル伝達系の全体像を解明し、細胞間情報伝達機構における全体的理解に近づけたいと考えている。
  • 岡本 暁, 大西 恵梨香, 佐藤 修正, 高橋 宏和, 中園 幹夫, 田畑 哲之, 川口 正代司
    p. A0003
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科植物は根粒菌と共生して根に根粒を形成するが、その数は宿主植物によって制御されている。その主要な制御系として、根‐シュート間の遠距離シグナル伝達を介したシステミックな根粒形成の抑制(根粒形成のオートレギュレーション)が知られている。今回我々は、ミヤコグサのゲノム情報からこの根粒形成の抑制に関わり、根からシュートへ伝達されるシグナル分子の有力候補として二つのCLE遺伝子(LjCLE-RS1, LjCLE-RS2)を特定した。LjCLE-RS1, -RS2はシュートでは発現が検出されず、根で根粒菌の接種によって速やかに誘導された。また、その誘導には根粒菌の分泌する正の制御因子Nodファクターとそのシグナル伝達因子が必要であった。根で過剰発現させたLjCLE-RS1, -RS2はシステミックに根粒形成を抑制し、この抑制効果は根粒形成の全身制御においてシュートで機能するHAR1受容体に依存的であった。一方、古くから根粒形成は硝酸の添加によっても抑制されることが知られており、この抑制機構にもHAR1が関わることが知られている。そこでLjCLE遺伝子の硝酸に対する応答を調べたところ、LjCLE-RS2が根で顕著に誘導されることを見いだした。以上の結果をもとに、LjCLE-RS1, -RS2ペプチドがHAR1受容体を介して根粒形成のシステミックな抑制と硝酸抑制を仲介するモデルを提唱した。
  • McGrath Steve
    p. S0001
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    In the UK, information has been collected about the harmful element Cd in soils and crops. This is useful for the targeting of control measures, and as input data into legislation on Cd in soil and foodstuffs.
    Most rocks and soils contain low concentrations of Cd, apart from those developed on black shales and those associated with mineralised deposits. Anthropogenic sources of Cd can be significant, including the use of phosphatic fertilisers, and atmospheric deposition. Until recently, deposition of Cd from the atmosphere was estimated to be 3 g /ha/yr. Other important local sources of cadmium include the application of sewage sludge, and metalliferous mining and smelting of zinc and sulphide ores.
    The effect of these exposures, and interactions with Zn on the Cd concentration in wheat will be discussed and how to decrease Cd concentrations, thus enabling crops to be grown that conform with the Food Regulations. Models for crop uptake and phytoremediation have been constructed. Other mitigation measures, including adding materials to soil which bind Cd to remediate strongly polluted land and the feasibility of phytoremediation will be discussed.
  • Kayama Fujio, Horiguchi Hyogo
    p. S0002
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    カドミウムは食事の中に微量に含まれており、生物学的半減期が長いために徐々に加齢と共に蓄積していく。カドミウムはメタロチオネインという金属ー蛋白複合体として無毒化され肝臓や腎臓に加齢と蓄積していく。しかし、蓄積量が臨界濃度を超えると複合体から遊離したカドミウムが腎尿細管細胞に障害を与え、低分子蛋白質の再吸収機能が低下し、低分子蛋白尿が顕在化する。さらに、腎性貧血や骨粗鬆症、骨軟化症と進展し、富山県で発生したイタイイタイ病の病態となる。一般の日本人のカドミウムの経口摂取量はJECFAの定める暫定耐容月間摂取量より十分低いが、土壌カドミウム汚染地域の農業従業者にとっては、健康影響を配慮する必要があるほどの曝露安全域の幅が狭いことを留意しておく必要がある。
  • 馬 建鋒, 上野 大勢, 山地 直樹, 矢野 昌裕
    p. S0003
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    カドミウム(Cd)はイタイイタイ病の原因物質で、主な摂取源は主食のコメからである。従って、コメ中のカドミウムを低下させることは健康上非常に重要である。我々はイネのカドミウム集積における品種間差を利用して、カドミウムの集積に関与するQTLの解析を行ってきた。現在までにカドミウムの集積に関与するQTLを三つ同定し、そのうち、染色体7番にあるQTL遺伝子の同定と機能解析を終えている(Ueno et al., 2010)。この遺伝子によってコードされるOsHMA3はP-type ATPaseファミリーに属しており、根のすべての細胞の液胞膜に局在していた。高カドミウム品種と低カドミウム品種の間には発現レベルや組織・細胞局在の差が見られなかった。しかし、低集積品種由来のOsHMA3がCdを輸送する活性を示したのに対して、高集積品集由来のOsHMA3はCd輸送活性が見られなかった。更なる検討を行った結果、80番目のアミノ酸の置換が活性発現に影響を与えていた。機能型OsHMA3を過剰発現すると、カドミウム汚染土壌に栽培しても玄米中のカドミウムが非常に低く押さえられていた。これらの結果から機能型OsHMA3が根の細胞内に入ってくるCdを液胞に隔離することによって、地上部へのCd輸送を抑制していることが明らかとなった。
    Ueno et al., PNAS, 107, 16500-16505 (2010).
  • Uraguchi S., Kamiya T., Sakamoto T., Kasai K., Saito A., Sato Y., Naga ...
    p. S0004
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Cadmium (Cd) in rice grains is a major source of human Cd intake. We studied the role of OsLCT1 in Cd accumulation in grains. OsLCT1, is predicted to encode the only rice homolog of the low-affinity cation transporter 1 (TaLCT1) of wheat. TaLCT1 transports cations, including Cd in yeast. The cDNA of OsLCT1 was cloned from Nipponbare and was deduced to encode 511 amino acids with 11 transmembrane domains. When expressed in yeast, OsLCT1 reduced Cd accumulation, suggesting that OsLCT1 is a Cd transporter. OsLCT1-GFP was localized primarily to plasma membrane. We generated RNAi-mediated OsLCT1 knockdown rice plants and found that Cd concentration in seeds of transgenic plants is reduced by 30-50%. Interestingly, Cd concentration in xylem sap and leaf blades was not altered, suggesting possible involvement of OsLCT1 in Cd transport into grains.
  • Takahashi Ryuichi, Ishimaru Yasuhiro, Senoura Takeshi, Shimo Hugo M., ...
    p. S0005
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Previously we reported that ferrous Fe transporters in rice, OsIRT1 and OsIRT2, take up Cd (Nakanishi et al., 2006). Furthermore, overexpression of OsIRT1 increased Cd accumulation in rice (Lee and An, 2009). We investigated the role of OsNRAMP1, an Fe transporter, in Cd uptake and transport in rice.
    OsNRAMP1::GFP fusion proteins localised to the plasma membrane in onion epidermal cells. The growth of yeast expressing OsNRAMP1 was impaired in the presence of Cd compared to yeast transformed with empty vector. Moreover, the Cd content of the OsNRAMP1-expressing yeast exceeded that of the vector control. Overexpression of OsNRAMP1 in rice increased Cd accumulation in the leaves.
    The expression of OsNRAMP1 in the roots was higher in a high Cd-accumulating cultivar (Habataki) compared to a low Cd-accumulating cultivar (Sasanishiki) irrespective of the presence of Cd, and the amino acid sequence of OsNRAMP1 showed 100% identity between Sasanishiki and Habataki. These results suggest that OsNRAMP1 participates in cellular Cd uptake and Cd transport within rice, and the higher expression of OsNRAMP1 in the roots could lead to the increase of Cd accumulation in the shoots.
  • Watanabe Mai, Ikeuchi Masahiko
    p. S0006
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Photosynthetic proteins for antenna, photosystems and electron transport mostly occur as protein complex or supercomplex in the thylakoid membrane to support coordinated flow of energy and reducing equivalents. The organization of these complexes can be probed by various techniques and the blue-native polyacrylamide gel electrophoresis (BN-PAGE) is one of the powerful tools of high resolution. We will review the general principle and behavior of the photosystem II (PSII), photosystem I (PSI), and light-harvesting antenna complexes in BN-PAGE. The PSII core complex of cyanobacteria and plants can be separated as a monomer and a dimer and their ratio often depends on the condition of solubilization: stronger treatment with detergent tends to yield higher dimer-to-monomer ratio. By contrast, organization of PSI is diversified in evolution. Generally, a trimer and a monomer are popular in cyanobacteria, while a monomeric PSI-LHCI supercomplex is predominant in green plants and chlorophyll c-containing algae. However, we recently demonstrated "tetrameric" organization of PSI in heterocyst-forming cyanobacterium Anabaena sp. PCC 7120 and a glaucocystophyte Cyanophora paradoxa.
  • Peng Lianwei, Fukao Yoichiro, Fujiwara Masayuki, Shikanai Toshiharu
    p. S0007
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    In higher plants, the chloroplast NDH complex interacts with PSI to form the unique NDH-PSI supercomplex. Although it is well known that NDH mediates PSI cyclic and chlororespiratory electron transport, the nature of its electron input module is a long-standing mystery. To reveal the structure of NDH, we separated the NDH-PSI supercomplex by using BN-PAGE and analyzed it by LC/MS/MS. In addition to the NDH and PSI subunits, many proteins with unknown function were identified. Lhca5 and Lhca6 are required for the NDH-PSI formation. We also identified many proteins which are essential for the accumulation of NDH. Furthermore, we discovered three assembly intermediates of one NDH subcomplex (Subcomplex A) present in the chloroplast stroma. These complexes were immunoaffinity purified and analyzed by LC/MS/MS. On the basis of the results from proteomic and genetic analyses, we propose a working model of the NDH subcomplex A assembly.
  • Takabayashi Atsushi
    p. S0008
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Biological processes are not only performed by the cooperation of individual proteins, but also performed by various protein complexes. Notably, the chloroplast is the place where photosynthesis occurs and also the place where many other metabolic pathways are inter-connected via the metabolic products. Therefore, it is an intriguing challenge to detect the uncharacterized protein complexes in the chloroplast for understanding the regulation of photosynthesis and the metabolic flows. However, conventional approaches for comprehensive detection of the protein complexes are often time-consuming, labor-intensive process.

    Here, I have developed the rapid method by combination of BN-PAGE, LC-MS/MS, and bioinformatics. In the preliminary experiment using Arabidopsis thylakoid membranes, we successfully detected the known protein complexes including the core complexes and light-harvesting complexes of photosystems I and II, cytochrome b6/f, NAD(P)H dehydrogenase complex, and ATP synthase. I would like to talk about the present status and future prospects of this development for investigating the protein-protein interaction networks.
  • Rolland Norbert, Salvi Daniel, Brugiere Sabine, Seigneurin-Berny Daphn ...
    p. S0009
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Many recent high throughput proteomic investigations have focused either on the whole chloroplast or on independent suplastidial fractions. However, these previous studies raised the question of the accurate localization of lots of proteins that were identified in different suplastidial compartments. We recently went a step further into the knowledge of the accurate localization of these proteins within the chloroplast. To achieve this goal, we first obtained highly pure subfractions of envelope, stroma and thylakoids, and evaluated their cross-contaminations using biochemical methods. We then performed a comprehensive analysis of the chloroplast proteome starting from the whole chloroplast and its three main compartments. Then, we assessed the partitioning of each identified protein in the three above-cited compartments using a semi-quantitative proteomic approach (Ferro et al., MCP 2010; AT_Chloro database: http://www.grenoble.prabi.fr/at_chloro/).). An in depth investigation of the proteins identified within the purified envelope fraction allowed new insights over this subplastidial compartment to be revealed (Joyard et al., Mol Plant 2009 & Prog Lipid Res 2010).
  • Kanno Tatsuo
    p. S0010
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    長さにして二十数塩基前後の低分子RNA(small RNA)が生体内における遺伝子発現調節に重要な役割を果たしている.small RNAは転写後レベルの遺伝子発現調節に加えて,転写レベルでも大きな働きをしていることが分かってきた.
    このような転写レベルでの調節機構の一つが低分子RNAシグナルを介したDNAのメチル化(RNA-directed DNA methylation: RdDM)であり,植物でよく研究されているエピジェネティックな遺伝子発現調節機構のひとつである.RdDMは,2本鎖RNAが2本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼによって24塩基の低分子RNAに分解されたとき,その低分子RNAと相補性を持つDNA領域に含まれる全てのシトシンがde novoのメチル化を受ける現象であり,植物体においてインタージェニック領域やユークロマティック領域に散在するトランスポゾンやリピート配列(の断片)の転写活性を抑制するために必要であると考えられている.
    本講演では遺伝学的あるいは逆遺伝学的手法を用いて明らかにされてきたRdDMの分子機構について述べる.
  • 佐瀬 英俊, 高嶋 和哉, 北山 淳子, 小林 啓恵, 角谷 徹仁
    p. S0011
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    DNAメチル化やヒストンH3K9メチル化などのヘテロクロマチン修飾は不可逆的で比較的安定な修飾と考えられてきた。しかし近年、可逆的なヘテロクロマチン修飾による遺伝子制御の重要性が明らかとなりつつある。我々はシロイヌナズナを用いた遺伝学的な解析から、遺伝子領域に異所的なDNAメチル化とH3K9メチル化の蓄積を引き起こす変異体群を単離し、その高メチル化の原因遺伝子の1つとしてH3K9脱メチル化酵素相同遺伝子IBM1を同定している。ibm1変異体では不稔を含む様々な発生異常が観察されることから、H3K9脱メチル化の経路がシロイヌナズナの発生に伴った遺伝子制御に重要な働きをしていることが示唆される。今回の発表では最新のデータから遺伝子領域のヘテロクロマチン修飾除去メカニズムについて議論したい。
  • Zheng Xianwu, Pontes Olga, Zhu Jianhua, Miki Daisuke, Zhang Fei, Li We ...
    p. S0012
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Recent studies suggest that the DNA methylation status of a number of genes is dynamically regulated by methylation and demethylation. In Arabidopsis, active DNA demethylation is mediated by the ROS1 (repressor of silencing 1) subfamily of 5-methylcytosine DNA glycosylases through a base excision repair pathway. These demethylases have critical roles in erasing DNA methylation and preventing TGS of target genes. However, it is not known how the demethylases are targeted to specific sequences. Here we report the identification of ROS3, an essential regulator of DNA demethylation that contains an RNA recognition motif. Analysis of ros3 mutants and ros1 ros3 double mutants suggests that ROS3 acts in the same genetic pathway as ROS1 to prevent DNA hypermethylation and TGS. Gel mobility shift assays and analysis of ROS3 immunoprecipitate from plant extracts shows that ROS3 binds to small RNAs in vitro and in vivo. Immunostaining shows that ROS3 and ROS1 proteins co-localize in discrete foci dispersed throughout the nucleus. These results demonstrate a critical role for ROS3 in preventing DNA hypermethylation and suggest that DNA demethylation by ROS1 may be guided by RNAs bound to ROS3.
  • 西村 泰介, Molinard Guillaume, Broger Larissa, Thore Stephane, Petty Tom, ...
    p. S0013
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナmom1変異体では、DNAメチル化パターンが変化しないにも関わらず、ヘテロクロマチン遺伝子の発現抑制が解除される1。この事からMOM1はDNAメチル化の下流でもしくは独立で働く因子であると考えられる。最近、いくつかの遺伝子座においてMOM1はRNA誘導性DNAメチル化の下流で働く事2,3、CMM2と名付けられた植物でのみ見出される機能未知の保存領域が発現抑制に作用する事4が報告された。今回、私たちはCMM2の結晶構造解析及び機能解析を行い、CMM2が多量体を形成して発現抑制に機能する事を明らかにした。またmom1変異体の表現型を抑圧する新規変異体を現在までに12変異体単離している。これらの抑圧変異の中にはMOM1と協調して作用する因子における変異も含まれる事が期待される。いくつかの変異体についてはゲノム配列の再決定を行い、変異遺伝子の同定を試みている。

    1. Nishimura and Paszkowski 2006 BBA-Gene structure and Expression 1769, 393
    2. Yokthongwattana et al. 2010 EMBO J 29, 340
    3. Numa et al. 2010 EMBO J 29, 352
    4.Caikovski et al. 2008 PLoS Genet 4, e1000165
  • 倉田 哲也, 西山 智明, 程 朝陽, 宮脇 香織, 大島 真澄, Thompson Kari, 小野寺 直子, 岩田 美根子, 長谷部 光 ...
    p. S0014
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の葉を切断後に寒天培地上で培養すると、葉の傷口から、糸状の原糸体とよばれる組織が形成されてくる。このことは、分化した状態の葉細胞が、原糸体の先端に位置する頂端幹細胞へと細胞型が変化した結果を意味している。これは、分化細胞から幹細胞への「リプログラミング」と呼ばれる現象であり、植物が持つ高い分化全能性を理解する上で、優れたモデル実験系として考えられる。これまでに、頂端幹細胞へのリプログラミングの結果起こる先端成長と細胞分裂に先立ち、遺伝子発現が変動することを高速シーケンサーによるデジタル遺伝子発現解析から見いだしている。そこで、この遺伝子発現変化とクロマチンの状態との関連を調べる目的で、ヌクレオソームのパッケージンングに影響を与えることが想定されるヒストン修飾に着目して解析を進めた。いくつかあるヒストンの化学修飾の中で、転写の活性化に関連するヒストンH3K4me3と、反対に転写不活性化に関わるH3K27me3について、ゲノムワイドな存在状態についてChIP-seq法により解析した。また、同時にヌクレオソームそのものの分布も解析した。本シンポジウムでは、これまでに得られた結果について、幹細胞へのリプログラミングにおけるヒストン修飾を中心に、その役割と制御について議論したい。
  • 金 鍾明, 藤 泰子, 関 原明
    p. S0015
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    真核生物において、ヌクレオソームの構成因子であるヒストンタンパク質のN末端領域は、遺伝子の発現変化に伴いヒストン修飾酵素によるアセチル化、メチル化などの化学修飾を受ける。それら化学修飾の質的および量的変化が、ゲノムの構造および遺伝子発現の変化と関連したクロマチン構造変換の制御に寄与すると考えられている。植物においても、発生、春化などの過程に関わる遺伝子発現制御にヒストン修飾の変化が重要な役割を担うことが知られている。また一方で、植物は環境ストレス条件に応じて、ゲノムレベルで遺伝子発現応答をすることが知られているが、環境ストレス条件下でのクロマチン変動および遺伝子発現制御に関わるヒストン修飾の変化についての理解は不十分である。我々はシロイヌナズナにおける、乾燥などの環境ストレス条件下でのクロマチンの動態変化と、これに関わる修飾酵素の解析を進めている。本シンポジウムでは、植物での環境ストレス応答における、ヒストン修飾変化を中心としたクロマチン制御機構の役割などについて議論したい。

    参考文献
    1) Kim et al., Plant & Cell Physiology (2008) 49, 1580-1588.
    2) Kim et al., Plant,Cell & Environment (2010) 33, 604-611. Review.
  • 横山 隆亮, 澤 杏弥, 木戸 奈都美, 桑島 美香, 西谷 和彦
    p. S0016
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物細胞壁は、無数の多糖やタンパク質から成る複雑な高次構造物である。一般に被子植物の一次細胞壁は、セルロース微繊維をキシログルカンが架橋し、その架橋構造の間隙をペクチンや構造タンパク質が埋めることで構築されている。しかし、陸上植物は様々な環境に適応するために、多様な細胞壁を進化させてきたものと考えられる。例えば、イネなどの穀物類の一次細胞壁は、キシログルカンが殆どなく、(1,3)(1,4)-β-D-グルカン(MLG)やグルクロノアラビノキシラン(GAX)がセルロース微繊維と架橋構造を形成し、さらにGAXがフェニルプロパノイドと結合した独自の構造を持つ。
    近年、植物から生産されるバイオエタノールがガソリンなどの代替エネルギーとして期待されることから、植物の「細胞壁」を原材料としたセルロース系バイオエタノールの研究開発が国内外で急速に進んでいる。イネなどの穀物類も原材料として注目されているが、上述の通り、穀物類の細胞壁は独自の構成成分と構造を持ち、他の被子植物の細胞壁以上に不明な点が多い。特に穀物類の細胞壁に特徴的なヘミセルロースの機能については殆ど解明されていない。我々は、イネの研究材料として、穀物類の細胞壁に特徴的なヘミセルロースの植物体における機能解明を目指すとともに、そのような多糖を改変したイネ植物体を原材料としたバイオエタノールの生産についての研究開発を進めている。
  • 梅澤 俊明
    p. S0017
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    木質(リグノセルロース)は、地球上に蓄積するバイオマスの9割以上を占めており、食料と競合せず、カーボンニュートラルであることから、その利活用が次世代バイオマスエネルギー利用技術の開発において喫緊の課題となっている。しかし、木質は高等植物の体を支える構造材料でありそもそもそう簡単に分解されるようにはできていない。つまり、木質の成分利用の難しさは木質構成成分の存在状態(超分子構造)の強固さに帰結される。木質の利用、とりわけ酵素糖化等のような温和な反応条件における分解を想定する場合、リグニン量の低減を目指した代謝工学的制御が盛んに研究されてきた。一方、この木質の超分子構造の特性を考慮すると、激烈な反応条件で一気に強固な超分子構造を崩してしまう戦略も重要である。従って、木質のガス化など様々な目的に応じたリグニンの量と構造の個別の制御が必要である。現在までにリグニン生合成の制御については、リグニンの構造と量を代謝工学的にかなり制御することが可能となっている。最近では、リグニン生合成の統御機構が他の代謝あるいは形態形成との関連の上で活発に研究されている。一方、リグノセルロースの超分子構造形成の精緻な機構については今後の解明が待たれる状態にある。本講演では、リグニン生合成の代謝工学研究の現状と将来について考察したい。
  • 石井 忠
    p. S0018
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    最近、化石資源の枯渇や地球温暖化対策の一環として植物材料からエタノールを製造することが急務となっている。現在、エタノールはデンプンや砂糖から生産されているが、これらは食糧と競合して穀物価格の上昇などを生じ、大きな問題になっている。そこで食糧と競合しないイネワラ、サトウキビのしぼりかすなど農産廃棄物からエタノールを生産することに大きな期待が寄せられている。
    植物細胞壁は地球上に存在する最も豊富で再生産可能な有機化合物である。これまで細胞壁は木材、パルプ、繊維、工業原料などとして古くから利用されてきた。細胞壁はセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどから構成される。単子葉イネ科植物の主要なヘミセルロースはアラビノキシランであり、セルロースやリグニンと結合して強固な細胞壁を形成している。そのため、セルラーゼ糖化されにくいので、利用するには酸あるいはアルカリなどの化学試薬を用いた前処理が必要であるが、これらの前処理は費用がかかり、環境への負荷が大きい。この課題に対して、細胞壁を人為的に改変して易分解性の細胞壁を持つ植物材料を作出することは1つの解決法である。そこで、イネ科植物の細胞壁構築に重要な役割を果たしているアラビノキシランについて、化学構造、生合成経路を示し、その改変の可能性について紹介する。
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