研究 技術 計画
Online ISSN : 2432-7123
Print ISSN : 0914-7020
39 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
巻頭言
  • 青島 矢一
    原稿種別: 巻頭言
    2025 年39 巻4 号 p. 354-356
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    Japan's science and technology policy shifted toward innovation policy in the 2000s to address economic stagnation and social issues. In 2021, the 6th STI Basic Plan broadens its scope across disciplines. However, this shift increased policy complexity due to wider spatial reach, long-term considerations, and systemic trade-offs. Innovation requires continuous resource input and balanced technological development. Policymakers must navigate short- and long-term priorities while addressing ethical, economic, and political challenges. As a result, interdisciplinary research and integrated knowledge have become essential for effective innovation policy and sustainable progress.

特集 学際化するイノベーションの政策研究
  • 吉岡(小林) 徹
    原稿種別: 特集
    2025 年39 巻4 号 p. 357-360
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    Innovations based on advanced technologies are inherently challenging to forecast, particularly regarding their developmental trajectories. Moreover, predicting how society will utilize and accept these technologies has been repeatedly emphasized as a central theme in discussions surrounding socio-technical systems theory. For this reason, when formulating innovation policies, it is crucial for experts to observe, interpret, and engage in interdisciplinary discussions from the perspectives of their respective fields of expertise. This special issue focuses on recent innovation policy targets, including semiconductors, telecommunications, drug discovery, and startups, providing an overview of the policy challenges identified from the perspectives of information science, engineering, management, and law, along with corresponding recommendations from each field.

  • 斉藤 賢爾
    原稿種別: 特集
    2025 年39 巻4 号 p. 361-373
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    AGI(Artificial General Intelligence;汎用人工知能と訳されることが多い)は,近い将来に出現しうる,あらゆる知的タスクにおいて人間の能力と同等またはそれ以上を発揮し新たな状況に対応できる人工の一般知能である。一方,メタ・ネイチャー(Meta-Nature)は筆者らが提唱する概念であり,人間にとって自然が自動で動いているように,人工の環境も極度に自動化されることで新たな自然となるような状態を示す。当初は想定されなかった状況の出現にも対応しながら,環境自体が自律的に生産や分配といった動作を続けていく必要があるのだから,AGIはメタ・ネイチャーの前提となる。

    道具や言葉の発明が示すように,技術革新は元々,自然の中の人間の営みから生まれた。同様の革新はメタ・ネイチャーの環境下でも起きていくと考えられる。本論文では,AGIやメタ・ネイチャーといった概念が研究という営みに既に与えつつある影響を概観し,研究や技術革新を取り巻く未来の環境として想定する「メタ自然選択(meta-natural selection)」の到来,あるいはその未達に向けて,今から準備すべきことを提言する。

  • 岡村 淳一, 秋田 純一
    原稿種別: 特集
    2025 年39 巻4 号 p. 374-388
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    製造プロセス 5 nm以下の「先端半導体」をめぐっては,TSMCをめぐる米中の駆け引き,日本の工場の立ち上げなどの世界的な動きが活発であり,注目を集める。一方,半導体には「ムーアの法則」があるため,それよりも古い加工技術で作られる「レガシー半導体」にも技術的・産業的に重要な意味がある。本稿では,「レガシー半導体」がもつ意義と,それを有効にイノベーションの道具として活用する方策についてまとめる。

  • 中尾 彰宏
    原稿種別: 特集
    2025 年39 巻4 号 p. 389-399
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    Beyond 5G(B5G)は,5Gを基盤とした次世代通信技術であり,通信速度の向上,遅延削減,多数接続や広範囲なカバレージの実現,自律性の強化,エネルギー効率の向上,持続可能性・セキュリティの確保に加え,デジタル格差の解消や産業競争力の強化といった多様な社会課題に対応することを目指している。この技術は,サイバーフィジカルシステムを支える基盤として位置づけられ,人々の生活と産業を支える「ライフライン」としての役割を果たすことが期待されている。

    B5Gの実現には,低遅延・省電力を可能にするオール光ネットワーク,地上インフラに依存しない広範な接続を提供する非地上系ネットワーク,柔軟性を高めるOpenRAN,通信とセンシングの統合を支えるAI技術,周波数帯の高度利用,ローカル5G/6G,ソフトウェア化といった重要技術が必要不可欠である。

    さらに,このB5G技術基盤の構築には,学際的研究の推進,インフラ支援の強化,人材育成と供給の戦略が欠かせない。通信技術,AI,半導体,IoTなど多様な分野の連携による研究体制の整備,技術実証のためのテストベッド構築,そして次世代通信を担う研究者の育成が重要である。そのため,国際連携力の向上と国内の省庁間連携を強化することで,人材供給体制の整備を進め,研究成果を社会実装に結びつけるとともに,国際標準化活動に反映させる必要がある。

  • 長内 厚
    原稿種別: 特集
    2025 年39 巻4 号 p. 400-409
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    今日,5Gの次の通信技術であるBeyond 5G(6G)の技術開発が始まっており,日本は,NTTグループが推進する IOWN 構想を中核とした光電融合技術とオール光ネットワークによる超高速,超低遅延,超低消費電力を実現した次世代通信技術基盤の開発と国際標準獲得のための動きを開始している。4G,5Gでは顧客のニーズ以上の高速性能であったり,あるいはその高速性能が実感できない状況が生じていたりしている状況で,明確に差異化された顧客価値を示すことが困難になっていた。しかしBeyond 5Gでは,喫緊の課題である環境問題に直結する超低消費電力を特徴とすることが,技術の標準化だけでなく,ビジネスの標準化の観点からも重要な競争優位の源泉になり得るのではないだろうか。本稿では,他の環境技術の事例なども踏まえて,光電融合半導体などのオール光ネットワーク技術が持つビジネス的なポテンシャルについて仮説的な議論を行う。

  • 牧 兼充
    原稿種別: 特集
    2025 年39 巻4 号 p. 410-430
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    日本は世界有数の新薬創出国でありながら,近年その創薬力の低下が指摘されるようになった。日本には,スター・サイエンティスト,大手製薬企業,ベンチャー・キャピタル,行政など,新薬創出に必要なプレーヤーが存在しているが,そのプレーヤー同士が連携するエコシステムが形成されていない。この問題に対処するために,政府は2023年12月,内閣官房に「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」を設置した。筆者はこの構成員の一人として,イノベーションやエコシステムの専門家の立場から,議論の取りまとめに関与した。本稿では,この構想会議の経験に基づいて,筆者が携わってきた「スター・サイエンティスト」に関する研究成果を中核として位置付けながら,学術的な知見を統合する形で,日本の創薬エコシステムの課題と処方箋を整理することを目的としている。本稿では,まず創薬エコシステムが必要となった背景や,創薬とエコシステムに関する先行研究の整理を行う。次に,日本の創薬エコシステムの現状の課題を整理する。その上で,イノベーション政策の観点から,創薬エコシステムの好循環を促進するための施策として,「アイディアの実装のためのアクセラレーターの設立」と「イノベーター・リワードとしてのバウチャーの導入」を提案する。

  • 北方(竹岡) 紫陽, 牧 兼充
    原稿種別: 特集
    2025 年39 巻4 号 p. 431-440
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,近年日本において増加するCVC活動(事業会社が何らかの戦略的意図を有してスタートアップに株式等を通じて投資する活動)における制度ロジックのコンフリクトと法的リスクについて扱う。CVC活動では,制度ロジック理論における大企業的価値観とVC的価値観の二つの価値観が内在し,往々にしてコンフリクトが発生する。更にこの価値観のコンフリクトは事業会社が積極的に意思決定に携わることへのインセンティブを高めるが,このことはCVC活動の有限責任性を損なうリスクがある。米国では訴訟事例などもみられるが,このリスクについて,日本の実務家には現状十分に認識されていないと考えられ,アカデミアの立場から論点を整理し,実務家への提言を行う。

編集後記
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