1) 長期保存ACD血液から, 温和な条件で溶血させて得られた赤血球残影は 0.005M~0.05MのATPによりPH8.0ですげ笠様に変形を示し, EDTAでもとの形にもどる.
このような観察に適する残影の調製方法及び変形の種々の条件について検討し, 次の知見をえた..ADPはATPと同様な変形を惹起し, 無機正リン酸は似た変形をおこすが, AMP, 無機ピロリン酸は変形をおこさない.SH阻害剤は変形を阻止するが弗化ソーダ, Ouabain は阻害しない.PHは8.0附近がもっとも明瞭でKa
+, K
+, Li
+は殆んど差がない.Mg
++はあまり影響がない.
2) ヘマトクリツトと同様な方法を検討して容積の変化と滲透圧及びATPによる変形現象との関連を追求した.高滲透圧中では残影の容積は減少するが, この現象と変形現象は強さの点, EDTAの作用, 阻害剤の作用等幾つかの点で異る事を明らかにした.
3) 赤血球残影のATPaseをしらべて時間経過PH活性度曲線, Ca
++, Mg
++の影響, EDTA, dinitrophenolその他阻害剤の影響を観察した.赤血球球残影のATPaseは少くともその大部分はactomyosin型のATP説ではないと思われるが, サルコソーム及び肝ミトコンドリヤのATPaeとも異る.また弗化ソーダ, Mg
++の影響その他幾つかの点から, ATPade活性の大部分はATPによる変形現象と関連がないと云う事を明らかにして, ATPによる変形現象が別種の蛋白と関係がある可能性について論じた.
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