マイコトキシン
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66 巻, 1 号
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パート I(英語論文)
ノート
レター
受賞総説
  • 中川 博之
    2016 年 66 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
     新規カビ毒配糖体(マスクドマイコトキシン)の検出を目的として,高分解能LC-MS(LC-Orbitrap MS)による精密質量を指標としたスクリーニングを行った.その結果,フザリウム菌感染小麦玄麦試料においてタイプBトリコテセン(ニバレノール,フザレノン-X)由来のモノグルコシド,およびトウモロコシ粉末認証標準物質試料においてタイプAトリコテセン(T-2トキシン,HT-2トキシン,ネオソラニオール,ジアセトキシスシルペノール,モノアセトキシスシルペノール)由来のモノグルコシド体がそれぞれ検出された.T-2トキシン,HT-2トキシンに関してはジグルコシド体も検出された.これらの知見から,マスクドマイコトキシンがデオキシニバレノールやゼアラレノンのような特定のマイコトキシンのみではなく,他のフザリウムトキシンについても存在することが示された.
訂正
パートII(日本語論文)
第75回学術講演会プロシーディング
「トピックス」
  • 本山 聖子, 小山 典子
    2016 年 66 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
     オクラトキシンAは,Aspergillus属やPenicillium属に属する数種の糸状菌により産生されるかび毒で,穀類,コーヒー,ココア,ビール,ワイン等,様々な農産物や食品における世界的な汚染実態が報告されている. 日本では,食品安全委員会が自らの判断で行うリスク評価(食品健康影響評価)として,「オクラトキシンAの食品健康影響評価」を実施した.暴露量推定の結果,現状においては,食品からのオクラトキシンAの摂取が,一般的な日本人の健康に悪影響を及ぼす可能性は低いものと考えられた.しかし,オクラトキシンAの主な産生菌は,異なる生育条件では異なる種類の農産物や食品に生育し,また,オクラトキシンAの汚染の程度は,気候等の影響を受けやすいことから,リスク管理機関において汚染状況についてのモニタリングを行うとともに,規格基準について検討することが望ましいとし,2014年1月に評価結果を公表した. この後,2014年10月に開催された厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会において,コーデックス規格と同等のオクラトキシンAに対する規格基準を設定することが了承された. 本稿では,「オクラトキシンAの食品健康影響評価」の概要を紹介する.
第77回学術講演会プロシーディング
シンポジウム「多様な環境中の微生物から新しいものを創りだす」
  • 矢野 成和, 若山 守
    2016 年 66 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
     真菌細胞壁の主な構成多糖としてキチンやβ-グルカンが知られており,これらは細胞構造を維持する役割を担っている.これら多糖以外にもα-1,3-グルカンを細胞壁構成多糖として含む真菌が存在しており,近年の研究でα-1,3-グルカンの役割が明らかになってきた.例えば,いくつかの動・植物に感染する病原性真菌は,宿主に感染する際に積極的に細胞壁表層にα-1, 3-グルカンを生成し,これを宿主免疫システムからの攻撃を防ぐのに利用している.以上の背景から,α-1,3-グルカナーゼ(EC3.2.1.59)の真菌細胞壁溶解活性に関する研究が行われてきた.α-1,3-グルカナーゼは,アミノ酸配列に基づくグリコシドヒドロラーゼ(GH)分類に従うと,GH71型とGH87型の酵素に大別される.GH71型酵素は,Trichoderma属やSchizosaccharomyces属などの真菌類にその存在が報告されている.もう一方は,GH87型酵素であり,Paenibacillus属やBacillus属などに由来する細菌型酵素である.我々は,Bacillus circulans KA-304が生成するGH87型α-1,3-グルカナーゼ(Agl-KA)が,真菌細胞壁の分解活性を有することを見出し,その機能と構造的特徴を解析してきた.さらに,Agl-KAを利用した真菌プロトプラストの調製法に関して検討を行ってきた.本稿では,Agl-KAのドメイン構造とそれら機能を解析した結果を中心に,α-1,3-グルカナーゼ利用研究の現状についても報告する.
ミニレビュー
  • 鈴木 忠宏, 岩橋 由美子
    2016 年 66 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
     Deoxynivalenol(DON)やNivalenol(NIV)を用いた試験を基にして,タイプBトリコテセンの毒性が評価され作用機序の解明が進んでいる.しかし,DONやNIVには中間生成物であるアセチル化体や,植物の分泌する代謝酵素により生成すると考えられる配糖体など,環境中には様々な形態のトリコテセンが存在している.そこで,本稿では酵母細胞を用いたDONおよびNIVとその誘導体の毒性評価試験から得られた知見を報告する.化学構造の僅かな違いが細胞死や細胞周期異常に繋がる様々な遺伝子発現の変化をもたらし,感受性の強さが同程度のマイコトキシンであっても異なる遺伝子発現を示すことが示唆されており,各誘導体の詳細な毒性作用機序の解明が求められる.
  • 後藤 哲久
    2016 年 66 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
     Aspergillus section Flavi にはアフラトキシン産生菌,非産生菌が含まれていることが知られている.しかし,アフラトキシン産生菌と,非産生菌あるいは分類的には産生菌でありながら産生能を持たない(失った)菌との関係,あるいはカビは何故アフラトキシンを産生するのか,という疑問にはまだ明確な答えは見つかっていない.
  • 田中 彰, 安藤 直子
    2016 年 66 巻 1 号 p. 63-72
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
     トリコテセン系マイコトキシンはFusarium graminearumを代表とするFusarium属やその他の糸状菌が生産する二次代謝産物である.トリコテセンは穀類を汚染する代表的なマイコトキシンであり,汚染された穀物をヒトや家畜が摂取すると下痢や嘔吐,食中毒性無白血球症などの中毒症状を引き起こす.そのため,食物や飼料におけるトリコテセンの混入を調べることは食の安全を守るために非常に重要である.ここでは,LCMSnやimmunoassay,TLC,bioassayによるトリコテセン検出について概説する.
  • 木谷 茂, 仁平 卓也
    2016 年 66 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
     放線菌は,抗生物質などの有用生理活性物質を二次代謝産物として生産する重要な産業微生物である.放線菌二次代謝を制御する分子メカニズムの解明は,微生物シグナル経路に関する基礎的情報を集積するのみならず,有用物質の高生産化など多くの産業的恩恵をもたらす.ここでは,放線菌二次代謝を制御する放線菌ホルモンを紹介するとともに,有用物質の高生産化とゲノム潜在物質の顕在化に向けた筆者らの分子育種について解説する.
  • 澁谷 史明, 塩野 義人
    2016 年 66 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
     微生物の有する物質生産能力を引き出し,有用な生理活性物質を発見する研究の一環として,培養条件を変化させることにより,新たに誘導される物質に着目し,新物質のスクリーニングを行った.すなわち,地上植物とは異なる環境下で生育しているマングローブ林の環境適応力に着目し,マングローブ植物から分離した内生菌について,培地に海水と同程度の濃度になるように食塩を添加することで,塩ストレスにより二次代謝産物生産パターンが変化する菌株を選別し,それに連動し,誘導される物質の探索を行った.マングローブ植物より分離した糸状菌Eurotium rubrum IM-26株を選別し,食塩添加培養抽出物より化合物1-5を単離し,それらの化学構造を解析した.その結果,化合物1は芳香族ラクトンを有する既知のユーロチノンであり,3,4,5もその類縁体であった.化合物2はアントラセノン系の既知のトロサチリソンと同定した.本菌は食塩を添加した培養条件に適応し,それに連動し,二次代謝産物生産性に変化を生じ,抗菌活性を有する1,2,5の生産を誘導した.
レビュー
  • 國武 絵美, 小林 哲夫
    2016 年 66 巻 1 号 p. 85-96
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
     糸状菌は植物バイオマス(リグノセルロース)に由来する低分子の糖を細胞表層であるいは細胞内に取り込んだ後に感知し,シグナル伝達機構を介してセルラーゼやヘミセルラーゼ遺伝子の発現を転写レベルで活性化する.一方,資化しやすいグルコース等の糖の存在時にはカーボンカタボライト抑制機構が働き,転写が抑制される.このメカニズムを理解することは植物バイオマス分解酵素の効率的な生産に極めて重要である.主にAspergillus属,Trichoderma reeseiNeurospora crassaにおいてゲノムワイドな解析が行われ,遺伝子破壊株ライブラリの利用やセルラーゼ遺伝子と同時に制御される未知遺伝子の機能解析などにより,複数の転写制御因子が単離された.またその上流のシグナル伝達カスケードについても研究が進められており,セルロース性シグナルに対する応答が光や既存の調節経路により微調整されることなども示されている.このレビューではリグノセルロース分解酵素遺伝子の発現制御に関わる転写因子の機能,誘導物質の認識及びそのシグナルの伝達などの遺伝子発現誘導メカニズムに関する研究を概括した.
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