宮城県花山村大沼湿原において堆積物の層序と層相とを明らかにするとともに, 堆積物の
14C年代測定および挟在する火山灰の分析, 花粉分析を行った。
14C年代および十和田a火山灰 (To-a, AD915) に対比される火山灰から, 泥炭層最下部の堆積年代は約1,500年前まで遡る。花粉分析の結果, 下位よりHO-1帯, HO-2帯, HO-3帯, HO-4帯の4つの局地花粉帯に区分した。各局地花粉帯期の植生は, HO-1帯期 (約1,500~360年前) ではブナーイヌブナを主とする落葉広葉樹林, HO-2帯期 (約360~150年前) はコナラーミズナラニ次林, HO-3帯期 (約150年前~1940年代) ではアカマツニ次林とスギ植林, HO-4帯期 (1940年代以降) はスギ植林である。したがって, 大沼湿原周辺の丘陵地では, 約360年前から林野利用による植生への人為的干渉が強まり, 森林の二次林化が起きた。また, 約150年前と1940年代以降には, 植林によりスギ林が拡大した。
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