1.コウライシバ芝地に除草剤を散布すると, その影響によって, ラージパッチの発病が容易になるのではないかと考えられる。そこで, 発芽前土壌処理型除草剤および茎葉処理型除草剤の散布とラージパッチの発病との関係について実験を行った。
2.春の発生時期において, 予め発芽前土壌処理型除草剤を散布しておき, ラージパッチを人工接種し, 発病への影響を見たところ, 発生の前半では, CAT, SAP, シデユロン, TCTPの区の発病程度はやや大きくなったが, ブタミホス, プロピザミド, オルソベンカーブの区では無処理区と変らなかった。しかし, 発生の後半ではいずれの除草剤区とも無処理区と変らなかった。
3.この実験区は秋以降自然発生があると考えられたので, まず, その秋の発生前に, 春と同一地点に同一薬剤を散布し, その後の発生状況を見た結果, 春と同様に, CAT, SAP, シデュロン, TCTPの区は無処理区よりやや大きい病斑を形成した。しかし, これらの区は初期の発病面積が大きかっただけで, その後の拡大の割合はいずれの除草剤区とも同じであった。
一方, 翌春にも同じ実験を行ったが, 発生の前半, 後半を通じて, いずれの除草剤区とも無処理区と同じ程度の発病であった。尚, この実験では, 実験区全体の外側に病斑が移行して形成されていたが, CAT, SAP, シデュロン, TCTPの区の外側では早くから大きな病斑が形成されているのが見られ, また, この3回の実験を通して, これらの地点では排水が非常に悪かったことから, 芝地自身が発病し易い状態であったと考えられる。
以上から, 発生期間全体を通して, いずれの除草剤とも散布によって, ラージパッチの発病が容易になるとは考えられないようである。
4.これは, 別の地点での同様の実験において, CAT, オルソベンカーブ, ブタミホスの区は無処理区と同じ程度の発病であったこと, さらに, 発病中の病斑に薬剤を散布し, その後の病斑の拡大を見た実験においても, いずれの除草剤区とも無処理区と同じであったことからも明らかである。
5.茎葉処理型除草剤散布の影響については, 春と秋の2回, 発生している病斑に散布し, その後の拡大の状況を見たが, MCPP, アシュラムの区は, この間に薬害が生じたものの, 無処理区と同じ傾向を示したことから, 薬剤散布による発病への影響はないもの
と考えられる。一方, DSMA区は明らかに病斑拡大阻止が見られたことから, 防除効果があると考えられる。
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