夜間における無加温・無換気ガラス室の温度状態および伝熱の特徴を明らかにするために, ガラス室内の床面・内壁面および外壁面での熱収支式を電算機 (TOSBAC 3400) で数値的に解いて, 室内平均温度, 内外壁面温度, 床面温度および伝熱各項の大きさを推定する方法を工夫した。なお, 数値計算法としては, 狙い撃ち法(shooting method) を用いた。えられた結果を要約するとつぎのようになる。
1. 温室内外の温度プロフィルは, 地中熱流と有効長波放射との関係で2つにわかれることがわかった。
iT
s>
iT
w>
oT
w>
oT
a>,
iB
s>F
oiT
s>
iT
w>
oT
w>
oT
a>,
iB
s<F
o外壁温と外気温との差は
Rと
iBsにつれて増し,
oh, hr, Foにつれて減少することがわかった (20式参照)。内壁面と床面との温度差は,
iBsと
Rとにつれて増加し,
ihの増加につれて最初急激に, あとは緩やかに減少することがわかった。乾燥時の温度差は湿潤時のそれより大きくなった。
2. ガラス室の内・外壁面と空気層との間の顕熱伝達係数はつぎのようになることがわかった:
oh=R⋅
iB
s/(
oT
w-
oT
a){1-fF
o/R⋅
iB
s}-f⋅
oh
r,
ih=1+R/1+2φ{
iB
s/(
iT
s-
iT
w)-
ih
r}.
これらの式を利用すると, 温度差と簡単な熱収支項の観測から, ガラス室の温度状態および熱伝達の特徴の予測に必要な顕熱伝達係数を求めることができる。
3. ガラス室による微気象改良度の指標である内・外気温差(
iTa-oTa)は, 保温比・乾湿度・顕熱伝達係数・地中熱流・有効長波放射量によって影響される(第6, 7図参照)。
iBs>Foでは, 気温差は
ohにつれて減少するが,
iBs<Foでは逆に増加した。これは
ohにつれてより多くの顕熱が外気から外壁面に運搬されるためである。
ihも気温差にかなり影響を与え,
ihの小さい時は気温差は大きく,
ihにつれて減少した。
iTa=oTaとなる臨界条件 (C
2=F
o/
iBs|
ΔT=0) は, 若干の仮定をおくと (25) 式のように表わされることがわかった。その結果は第8図に示されている。また, 第1表は別の方法で求めた
C2との比較を示している。3者はかなりよく一致しているが,
ihが小で
Rが大きい場合には差が増加した。
4. 現方法で求めた気温差は他の方法での値に比較してかなり低い傾向がみられた (第9図参照)。とくに,
ihが小で,
iBsと
Rとが大きい時には違いが大きくなった。しかしながら, 別の2法で求めた気温差は, 保温比の広い範囲にわたってかなりよく一致した。このような違いは, 気温差計算式の導出のための仮定によるものと思われるが, 差異の原因を明らかにするには, 詳細な実験的研究が必要である。
5. ガラス面における熱損失を補う放射熱伝達・外壁面への外気からの顕熱伝達および内壁面への顕熱伝達の割合は室内の顕熱伝達係数によって変化した。
R=0.2では各項の変化はすくないが,
R=0.9では
ihにつれて内壁面での放射熱伝達は指数的に減少し, 顕熱伝達は指数的に増加した。変化は湿潤時において著しかった。地中熱流が増加すると, 外気よりの顕熱伝達の割合が減少した。また, 保温比によっても3伝熱項の割合は変化した。湿潤時には,
R=1.0で3伝熱項の寄与は大体ひとしくなった。
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