具体例叙述法は,ある個人がある行為を達成するまでの過程を実際に起こった事例について記述し,分類,体系化する手法である。従来の利用調査に対してはさまざまな批判があるが,その中には,次の二点を考慮しなかったことによるものが多い。第一に,記述の際に用いる語の意味は,語の使用者とそれを読む人によって異なること。第二に,同じ使用者によって用いられた同じ語であっても,その意味は使われた状況によって異なること。この二点を部分的にであっても解消するためには,情報利用の個々の事例を深くみることが必要である。
本稿は具体例叙述法の特徴を示し,あわせて調査者と被調査者とのインタビューを導入した具体例叙述法が情報利用行動を調査する上で有効であることを,実際に生じた具体的な事例に基づいて示した。
抄録全体を表示