杉原四郎は, マルクスやジョン・スチュワート・ミル, 河上肇を経済思想史の立場から研究した人として著明であると同時に, 「戦後わが国におけるJ.S.ミル文献(上)(下)」(1954)など社会科学の書誌や解題の作成者としても知られている。本稿は, 杉原がなぜ経済思想史の研究を書誌的な観点から行っているかを理解しようと試みる。一般的に「比較」は社会科学において重要な方法である。特に杉原の場合, 「比較」とそれによってもたらされる「論争」とが, 彼の方法論の重要な構成要素となっている。杉原の発言をミルの『自由論』の文脈において考察することで, 杉原が「比較」と「論争」に与えた重要な位置を理解できる。このような作業を通じて, 杉原の経済思想史上の研究と書誌的な研究との不可分性, 一体性が明らかになる。
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