電子図書館の成立に向けて働き得る誘因として,とくにドキュメントデリバリーという観点から,学術論文の電子化と,学協会誌の電子ジャーナル化という点を中心に調査を行った。
1991年度時点でのおおよその傾向として,次のことが指摘できる。学協会誌の発行部数は漸増の傾向があり,発行コストは上昇傾向にある。会誌の発行コストを下げるための工夫を行う学協会の数は多い。ワープロの社会的普及がテキストの入稿形態を変えつつある。テキストの電子化は,すでに著者の段階でかなり高い率で進行している。学協会誌の発行コスト引き下げの努力がテキストの電子化の誘因として働き得る。「電子ジャーナル」の存在を知らない学協会の数は結構多く,そのため,これに対する合理的予見が乏しい。自らの会誌の「電子ジャーナル」化は考えられないとした学協会は圧倒的に多いが,その一方で,コスト削減を絡めて強く興味を示した学協会が一定程度存在する。
テキストの電子化は,著者の段階からかなり進行していると言える。しかし,学協会側では,これらを集合,保存し頒布する態勢は現在のところ整っていないようである。
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