図書館学会年報
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37 巻, 4 号
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論文
  • ーその理論的枠組と図書館経営上の意義一
    柳 与志夫
    原稿種別: 論文
    1991 年 37 巻 4 号 p. 153-165
    発行日: 1991年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
     欧米先進国を中心に,近年図書館経営におけるマーケテイングの採用は顕著である。しかし,それは必ずしも理論的に十分解明されているとは言えず,実践面でも混乱が見受けられる。一方,すでに定着しているパブリック・リレーションズ (PR)の役割も,マーケティングとの関係で新に見直されつつある。
     マーケティング及び PRを図書館経営のうえで有効に機能させるためには,その理論的枠組及び図書館経営に占める位置を明確にする必要がある。本来,企業経営のために開発されたマーケティングと PRが,非営利組織である図書館にどのように適用されうるかを明らかにし,図書館とその公衆との関係を考える契機とした。
  • 樋口 洋子
    原稿種別: 論文
    1991 年 37 巻 4 号 p. 166-178
    発行日: 1991年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
     児童図書館における貸出記録を分析して,読書の発達モデルを作成した。東京都内の児童図書館 1館の利用者である満 3歳から15歳までの児童63名(男子30名,女子33名)の貸出記録約13,500件を分析した。これらの結果をもとに,児童の読書発達のモデル化を行った。年少の児童にとっては,その図書を「知っている」ということが逆に貸出を促進する傾向が強く,児童の読書指導にはブック・トークや読み聞かせが有効と思われる。
研究ノート
  • 一理念型としての「読者」論一
    小野沢 永秀
    原稿種別: 論文
    1991 年 37 巻 4 号 p. 179-191
    発行日: 1991年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
     本稿では,従来,書誌学者や文献学者,あるいは図書館員としてわが国に紹介されている,帝政ロシアに生まれてぺテルプルグ等で図書館活動や書誌活動を行い,その後スイスに亡命して引き続きそれらの活動を行った N.A.ルバーキン(1862-1948)に関し,彼の著作『読書と図書の心理学一書誌心理学』(1929年)を通じてその理論を紹介することにより,その歴史的な意義を考察した。
     ルバーキンは,19世紀ドイツの著名な動物学者R.セモンのムネメ論に基づいて「図書現象」,「書誌心理学」等の基本的概念を確立し,それらの概念を用いて心理学的な観点から読書と図書との関係の計量的な理論化を試みた。
     現代の生物科学や情報科学等の研究水準からみると,セモンのムネメ論は時代遅れとなっているが,ルバーキンが設定した理論的な命題は,決して時代遅れとはなっておらず,逆に,彼がソ連図書館界の思想的,理論的混乱を間接的にではあるが根底から批判しているが故に,予言的な性格さえ帯びている。それは,次のような優れた特質をもっている。
    ① 「図書現象」という概念を用いて,「著者」(話し手を含む)ー「図書」(ことばのレベルを含む)ー「読者」(聞き手を含む)という三つの要因から成る社会コミュニケーションのモデルを設定したこと。
    ② そのモデル中において,理念型としての「読者」の概念を創造したこと。

    一私は,この著作において図書現象を社会現象として扱い,著者や話し手が集団に与えようと夢想している事柄ではなく図書が集団に与えている事柄を考察することによって,言葉や図書は,それを知覚した人に影響を及ぼしている限りにおいてのみその内容を持っているという,動かし難い事実を証明しようとした。本質的に単純なこの真実は,従来,非常に多くの人々にとって明らかではなかったのである。私は,本書で次のように主張している。即ち,真実がその奥底までかつ総ての面において詳細に明らかにされない限り,図書現象は確固たる基盤の上に立つことはできず,多量のエネルギーや労働や時間が図書現象関係者によって非生産的に消費されるということを一 (N.A.ルバーキン「読者と図書の心理学」p. 229)
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