地理学評論
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75 巻, 4 号
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  • 茨城県南部大八洲開拓農業協同組合地区を例として
    北崎 幸之助
    2002 年 75 巻 4 号 p. 161-182
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,戦後開拓地が現在まで農業集落として維持・発展している大八洲開拓農業協同組合地区を研究対象地域として取り上げ,アクターネットワーク論を用いて,開拓集落の維持・発展の要因を明らかにすることを目的とした.満蒙開拓団出身者らによって建設された大八洲開拓農業協同組合地区は,加藤完治の直接的な指導を受けた初代組合長の佐藤孝治が地域スケールのグレートアクターとなって,満蒙開拓団時代の紐帯や加藤から受けた農業指導を活かしながら共同経営を開始した.高度経済成長期以降,入植2代目の多くは日本国民高等学校や農業試験場などから最新の農業技術を学び,地域の営農に活かしていった.地域内に形成された水稲作や酪農における機能集団の外的なネットワークは,国家や地方スケールの補助事業を積極的に導入しながら営農の集団化を進め,水稲の請負耕作や集団転作などに対応した.また,開拓組合員に求心力を持たせる相互扶助や土地売買に関する内的なネットワークも形成され,組合員の離脱を防ぐ役割を果たしていた.このように,大八洲開拓農業協同組合地区内には,外的・内的なネットワークが重層的に形成されるとともに,国家や地方スケールの垂直的なネットワークとの連繋も図られていたため,戦後開拓地を農業集落として維持・発展させることができた.
  • 李 禧淑
    2002 年 75 巻 4 号 p. 183-194
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,1998年に実施したアンケート調査を基にし,在日コリアンの求職行為を通じて,そのネットワークの動的で多様な像を提示する.分析の結果,求職ネットワークは,家族,親戚,同胞の知人のようなコミュニティ内でのインフォーマルなネットワークへの依存が再確認される一方,その程度は男女および世代によって異なることが明らかにされた.特に女性や新世代による,コミュニティを超えて拡張されるフォーマルなネットワークは,教育水準の向上のような単なる個人のレベルでの変化のみならず,日本社会の制度的な規制の緩和によって促されている.このように,在日コリアンの経済は定住国に社会的に埋め込まれていくことが認められる.したがって,定住エスニック集団のネットワークの把握には,同胞ネットワークへの強い依存という一面的なとらえ方から脱却し,そのネットワークの多様性と動態への考慮が求められる.また,本稿の議論は,定住コミュニティ全般における社会経済的な転換を展望することにっながるであろう.
  • 高知県梼原町における事例分析
    村中 亮夫
    2002 年 75 巻 4 号 p. 195-210
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,環境の計量的評価手法であるCVMにより,棚田の持つ景観形成機能の経済的評価を行った.評価対象は「高知県高岡郡梼原町神在居地区に卓越する千枚田 (2.1 ha) の,梼原町民にとって2001~2020年度に期待される景観形成機i能(公共財L)」である.調査の結果,公共財Lは約2800万~4800万円と試算され,その経済的価値は「審美的」,「実利的」価値観および家計の経済的負担能力によって規定されていることがわかった.また,公共財Lの経済的価値は空間的にみると公共財Lからの距離減衰性を示し,公共サービスの外部経済効果の距離減衰効果と対応することがわかった.この便益の分析結果を基に費用便益分析を行ったところ,短期的な費用便益の均衡は見込まれず,公共財Lの管理に関する議論には,遺贈価値(将来世代へ遺贈すべき価値)を前提とした世代を超えた長期的な視点が必要であることが裏付けられた.
  • 2002 年 75 巻 4 号 p. 211-212,i
    発行日: 2002/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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