本稿では,1998年に実施したアンケート調査を基にし,在日コリアンの求職行為を通じて,そのネットワークの動的で多様な像を提示する.分析の結果,求職ネットワークは,家族,親戚,同胞の知人のようなコミュニティ内でのインフォーマルなネットワークへの依存が再確認される一方,その程度は男女および世代によって異なることが明らかにされた.特に女性や新世代による,コミュニティを超えて拡張されるフォーマルなネットワークは,教育水準の向上のような単なる個人のレベルでの変化のみならず,日本社会の制度的な規制の緩和によって促されている.このように,在日コリアンの経済は定住国に社会的に埋め込まれていくことが認められる.したがって,定住エスニック集団のネットワークの把握には,同胞ネットワークへの強い依存という一面的なとらえ方から脱却し,そのネットワークの多様性と動態への考慮が求められる.また,本稿の議論は,定住コミュニティ全般における社会経済的な転換を展望することにっながるであろう.
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