地理学評論
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77 巻, 14 号
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  • 石川 菜央
    2004 年 77 巻 14 号 p. 957-976
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    宇和島地方において闘牛が存続してきた要因を,担い手の生活や行動に注目して分析した結果,以下の3点が明らかになった.第1に,生業における牛の必要性が農民の娯楽としての闘牛を生み出した.ゆえに農業が機械化されると闘牛は消滅した.しかし第2の要因である観光化と担い手の組織化が,これを復活させた.宇和島市・南宇和郡の各組織が観光化と地域の状況に対応しながら大会を維持してきたことは,現在の共存関係につながっているといえる.組織を支える第3の要因として,担い手の中心である牛主や勢子,それを支えるヒイキなどが組織内で育まれていることが最も重要である.彼らは勝負の時だけではなく,牛の世話や飲食など日常生活を通して交流し,確固たる人間関係を築いており,そこから次の担い手が再生産されている.闘牛は伝統行事であると同時に,現在においても担い手の生活の核となり,新たな人間関係を生み出しているのである.
  • 田中 耕市
    2004 年 77 巻 14 号 p. 977-996
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    これまで,地理学において利用されてきた近接性の概念は多種多様に及び,現在でも新たな測定法の創出や,既存の測定法に対する改良モデルの提案が続けられている.さらに,GIS(地理情報システム)の出現を機に,近接性研究のスタイルは大きく変化しつつある.本研究では,既往の近接性概念や測度を整理した上で,GISの発展が近接性研究へ与えた変化と,その将来性について展望した.GISに内包されている最短経路探索やバッファリングなどの解析ツールは,近接性の算定に要する作業量を大幅に減少させた.さらに,自動地図化機能によって,各地点における近接性の測定結果から,近接性面を容易に作成できるようになった.近接性の測定に要する時間は大幅に短縮された結果,分析の精密化が進展し,大量地点で近接性を測定する研究や,異なる条件下で測定した近接性を比較する研究が増加した.さらに,GISによって詳細かっ効率的な空間解析が可能になった結果,時間地理学的概念に基づく新しい測度が考案された.「個人の近接性」とも呼ばれるこの時空間測度は,個人の時空間的制約条件を考慮したもので,既存の積分的近接性の問題点を回避するものである.
  • 伊賀 聖屋
    2004 年 77 巻 14 号 p. 997-1009
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,現在の日本における加工原料米の流通体系の実態を,米酢加工業を事例として,フードシステムの観点から分析する.一般に,新食糧法下の現在,大手の米加工企業を中心にミニマム・アクセス米(MA米)への依存度の高まりが指摘される.このような状況下で,米酢加工業ではどのような加工原料米の流通体系が構築されているのか.とりわけ,大手企業と比べた場合,地場企業の原料調達・加工・販売のシステムには,どのような特徴が認められるかという点に着目した.その結果,以下のことが明らかになった.(1)地場企業は,コスト削減を図る大手企業とは異なり,新食糧法の施行以後も従来の原料調達の方式を変更していない.加工原料米の集荷圏は狭小であるとともに,米酢の加工工場は原料調達地域に立地しており,農村内部に一つのサブシステムが構築されている.(2)地場企業は,大手企業と同様に製品の流通圏を全国に拡大しているが,米酢の伝統的生産設備・手法を維持し,自社の製品に原料産地訴求・安全訴求という特質を持たせることによりプレミアムフード市場への参入を図っている.
  • 2004 年 77 巻 14 号 p. 1010-1012,i_1
    発行日: 2004/12/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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