本研究では,松本市中央西土地区画整理事業を事例に,地方都市における中心市街地再開発のメカニズムを制度的環境,都市政治,商店経営者の戦略という三つの視点から分析した.松本市では当初,行政と商店街組織の連携により再開発計画が推進されたが,補助金の削減という財政的要因に加え,個々の商店経営者らの現状維持的な戦略によって再開発は1980年代を通じて停滞した.しかし,大店法緩和を契機に,市長の開発主義的思想に基づく中心市街地への積極投資や行政の大型店対策が都市成長という名目で正当化され,再開発推進体制は再強化された.一方で,商店経営者の戦略は推進体制と必ずしも連動せず,固定資産税の増加などによる商店街からの撤退,テナント賃貸業への転換による商店街への残留,テナントの供給増に対応した新たな経営者の進出など,戦略は多様化した.こうした多様化は,区画整理事業の展開や事業後の商店経営環境の維持にプラスに作用する一方,開発目的を商店街振興から都市成長へとシフトさせ,行政主導の再開発を加速させるという結果をもたらした.
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