社会主義国のラオスでは1990年代以降の経済自由化に伴い, 国をあげて観光を促進した. その結果, バックパッカーを主体とする旅行者到着数は急増し, 北部にはバックパッカー向けの観光関連施設が集中する農村が現れた. その代表ともいえる農村のヴァンヴィエンでは, 中心部の既存商業地区にバックパッカー向けの観光関連施設が集中して立地するバックパッカー・エンクレーブが形成された. そこでは, 多くの他地域出身者が観光関連施設を経営している. これまで, バックパッカーのような周辺部を訪れる旅行者は, 途上国の地域経済に貢献する旅行者とされていたが, 事例としたヴァンヴィエンでは, 観光による利益享受は稲作を営む農民には及んでいなかった. 加えて, 薬物や売春などの新たな社会問題も持ち込まれた. 結果として, 途上国農村におけるバックパッカー・エンクレーブの形成は, 目に見えるような景観的変化のみならず, バックパッカーの流入と異なる出自を持つ住民の混在によって, 新たな社会・人間関係が築かれ, また経済的な格差を生み出すような社会経済的空間を創り出した.
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