日本は昭和の大合併後,領域再編を行うことなく地方行財政を発展させ,福祉サービスの拡充を図ってきた.このような動きは,日本の財政調整制度である地方交付税が,増大していく地方自治体のサービス供給に必要な財源を保障したことによって可能となっている.それゆえに,地方交付税の配分構造は戦後,大きく変化しているが,この配分構造変化には領域再編を伴わない地方行財政の発展がもたらした,さまざまな地理的要因が反映されている.本稿では地方交付税の配分構造変化を定量的に分析し,その結果を福祉国家化,高度経済成長に伴う地域構造の変化,地域問の水平的政治競争に注目しながら解釈することを試みた.分析の結果,(1)地方財政における地方交付税の比重上昇,(2)都道府県から市町村への配分のシフト,(3)小人口自治体への傾斜配分の強化,という三つの動きが確認された.また,1990年代に入り,市町村では小人口自治体への傾斜配分が後退しているが,その原因として(1)大都市圏の政治的影響力の増大と(2)少子高齢化の進展による行財政改革圧力の高まり,の2点が挙げられる.
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