日本において耕作放棄地の面積は拡大の一途をたどっている. 本研究では, 耕作放棄地の拡大には土地の履歴が関連していると考え, 群馬県吉井町上奥平の水田所有農家を対象として, 耕作放棄と土地の履歴との関係を中心に考察を試みた. その結果, 研究対象地域の耕作放棄地は土地条件の悪い農地や, 農地改革によって解放された農地の多い谷や支谷に集中していた. また, 土地台帳から土地の履歴と耕作放棄の関係をみると, 違法開墾地の100%, 農地解放地の73%, 荒地免租年期地の53%, 不在村土地所有者の農地の51%, 地目変換地の47%が耕作放棄されていた. また, 耕作放棄の背景として, 農業労働力の弱体化, 農地の貸借・売買を通じた土地の流動性の低さ, ゴルフ場開発に伴う土地買収, 米の生産調整政策や中山間地域等直接支払制度などの農業政策の影響が存在することが明らかとなった.
抄録全体を表示