これまで,地理学において利用されてきた近接性の概念は多種多様に及び,現在でも新たな測定法の創出や,既存の測定法に対する改良モデルの提案が続けられている.さらに,GIS(地理情報システム)の出現を機に,近接性研究のスタイルは大きく変化しつつある.本研究では,既往の近接性概念や測度を整理した上で,GISの発展が近接性研究へ与えた変化と,その将来性について展望した.GISに内包されている最短経路探索やバッファリングなどの解析ツールは,近接性の算定に要する作業量を大幅に減少させた.さらに,自動地図化機能によって,各地点における近接性の測定結果から,近接性面を容易に作成できるようになった.近接性の測定に要する時間は大幅に短縮された結果,分析の精密化が進展し,大量地点で近接性を測定する研究や,異なる条件下で測定した近接性を比較する研究が増加した.さらに,GISによって詳細かっ効率的な空間解析が可能になった結果,時間地理学的概念に基づく新しい測度が考案された.「個人の近接性」とも呼ばれるこの時空間測度は,個人の時空間的制約条件を考慮したもので,既存の積分的近接性の問題点を回避するものである.
抄録全体を表示