【はじめに】潰瘍性大腸炎 (以下 UC) に対する外科手術は減少傾向にあるが,手術を回避できない症例も少なくない.UC に対しては, 肛門管上皮までの大腸全切除の有無により回腸嚢肛門吻合術 (以下 IAA) および回腸嚢肛門管吻合術 (以下 IACA) の術式があるが, 腹腔鏡手術の導入により, 精微な手術操作のみならず神経温存による機能維持への期待がもたらされ,現在当科では原則として IAA を行っている. 今回, 当科における UC手術症例の臨床背景, 手術関連因子および術後の肛門機能に関する検討を行った.
【対象と方法】当科で 1998年から 2014年に潰瘍性大腸炎に対して外科治療を行った 109例について, 2004年以前 (前期) とそれ以降 (後期) による術前治療, 術式選択の変遷, 術後合併症に関して検討し, また, 109例中郵送式アンケートで回答を得た 58例に対し術後肛門機能を検討した.
【結果】前後期において, 臨床的背景では, 手術件数の減少, 術前治療としての免疫抑制剤やTNF-α 阻害剤使用の増加, ステロイド投与量に関し, 有意差を認めた. 手術適応として, 内科的治療抵抗性については有意差を認めなかった. 術式については後期では IAA が多い傾向にあった. 術後の肛門機能については, Wexner score, Kirwan's score を用いて評価し, いずれも継時的には改善する傾向にあった. また, これらの評価法を臨床背景, 手術関連因子について多変量解析したところ, 40 歳未満, IACA が肛門機能良好な因子であった. また, IAA と IACA を Wexner score の項目別に比較すると, すべての項目で IACA が良好な結果となった.
【まとめ】内科的治療の変遷とともに手術件数は減少した. 術後長期の肛門機能温存の観点からみると, IACA の選択は妥当だったと考えられたが, 腹腔鏡下での IAA の導入により機能維持と根治性をともに期待できるようになったため, 今後,本結果との比較検討の必要がある.
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