岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
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Original
  • 吉直 大佑, 高橋 学, 菅 重典, 稲田 捷也, 眞瀬 智彦
    2024 年 76 巻 4 号 p. 111-120
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/11/08
    ジャーナル オープンアクセス
     血中エンドトキシン(endotoxin: ET)濃度を測定するためには,一般的に多血小板血漿検体が用いられる.しかし,従来の多血小板血漿検体を用いた測定法は,診断能が低いことがよく知られている.そこで我々は,ET 活性化の第一段階がET と白血球の結合であるという事実を利用し,測定検体として多白血球血漿(leucocyte ‐ rich plasma:LRP)を用いた新たなET濃度測定法を開発した.本研究では,測定検体と測定方法の組み合わせとして,LRP のET を比濁時間測定法(turbidimetric kinetic assay: TKA) で測定する方法と,LRP から得られた白血球分画のET を半自動発光基質法(semi-automated luminescent substrate method:SALS)で測定する方法を検討し,これらの方法の診断能を既存の敗血症マーカーと比較した.40 例のグラム陰性および陽性患者からなる試験の結果から,TKA およびSALS の曲線下面積(AUC)はそれぞれ0.94 および0.86 であり,これらの診断能は比較したすべてのマーカーの中で最も優れており,白血球結合ET を利用したET 濃度測定法の有用性が確認された.
  • 柿坂 佳菜恵, 山家 健仁, 千葉 柊作, 松尾 菜津美, 吉岡 靖史, 内出 希, 八木 淳子, 大塚 耕太郎
    2024 年 76 巻 4 号 p. 121-140
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/11/08
    ジャーナル オープンアクセス
    災害に被災した子どもとその保護者に及ぼす様々な影響についての報告は多いが,災害直後に生まれた直接の被災体験のない子どもの情緒や行動面への影響に関する報告は極めて少ない.我々は,東日本大震災直後に出生した子どもの幼児期の行動上の問題と保護者のメンタルヘルス及び被害状況との関連について,発災時点の妊娠時期に着目して検討した.震災後1 年以内に出生した子どもとその保護者(196 組,392 名)を対象とし,妊娠時期により非妊娠群,妊娠初期群,妊娠中期~後期群の3 群に区分し分析した.その結果,妊娠初期群において子どもの行動上の問題(CBCL / TRF 得点)は少なかった.また,妊娠時期により,災害時/ 前の環境要因や保護者のメンタルヘルスと,子どもの行動上の問題との関連性は異なっていた.このことから,災害後1 年以内に出生した子どもへの適切な支援のためには,発災時点の妊娠時期に着目することが重要と考えられた.
Case repoert
  • 鹿野 早郁, 瀧澤 友理, 井口 鈴音, 亀井 淳
    2024 年 76 巻 4 号 p. 141-148
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/11/08
    ジャーナル オープンアクセス
    避難行動要支援者に対する個別避難計画の作成が市町村の努力義務とされている中で,岩手県内での作成が滞っている現状がある.医療の観点から個別避難計画作成の契機を提供する必要性を認識し,当事者ご家族の協力を得ながら,病状を理解する医療者と,生活状況を把握する福祉関係者が,行政と連携して,この作成を促進する取り組みを試みた.対象は成人齢で経鼻胃管栄養や口腔・鼻腔内吸引の医療的ケアが必要な重症心身障害者である.ハザードマップを参照し,北上川の氾濫による外水災害の危険性がある地域に居住していることを確認した.環境の変化に敏感なため,個人の特性に合わせた避難所への避難や,避難所では個室利用やパーティションの活用などを検討した.今回の試みは一例ではあるが,関係者は避難の必要性を再認識し,自治体職員は具体的な作成手順を学ぶ良い機会となった.防災における役割を各自が理解し連携することが重要であると示唆された.
学位報告
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