地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
15 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 旧東ベルリン市インナーシティ地区の街路カスタニエンアレーを事例として
    池田 真利子, 高濱 佑太郎
    2022 年 15 巻 2 号 p. 91-118
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は旧東ベルリン市・インナーシティ地区プレンツラウアーベルクおよびミッテ地区に跨る街路カスタニエンアレーを舞台とし,そこに表出する言語景観(Linguistic Landscape)を当該地域の歴史的背景および地域的特性とその変化と併せて考察した。その結果, 当該街路の言語景観は観光地化とジェントリフィケーション双方の影響を受けていること, また前者は言語種の英語化や多言語化と関連付けられるのに対し, 後者はドイツ語へと回帰する傾向にあることから, 観光地化は言語景観のグローバル化を, またジェントリフィケーションの進行に伴いローカル化する傾向にあることが実証的に明らかとなった。また, 再統一まで社会主義国家体制に属していた旧東ベルリン市の言語使用状況と比較しても, カスタニエンアレーの言語景観の変化は極めて顕著であり, 言語は都市変容を理解するうえでの指標となるだけでなく, 言語がヘリテージとしての一側面を有していることが分かった。
  • 東京都八王子市の市立小・中学校の事例
    坂本 優紀, 濱 泰一
    2022 年 15 巻 2 号 p. 119-129
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,小・中学校の校歌に表現される地域的特徴を明らかにすることを目的に,校歌の歌詞と学校の所在地域および校歌の制作年との関係を検討した。対象は東京都八王子市内に位置する公立の小・中学校であり,全104校分の校歌の歌詞と89校分の制作年を収集した。分析の結果,八王子市で特徴的にみられる語句(地域語)として富士,高尾,桑,浅川,多摩が抽出された。地域語が含まれる校歌の分布には地域差が認められ,対象物との近接性や関係性が強い地域で優位に出現する傾向がみられた。また,制作年による語句の出現率には弱い負の相関がみられることから,新しく制作された校歌ほど地域語が含まれない傾向も明らかとなった。本稿の結果から,校歌の分析では学校の所在地域だけでなく制作された時代も考慮する必要があることが示された。
  • 重要伝統的建造物群保存地区制度の活用に着目して
    張 紅
    2022 年 15 巻 2 号 p. 131-143
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,福島県南会津町の前沢集落を対象として,遅れて重伝建地区制度を活用したが,観光地化をしない歴史的街並み保全にみられる特徴を,要素と要素間の結び付きという視点から明らかにした。その結果,前沢集落は外部者の提言を契機に街並み保全を開始して,1980~2000年代前半にかけて国からの補助金に頼らずに,地元だけで保全を行ってきた。その後,市町村合併による保全の財源確保に困難が見込まれたことを契機に,かつては敬遠していた重伝建地区による保全を再検討上に制度の導入を決断し,街並み保全を行うようになった。歴史的街並み保全を促進する要素と要素間の結び付きからみると,前沢の街並み保全を促進したのは主に社会的要素と公共的要素,そして,2要素が常に結び付いて街並み保全に影響を及ぼした。街並み保全を行った結果,かつて不名誉とも認識されていた茅葺屋根の景観が現在,住民の地域アイデンティティの創出につながるようになった。
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