地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
13 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 益田 理広, 秋山 祐樹
    2020 年 13 巻 1 号 p. 1-26
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は近年顕著に関心の高まる空き家に関する研究の動向について,特に和文文献に焦点を絞り,その展望を試みたものである。本研究では,まず空き家研究全体の盛衰を探るべく空き家に関連する論文の発表数の経年推移を追い,次いで研究対象となる地域,主として空き家を研究する学術領域,および各個の研究の使用する統計の種類についてそれぞれ分析した。更に,各個の研究の採用する調査と分析の手法について,その採用数と採用率を明らかにした上で評価を行った。その結果,2019年現在において空き家研究は質,量の両面に最盛期を迎えており,研究方法の面では計算機による特定指標の緻密な分析に重きが置かれ,建築学や都市工学の長所を有する一方で,自然環境から社会条件に及ぶ総合的分析の不足が指摘された。そこで,本研究は,地域のような総合的対象の分析に適する地理学的観点の導入によって,研究状況の学際的補完を提言するものである。
  • 松井 歩
    2020 年 13 巻 1 号 p. 27-42
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/28
    ジャーナル フリー
    本稿では現代日本における沿岸漁家経営の存立基盤実態を解明することを目的に,漁家の労働力配分と地域条件について検討した。事例地域は能登半島東部に位置する七尾南湾沿岸部の2地区2集落であった。各地区はそれぞれ,賃金労働との兼業が卓越している地域,観光業が卓越している地域として識別された。そして,聞き取り調査から得られた漁家の事例をもとに,年周・日周の二つの時間スケールから世帯内での労働力配分を分析した。結果として,同一海域に属するミクロな地域間においても生業活動の歴史的展開や漁場利用制度をはじめとした地域条件に対応しながら,異なる労働力配分のもとでローカルな沿岸漁家経営が存立していることが明らかとなった。今後の研究では,多様な地域条件下における世帯の労働力配分の事例・分析を積み重ねていくことで,兼業漁業の多様性を明らかにしていくことが可能となると考えられる。
  • 坂本 優紀, 渡辺 隼矢, 山下 亜紀郎
    2020 年 13 巻 1 号 p. 43-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/28
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,長野県上伊那地域でみられる筒系噴出煙火の三国を地域文化として捉え,三国の伝播と利用形態の変容を明らかにした。伊那谷における三国は江戸時代に三河地方から伝わったとされ,各地域の神社の祭りで奉納されるようになった。現代でも駒ヶ根市以南では,主に神社の秋祭りで奉納され神事としての役割を担っている。第二次世界大戦後になると三国の利用地域が拡大し,それまで三国の北限であった駒ヶ根市より北にある宮田村と箕輪町で三国が放揚され始めた。宮田村では1962年に在来の祭礼に組み込まれる形で三国が奉納されるようになった。当初は祭礼を盛り上げることが目的であったものの,現在では神事としての意義づけがされている。一方,箕輪町では2000年代に地域イベントで放揚され始め,現在も神事としての役割はない。このように三国の拡大過程においてその意義づけは対象地域ごとに異なり,各地域それぞれの選択と解釈がなされていることが明らかとなった。
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