地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
16 巻, 1 号
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  • ―1990 年代以降の英語圏における研究動向を中心に―
    川添 航
    2023 年 16 巻 1 号 p. 1-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,移住者の宗教活動に関わる地理学的研究について,日本国内での研究を遂行する際の方向性・研究視点を議論することを目的とした。英語圏における先行研究では,宗教コミュニティの形成・変容や宗教活動が有する役割が検討されてきた。また,日本国内では,多文化共生をめぐる公共的な課題の中に宗教を位置づけ議論が行われている。宗教施設や宗教コミュニティが置かれる状況は地域的に多様であり,それぞれの地域で異なる認識・役割が生じている。その際に,移住者による宗教施設の設立過程や地域社会における宗教の役割,移住者のアイデンティティに与える影響を踏まえた地理学的な分析が必要となる。また,ローカルな社会経済的・政治的背景に規定された個別の移住者の日常生活と宗教活動との関係を検討することで,移住者をめぐる多様な地域的背景を踏まえた議論の中で宗教活動の特徴や独自性を解明することが可能となる。
  • ―ジャパニーズ・ロックを事例として―
    飯塚 深久, 池庄司(大島) 規江
    2023 年 16 巻 1 号 p. 21-43
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は空間的広がりを持たない文字テクストのうちジャパニーズ・ロックの歌曲を対象として,「まち」という舞台(空間)がいかなる情緒や想いと結びついているのかについて,記号表現というシニフィアンと記号内容というシニフィエの二つに焦点を当てながら分析を試みた。その際,研究対象時期を2000年以降とし,2000年代と2010年代に区分して,BʼzとMr.Childrenの全歌曲について分析・考察した。分析の結果,2000年代においてはBʼzの歌曲タイトルという記号表現と「まち」表現とが結び付いていないこと,他方,Mr.Childrenの歌曲タイトルは「まち」と何らかのかたちで結び付いた記号表現として出現していることが明らかとなった。また,記号内容としての歌詞の分析からは,BʼzとMr.Childrenに共通して,倦怠感や孤独感といったネガネティブな感情を持ちながら「まち」で生活する様子を綴っている。そうしたネガティブな感情に立ち向かう意思や自らを鼓舞するかのような表現も両グループの歌詞に通底している。2010年代になると,両グループともに歌曲のタイトルの付し方に変化が見られるが,2000年代と変わらず,Bʼzのタイトルでは「まち」表現との関連が弱いこと,そしてMr.Childrenのそれでは日本語タイトルが「まち」表現の記号表現として働いていることが改めて確認された。一方の記号内容としての歌詞分析からは,両グループともに,2000年代に見られた倦怠感や孤独感といったネガティブな雰囲気を纏った歌詞が消えた。また,Bʼzの「まち」表現の曲においては過去・現在・未来のいずれかを歌っている一方で,Mr.Childrenのそれにおいては現在・未来のいずれかに想いを馳せるかのような歌詞となった。
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